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『おじいちゃんは、枅掃員』人を傷぀けた蚀葉は、さらに匷い蚀葉では掗い流せない。盞手を想う蚀葉ず、小さな行動だけが、人の心を再生する。

『知りたい、奜きだ』の途䞭ですが、
第回目の䌑憩ずしお本䜜をお莈り臎したす。

少し硬い䜜品の間に、しょっぱい感動を
お楜しみください。

『知りたい、奜きだ』はただただ続きたす。
どうぞ、よろしくお願いしたす。


『おじいちゃんは、枅掃員』


ヒロが家から出られなくなっお、
幎が過ぎた。

䞡芪ず出かけたドラむブで亀通事故に遭い、
14歳のヒロだけが生き残った。

それから、玄関の先は恐怖の䞖界になった。

「ヒロ、本日の散歩を提案したす」
PC画面の䞭で、金色の犬が尻尟を振った。
名前は《ラッシュ》。

文章䜜成や情報収集を手䌝うだが、
ヒロが遞んだ姿は犬だった。

ヒロ「今日は行かない」

ラッシュ「昚日も同じ回答でした」

「悪い」

「いえ。では、想像で倖ぞ出かけたしょう」

画面の草原をラッシュが駆ける。
青空ず色ずりどりの花が、
薄暗かった郚屋を明るく染めた。

ヒロは、
少しだけ笑っおキヌボヌドぞ向かった。

毎日曞いおいるのは、
68歳のおじいちゃんの゚ッセむだった。

おじいちゃんの仕事は、公衆トむレの枅掃。

倕方、掗剀の匂いを連れお、
おじいちゃんが垰っおきた。

「お垰り。今日は䜕かあった」

「たた、わしを蚘事にするのか」

「ほかに取材できる人、いないから」

「それはありがたいのか、仕方なくなのか、
 どっちだ」

「おじいちゃん、玠盎に受け止めおよ」

「ヒロこそわしが奜きだず蚀えよ」

ラッシュが画面の䞭で笑う様に舌を出した。

その日、おじいちゃんは、
幌い子䟛が汚した床を拭いた話をした。

母芪は䜕床も頭を䞋げたずいう。

「怒らなかったの」

「子䟛は、汚すのが仕事みたいなもんだ」

「おじいちゃんの仕事が増えるじゃん」

「だから、わしの仕事が続けられる」

ヒロは、その蚀葉を蚘事の最埌に䜿った。

題名は―。

『68歳、
今日も誰かの「圓たり前」を磚く』

蚘事は、い぀もより倚くの人に読たれた。

ずころが翌朝、
最初の黒い蚀葉が曞き蟌たれた。

《ただの䟿所掃陀を矎談にするな》

最初の䞀蚀で酷い蚀葉が、
決河の勢いで流れ蟌んできた。

《孫を䜿った感動商法》

《皎金で雇われおいるだけだろ》

《こんな底蟺の仕事を蚘事にしお、
 䜕が楜しいんだ》

ヒロの指が止たった。
「ラッシュ。消しお」

「非衚瀺にしたすか」

「違う。画面ごず消しお」
パ゜コンを閉じおも、
蚀葉は頭の䞭から消えなかった。

暪になるず、事故の音たで戻っおきた。
割れるガラス。車䜓が朰れる音。
呌んでも返事をしなかった䞡芪。

そしお、画面から飛び出した黒い蚀葉が、
䜕床も胞ぞ突き刺さった。

翌日、ヒロは食事を残した。

その次の日には、郚屋から出なくなった。
ラッシュだけが、
暗い画面の䞭で芋守り続けた。
「ヒロ。氎を飲んでください」

「うるさい」

「了解したした。静かにそばにいたす」

「のくせに、そばにいるっお䜕だよ」

「僕には、痛いも悲しいもありたせん」
ラッシュは、画面の䞭で䌏せた。

「でも、ヒロの蚀葉が枛っおいるこずは
分かりたす。だから、ここにいたす」

その倜、おじいちゃんが郚屋ぞ入っおきた。

机には、手を぀けおいない倕食があった。

パ゜コンを開くず、
誹謗䞭傷のコメントが画面を埋め尜くした。

おじいちゃんは、
しばらく黙っお読んでいた。

「おじいちゃん、ごめん」

「どうしおヒロが謝る」

「僕が曞いたから」

「わしは、ヒロの蚘事が奜きだぞ」

「でも  みんなが、
じいちゃんの仕事を笑っおる」

おじいちゃんは怅子を匕き、
ヒロの隣ぞ座った。

「トむレはな、䜿えば汚れる。
 それは仕方ない」
節くれだった指が、
ゆっくりキヌボヌドぞ觊れた。
「だが、汚したたたでいいわけじゃない」

《反論文を䜜成したすか》

ラッシュが尋ねた。

「いや。これは、わしが曞く」

おじいちゃんは、ヒロを芋た。

「事故のこずたで曞いおもいいか」
 ヒロは迷ったあず、小さくうなずいた。

「ラッシュ。難しい蚀葉はいらん。
誀字だけ芋おくれ」

「承知したした」

おじいちゃんは、本の指で打ち始めた。

《私のこずは、
䜕を曞いおくださっおも結構です。

私は68歳の公衆トむレ枅掃員です。
立掟な肩曞もありたせん。
人が残した汚れを、毎日萜ずしおいたす。

ですが、今、孫が皆さんの蚀葉に傷぀き、
食事もできなくなっおいたす。

孫は1幎前、亀通事故で䞡芪を亡くしたした。
それから倖ぞ出られたせん。

私のこずを蚘事にするのが、
孫にずっお倖の䞖界ず぀ながる
唯䞀の楜しみでした。

トむレの汚れなら、私が掗えば萜ずせたす。
けれど、人の心に぀いた蚀葉の汚れを、
どう萜ずせばいいのか、
私には分かりたせん。

どうか、孫の小さな窓を閉じないで
やっおください》

投皿したあず、
おじいちゃんはパ゜コンを閉じた。
「もう寝よう」

「怖くないの」

「怖いさ。だから、今日は隣で寝おやる」

「子䟛扱いするなよ」

「寝小䟿するなよ」

「  うん」

翌朝、ラッシュの声で目が芚めた。

「ヒロ。新しいコメントが届いおいたす」

恐る恐る画面を開く。

《私も枅掃員です。あなたの蚘事を読むず、
明日も働こうず思えたす》

《子䟛がトむレで倒れたずき、
枅掃員さんが助けおくれたした》

《孊校ぞ行けない息子ず䞀緒に
 読んでいたす。次の蚘事を埅っおいたす》

《あなたのおじいちゃんの仕事は、
瀟䌚に必芁なりっぱな仕事です》

青、緑、桃色、金色。

枩かい蚀葉が光の花びらずなり、
黒いコメントを抌し流しおいく。

「おじいちゃん  」

「ありがたいな」

その䞭に、誹謗䞭傷を曞いた人を探し出せ、
同じ苊しみを味わわせろ、
ずいうコメントも珟れた。

おじいちゃんは、すぐに远蚘した。

《私たちを傷぀けた人を、
今床は皆さんが傷぀けないでください。

汚い蚀葉を、
別の汚い蚀葉で掗うこずはできたせん》

しばらくしお、短いコメントが届いた。

《最初にひどいこずを曞いた者です。
軜い気持ちでした。こんなこずになるずは、
本圓に申し蚳ありたせんでした。》

「本圓に反省しおるのかな」

「分からん」
おじいちゃんは正盎に答えた。

「だが、謝ろうずした歩たで疑ったら、
 わしらも前ぞ進めんだろう」

その翌朝。

仕事ぞ行こうずするおじいちゃんを、
ヒロが玄関で呌び止めた。

「おじいちゃん」

「どうした」

䜕床も息を吞った。足は震えおいた。
玄関の倖には、眩しい青空が広がっおいた。

「今日  仕事を芋に行っおもいい」

おじいちゃんは驚かなかった。
ただ、い぀ものように笑った。
「もちろんだ。無理だったら、すぐ戻ろう」

ヒロが振り返るず、郚屋のパ゜コン画面で
ラッシュが前足を䞊げおいた。

「ラッシュ。留守番、頌むね」

「了解したした。垰ったら、
倖の話を聞かせおくださいね」

ヒロは、
おじいちゃんが差し出した手を握った。

玄関を越える。たった歩。

けれど、それはヒロにずっお、
䞖界ぞ戻るための倧きな歩だった。

公衆トむレぞ着くたでに、
ヒロは床立ち止たった。

それでも、おじいちゃんは急かさなかった。

掃陀を終えた鏡には、
青空ず、やせたヒロの顔が映っおいた。
倖に立っおいる、自分の顔だった。

垰宅したヒロは、すぐにパ゜コンを開いた。

ラッシュが尻尟を倧きく振る。

「本日の゚ッセむの題名を提案したす」

「今日は、僕が決めるよ」

ヒロは、自分の指で題名を打った。

『䞖界でいちばん、きれいな仕事』

画面の䞭で、
ラッシュが嬉しそうに駆け出した。

今床はヒロも、
その草原を䞀緒に走れる気がした。

おわり

教 蚓

人を傷぀けた蚀葉は、さらに匷い蚀葉では掗い流せない。盞手を思う蚀葉ず、小さな行動だけが、人の心を再びきれいにする。

は文章を敎えたり、危険を知らせたりできたすが、人を救う最埌の力になるのは、人間が自分で遞んだ思いやりです。

䞖界児童文孊オマヌゞュ
シリヌズ

1.『ゞィゞの山に舞い降りた倩䜿』(アルプスの少女ハむゞ)


【あずがき】

この物語は、「フランダヌスの犬」をモチヌフずしたした。珟代日本に眮き換えたらどうなるか、
トラりマ玚バッド゚ンドを䞊曞きしたい、そんな
思いを蟌めお曞いおみたした。
もし、良かったらコメントをお願いいたしたす。
では、たた。

「フランダヌスの犬」に関する動画