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䌊月䞀空の心霊奇話 ヌそのいわく付きの品、浄化したすヌ 第16話

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第章 玄束の簪

15  月がきれいだから

「田舎料理ばかりで恥ずかしいわ」
 ず、祖母は蚀っおいたが、かなり頑匵ったのか、倕飯は食べきれない皋のご銳走が食卓に䞊んだ。
 出された料理を䞀空は耒め称え、トキは嬉しそうに笑う。
 ずくに、䞀空は山菜のおんぷらが気に入ったらしい。
 無口な祖父も䞀空ず酒を飲むこずが嬉しいのか、珍しく䌚話に混ざり笑っおいた。

 楜しいひずずきを過ごせた。
 その埌、颚呂に入り、客間ぞず案内された。
 ふざけお蚀ったのか、からかったのか分からないが、祖母は䌊月さんず同じ郚屋でいいわよね、ず垃団を二組䞊べようずしたが、慌おお华䞋し、郚屋を別々にしおもらった。

 たずえ恋人同士であっおも、結婚前なのだからそれはどうかず思う。
 それでも、同じ屋根の䞋に䞀空がいるず思うず緊匵した。
 いや、ず玗玀は激しく銖を振る。

 べ、別に意識しおいるずか、そんなんじゃないんだからね

「寝よ」
 玗玀は垃団を顔たで持ち䞊げた。が、すぐに顔を出しため息を぀く。
 そういえば、䞀空から詳しいこずは聞いおいない、ずいうか聞きそびれたが、明日は䜕をするのだろう。
 女性の霊の正䜓を突き止めたいず思わないか、ず蚀われここたで䞀空ずやっお来た。そしお、女の霊が曟祖母の楓だず刀明した。

 だが、正䜓を突き止めた埌、どうするのかたでは説明されおいない。
 単玔に墓参りに来ただけずも思えない。
 正䜓を知っお、それで終わりずいうわけではないだろうし、それだけのためにわざわざ䞀空が長野たで来たずは思えない。
 そもそも、店の方はどうしたのだろう。
 今日、明日は臚時䌑業にしたのか。

 いったん垃団に朜り蟌んだ玗玀だが、がばっず半身を起こした。
 䞀空がいるずいうこずを別にしおも、やはり眠れない。
 無理に眠ろうずしおも無駄だず悟った玗玀は、スマホに手を䌞ばしかけ、ふず倖の方に芖線をあおた。
 月明かりが障子越しから仄かに萜ち、郚屋を照らした。
 立ち䞊がり、障子を開け濡れ瞁に出るず、庭に咲く垂れ梅の朚が目に飛び蟌んだ。

 楓ず䞀緒に写真に写っおいた梅の朚か。
「きれい  」
 濡れ瞁から螏み石に揃えられおいた履物に足を通し、庭に降りた玗玀は、梅の朚の偎たで近寄っお行く。
 梅の朚の䞋から空を芋䞊げるず、枝の向こうに䞞い月が芗き淡い光がこがれ萜ちる。

 玗玀は空に向かっお手を䌞ばす。
 ふわりず梅の花びらが舞い、指先をかすめおいった。
 ふず、背埌で人の気配を感じ振り返る。
「ここにいたんだね。探したよ」
 背埌に立぀その人は、優しい埮笑みを浮かべおいた。
 ため息がこがれる皋の端敎な容貌。月明かりのせいもあっお、その男の姿は劖艶さを増した。

 玗玀は蚀葉を倱ったたた、その堎に立ち尜くす。
「どうした」
「寝付けなくお  」
「実は僕もだ」
 こちらに歩み寄っおきた男が隣に立぀。そしお、䞀緒に梅の朚を芋䞊げた。
 さわりず颚が吹く。
 垂れた梅の枝が揺れた。

「きれいだね」
「はい  」
 盞手の手がすっず䌞び、髪に觊れた。
 胞がドキリず鳎る。
 頬が熱くなり息が苊しい。
 きっず、耳たで真っ赀に違いない。
 倜でよかった。
 明るい堎所だったら、顔が赀いのがばれおしたう。

 髪から離れた盞手の指先に、ひずひらの花びらが挟たれおいた。
「花びらが髪に」
 芋䞊げるず盞手の顔が間近に、目ず目が合い息を飲む。
 柄んだ瞳に、吞い蟌たれおいきそう。
「  ありがずうございたす」
「きれいだ」
「え」
 花びらを぀たんでいた人差し指ず芪指が離れ、ふわりず吹く颚にさらわれおいく。

 その指先が再びこちらに䌞び、髪の䞀房を絡め取る。
「あの  」
 い぀もなら、逃げおしたうずころだけれど、盞手の真剣な目に芋぀められ、たるで呪瞛にかけられたかのように動けなかった。

 戞惑いながら芖線をさたよわせ、恥ずかしさにう぀むく。
 頭䞊でふっず笑う声。
「そうだ。これを枡そうず思っお」
 差し出しおきた簪を受け取る。
 盞手の指先に自分の指が觊れた。
「あの  」
「愛しおいる」
 信じられない蚀葉に、はじかれたように顔を䞊げる。

「僕ず䞀緒になっお欲しい。偎にいお欲しい」
「でも、私はあなたずは  」
「必ず君ず倫婊になれるよう䞡芪を説埗する。君以倖の女性など考えられない。だから、僕ず結婚しおください」
 手にした簪を匷く握りしめる。
 あふれる涙が頬に萜ちた。
 胞が熱い。
 嬉しさに身䜓が震える。

「私もお慕い申しおおりたす。あなたのこずが奜きです。お偎にいたいです」
「ああ、よかった」
 盞手の顔に笑みがこがれた。
 䌞ばされた腕に匕き寄せられ、ふわりず抱きしめられる。盞手の胞に顔をうずめ、頬をすり寄せ目を閉じる。

 现身だず思っおいたけれど、思いのほか肩幅が広いのね。
 筋肉質な腕ず胞。私の身䜓がすっぜりず収たるくらい。
 それに、いい匂いがする。
 この匂い奜き、ず盞手の腰のあたりに䞡腕を回し抱き぀く。

「  か」
「はい  愛しお、たす。あなた、䞀緒、なりたい」
「なぜ片蚀」
「結婚しおください」
「おい、倧䞈倫か。しっかりしろ玗玀」
 肩を揺すられ、さらに頬をぺちぺちず叩かれお、ようやく玗玀はうっすらず目を開けた。

「ぞ」
 間抜けな声が挏れる。
「正気に戻ったか」
「え ちょ  䌊月さんっ」
 䞀空の腕に抱かれおいた。
 いや、自分が䞀空の腰に腕を回し抱き぀いたこずに気づく。

 ひヌ䜕やっおんのよ、私

 自分の行動に驚いおいた玗玀は、思いっきり䞡腕で䞀空の胞を突き飛ばし身䜓を離した。しかし、突き飛ばした反動で自分の身䜓が埌方に反り返っお倒れそうになる。
「きゃっ」
 すかさず、䌞びおきた腕に抱きずめられた。
「気を぀けろ」
 力匷い腕に支えられ、玗玀の心臓がたたしおも悲鳎を䞊げる。

 䞀空の手が離れおも、䜕だか心がそわそわしお萜ち着かない。
「こんな時間にどうした 眠れないのか」
「い、䌊月さんこそ」
「ああ、月が  」
 ず蚀っお、䞀空は緩やかに空を芋䞊げた。
「きれいだから、庭を歩いおいた」

 キザな蚀葉に、い぀もの玗玀なら思わず吹き出しおいた。
 だが、真剣な顔で月を芋䞊げる䞀空の暪顔があたりにも矎しく、萜ちる梅の花びらをたずう姿もたるでこの䞖の人ずは思えない劖しさがあっお、胞のドキドキが止たらない。
 今にも消えおしたいそうな、儚い感じ。
 そこで、玗玀ははっずなる。

 この䞖の人ずは思えないずいえば  。

「䌊月さん、今おかしな倢ずいうか、䜓隓をしたした」
 玗玀は先皋芋た出来事を、思い出すような目で梅の朚を芋䞊げる。
「郚屋から梅の朚が芋えお、近くで芋おみようず思っお庭に降りたら、突然男の人が珟れお  」
 玗玀は自分の手のひらに芖線を萜ずす。

 その手には䞀空が持っおいる筈の簪が、い぀の間にか握られおいた。
「簪  そう、男の人がこの簪を私にくれたの。どうしおこれが私の手に」
 怖いくらい真剣な目で䞀空は玗玀を芋䞋ろす。
「䜕 そんなに睚たなくおも」
 䞀空は緩く銖を振った。

「驚いた。玗玀は僕が思っおいた以䞊に胜力が高い」
「䜕の胜力 もしかしお霊胜力」
「ああ、おそらく玗玀の曟祖母である楓の蚘憶を远䜓隓したのだろう。さっき、玗玀がどら焌きを食べおいた時も、楓の蚘憶を芖たのだろう」
 玗玀は䞀瞬、蚀葉がでなかった。

「じゃあ」
「珟れた男ずいうのは楓が思いを寄せおいた男だろう。その男の名前を芚えおいるか」
 玗玀は頷く。
 確か、楓はその人のこずを真蔵さんず呌んでいた。愛おしそうに。
「奜きな人に結婚を申し蟌たれお、楓さんずおも幞せそうだった」
 なのに、二人は結ばれるこずはなかった。

「簪  」
 玗玀は目を芋開いた。
 ああ、そういうこずだったのね。
「䌊月さん 分かりたした。楓さんがこの簪にこだわる理由が。この簪は楓さんが思いを寄せおいた人、぀たり真蔵さんからの莈り物だったんです」
 祖母トキが芋芚えがない簪だず蚀っおいた意味も理解できる。
 倫からではない、別の思い人から莈られたこの簪を髪に挿すこずはできなかったから。

「愛し合っおいおも結局二人は倫婊ずなるこずは叶わなかった。だから二人は互いに誓った。この䞖では無理でも、あの䞖で必ず結ばれようず。そしお、真蔵さんはこうも蚀っおいた、楓さんがこの䞖を去る時にこの簪を持っおいおくれたなら、ただ僕を思っおいおくれおいるのだず思い必ず迎えに来るず」
 そもそも、曟祖母が亡くなった埌、この簪がどこにあったのかは䞍明だが、おそらく、䜕かの拍子で母が実家から東京に持っおきおしたった。そしお、そのたた簪は行方䞍明ずなった。

 楓はこの簪を返しお欲しいず願ったが、楓の思いを聞き入れられる人はいなかった。
「そしお倚少なりずも霊感があり、霊の姿を芖られる私がこの簪を手にした時  」
 簪に蟌められた楓の思いが動き出した。
 曟祖母が私の前に姿を珟し、蚎えかけるようになった。私なら願いを叶えられるず思っお。

「でも倉よね。ずうの昔に真蔵さんっお人も亡くなっおいる筈なのに、どうしお楓さんを迎えに来なかったの」
「それを確かめようず思う。そのためにも明日、楓さんの墓に行く。おそらく、それで解決するだろう。楓さんを成仏させるこずができる」
 よかった、ず玗玀は安堵の息をもらす。

「あ、そうだこれ」
 玗玀は簪を䞀空に枡そうず差し出した。
「今は玗玀が持っおいろ」
 玗玀は頷く。
 䞀空は静かに笑った。

「この簪が玗玀の手元に枡り僕ず出䌚った。これも瞁だな」
 呟いお䞀空は背䞭を向け歩き出す。
「瞁ねえ」
 ず、呟き玗玀は再び倜空の月を芋䞊げた。そしお、今床は䞀空の背䞭を芋る。
 でも、あたり嬉しくない瞁だったかも。

ヌ 第17話に続く ヌ 

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