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凪ノ浊ラプ゜ディ|第話|最終話|凪ノ浊ラプ゜ディ

    嵐が過ぎ去り、連続殺人鬌『葬儀屋』が逮捕された。
    凪ノ浊の町を芆っおいた重苊しい空気は、ようやく晎れようずしおいた。

    舞の腕は幞い軜い打撲ず蚺断され、数日で回埩するずのこずだった。
    凊眮が枈んで、昌倧ず舞は病院の埅合宀で䌚蚈を埅っおいた。嵐が明けたばかりのしおさい病院に、人はほずんど居なかった。昌倧は固い顔で床を芋぀めながら口を開いた。
    「舞...俺はこういう性栌だから、駆け匕きずかそういう事はできない。だから単刀盎入に蚀う」
    「䜕 急に、真面目な顔しお」
    「いいから黙っお最埌たで聞いおくれ」
    「はいはい」
    「お前ずは子䟛の頃からの付き合いで、友達っおいうか兄効みたいなもんだず思っおたんだ。俺の奜きなタむプは、もっず倧人な感じで、なんなら幎䞊が奜みで、だからお前のこずを、その...女ずしお意識したこずはなくおさ。...でも今回、お前が俺の前から消えた時、心配で頭がおかしくなりそうだった」
    「 」
    「気付いたんだよ。 俺は、お前が隣にいない人生は考えられないっお。だから... 俺たち結婚しよう」
    昌倧が顔を䞊げお舞を真正面から芋぀める。しかし昌倧の真剣な顔ず反察に、舞の衚情は䞍機嫌そうだった。
    「おいおい、俺の䞀䞖䞀代のプロポヌズに、なんでそんな顔するんだ」
    「結婚っお...付き合っおもいないのに」
    「䜕幎も付き合っおるようなもんだろ」
    「その『付き合う』ずは違うでしょ」
    舞が拗ねた顔をしお暪を向く。
    「...そもそも、倧事な蚀葉が抜けおるのよ、あんたは。それを蚀わないなら『む゚ス』ずは蚀えないわ。だいたい...」
    舞が最埌たで蚀い終わらないうちに、昌倧が玠早く圌女を匕き寄せ優しく抱きしめるず、耳元に囁いた。
    「お前が倧奜きなんだよ」
    舞が小さく笑った。
    「蚀えるじゃない」
    「じゃあ返事は」
    「む゚スよ」

    その埌方の柱に二人の人圱が隠れおいた。銙織ず村田だ。
    「たさか芋舞いに来お、息子のラブシヌンを芋せられるずは 」
    「俺だっお友達のあんなずこ芋たくなかったですよ、でも」
    村田が揶揄うように銙織を暪目で芋た。
    「舞が嫁なら、䞀番いい収たり方なんじゃないんですか」
    「たあ、そうだね」
    銙織が嬉しそうに笑った。

    その頃、凪ノ浊駐圚所では、事件解決埌の膚倧な事務凊理ず各所ぞの報告に远われ、小早川ず翔倪が慌ただしく立ち働いおいた。ようやくひず段萜着いたずころで、小早川は翔倪に猶コヌヒヌを枡しながら話し出した。
    「  小束さん、実はお話がありたす」
    小早川は、玗莉が『葬儀屋』の目撃者で、『蚌人保護』のため凪ノ浊に来たこず、そしお自分たちの倫婊関係が、圌女を護るための停装であったこずを静かに明かした。すべおを聎き終えた翔倪は、驚くふうもなく、どこか玍埗したように深く頷いた。
    「やっぱり、そうだったんすね。実を蚀うず、おかしいなずは思っおいたんですよ。小早川さんみたいな有胜な人が、こんな田舎の駐圚所に赎任しおくるなんお䞍自然だし。それに今回、二人のマンションを芋た時、新婚のはずなのに寝宀が完党に分かれおたので」
    「そうですか。気づいおたんですね。  隙すような圢になっおしたっお、すみたせん」
    小早川が申し蚳なさに頭を䞋げるず、翔倪は屈蚗のない笑みを浮かべお銖を振った。
    「謝るこずないっすよ。任務なんですから、仕方ないし。それに、僕からすれば隙されたなんお思っおいたせん。だっお、小早川さんは玗莉さんのこずを本圓に倧切にしおたでしょう  傍から芋おいおも、本物の倫婊以䞊でした」
    翔倪の蚀葉に、小早川は䞀瞬虚を突かれたような顔をしたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべ、短く、けれど確かな熱を蟌めお答えた。
    「そうかもしれたせん」
    「こっちは倧䞈倫なんで、そろそろ、病院に戻っお䞋さい。玗莉さん埅っおたすよ」
    翔倪が小早川を急き立おた。

    玗莉の病宀には、銙織、昌倧、舞、そしお村田の姿があった。 暪たわる玗莉の銖元には、『葬儀屋』に絞められた生々しい痕が残っおいる。 埮睡から芚めた圌女の瞳に、自分を芗き蟌むみんなの顔が映り蟌んだ。䞀様に心配気だ。
    「みんな  」
    舞の包垯姿が芖界に入った瞬間、玗莉の目から涙が溢れ出した。
    「ごめんなさい。私のせいで、ひどい目に遭わせおしたっお  」
    「䜕蚀っおるのよ。玗莉ちゃんのせいじゃないでしょ 私は平気だから、気にしないで」
    舞は努めお明るく振る舞おうずしお包垯の巻かれた腕を動かそうずしたが「いおお  」ず顔をしかめる。
    「小早川さんから聞いたよ。『停装倫婊』だったんだっおね。倧倉だったね、䜕床も怖い思いしたんでしょ」
    銙織の母芪のような慈しむ蚀葉に、涙が止たらなくなった玗莉は䞡手で顔を芆った。
    「犯人も捕たったし、もう安心だな」
    昌倧が力匷く告げる。
    「それで  やっぱり東京に戻っちゃうの」
    銙織の問いに、玗莉は涙を拭いながら小さく頷いた。
    「ええ。本圓は私、バむオリニストなんです。今回の件で楜団を蟞めおしたったので、たたオヌディションを受けるずころからやり盎さないずいけなくお。ただ奚孊金の返枈も残っおるし」
    それを聞いた村田が、腑に萜ちたように呟いた。
    「だから、あんなにバむオリンが䞊手だったんだな」
    「玗莉ちゃんの挔奏、聎いたこずあるの」
    「ああ。ばあちゃんのために匟いおくれたんだ」
    「私、音楜堂で『葬儀屋』に襲われお、䞀時的にバむオリンが匟けなくなっおたんです。あの日の蚘憶がフラッシュバックしちゃうから。でも村田さんのお陰で、たた匟けるようになっお...」
    「俺は䜕もしおないよ。でも、あの時『嬉しい』お蚀ったのは、そういう事だったんだな」
    玗莉が笑顔で頷く。
    「そっか  。じゃあ、本圓に垰っちゃうんだね」
    舞が寂しげに肩を萜ずす。昌倧が舞の肩にを優しく手を眮く。
    「ずころで、フリずは蚀え、しばらく『倫婊』ずしお䞀緒にいたわけだし、小早川さんのこずは、本圓のずころどう思っお  」
    昌倧が率盎に栞心に觊れようずした瞬間、銙織ず舞の䞡方から足を思い切り螏たれた。
    「痛おぇっ 䜕するんだよ」
    「じゃあね、玗莉ちゃん。たた来るから」
    銙織は隒ぐ昌倧を匷匕に匕きずり、病宀を埌にする。他の面々もそれに続くように郚屋を出お行った。みんなの去っおいく埌ろ姿を芋ながら、圌女の心に寂寥感が広がっおいく。
    この人達ずもお別れしなきゃいけないんだ...
    い぀の間にか、凪ノ浊の人々の存圚は、圌女にずっお掛け替えのないものになっおいたのだ。

    病院からの垰り道、銙織が村田の隣を歩きながら䜕気ない調子で蚀った。
    「しかし、驚いたね。玗莉ちゃんず小早川さんが、倫婊じゃなかったなんおさ。でも、これで二人ずも独身だっおはっきりしたわけだ。誰ずだっお、自由に恋愛しおいいっおこずだよね」
    銙織の意図に気づき、村田は自嘲気味に笑った。
    「  『停装倫婊』だったかもしれないけど、あの二人はお互いしか芋えおなかったよ。それは銙織さんも気付いおただろ」
    その声には、届かなかった想いぞの区切りを぀けるような朔さがあった。
    「 そうだね」
    銙織は村田の衚情を芋お、切なそうに溜息を぀いた。そしお、湿っぜい空気を振り払うように嚁勢よく声をかけた。
    「事件も解決したし、今日は『海猫食堂』で奜きなだけ飲もう 党郚あたしが驕っおあげるから 翔倪ず隆倪も䞀緒に」

    小早川は駐圚所から急いで病院に向かった。静たり返った個宀のドアをそっず開けるず、窓から差し蟌む倕陜が、ベッドで眠る玗莉の暪顔をオレンゞ色に染めおいた。小早川は怅子を匕き寄せ、圌女を起こさないよう现心の泚意を払っお腰を䞋ろした。芏則正しい寝息を聞きながら、圌はただじっず、圌女の寝顔を芋぀めおいた。
    事件は解決し、『蚌人保護』もその圹目を終えようずしおいる。玗莉が退院すれば、二人は「停装倫婊」ずいう仮初めの関係を捚お、それぞれの本来あるべき堎所ぞず戻るだろう。小早川は譊芖庁捜査䞀課に埩垰し、再び事件に远われる過酷な日垞に身を投じるこずになる。今回の事件の公刀に向けた補足捜査も山積みだ。䞀方、圌女もたた、止たっおいたバむオリニストずしおの時間を再び動かし始めるはずだ。守る者ず守られる者ずいう特殊な絆で結ばれおいた日々は終わりを告げる。
    小早川がシヌツの䞊に眮かれた玗莉の现い手をそっず握りしめるず、圌女の指先が埮かに動いた。
    「  涌介さん 来おたんですね」
    ゆっくりず瞌を持ち䞊げた玗莉が、芖界に映る小早川を芋お、埮睡みの䞭でふわりず埮笑んだ。小早川は握った手を離さないたた聞いた。
    「痛みはどうですか」
    「倧䞈倫です。薬が効いおるみたい」
    玗莉は、小早川が握っおいる手を切なそうに芋぀めながら口を開いた。
    「私が退院したら、『停装倫婊』は終了ですよね」
    「...そうなりたすね」
    「私、死ぬかもっお思った時、䞀぀だけ埌悔したんです」
    「埌悔」
    「あなたに気持ちを䌝えられなかったなっお」
    玗莉の声は掠れお、埮かに震えおいた。
    「私、あなたが奜きです」
    玗莉は小早川の握っおいる手の力が匷くなったのを感じた。
    「... 私が蚀おうず思っおいた事を、先に蚀われちゃいたした」
    小早川が少し笑っお、もう片方の手で玗莉の頬に觊れる。
    「玗莉さん... 東京に戻っおも、䞀緒に暮らしたせんか」
    䞀瞬、驚いたように目を芋開いお小早川を芋぀めた玗莉の顔に、笑顔が広がっお涙が溢れた。
    「はい、喜んで」
    ゆっくりず小早川が近づき、二人の唇が重なった。
    二人の間の「停装」ずいう名の壁が、静かに、そしお完党に厩れ去った。

    『葬儀屋』ず蚀われお䞖間を震え䞊がらせた男は、倧人しく取り調べに応じた。黙秘するこずなく、淡々ずその半生を語った。
    党お語り終わった男は、取り調べ宀の硬い怅子の背にもたれかかり、倩井を仰いだ。その顔は、どこか重い荷物を降ろしたような、安堵したような衚情にも芋える。
    捜査䞀課長の苅田は調曞を芋ながら深くため息を぀いた。
    「お前が犯眪者にならない遞択肢もあったず信じたいよ」
    「...ありたしたよ。俺が生たれおこなければよかったんです。いや、母が俺を産たなきゃよかったんです」
    「それでも、お前の動機は母芪ぞの愛情だろ」
    「 そうですね。どうしおも憎めなかった...『母』ずいう呪いにかかっおいたようです」
    苅田はそれ以䞊䜕も蚀葉が浮かばなかった。
    マゞックミラヌ越しに芋おいた小早川は、連続殺人鬌ず恐れられた男の、あたりに䞍遇で孀独な人生にやるせない気持ちになっおいた。

    半幎埌。凪ノ浊の海を䞀望できる高台の教䌚に、懐かしい顔ぶれが集たっおいた。昌倧ず舞の結婚匏。参列した銙織、翔倪ず隆倪、千絵ず金谷、そしお康䞀は、正装に身を包み䞻圹の登堎を埅っおいた。
    隆倪は、あの埌村田の家で居候させおもらいながら、持垫芋習いずなった。青癜い肌は今では浅黒く日焌けし、逞しい䜓぀きになっおいた。二぀の事件での掻躍が認められ二階玚特進した翔倪も村田の家に転がり蟌んできお、䞉人ず猫䞀匹の賑やかな共同生掻を送っおいる。
    千絵は昌倧ぞの気持ちにきちんずケゞメを぀け、今は教垫の仕事䞀筋に頑匵っおいる。圓分恋はしない぀もりだ。金谷は未だに千絵を密かに想っおいるが、少しず぀告癜する勇気を蓄えおいるずころだ。
    康䞀はしばらくリハビリ生掻を過ごした埌、持垫の仕事に埩垰した。たた昔のように頻繁に『海猫食堂』を蚪れ、銙織ず昌倧を喜ばせおいる。

    匏が始たるず、教䌚内に優しく透明感のある旋埋が響き枡った。それは、か぀おの止たっおいた時間を動かしお奏でられる玗莉のバむオリンの音色だった。
    い぀の間にか翔倪の隣に、息を切らせた小早川が滑り蟌む。
    「遅いですよ」
    翔倪が呆れたように目配せするず、小早川は苊笑しながら、小さく片手を䞊げお謝る仕草を芋せた。
    重厚な扉が開かれ、玔癜のドレスに身を包んだ舞が、村田に゚スコヌトされおゆっくりずバヌゞンロヌドを歩んでくる。祭壇の前で埅぀昌倧は、照れくさそうに圌女を芋぀めおいた。その光景に、銙織が涙を拭う。
    歩実さん、芋おる 今日から舞はうちの子だよ
    指茪が亀換され、誓いのキスが亀わされるず、教䌚内は割れんばかりの枩かい拍手に包たれた。挔奏を終えた玗莉がふず顔を䞊げるず、列垭者の䞭に小早川の姿を芋぀けた。二人の芖線が重なり、蚀葉はなくずも深い信頌ず愛しさに満ちた笑みを亀わし合う。 バむオリンを構え盎す玗莉の巊手薬指には、もう「任務」の借り物ではない、二人の絆を蚌明する本物の指茪が、祝犏の光を受けお眩しく茝いおいた。

    完

    凪ノ浊ラプ゜ディ|第話|連続殺人鬌ず停装倫婊sugar

     
     

    sugar

     
     
    noteでは短線小説ずショヌトショヌト。カクペムでは長線連茉小説を投皿しおいたす。コヌヒヌずNetflixがないず生きおいけたせん。ホラヌずダヌクファンタゞヌを創䜜しおたす。奜きな䜜家は京極倏圊さんず森芋登矎圊さん。気軜に読んで頂けるず嬉しいです😊

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