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この裏切りは、君を守るため 第69話

    ◆第1話はこちら

    エピローグ

     翌年、急遽エスツェリア軍はエティカリアから撤退した。勢力を伸ばそうと他国へ手を広げすぎた結果だ。結託した東のラグバットと強国スヴェリアによって、呆気なくも敗れたのだ。

     暖かく柔らかい日射しが降りそそぐ穏やかな昼下がり。
     明るい太陽のもと、庭一面に咲く、白い薔薇の花が光を受け反射して眩しい。
    「お母さま、お母さま!」
    「どうしたのエレノア」
     一冊の本を抱えて駆け寄ってきた幼い少女を、ファンローゼは抱き上げ膝に座らせた。
     濡れたような黒髪と、晴れた空を映したかのごとき、青い瞳の可愛らしい少女であった。
    「お母さまのご本を読んでいたのよ」
    「まあ、エレノアにはまだ早いのでは?」
    「ちゃんと読めたもの」
     少女は本を胸にぎゅっと抱えた。
    「難しいところもあったけど」
     と、ぽつりとつけ加え、少女は可愛らしく唇を尖らせた。
     ファンローゼは微笑んで少女の柔らかい髪をなでた。
     スヴェリアへと渡ったファンローゼは、作家として有名となった。
     悲惨な戦争の中、離ればなれになった男女が愛を貫き通すという内容に、多くの女性たちの心を掴んだ。
    「ねえ、お母さまの小説に出てくる男の人って、お父さまのことよね」
     幼い少女の問いかけに、ファンローゼはにこりと微笑みを返した。すると、少女は突然瞳を輝かせた。
    「あ、お父さまが帰ってきた」
     庭先で車のエンジンが止まる音が聞こえ、少女はぱたぱたと玄関に向かい走っていく。
     ファンローゼはにこやかな笑みを浮かべ、そこに現れる人物を待った。
    「おかえりなさい」
     その人物は腕を大きく広げ、ファンローゼの身体を包み込むように抱きしめた。
    「ただいま、ファンローゼ」
    (了)

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