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『セカすこ』第4話安くしたら優しいのか



    「䞉癟円っお、高いず思う」

    翌日の攟課埌。
    湊斗は癜い倀札カヌドを指で匟きながら蚀った。

    机の䞊には、昚日の長いレシヌトがただ残っおいた。
    ただの玙のはずなのに、誰もそれを䞞めようずはしなかった。

    レシヌトの暪には、結衣が詊しに描いたメニュヌ衚の䞋曞きがある。
    淡い緑のクリヌム゜ヌダ。
    䞊に䞞いバニラアむス。
    赀いさくらんが。
    透明なカップのたわりには、小さな星みたいな食りたで描かれおいた。

    「高いか安いかで蚀えば、普通じゃない」

    颯倪がスマホを芋ながら蚀った。

    「文化祭䟡栌っお感じ」

    「でもさ、他のクラスが二癟円ずかで出しおたら」

    湊斗が聞くず、颯倪は䞀瞬止たった。

    「それは  負けるかも」

    「勝ち負けなの」

    杏が少し困った顔で笑う。

    「いや、だっお同じ飲み物なら安い方行くじゃん」

    湊斗は倀札カヌドをもう䞀床指で匟いた。

    癜いカヌドが、机の䞊で少しだけ滑った。

    「やっぱ䞉癟円くらいがよくない高校生でも買いやすいし」

    その蚀葉に、杏が小さくうなずいた。

    「私も、できれば安い方がいいず思う」

    蓮が顔を䞊げた。

    「理由は」

    「理由っおいうか  」

    杏は少し考えおから蚀った。

    「文化祭っお、いろんなクラス回るでしょ。食べ物も飲み物も、䜕個も買いたい子いるず思うし。高かったら、買えない子もいるかもしれないし」

    杏の声はやわらかかった。
    誰かを責める声ではなかった。

    湊斗はすぐに乗った。

    「それ。高すぎるず入りにくいし。䞉癟円なら、たあ買うかっおなるじゃん」

    「二癟五十円は」

    颯倪が蚀った。

    「その方が安く芋える。ワンコむンじゃないけど、なんか軜い」

    「二癟五十円っお、釣り銭めんどくさくない」

    蓮が蚀った。

    「そこ」

    「そこも倧事」

    蓮はレシヌトを指で抌さえた。

    昚日、蓮が折らずに持ち垰ったレシヌトは、ただたっすぐ䌞ばされおいる。
    ずころどころに、蓮の小さなメモが曞き蟌たれおいた。

    炭酞。
    シロップ。
    アむス。
    さくらんが。
    カップ。
    ストロヌ。

    湊斗はそれを芋るだけで、昚日のレゞの音を思い出した。

    ピッ。
    ピッ。
    ピッ。

    金額が増えおいく、あの明るすぎる音。

    「でも、文化祭で四癟円ずかは高くない」

    結衣が蚀った。

    「写真で芋たらかわいくおも、倀段芋おやめる人いるず思う」

    「だよな」

    湊斗はチョヌクを持ち、黒板の端に曞いた。

    クリヌム゜ヌダ 300円

    その文字を芋た瞬間、少しだけ安心した。

    わかりやすい。
    買いやすい。
    文化祭っぜい。
    たぶん、売れる。

    「䞉癟円なら、来やすいず思う」

    杏が蚀った。

    「高いっお思われたら、ちょっず申し蚳ないし」

    その時、蓮が静かに蚀った。

    「安くした分は、誰が払うの」

    教宀の空気が、少し止たった。

    「え」

    湊斗が聞き返す。

    「安くした分」

    蓮はレシヌトを芋ながら蚀った。

    「材料費は倉わらない。カップ代も、ストロヌ代も、さくらんが代も倉わらない。䞉癟円で売るなら、安くした分はどこかから出る」

    「どこかっお」

    「自分たちの持ち出しか、他のメニュヌで埋めるか、芋た目を削るか、量を枛らすか」

    蓮の蚀葉は、ひず぀ず぀机の䞊に眮かれおいくみたいだった。

    杏が少しだけ目を䌏せた。

    「でも、高くしたら買えない子がいるかもしれない」

    「それはわかる」

    蓮はすぐに蚀った。

    「安くしたい気持ちはわかる。でも、安くした分が消えるわけじゃない」

    結衣はメニュヌ衚の䞋曞きを芋た。
    さくらんがを消したら、たぶん原䟡は少し䞋がる。
    アむスを小さくすれば、もっず䞋がるかもしれない。
    透明カップを安い癜い玙コップにすれば、さらに䞋がる。

    でも、それは自分たちが䜜りたかったクリヌム゜ヌダなのだろうか。

    「芋た目を倉えたら、別物になる気がする」

    結衣が小さく蚀った。

    「じゃあ、䞉癟五十円」

    湊斗は黒板の「300円」の暪に、小さく「350円」ず曞いた。

    颯倪が銖をひねる。

    「䞉癟五十円っお、䞭途半端じゃない」

    「四癟円は」

    「高く芋える」

    「でも、䞉癟円だず残らないんだろ」

    湊斗は蓮を芋た。

    蓮は少しだけ困った顔をした。

    「正確にはただわからない。詊䜜䞀回分でざっくり芋ただけだから。でも、昚日の感じだず、䞉癟円はかなり薄い」

    「薄い」

    「残る分が」

    湊斗は黒板を芋た。

    300円。
    350円。
    400円。

    数字だけなのに、それぞれに違う空気があった。

    䞉癟円は優しそうに芋える。
    四癟円は少し匷そうに芋える。
    䞉癟五十円は、その間で迷っおいるみたいに芋える。

    杏が蚀った。

    「䞉癟円で、量をちょっず少なくするのは」

    「それ、写真ず違ったらがっかりしない」

    結衣がすぐに返した。

    「あ  そっか」

    「メニュヌ衚ではかわいく芋せお、実物が小さかったら、たぶん嫌だず思う」

    結衣の蚀葉に、颯倪もうなずいた。

    「それはコメントで蚀われそう。『写真ず違う』っお」

    「ただ投皿しおないのに、もう怖いな」

    湊斗が笑おうずしたが、あたり笑えなかった。

    高くしたくない。
    でも、安くするず残らない。
    芋た目は守りたい。
    でも、芋た目を守るずお金がかかる。

    たった䞀぀の倀段を決めるだけなのに、いろんなものが絡たっおくる。

    杏は机の䞊の倀札カヌドを䞀枚手に取った。
    真っ癜なカヌドだった。

    「安くしたら、みんなに優しいず思っおた」

    その声は、い぀もより少し小さかった。

    「でも、誰かが無理するなら、それっお優しいのかな」

    誰もすぐには答えなかった。

    蓮は杏を芋お、少しだけ芖線を䞋げた。

    「ごめん。蚀い方き぀かったかも」

    「ううん」

    杏は銖を振った。

    「ちゃんず考えた方がいいんだず思う」

    湊斗は黒板に曞いた「300円」を芋た。

    さっきたでは、正解に近い数字だず思っおいた。
    でも今は、その数字の䞋に、昚日のレシヌトが透けお芋える気がした。

    「じゃあさ」

    颯倪が、沈んだ空気を少し持ち䞊げるように蚀った。

    「AIに聞けば文化祭カフェの適正䟡栌」

    湊斗が顔を䞊げた。

    「それ、ありかも」

    結衣は少しだけ眉を寄せた。

    「聞くのはいいけど、それで決めお倧䞈倫なの」

    「参考にはなるでしょ」

    颯倪はもうスマホを開いおいる。

    「条件入れたら出るっお。材料費いくら、タヌゲット高校生、文化祭、映えるクリヌム゜ヌダ。はい、適正䟡栌ください、みたいな」

    蓮は䜕も蚀わなかった。
    ただ、レシヌトを芋おいた。

    湊斗は黒板消しを手に取った。

    「ずりあえず、䞉癟円っお曞いたたた先生に出すのは危ないか」

    そう蚀っお、黒板の「300円」を消した。

    癜いチョヌクの粉が、黒板の䞋に萜ちた。

    けれど、机の䞊の倀札カヌドには、ただうっすらず鉛筆で曞かれた「300円」が残っおいた。
    湊斗は消しゎムを手に取り、その文字をこすった。

    䜕床もこすった。

    「300円」は消えた。
    でも、消し跡だけが、癜い倀札の真ん䞭に残った。

    誰も、その䞊に次の倀段を曞かなかった。

    攟課埌の教宀に、スマホを操䜜する颯倪の指先の音だけが小さく響いおいる。

    癜い倀札は、ただ空欄のたただった。

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    地方で飲食店を営む店䞻ナキナリです。珟金残高ベヌス経営を軞に、売䞊より珟金残高、根性より構造を考える日々。忙しいのに珟金が残らない小芏暡個人事業䞻ずしお、自分の思考敎理ず孊びの備忘録をアりトプットしおいたす。倱敗ず1改善の蚘録。

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