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「小村雪岱」展枅氎䞉幎坂矎術通癜黒挿絵の改革者雪岱。配色は鈎朚春信ぞのオマヌゞュ黒ベタは本圓にビアズリヌの圱響か

    はじめに

     11月2日付の䞋蚘の蚘事の䞭で、枅氎䞉幎坂矎術通の「小村雪岱」展が開催されおいるこずを偶々知り、入通したこずを蚘したした。
     すでに矎術展は終了しおいたすが、感想を玹介したく蚘事にいたしたす読者の皆様ぞ曞き終わっおみるず圓初の予想ず違い、短線小説なみの長文になっおしたいたした。い぀もならシリヌズに分けお投皿するのですが、内容の連続性を考えおこのたた投皿したす。時間の䜙裕が無い方は、申し蚳ありたせんが䜙裕を持っお読んでいただくか、章に分けおお読みいただければず思いたす。

    小村雪岱ず私

     本題に入る前に、なぜ小村雪岱に関心を持ったのか、どのような点に関心を持ったのか、これたでの経緯を玹介したす。

     この蟺の事情は、今から13幎前の䞋蚘のブログで曞いおいたした。以䞋抜粋したす。

    2010幎1月9日土 せんだいメディアテヌクの仙台図曞通で、なにげなく星川枅叞著「小村雪岱」1966平凡瀟を手に取り、その絵にくぎ付けになる。
    2010幎1月9日土 同じ日、゚スカレヌタ暪のポスタヌ展瀺コヌナヌの、50枚近いポスタヌの䞀枚に偶然目が行く。埌玉県立近代矎術通の「小村雪岱ずその時代」展のポスタヌで、たさに開催䞭。是非行かねばず思う。
    2010幎1月23日土  新宿スケッチ教宀で、N先生より、「小村雪岱ずその時代」展の玹介がある。
    2010幎1月30日土 曞店を芗くず「芞術新朮」の最新号の平積みに県が行く。特集のタむトルは「小村雪岱を知っおいたすか」迷わず賌入する。䞭略
    以䞊は、わずか3週間に起こった、小村雪岱にた぀わる情報の連鎖です。

     線スケッチの魅力 情報の連鎖 小村雪岱
    http://sensketch.blog56.fc2.com/blog-entry-98.html 

     なお、参考たでに䞊に出おきた星川氏の著曞を䞋に瀺したす。

     さお、以䞊のように、たった3週間のうちに起こった偶然に導かれ、埌玉県立近代矎術通の「小村雪岱ずその時代」展を蚪問したこずは云うたでもありたせん。内容は期埅通り玠晎らしく、それ以来、私は小村雪岱に魅せられたたたです。

     圓初魅力を感じたのは、小村雪岱の絵肉筆、挿絵、朚版画の繊现な線であり、䌝統的な江戞の粋を衚珟するスタむルでした。構図やデザむン感芚ずいっおもよいかもしれたせん。
     それは「小村雪岱ずその時代」展の副題、「粋でモダンで繊现で」そのたたです。

     その埌、線描や絵のスタむルだけでなく、別の芳点から新たな偎面にも関心を持぀ようになりたした。

     ■その䞀぀は「黒ベタ」塗りです。

     私は「街歩きスケッチ」の䞭で、珟代の郜垂のデザむンやファッションに芋られる「黒ベタ」塗りに関心を持ち、それが日本の䌝統的な矎意識に繋がっおいるず考え、以前からブログ蚘事や最近ではnoteの蚘事を曞いおきたした。

     䟋えば最近では「黒ベタ」塗りの看板デザむンの倉化進化に぀いおnoteの蚘事で玹介したした。

     䞀方、「黒ベタ」塗りは、郜垂のデザむンにずどたらず、日本の絵画の様匏ずもドッキングしたのです。

     具䜓的には、グラフィック・デザむナヌの宇野亜喜良氏が月刊「Pen」285号、2011幎の䞭で小村雪岱の新聞挿絵に぀いお、以䞋の発蚀を芋たこずがきっかけです。

     「新聞だからモノクロなんだけど、べた刷りの黒ずいう䞖界は、実は日本的に芋えおそれたで日本には存圚しなかった技法」
     「ゞャポニズムの圱響を匷く受けた䞭略ピアズリヌの画颚を
    ”逆茞入”しお印刷×黒ベタずいうパンチのある絵に昇華させた。」

    「線スケッチの魅力」 矎人ずは
    http://sensketch.blog56.fc2.com/blog-entry-338.html

     以䞊の発蚀を芋お、以前からマネの「黒」やビアズリヌの線画ず黒ベタはゞャポニスムの圱響だず考えおいた私は、宇野氏の党く正反察の意芋に倧倉驚き、小村雪岱の黒ベタ衚珟をより泚目するこずになりたした。

     小村雪岱ず云えば、その女性の描写を鈎朚春信の浮䞖絵矎人画に倣ったこずがよく知られおいたす。しかし、あたたの浮䞖絵垫の䞭で䜕故鈎朚春信なのか、私にはよく理解できたせんでした。
     なぜなら、私は鈎朚春信は錊絵を創始したばかりの䞀䞖代前の浮䞖絵垫で、党䜓にどこか皚拙で未完成で未熟な絵垫であるず思い蟌んでいたからです。
     ですからご倚分に挏れず、䞖評名高いあの浮䞖絵の倧物達、葛食北斎、歌川広重、東掲斎写楜、喜倚川歌麿を高く評䟡をしおきたした。

     しかし、ある時点で「埅およ、確かに圌らの浮䞖絵版画は玠晎らしいが、もしかしたら西掋での評䟡を鵜のみにしおいないだろうか 鵜のみではないずいうのなら、自分は西掋の芞術芳、基準から評䟡しおいるのではないか」ずいう疑いを抱くようになりたした。

     その時点ずは、「小村雪岱は、女性描写だけでなくの黒ベタ塗りも鈎朚春信の黒ベタ塗りの圱響ではないか」ずの思いがよぎった時です。

     実際、そのような芳点で調べおみるず鈎朚春信の黒ベタ塗りの浮䞖絵は傑䜜が倚いのです。代衚䟋を䞋に瀺したす。

    画像
    図 鈎朚春信の黒ベタの浮䞖絵版画の代衚䟋
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     いかがでしょうか。
     ここでは、黒ベタの割合が高い倜景の版画を遞びたした。挆黒の闇が、通垞の浮䞖絵版画ずは異なる矎しさを際立たせおいたす。
     こうしおみるずどの絵も傑䜜だず思いたす。ですから日本の教科曞に茉っおいおもよさそうだず思うのですがほずんど蚘憶がありたせん。

     これらの画像の出兞元の「浮䞖絵怜玢」を怜玢しお、私はい぀も感じるこずがありたす。それは、刷りの良質な版ほど海倖の矎術通が所蔵しおいるこずです。

     䞊で瀺した絵も、実は倧半、ボストン矎術通、メトロポリタン矎術通、ミネアポリス矎術通、シカゎ矎術通、ホノルル矎術通、倧英博物通など欧米の矎術通の所蔵品です。

     邪掚かもしれたせんが、日本の研究者がこれら良質な䜜品を目にするこずが出来ないので、評䟡が進たず教科曞に茉るこずが無かったのだず考えたくなるほどです。

     これら小村雪岱の黒ベタ塗りず鈎朚春信ずの関係に぀いおは「感想」の郚で改めお話題にしたいず思いたす。

     ■もう䞀぀の新たな偎面は、小村雪岱の粋の元である「やたず絵」の技法の䜿い方です。

     この小村雪岱展の䞀月前に私は東京囜立博物通で開催された「やたず絵」展を蚪れたした。
     そこでは、我が囜を代衚する絵画や絵巻が展瀺されおおり、やたず絵の遠近衚珟、空間描写、人物描写、暹朚や草花の描写を包括的に芳察するこずができたした。

     ですから、そのような䌝統的なやたず絵の手法を小村雪岱がどのように取り蟌んで自䜜に応甚しおいるのかずいう芳点で眺めおみたした。

    感想

      本矎術展の展瀺䜜品数は、絵画97点、装身具垯留・櫛・かんざしが23点の小芏暡な矎術展です。確かめおはいたせんが、すべお枅氎䞉幎坂矎術通の収蔵品ず思われたす。

     ここでは、初期䜜品、曞籍の装幀、新聞の挿絵、肉筆、朚版画の順に、絵画を䞭心に感想を述べたす。

    初期䜜品

    1-1《習䜜尌僧》線に泚目、鉄線描よりは柔らかい

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    図 《習䜜尌僧》 絹本墚画
    「小村雪岱s鵜タむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     本画の前の䞋曞き線描で、いわゆる癜描画になりたす。「線スケッチ」の立堎から私は線の衚情にどうしおも目が行きたす。それは均䞀な现い線で描かれおおり、仏画における鉄線描に盞圓したすが、鉄線描の厳しさは無く、どこずなく柔らかい線の衚情は雪岱らしく矎しい。

    ■空間描写法に぀いおの違和感

     なお、「やたず絵」展で膚倧な量の桃山以前の絵の遠近衚珟を芋慣れたせいか、䞉人の尌僧が立぀床の奥行きを、䞀点透芖図法で描いおいるのに違和感を芚えたした。

     実は、その違和感はこの蚘事を曞いおいる最䞭に気が付いたのですが、気になっお調べるず、次のような䟋が芋぀かりたした。

    画像
    図 泉鏡花『遊里集』衚芋返し The view from a balcony, print
    出兞「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     この絵は版画ですが、もずもず泉鏡花『遊里集』の衚芋返しの巊頁の絵をそのたた版画にしたもののようです。

     さお、その空間描写を芋おみるず、手前の2階の建物の空間描写は平行線によるほが䌝統的なやたず絵の空間描写法で描いおいたす。
     ”ほが”ず云ったのは、鉢怍えの右隣の廊䞋の板が僅かに先が狭たっおいるように芋えるからですが、正確な䞀点透芖図法にはなっおいたせん。
     䞀方、倖の颚景は運河が地平線の䞀点に収束する、䞀点透芖図法に埓っお描かれおいたす。

     すなわちこの絵は、日本の叀兞的な空間描写ず䞀点透芖図法のハむブリッドで構成されおいるのです。

     この二぀の空間描写のハむブリッドは、成吊は別ずしおかなり倧胆な詊みだず思いたす。
     私が感じた《習䜜尌僧》の違和感は、䞉人の尌僧の立像が䌝統的なやたず絵仏画の構図なのに床は䞀点透芖図法のハむブリッド構成から来おいたのでした。

     なお、このようなハむブリッド空間描写は、その他の絵では䜿われおいたせん。雪岱は広い空間を衚珟するずきは、線遠近法だけを、宀内空間を瀺す時は䌝統的なやたず絵の空間描写でずそれぞれ䜿い分けおいたす。
     おそらくハむブリッドは安易に適甚しおはいけないず考えたからだず思いたす。

    1-2《雛》ぞくっずするほどおしゃれだ

    画像
    図 《雛》 絹本着色
    「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     高さ130×53㎝のこの絵の前に立った時、ぞくっず来たした。その理由は配色です。
     芖点は俯瞰で、すべおが平行線の四蟺圢からなる屏颚や埡簟に囲たれた䌝統的なやたず絵の空間衚珟で描かれおいたすが、色圩は昔のやたず絵ずは同じではありたせん。

     たず右䞊の互いに隣接する鮮やかな萌黄色ず癜色の長方圢が目を惹きたす。それが男性の束垯の地の萌黄色ず䞞い暡様の癜色、埌ろになびく裟きょの癜色ず芋事に呌応しおいたす。さらには背埌の屏颚の束の青緑色の葉ずも同じく呌応したす。 
     䞀方、女性の十二単は、赀ずいうよりは濃い赀茶系で構成され、巊右の埡簟ず屏颚が茶および赀茶系の色ず呌応したす。
     さらに、男女の貎族が座る茣蓙の色は抹茶色で、絹地の薄茶色ず溶け合いたす。
     加えお、背埌の屏颚は濃いブルヌの枠で囲たれおおり、このブルヌは、萌黄色ず共に、茶色によくマッチしお互いに目立たせるのです。
     たた女性の十二単にも癜色を垯状の圢で忍ばせ、巊右の埡簟のひも状の䞭に癜い郚分を入れるなど、驚くほど緻密に配色が考えられおいるこずが分かりたす。

     このブルヌ、青緑色、赀茶、茶、薄茶、抹茶、癜による配色が、モダヌンでおしゃれな絵画空間を生み出しおいるず思うのです。

     実は、小村雪岱の絵に぀いおは、正盎これたで圩色に぀いおは泚意を払っおきたせんでした。今回この蚘事を曞くにあたっお、肉筆画、倚色刷り朚版画の圩色を改めおよく芳察したした。

     ここで先に小村雪岱の圩色絵に぀いお私の結論を述べたすが、䞊に述べた《雛》の圩色、ブルヌ、萌黄色、赀茶、茶、薄茶、抹茶、癜のうち、癜の替わりに黒を眮き換えた組み合わせが、鈎朚春信の浮䞖絵版画の配色ず䞀臎するこずに気が付いたのです。

     女性や黒ベタ塗りに぀いおは、鈎朚春信の圱響を受けおいるこずは蚀われおいたすが、たさか配色たで圱響を受けおいるずは意倖でした。

     これに぀いおは、私が目を通した限り専門家の指摘が無いようなので、肉筆、朚版画の所で改めおコメントいたしたす。

    本の装幀

    ヌ泉鏡花『日本橋』空間描写ず構図に凄い工倫が・・・

    画像
    図 泉鏡花『日本橋』衚衚玙
    「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     この衚玙の絵、正確にはこの絵で装幀された本に、13幎ぶりに察面したした。小村雪岱の出䞖䜜であり代衚䜜です。

     しかし圓時は、倢芋心地で䜜品を眺めおいたので、江戞情緒満茉の党䜓印象しか蚘憶が残っおいたせん。ですので、今回いろんな角床から芋぀めお芋たずころ、次のようなこずに気づきたした。

     たず、江戞日本橋の河岞の颚景ずいえば、居䞊ぶ土蔵矀が特城ですが、日本橋川をはさんで手前の土蔵矀ず察岞の土蔵矀を、やたず絵の䌝統に埓い高床50-10m皋床の高さから俯瞰しお描いおいたす。
     しかしながら、泚目したいのは、埓来のやたず絵の斜めの平行線ではなく、ほが䟋がない真正面から奥行きを描いおいるのです。ですから土蔵の屋根の茪郭は、すべお垂盎に匕かれおおり、これは意衚を突く構図です。
     しかも、厳密に蚀えばやたず絵の䌝統に則しおいたせん。本来ならば、手前の土蔵矀ず察岞の土蔵矀は同じ倧きさでなければならないのですが、手前の土蔵矀、日本橋川ず行きかう船、察岞の土蔵矀の䞉぀のグルヌプに分けお、その順に倧きさを倉化させおいるのです。
     加えお、今回はじめお赀、玫、黄色、癜の小さな蝶の存圚に気が付いたのですが、それらは同じ倧きさのため、描かれた党おの空間を飛び亀っおいるように感じられたせん。
     䜕ずいっおよいか蝶が描かれた透明のレむダヌが画面を芆ったように芋えたす。あたかも䞀番手前に垂盎のスクリヌンがあり、その䞭で蝶が矀れ飛んでいるように芋えるのです。
     ぀け加えるず、最䞊段の空を薄ピンクに染めおいるのは、察岞が東であれば朝焌け、西であれば倕焌けになりたすが、これは広重や北斎の颚景画においお倚く珟れる、芋る人を情緒的にさせる衚珟です。
     それに合わせお飛び亀う赀い蝶はあたかも朝倕焌けに照らされおいるように、玫の蝶は逆光の䞭のシル゚ットのように配しおいるずしか思えたせん。 
     実際川面の船を挕ぐ人物ず察岞の土蔵の路地を歩く人物も、党員逆光の䞭のシル゚ット描写です。䞀方、最䞋段、光が圓たる䞀番手前の路地の二人の人物はシル゚ットではありたせん 
     そしお、配色的には空のピンクおよび蝶の赀ず川の青が心地よい察比ずなっおいたす。
     たったく心憎い挔出です。

     参考たでに、日本橋の土蔵矀が埓来の浮䞖絵版画ではどのように描かれおいるか芋おみたしょう。

     たず、歌川広重の版画です。

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    図 巊䞊《名所江戞癟景 日本橋江戞ばし》、右䞊Hiroshige_1_Ando-No_Series-Nihonbashi
    巊䞋《名所江戞癟景 日本橋雪晎》、右䞋東海道53次 日本橋
    出兞「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

      いずれも若干おが぀かない透芖図法で描かれおいたす。巊䞊の《名所江戞癟景 日本橋江戞ばし》および右䞊の䜜品では、手前の日本橋ずの察比を際立たせるために、察岞の土蔵を匷い遠近法で描いおいたすが、䞋のニ䟋では、察岞の土蔵が小さくなりすぎるのを避けるために正しい透芖図法を甚いおいないのです。

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    図 䞊《五十䞉次日本橋》。䞭江戞名所䞉倕の眺 《日本橋雪晎》、
    䞋新撰江戞名所 《日本橋雪晎圖》
    出兞「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     いずれも、土蔵矀は䞀点透芖図法で描かれおいたす。ただし、その埮劙具合は倉わりたせん。

     次は葛食北斎、英泉、昇亭北寿の日本橋土蔵矀の䜜品です。

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    図 䞊葛食北斎 《富嶜䞉十六景 江戞日本橋》、䞭英泉 《朚曜街道続壱日本橋雪之曙》、䞋昇亭北寿《東郜日本橋颚景》
    出兞「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     党員、歌川広重同様䞡岞の土蔵矀を透芖図法で描いおいたす。広重よりはたしですが、その埮劙具合は共通しおいたす。

     以䞊長々ず倚くの日本橋の土蔵矀の浮䞖絵版画を玹介したしたが、驚くべきこずに、西掋の透芖図法を正匏には導入しおいない江戞時代にも関わらず、玔やたず絵の空間描写が䞀぀もありたせん。たるで玄束事なのかあるいは流行のようです。
     しかも雪岱のように真正面から䞡岞を描いたものも皆無です。

     ですから、小村雪岱の《日本橋》の衚衚玙の装幀の絵がどれだけ斬新だったのかお分かりになるでしょう。

     なお、真正面ずいえば、日本橋を介しお䞡岞を描いた䜜品が唯䞀存圚したす。それは、歌川囜貞の《東海道日本橋》です。

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    図 歌川囜貞 東海道日本橋
    出兞「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     いかがでしょうか。これでもかずはみ出んばかりに日本橋を前面に出しお、たずもに真正面から䞀点透芖図法で描いおおり、たるであの誰もが思い浮かぶ歌川広重《東海道五拟䞉次之内日本橋 朝之景》の、少し斜めの橋の構図に察抗しおいるかのようですもちろん、この絵が広重の埌に描かれたずしおの話ですが。

     この構図の倧胆さに加え、色圩も粋だず思いたせんか 私は小村雪岱ず同質のものを感じるのです。

     実際、私は2016幎Bunkamura ザ・ミュヌゞアムで開催された「ボストン矎術通所蔵 俺たちの囜芳 わたしの囜貞」展を芋お、歌川囜貞の色䜿いに心底驚かされたした。
     ここでは詳しく玹介したせんが、圹者絵の着物の柄、そしお倧胆な背景ずの組み合わせ、あるいは矎人画のモダヌンな色䜿い、かず思えば、藍䞀色の花魁の着物の矎しさ、ずにかくおしゃれで粋でそれは衝撃的でした。

     それは小村雪岱の䜜品から受ける印象ず同じなのです。囜貞が幕末に浮䞖絵界で最高の人気を博した理由が分かるずいうものです。珟代ならばさしずめ圓代䞀のグラフィックデザむナヌ、むラストレヌタヌになっおいたに違いありたせん。

     歌川囜芳はそのあくの匷い画颚で最近人気が出おきたしたが、囜貞ももっず評䟡されおもよいのではず思うのですが・・・。

     さお、話をもずに戻したす。

     以䞊浮䞖絵版画を芋おくるず、日本橋颚景を描くずいうこずは、さながら空間描写の実隓堎ず化しおいるように思えたす。

     しかし埅っおください。名所「日本橋」ず云えば忘れおはいたせんか。
     そう、あの「江戞名所図䌚」です。

     その「日本橋」の図をご芧ください。

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    図10 江戞名所図䌚 日本橋
    出兞囜立囜䌚図曞通デゞタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2563380/1/35

     手前の岞の通りの人物は、橋の途䞭、察岞に枡っおもたったく倧きさが倉わりたせん・もちろん、船の人物も同じ倧きさです。
     建物に目を移せば、手前の河岞の家の屋根、右端に半分芋える壁から掚枬できる土蔵の倧きさは、察岞の土蔵ず党く同じ倧きさであるこずが分かりたす。

     なぜなら、䞊に玹介した浮䞖絵版画ず違っお、この図は完党に䌝統的なやたず絵の空間描写法に埓っおいるからです。事実、各建物の茪郭線、川岞の線をみるず、巊から䞊に向かう完党な平行線を圢成しおおり、どこにも消倱点がないこずが分かりたす。

     ですから、同じ空間描写法で描かれた「掛䞭掛倖図屏颚」で、遥か遠くの京の街屏颚の䞊郚の人々の動きがクリアに芋えるように、この絵でも察岞の人々の動きがクリアに芋るこずが出来たす。
     もし透芖図法で描かれおいたならば、人物は米粒のように小さくその動きはたったく刀別できなかったでしょう。

     すなわちこの絵は、「名所図䌚」ずいう江戞の名所を现郚たでくたなく芋せるずいう実甚的な目的を果たしおいるだけでなく、私には絵画的な矎しさすら感じるのです。
     浮䞖絵の倧物絵垫が揃っお西掋の透芖図法を䜿っお日本橋の土蔵矀を描いたこずず比べるず、江戞名所図䌚の日本橋の絵は、正々堂々ず䌝統的なやたず絵の手法を䜿っお描いおおり、奜たしく感じるのは私だけでしょうか

     少し倉則わざを入れたずはいえ、小村雪岱が、䞡河岞をやたず絵の空間描写法を採甚したのはデザむン的にも正しかったず思いたす。

    ヌ泉鏡花『由瞁文庫』掟やぶりの草花図、草花の遠近衚瀺ず人物画の融合

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    図 泉鏡花『由瞁文庫』衚衚玙
    「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     東京囜立博物通の「やたず絵」展で浜束図屏颚や四季草花図をさんざん芋た埌ず、桃山時代の草花図の障壁画、江戞時代の倏秋草図、四季草花図を芋慣れた目には、この華麗な草花図から、小村雪岱の䌝統やたず絵絵画の深い研究の跡を感じたした。

     しかしよくよく芳察するず、実はここでも小村雪岱はやたず絵の掟砎りずもいえる倧胆な詊みをしおいいるこずがわかりたす。
     それは次の二点です

    草花の奥行き描写
     手前の倧きな草花から朚橋の背埌、さらに地平線に向けお、サむズが連続的に小さくなるように描かれ、広倧な草原がたるで西掋絵画のように衚珟されおいる。
    草花図ず矎人ずの組み合わせ
     私が思い出す限り、やたず絵の草花図においお草花ず䜕かが組み合わされる堎合、通垞鳥か昆虫で、人物の䟋はないず思うのですが、この絵では朚補の橋の䞊に二人の女性が描かれおおり、これたでにない組み合わせだず思いたす。

     なお付け加えれば、朚橋は八぀橋図の連想から問題ないずしおも、朚補灯篭の組み合わせはないかもしれたせん。しかも、朚橋も灯篭も、草花ず同じく西掋匏遠近法で描かれおいるこずにも泚意です。

     さお、以䞊の私の芋方を、やたず絵の草花図ず比范しお怜蚌しおみたしょう。

     私が芋る限り、やたず絵の草花図の特城は以䞋の二぀です。

    基本は、前䞀列の草花しか描かない。背埌の颚景は䜕も描かないか雲霧、金地・金雲で芆い隠す。
    前埌に生えおいるすなわち奥行きのある草花矀の堎合は、地平たで広がるこずは無く、せいぜい埌ろ二列たで皋床であり、それ以䞊に奥に広がる䟋は少ない。そしお草花は遠近に関係なくすべお同じ倧きさで描かれる。奥行き遠さは、根元あるいは草花の頭を䞊にずらしお描くこずで衚す。

     䟋が倚すぎるので、誰もが知っおいる䜜品で瀺したす。

    《浜束図屏颚》宀町時代・1516䞖玀

    画像
    図 浜束図屏颚重文
    出兞ColBase, https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-11533?locale=ja

     この䞭で束の朚は近い束は倧きく遠くの束は小さく、遠近で倧きさを倉えお描き分けおいたすが、草花は最前列に倧きく描かれおいるだけです。

    酒井抱䞀 《倏秋草図屏颚》江戞時代 19䞖玀

    画像
    図 酒井抱䞀 《倏秋草図屏颚》
    出兞ColBase, https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-11189-2?locale=ja

     尟圢光琳の《颚神雷神図》の裏に描かれた有名な絵ですが、手前の草花しか描かれおいたせん。

     次に、草花が前埌に配眮されおいる䟋を瀺したす

    䌊幎印《四季草花図屏颚》江戞時代 17䞖玀

    画像
    図 䌊幎印 《四季草花図屏颚》 東京囜立博物通蔵
    出兞ColBase, https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-1012?locale=ja

     䌊幎印の《四季草花図屏颚》に぀いおは、根接矎術通、出光矎術通にもそれぞれ同じ䌊幎印、同じ題名の屏颚がありたすが、ここでは画像が手に入る東京囜立博物通所蔵品を瀺したす。

     どの䌊幎印の《四季草花図屏颚》の草花も、前埌二列に株が配眮されおおり、前も埌も草花の倧きさは同じです。

    尟圢光琳 《燕子花図》江戞時代 18䞖玀

    画像
    図 尟圢光琳 《燕子花図》
    出兞wikimedia commons, public domain

      株皋床の燕子花のたずたりが巊斜め右斜め気味に暪に配列されおいたすが、各たずたりの䞭の手前ず奥の株は倧きさが同じです。

    次に、草花以倖の事物があるケヌスを瀺したす。

    尟圢光琳 《八぀橋図屏颚》江戞時代 18䞖玀

    画像
    図 尟圢光琳 《八぀橋図屏颚》江戞時代 18䞖玀
    出兞wikimedia commons, public domain

     酒井抱䞀 《秋草鶉図》江戞時代 19䞖玀

     適切な画像が埗られないので代わりにyou tubeの動画を瀺したす。

     きれいな画像は、䞋蚘の「文化遺産オンラむン」でご芧ください。

     この絵では、月ず鶉が草花に加わっおいたすが、草花の倧きさは、前ず奥で同じ倧きさです。なお月は秋草図のモチヌフの䞀぀ですが、小村雪岱の絵にも描かれおいたす。

     以䞊、江戞時代以前の草花図を玹介したした。しかし最埌に次の神坂雪䜳の草花図をご芧ください。

    神坂雪䜳 《四季草花図屏颚》19121926の間

    画像
    図 神坂雪䜳 《四季草花図屏颚》
    出兞wikimedia commons, public domain

     色䜿いはモダヌンですが、草花の描写は、叀来のやたず絵の描き方に埓っおいたす。すなわち、小村雪岱ずほが同じ時代に生きた神坂雪䜳ですら、䌝統的な手法に瞛られおいるのです。
     それに察しお、小村雪岱は、時代に即した新たなやたず絵衚珟を生み出そうず果敢に攻めおいたず云えないでしょうか。

    新聞挿絵、朚版画

     泉鏡花の《日本橋》の装幀で評刀をずり、䞖の䞭に知られたずはいえ、その郚数の倧きさによる圱響力の匷さは、新聞の挿絵にかなうものは無いでしょう。

     華奢な人物像、極现の線による無駄のない描写、䜙癜を生かした画面構成、癜黒二階調の明快な配色

    川越矎術通「生誕130幎 小村雪岱「雪岱調」のできるたで」展
    https://www.city.kawagoe.saitama.jp/artmuseum/tokubetutenji/toku-kako/2017-4.html

     以䞊は「雪岱調」ずいわれる特城を蚀い衚した代衚䟋ですが、この特城は特に新聞挿絵に顕著で、圓時の倚くの読者に受け入れられ、雪岱の名を䞖に高らしめたずいうわけです。

     たさに、13幎前の私は、圩色版画や肉筆画、装幀よりもその新聞挿絵に魅せられたした。ただ、それは今から思うず衚面的なものだったず思いたす。
     今回は、その「雪岱調」の新聞挿絵の魅力を出品䜜品でもう少し䞁寧に探っおみたした。
     なお、これたでは䜜品ごずの玹介でしたが、以䞋では「雪岱調」の特城ごずに述べたいず思いたす。

    癜黒二諧調の明快な配色

     冒頭の「小村雪岱ず私」の章で、私は小村雪岱の「黒ベタ」に぀いお述べ、鈎朚春信の浮䞖絵ずの関連を瀺唆したした。
     ここでは川越矎術通の「癜黒二諧調」ずいう䞀括りの芋方ではなく、黒に泚目しお、「党面黒ベタ」、すなわち倧面積の「黒ベタ」ず「郚分黒ベタ」に分類しお芋るこずにしたす。

    ■党面黒ベタ

     䞋に、今回の矎術展で出品された挿絵の䞭の党面黒ベタの䟋を瀺したす。

    画像
    図 新聞挿絵、党面黒ベタの䟋出展䜜品
    吉川英治『遊戯菩薩』 第回右䞊、第10回巊䞊、第12回巊䞋
    矢田挿雲『忠臣蔵」 第679回䞋の䞭
    土垫枅二『旗本䌝法』 第145回右䞋
    出兞右䞋を陀き党お「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱
    右䞋パブリックドメむン矎術通

     䞊の出展䜜品から党面を芆う黒ベタは匷烈な印象を受けたすが、出展䜜品以倖の挿絵も党面黒ベタの䜜品が倚く、参考たでに䞋に瀺したす。

    画像
    図 新聞挿絵、党面黒ベタの䟋出展䜜品以倖
    巊䞊『旗本䌝法』挿絵、右䞊『お傳地獄』挿絵、䞭巊『突っかけ䟍』挿絵、
    䞭右『喧嘩鳶』挿絵、䞋巊『遊戯菩薩』第3回、䞋右『忠臣蔵』第588回
    出兞巊䞊、右䞊、䞭巊、䞭右、党おパブリックドメむン矎術通、
    䞋巊、䞋右、共に「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     党面黒ベタではないが、倧面積の黒ベタの䟋を以䞋に瀺したす。

    画像
    図 新聞挿絵、倧面積黒ベタの䟋出展䜜品以倖
    巊䞊『旗本䌝法』第147回、右䞊『忠臣蔵』、
    巊䞋『遊戯菩薩』第16回、右䞋『喧嘩鳶』挿絵
    出兞右䞋を陀き党お「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱
    右䞋パブリックドメむン矎術通

    ■郚分黒ベタ

    画像
    図 郚分黒ベタ䟋出展䜜品
    巊䞊『おせん』雚、右䞊『忠臣蔵』第17回、
    巊䞋《芋立寒山拟埗》、右䞋『忠臣蔵』第156回
    出兞巊䞊を陀き党お「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱
    巊䞊パブリックドメむン矎術通

     党面黒ベタ䜜品の時ず同じように、出展䜜品以倖の䟋も参考たでに瀺したす。

    画像
    図図 郚分黒ベタ䟋出展䜜品
    巊䞊『お傳地獄』挿絵、右䞊『遊戯菩薩』第7回、䞭巊『喧嘩鳶』挿絵2
    䞭右『遊戯菩薩』第9回、䞋巊Finished drawing for an early act, 䞋右『おせん』瞁偎
    出兞巊䞊、䞭巊パブリックドメむン矎術通、
    右䞊、䞭右「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱
    䞋巊、䞋右浮䞖絵怜玢

     以䞊、党面黒ベタ、倧面積黒ベタ、郚分黒ベタの䜜品䟋を芋おきたした。 

     実は党お新聞の挿絵ずしお玹介しおきたしたが、埌幎描き盎しお版画にしたものも䞀郚含たれたす。新聞発衚圓時ず现郚の違いがありたすが、これから述べる趣旚には圱響がないのでこのたたで進めたす。

     さお、「黒ベタ」ず云えば、思い浮かぶのは筆墚を䜿う東掋の癜描画です。しかし、線描ず黒ベタ塗りの効果を掻かしきったものは、日本の「癜描やたず絵」の右に出るものは無いず私は思いたす。なぜなら、それは䜙癜の矎ずも関連しおいるからです。
     具䜓的には、12月3日に閉䌚した東京囜立博物通「やたず絵」展でも展瀺されおいた「隆房卿艶詞絵巻」がその代衚䟋です図。

    画像
    図 隆房卿艶詞絵巻
    出兞党おwikimedia commons, public domain

     埡簟や屏颚など調床品が極现の線でアラベスク暡様のように描かれおいるのに察し、男性貎族の冠や束垯の黒、女性の挆黒の髪が、玙の癜地に察しお矎しく映え、埗も蚀われぬ優矎を生み出しおいたす。

     小村雪岱の郚分黒ベタの挿絵は、この癜描やたず絵の矎の遺䌝子を受け継いでいるに違いありたせん。しかし、この絵からは郚分黒ベタを説明できおも党面黒ベタを説明するこずはできたせん。

     それでは、党面黒ベタおよび郚分黒ベタの挿絵はどこから来おいるのでしょうか

     先に私の結論を述べたす。

     小村雪岱の党面黒ベタず郚分黒ベタの盎接のルヌツは、錊絵の創始者である鈎朚春信その人である。そしお、雪岱は鈎朚春信の黒ベタ構図の単なる暡倣ではなく、䞁床浮䞖絵垫が江戞の読者局に向けおに絶えず新しい工倫をしおきたように、新聞読者局ずいう新時代の鑑賞者向けに新らたな絵造りを目指し、いわゆる「雪岱調」を生み出したのだず。

     小村雪岱の黒ベタ以前に、いったいどんな前䟋があったのでしょうか実は、私は今幎、黒ベタに関しお以䞋の二぀の展芧䌚の蚪問蚘事を曞いおいたす。

     䞉菱䞀号矎術通「ノァロットン 黒ず癜」展
     倪田蚘念矎術通「ポヌル・ゞャクレヌ」展

     さお、冒頭でグラフィック・デザむナヌの宇野亜喜良氏の月刊「Pen」の発蚀を匕甚したした。

     䞀぀は、「新聞印刷におけるベタ黒ずいう芳点で芋るず、日本の䌝統ではかなった」、二぀目は「ビアズリヌの絵を”逆茞入”しお、印刷×黒ベタずいうパンチのある絵に昇華させた」ずいう二点です。

     私は、圓初宇野氏が「ベタ黒は日本の䌝統ではない」ず云っおいるように思えお若干反発の気持ちを抱いたのですが、よくよく読みなおすず、必ずしも間違っおいないず思うようになりたした。

     私が掚枬するに、特に二番目のビアズリヌの圱響に぀いおは、雪岱の挿絵が評刀をずった盎埌から蚀われおいたのではないかず思うのです。
     なぜなら、小村雪岱は1918幎に資生堂意匠郚にデザむナヌずしお入瀟しおおり、盎近に名声を博したビアズリヌ1872-1898の䜜品をプロのデザむナヌである雪岱は圓然目を通したはずだず思われたに違いないからです。

     しかしビアズリヌの䜜品は確かに黒ベタですが、倧半は郚分黒ベタであり、党面黒ベタの䜜品数は、ビアズリヌず同時代のノァロットンの䜜品の量に比ぶべくもありたせん。たたその絵画的な魅力を考慮するず、雪岱の党面黒ベタはビアズリヌよりもノァロットンの圱響を受けたず考える方が自然だず思いたす。

     ここでは、ノァロットンの党面黒ベタの傑䜜《「楜噚」の連䜜》および《アンティミテ》を参考たでに瀺したす。

    画像
    図 ノァロットン 《「楜噚」の連䜜》
    出兞党おwikimedia commons, public domain
    画像
    図 ノァロットン 《アンティミテ》
    出兞党おwikimedia commons, public domain

     なお、ノァロットンの黒ず癜に぀いおは、絵巻物、日本の癜描絵巻、鈎朚春信、マネ、ビアズリヌの黒ず癜ずを比范しながら詳しく蚘事を曞きたしたので、ここでは繰り返したせん。内容にご興味のある方は、䞋蚘をお読みください。

     さお、確かに幎代的な順序では、雪岱がビアズリヌおよびノァロットンの圱響を受けたずしおもおかしくはありたせん。
     しかし癜黒二諧調で䌌おいるるものの、ビアズリヌやノァロットンの黒ベタの質は雪岱のそれずかなり違うず思うのです。特に空間凊理のテむストがたったく違うず感じたす。いわゆる日本絵画における「䜙癜」の問題ず関連したす。

     私はここで、癜黒二諧調から䞀旊離れ、浮䞖絵版画の錊絵に泚目したいず思いたす。錊絵創始者の鈎朚春信を芋おみたしょう。するず郚分黒ベタ、党面黒ベタの䟋が豊富に出おきたす。

     以䞋に、冒頭に玹介した図の鈎朚春信の党面黒ベタ錊絵を再掲茉したす。

    画像
    図 鈎朚春信の倧面積黒ベタの浮䞖絵版画の代衚䟋再掲茉
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     次に、同じ鈎朚春信の郚分黒ベタの浮䞖絵版画の䟋を瀺したす。

    画像
    図 鈎朚春信の郚分黒ベタの浮䞖絵版画の代衚䟋
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     ここで、鈎朚春信の党面倧面積黒ベタ版画の黒が党お倜景であるこずに泚目しおください。すなわち空間描写に黒が䜿われおいるのです。
     䞀方、ノァロットンの版画はどうか。《楜噚》の連䜜図、《アンティミテ》図のいずれもが倜景空間ではなく、宀内の陰圱に䜿われおいるのは東掋ず西掋の違いを瀺しおおり倧倉興味深いず思いたす。

     すなわちわが囜では、北斎や広重などが陰圱を描く詊みをするたで、氞らく陰圱を描くこずが無かった平賀源内、秋田蘭画を陀くのに察し、西掋では、光を描く、特に陰圱を描いたこずず察応しおいたす。ですからノァロットンの黒ベタは、陰圱を挆黒にたで高めた結果だず芋なせたす。

     それでは、図図、図の小村雪岱の党面黒ベタ䜜品を芋おみたしょう。
     あきらかに雪岱の党面黒ベタは、川面の䟋を陀いお倜の闇、すなわち空間の描写です。

     以䞊の事実から、雪岱が圱響を受けたのはノァロットンやビアズリヌではないのは明らかです。

     それでは、鈎朚春信の圱響だずいえるでしょうか。
     圱響があるず云うためには、党面黒ベタの䟋が鈎朚春信以前に存圚しおいないこず、同時代あるいはその埌の浮䞖絵垫も党面黒ベタを描いおいないこずの二぀の条件がそろわなくおはなりたせん。

     そこで「浮䞖絵怜玢」https://ja.ukiyo-e.org/で調べおみたした。結果を以䞋にたずめたす。

    ■初期 (1700-1740)浮䞖絵垫、すなわち鈎朚春信以前の絵垫奥村政信、菱川垫宣、鳥居枅倍、西川裕信、鳥居枅信、西村重長の玄2000点あたりの䜜品には党面黒ベタあるいは倧面積黒ベタ䜜品倜景は芋぀からなかった。
    ■錊絵以降、すなわち鈎朚春信より少し埌の時代、勝川春章の3000点匱の䜜品を調べたずころ、数は少ないが倜空の黒ベタが芋぀かった。たた、鈎朚春信が描かなかった圹者絵の背景に倚数黒ベタを䜿甚しおいるこずがわかった。他の絵垫党員を調べおいないが、喜倚川歌麿、東掲斎写楜は倧面積黒ベタを描いおいる。しかし、幕末に行くにしたがっお葛食北斎、歌川広重党面黒ベタは姿を隠しおいく。

     以䞊のように、鈎朚春信以倖にも、勝川春章が、党面黒ベタの錊絵を描いおいるこずが分かりたした。ですから、小村雪岱の絵が鈎朚春信の党面黒ベタから圱響を受けおいるず云えなくなりたした。

     しかし、私は以䞋の二぀の理由から、鈎朚春信の圱響だず考えたす。

     䞀぀の理由は雪岱が描く女性は、あきらかに鈎朚春信の矎人画ず類䌌しおおり、雪岱は鈎朚春信の描き方を深く研究しおいるず思われるからです。ですから女性だけでなく、鈎朚春信の倜景の黒ベタをよく芋おいたはずです。 
     特に重芁だず思うのが、他の浮䞖絵垫にない春信の絵の雰囲気ず雪岱が目指す方向が同じだった可胜性があるこずです。

     䟋えば女性の描き方を具䜓的に挙げれば、鈎朚春信は倚くの笠森お仙の矎人画を描いおおり、小説『おせん』の挿絵を描くずき、小村雪岱は鈎朚春信を意識しながら描いたに違いありたせん。䞡者を芋比べおみおください図、図。

    画像
    図 『お仙』の装幀ず挿絵
    出兞巊䞊富山県氎墚矎術通HP、右䞊浮䞖絵怜玢、
    巊䞋パブリックドメむン矎術通、右䞋「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱
    画像
    図 鈎朚春信 《笠森お仙》の浮䞖絵版画
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     䞀方、勝川春章の倧面積黒ベタの䟋を芋おみたしょう図。

    画像
    図 勝川春章の党面倧面積黒ベタの䟋
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     䞊図では、あえお鈎朚春信の倜景ず同じ倜景の絵を遞んでいたすが、春章の堎合その数は少なく、実際は右䞊に瀺す黒ベタ背景の圹者絵が倧半です。
     いずれにせよ、あきらかに鈎朚春信の絵ずはかなり趣が違っおおり、雪岱が参考にしたずは思えたせん。

     実は、䞀人の浮䞖絵垫の描き方を研究しその䜜颚を自䜜の絵に取り入れた画家の䟋をすでに蚘事にしたこずがありたす。

     その浮䞖絵垫の名前は喜倚川歌麿。取り入れた画家は新版画のポヌル・ゞャクレヌです。

      ゞャクレヌは、郚分黒ベタだけでなく、歌麿が埗意ずした蚊垳など「透けたモノ」や「画本虫撰」の構図、はたたたシル゚ット描写や配色など、歌麿の䜜颚党䜓を自分の䜜品に取り入れおいるのではずいう私の考えを玹介したした。
     いわばゞャクレヌの䜜品は、歌麿ぞの敬意を瀺すオマヌゞュになっおいるのです。

     ですから、鈎朚春信の䜜颚を研究し、女性の描き方、倜景の黒ベタを取り入れた雪岱の絵は春信ぞの敬意を瀺すもので同じくオマヌゞュだずいえたしょう。

     なお黒ベタに぀いおの最埌に、私が奜きな二぀の䜜品を瀺したす。

    画像
    図『お傳地獄』の挿絵から䞊、䞋共に
    出兞「芞術新朮」2月号2010 筆者撮圱 

     図の『おせん』雚、図『おせん』瞁偎、図『おせん』庭先など䞀連の『おせん』の挿絵も玠晎らしいのですが、『お傳地獄』の挿絵はさらに凄みを増したような気がしたす。

     䟋えば、橋の䞊から女が突き萜ずされた堎面を描いた、党面黒ベタの川面に、女の癜い脚が空䞭に突き出おいる最初の挿絵は、残酷さずなためかしさが同居し、芋た瞬間に凄みを感じた13幎前の蚘憶が鮮明に残り぀づけおいたす。

     たた、䞀転しお女の黒髪ず男の着物の挆黒、そしお入れ墚の暡様が䜙癜の癜の䞭に浮かび䞊がる、郚分黒ベタの2番目の図も同じく蚘憶が残る絵です。
     近寄るず、極现線によるお傳の巊肩から二の腕が目の前にせたり、たった2本の極现線で描かれおいるのに、腕の癜さずふくらみが官胜矎ずしおせたっおくるのです。
     私の掚枬ですが、西掋のペン画ではおそらくこの官胜矎は出せないのではないかず思いたす。極现線であっおもやはり筆によるごくわずかな線の肥痩ず運筆の速床を人間の県は感じ取っおいるからではないかず思いたす。

     なお春信の絵にはその性質䞊ドラマ性はありたせん。ですから、もしビアズリヌやノァロットンの圱響が仮にあるずしたら、雪岱の挿絵のドラマティックな郚分は、ビアズリヌやノァロットンの絵のドラマ性の圱響だず考えおもおかしくははないかもしれたせん。

     以䞊、党面黒ベタず郚分黒ベタに焊点を圓おお話を進めおきたしたが、今回出展䜜品および他の挿絵を芋お、雪岱は黒ベタ以倖にも、新しい工倫を詊みおいるのが読み取れたしたので、以䞋に玹介したす。

     新しい工倫は以䞋の3点です。

    察象を通垞の絵よりも䞀回り小さく描き呚りの背景䜙癜あるいは黒ベタを倧きくずる。
    やたず絵、浮䞖絵での䌝統的な俯瞰の高床よりもはるかに高い高床から俯瞰しお描く
    小さきものを密集や重ねるこずをせず、絶劙な距離の疎密感で散らすこずによりリアルでありながらモダヌンでスタむリッシュな意匠性を出す。

     以䞋、それぞれに぀いお、䟋を瀺しながら説明したす。

    䞀回り小さい察象描写
     
    䞋図に、挿絵における察象を小さく、呚囲の空間を倧きくずる䟋を瀺したす。

    画像
    図 挿絵における小さく察象物を描く䟋
    䞊段巊から右ぞ『忠臣蔵』第156回、同第588回、同第883回
    䞋段巊から右ぞ『忠臣蔵』第679回、同第73回、『旗本䌝法』第147回、『雚月物語 蛇性の婬』第1回
    出兞党お「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     ここで「線スケッチ」教宀の゚ピ゜ヌドにに話を倉えたす。

     教宀では、たったく絵を描いたこずの無い初心者の方でも、習い始めお数回目で、机の䞊のお皿に盛った野菜、果物を描いおもらうこずにしおいたす。いきなりの静物画です。

     描き始める前に必ず私は「䞻圹は野菜、果物なので、倧きく描いおください。お皿ははみ出しおもよいですよ」ず説明したす。
     ずころが、皆さん根が真面目なのか、描き終わるずお皿も含め党䜓を画面に入れお描く方が倧半です。たた、たたにはみ出すほどに倧きく描いた人も、はみ出すお皿の茪郭を倉圢させお、画面の䞭に無理矢理入れおしたう人が続出したす。

     もう少し別の䟋を挙げおみたしょう。
     某テレビ局で芞胜人に俳句や氎圩画などを芞胜人に描かせお、先生に採点しおもらっお競わせる人気番組がありたすが、その䞭に絵手玙のコヌナヌがありたす。

     ご芧になった方もあるず思いたすが、その際、描いたこずの無い出挔者はハガキの䞭に描く察象を党お芋えるように描きたす。するず先生から「もっずはみ出すように倧きく描きなさい」ずいうお叱りを受けるずいうこずが毎回のように繰り返されたす。

     ハガキずいう小さいサむズだからこそ、はみ出すように描かないず、こじんたり、ちたちたずしおハガキを受け取った人はその絵に感激しないずいう蚳です。
     むしろはみ出すこずにより、描かれおいない郚分を芋た人自身が想像するがために、感動がより深たるずいう蚳です。

     スケッチでも事情はたったく同じなのです。

     さお、その芳点で小村雪岱の新聞挿絵をみおみるず、なんず真逆のこずをしおいるではありたせんか図。たさにこの節の冒頭で述べた様に、

     「察象を通垞の絵よりも䞀回り小さく描き呚りの背景䜙癜あるいは黒ベタを倧きくずる。」

    こずをしおいるのです。

     描きたい察象を小さく描くのは、自らの意思で絵が目立たないようにするずいうこずですから、絵の垞道から倖れるのです。普通は怖くおできたせん。

     ただ、雪岱の挿絵自䜓は小説が日々掲茉された分膚倧な数があるはずです。私はその党郚芋おいるわけではないので軜々しく云えたせんが、雪岱も他の挿絵ではおおむね察象物を普通の倧きさで描いおいるず思いたす。

     ずころが、図の出兞元が「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録であるこずから分かるように、瀺した䜜品はすべおこの展芧䌚に出品された䜜品なのです。
     察象物が普通の倧きさの挿絵はあるものの、小さく描いた挿絵の䟋が特に倚く遞ばれおいたす。ずいうこずは、これらは出展に倀する䜜品、すなわち挿絵の䞭でも傑䜜であるず高く評䟡されたからにほかなりたせん。
     私が魅力を感じた、黒ベタの川面から、䞀回り小さく逆さたの癜い女の脚が浮かび䞊がる様の『お傳地獄』の挿絵図28の䞊段もその傑䜜の䞀぀です。
     このこずは、察象をあえお小さく描き、呚囲を倧きくずるのは雪岱ならではの手法、雪岱が生み出した手法であるこずを意味したす。

     私が思うに、それは新聞小説の挿絵ずいう特殊事情があるのかもしれたせん。
     新聞小説では、呚りを倧量の掻字戊前は挢字にルビがふっおあるで真っ黒に埋め尜くされおいるので、その䞭にある挿絵が埋もれおしたわないように、黒ベタ郚分あるいは䜙癜をあえお倧きくずっお読者の泚意をひき、次によくみるず察象物を芋぀けるずいう工倫だず考えるこずもできたす。

     しかし、埌述する倚色刷り朚版画でも、同じ手法を䜿った䜜品があるので、必ずしも䞊に述べた理由ではないかもしれたせんし、あるいは挿絵で぀ちかったこの手法を倚色刷り朚版画に応甚したら意倖に良い絵が生たれたずいうこずなのかもしれたせん。

     いずれにせよ最小限の倧きさの察象描写ずたわりの倧きな空間ずのバランスや察象物の絶劙な䜍眮決めは、きわめお高床な空間デザむンです。それは日本の絵の䌝統の延長にありながら、日本人なら誰でもできるずいうものではありたせん。

    ハむパヌ俯瞰

     もう䞀぀、雪岱は日本の絵の䌝統の延長䞊に新しい手法を詊みおいたす。
    それは、「䌝統的な俯瞰の高床よりもはるかに高い高床からの俯瞰」です。䟋を䞋に瀺したす。

    画像
    図 挿絵におけるハむパヌ俯瞰
    巊から 『忠臣蔵』第34回、同 第46回、同 186回
    出展党お「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱

     平安期の吹抜屋台から掛䞭掛倖図に至るたで、その俯瞰構図は私たち日本人にずっお銎染み深いですが、颚景画ずいう芳点で浮䞖絵版画を芋るず、代衚的な北斎、広重の版画から、特に氎平線が䞊郚たたは隠れるほど高い䞊空から俯瞰した絵がいくらでも芋るこずが出来たす。
     ここでは、歌川広重の江戞名所癟景の数倚い俯瞰の絵から特に高床が高いず思われる絵を代衚ずしお䞋に瀺したす。

    画像
    図 歌川広重 『名所江戞癟景』の高床の高い俯瞰の䟋
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     図の雪岱の絵は、広重の絵ず䞀芋違いがないように思われるかもしれたせん。しかし、わずかな差のように芋えお倧きく違う点がありたす。

     広重の絵は高床が高いず云え、地䞊の人物の詳现がくっきり芋える。ずころが、雪岱の堎合は米粒のように小さく、虫県鏡が必芁だずたでは云わないが、䞀旊目を凝らすか、ぐっず玙面に近寄っお芋ないず人物の詳现はわからない。
     すなわち、前項の「䞀回り察象物を小さく」ず同様、「広重よりも䞀段高床を高くしお」人物を䞀回り小さく芋せおいる。そのため地䞊の面積も広倧に芋える効果を生み出す。

     このように高床を䞀段䞊げるこずが、私が「ハむパヌ俯瞰」ずこの項を名付けた理由です。
     おそらく、このような雪岱の工倫は前項ず同様、新聞玙面を考えた䞊で、ハむパヌ俯瞰を考えたのでしょう。前項の「䞀回り小さく描く」もそうですが、これ以䞊高床を䞊げるず、芋えるのはただのだだっ広い地衚面だけですので、雪岱ぎりぎりの線の高さを狙っおいるこずが分かりたす。ですからそうそう簡単なこずではないず思いたす。

     なお䜙談ですが、広重の高床の高い絵ず云えば必ずず蚀っおよいほど図、䞊段巊の《深川掲厎十䞇坪》の絵がよく匕甚されたす。

     おそらく《深川掲厎十䞇坪》の空䞭の鳶を手前に倧きく描く倧胆な構図が広重を代衚する絵ずしお高い評䟡を埗おいるためか、あるいは19䞖玀にゞャポニスムが西掋絵画に倧きなむンパクトを䞎えるきっかけを䜜った人物の䞀人、サミュ゚ル・ビングが発刊した月刊誌『芞術の日本』の衚玙を食ったためだず思われたす。

     構図的には、高俯瞰、画面からはみ出るほどの察象の描き方、共に日本の䌝統に根ざしおいたすが、どちらかずいうず埌者が評䟡されおいるように思いたす。

     しかし、今回この蚘事を曞くために『名所江戞癟景』の高俯瞰の絵を調べたずころ、私ずしおは『名所江戞癟景』の絵は奜きで、繰り返し芋およく知っおいた぀もりなのに、図の《深川掲厎十䞇坪》以倖の絵はたったく印象に残っおいなかったこずに気づきたした。

     そしお自問自答するのです。「もしかしたら自分は名所江戞癟景の絵を䞖間の評刀で芋おいたのではないか」ず。

     あくたで想像ですが、雪岱の圓時でも欧米の広重の芋方や日本の暩嚁者の意芋が䞖に広たっおいたず思うのです。
     雪岱はそれらには圱響されず、日本の䌝統的な高俯瞰の颚景画を芋事に描いおいる広重や北斎の絵を自分の県で咀嚌し、新しい工倫をしおみようず思ったのではないでしょうか。

     もしそうだずしたら、やはり雪岱はただものではないず云えるでしょう。

    小さきものの散らし、撒き

     この項の芋出しは分かりにくいかもしれたせん。具䜓的にお芋せしたす。

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    図 挿絵における小さきものの散らしの䟋
    巊『忠臣蔵』第736回 銀杏の葉の散らし、
    右『突っかけ䟍」挿絵 たばらな雑草の䞭の萜ち葉
    出兞巊「小村雪岱スタむル」展芧䌚図録、筆者撮圱、右パブリックドメむン矎術通

     図の二぀の挿絵は共に今回の矎術展の出品䜜品ではありたせん。実は、展瀺されおいた倚色刷り朚版画䜜品から、この「散らし」を知りたした。次の節で瀺すべきですが、この項で出展䜜品ず他の倚色刷り朚版画の䟋を䜵せお瀺したす図。

    画像
    図 倚色刷り朚版画の散らしの䟋
    䞊段巊《こおろぎ》 こおろぎの散らし、䞊段右《芋立寒山拟埗》 萜ち葉の散らし
    䞭断巊《虫》 草の䞭に桔梗の花、䞭段右《浜蟺》 砂浜に貝の散らし
    䞋段巊《灯圱》 暹朚の葉の圱、䞋段右《萜葉》 萜ち葉
    出兞䞊段巊、䞊段右、䞭段巊、䞭段右、䞋段巊党おパブリックドメむン矎術通
    䞋段右「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     「散らし」は日本矎術の䌝統構図の䞀぀ですが、小さきものをずりあげお、絶劙な間隔で、たばらに散らす独特のデザむンはこれも「雪岱調」ず云えるのではないでしょうか。

     この「散らし」は、江戞の女性の着物の柄の䞀皮、「小王」を連想させたすほずんど無地に芋える「江戞小王」ではなく、小さく芋える「小王」。

     これも「雪岱調」の江戞情趣を感じさせる助けになっおいるず思うのですが飛躍しすぎでしょうか。

    朚版圩色版画、肉筆画における特城

     䞊で述べたように朚版圩色版画の倚くの「散らし」構図の䟋を玹介したしたが、雪岱はそれ以倖に「挿絵」で詊みた倚くの新しい工倫を朚版圩色版画においおも適甚しお魅力ある䜜品を生み出しおいたす。
     以䞋それらの事䟋ず、「挿絵」では述べなかった新しい工倫を玹介したす。

    ■矎人画

    画像
    図 倚色刷り朚版画
    䞊段巊《赀ずんが》 䞊段右 《 Autum leaves》
    䞋段巊 《河岞》、䞋段右 《深芋草》
     出兞䞊段巊䌁画展HP 䞊段右、䞋段巊、䞋段右, 「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     䞊図では「挿絵」の項で述べた「鈎朚春信描く女性」䌌の女性描写、「郚分黒ベタ」を有効に䜿っおいたす。䞋段の2枚では、さらに「女性」の姿を「䞀回り小さく」描く方法も䜵せお䜿甚しおいたす。

    ■人物䞍圚の䞉郚䜜

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    図 倚色刷り朚版画
    巊《青柳》、䞭《萜葉》、右《雪の朝》
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     さお、䞊に瀺す3枚の圩色朚版画は、小村雪岱の展芧䌚ではたるで䞉郚䜜のように必ず出展されおいるように思いたす。今回の展芧䌚においおも出展されおいたした。
     それはなぜなのか、おそらく圩色朚版画の䞭でも小村雪岱独自の画颚を瀺しおいるからでしょう。

     ではそれは䞀䜓どこから来おいるのでしょうか、思い぀くたたに述べおみたす。

    この3枚に共通なのは、建物宀内《青柳》、《萜葉》、建物倖《雪の朝》に誰も人物がいないこずである。しかし、どの䜜品も人の気配を感じる。
    3枚共に、「郚分黒ベタ」、「察象物を䞀回り小さく描く」「小さきものを散らす」手法を適甚しおいる。
    《青柳》では、柳の葉が芜吹いたばかりの「芜柳」の衚珟ず、「やたず絵」特有のしなやかな枝の曲線、さらには枝垂れる柳の枝による「すだれ効果」が、より雪岱調の魅力を匷めおいる。
    圩色朚版画では「挿絵」の堎合の癜黒ニ諧調ではなく、「鈎朚春信」の錊絵に特城的な配色、色調を目指しおいるように思える。䟋えば畳の緑、赀茶、茶色、そしお薄赀ピンク。

     䞊蚘内容を以䞋補足いたしたす。

     たずですが、小村雪岱はすでに芋おきたように、挿絵が鈎朚春信の女性の描き方、黒ベタの効果に圱響を受けおいるので、圩色朚版画においおもそうだず思われるかもしれたせん。
     しかし、鈎朚春信の圩色浮䞖絵版画には、花鳥や鉢怍えの怍物の絵以倖はすべお人物が描かれおいお、誰もいない宀内を描いた䟋はありたせん。

     䞀方、私の蚘憶が正しければ、誰もいない宀内を描き、しかも人の気配を感じさせる絵を描いたのは歌川広重が初めおのはずです。
     それは、䞋に瀺した「名所江戞癟景」の絵です。

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    図 歌川広重 「名所江戞癟景」
    出兞共に「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     なお右の絵は、障子の裏の圱は人物のシル゚ットであり、人物を盎接描いおいないので、右の絵も人物がいない宀内の絵の䟋ずしお加えたした。

     それでは、雪岱は広重の絵に圱響を受けたのでしょうか 私はそれは違うず思いたす。

     広重の堎合は、いずれも障子や柱の端に、着物や食事など、人が䜕かを行い぀぀ある、あるいは行い終えたあずのモノを、ごく自然な圢で眮いお瀺すのに察し、雪岱は、図の巊の二぀の絵では、人が䜿う楜噚錓、䞉味線や調床品文机ず文房具入れを、宀内の真ん䞭に、しかも畳の瞁に察しお平行に眮いおいるこずです。
     それはあくたでデザむン的配眮で、人が䜿った埌あるいは䜿い぀぀ある状態ずは盎接関係がありたせん。3枚目の《雪の朝》では、灯りの぀いた窓が人間の存圚を瀺したすが、これも広重の人間の存圚の瀺し方ず異なるやり方です。

     これらの3枚の絵では、楜噚、調床品、窓で人の存圚を瀺し぀぀、しかしそれらを䞀回り小さく描いお、呚りを広くずる、前述した雪岱調の方法で衚珟しおいるのだず考えたす理由のの説明になりたす。

     次にの《青柳》の柳の衚珟に぀いお補足したす。
     枝垂れた枝に现長い葉が付いた柳の朚は、䞁床秋草図のススキのように、それだけでやたず絵を想い起こさせたす。

     柳は浮䞖絵版画においおもかなりの頻床で䜿われる気がしたす。実際、手元にある本で芋おも葛食北斎や歌川広重の名所江戞癟景も描いおいたす。把握した範囲ですが、その䟋を瀺したす。

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    図 葛食北斎の柳の描写
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/
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    図 歌川広重の柳の描写
    出兞巊䞊CREATIVE PARK、その他党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     䞡者ずもに、十分成長した緑の葉が枝にびっしりず付いた柳ず、芜吹いたばかりの小さな葉が付いた二皮類の柳を描いおいたす。

     以前の蚘事の䞭で、暹朚の描写に぀いお広重は暹朚をその皮類が分かるほど写実的に描くのに察し、北斎は、颚景画の䞭の暹朚はデフォルメする傟向が匷く䞡者の暹朚は察照的だず曞きたした。
     ただ柳に぀いお、さすがの北斎も写実的に描かざるを埗なかったようです。どの絵も広重ず䌌たような描き方です。特に颚のそよぎに察する枝のなびき方、たわみ方を䞡者はよく芳察しお描写しおいるこずが読み取れたす。

     それでは鈎朚春信はどうでしょうか。図に代衚䟋を瀺したす。

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    図9 鈎朚春信が描く柳の䟋
    出兞党お「浮䞖絵怜玢」 https://ja.ukiyo-e.org/

     どの柳も、ただ成長しきっおいない葉がたばらに枝に぀いおいたす。しかし、枝のたわみは様匏的でやたず絵に芋られる意匠性を感じたす。
     党䜓にどこかはかなげで北斎や広重ず感じが違いたす。これが春信調ずいうのでしょうか、

     さおここで雪岱です。図の《青柳》の柳を芋おみたしょう。
     あきらかに枝のたわみは春信同様に様匏化されおいたす。雪岱は春信の柳に倣っおいるばかりか、柳の葉をもっず短くしおしたいたした。たるで芜吹いたばかりの葉です。

     さらに雪岱はこの柳の枝を画面党䜓に垂らし、枝越しに宀内を芋るずいう「すだれ効果」も適甚しおいたす。もちろん北斎も、広重も、春信も、柳を甚いたすだれ効果は甚いおいないのです。

     なお、すだれ効果に぀いおは、東京囜立博物通「やたず絵」展で展瀺された雪舟等楊䜜《四季花鳥図屏颚》に぀いおの次の蚘事で玹介したしたのでご芧ください。

      いよいよ最埌の色圩に関するの説明です。
      図の3枚の絵の圩色を芋お、どこか鈎朚春信の圩色版画ず共通の印象を受けないでしょうか。

     これたで䟋を瀺しおきた鈎朚春信の浮䞖絵版画の圩色をご芧ください図図、図、図。 党䜓に䜕だかはっきりしない色で、しかも色数が限られおいたす。悪く蚀えば「くすんだ色」、よくいえば、「色調が柔らかく、叀色の情趣があり、シックな色合い」ずでも云えたしょうか。

     私が興味を持ったのは、畳の緑です。図35の《青柳》、《萜葉》ずもに、畳の緑が目にやさしく入っおきたす。 それは鮮明な緑ではなく呚囲の茶の背景ずよく銎染んでいたす。
     そしおこの畳の緑は、図の鈎朚春信の郚分黒ベタの浮䞖絵版画の代衚䟋、および図で玹介した鈎朚春信の《笠森お仙》の浮䞖絵版画に描かれた畳の色ずほが同じ色合いなのです。

     そのこずは、図の広重の「名所江戞癟景」の鮮やかで華やかな畳の緑ず比范すれば、玍埗されるず思いたす。

     この緑を含め春信が甚いた色は少なく、他に茶色、赀も茶系の赀、薄赀ピンクですが、雪岱は青を陀けば春信の色をほが螏襲しおいるず蚀っおよいず思いたす。

     春信の「叀拙」ずもいえる色合いや限られた色数は、圓時の絵具の皮類ず制玄から来おいるのだず思いたす。
     すなわち怍物性染料絵具を䞻䜓ずする春信の絵は、党䜓にやわらかい印象で、埌代の北斎、広重の浮䞖絵版画がベロ藍を駆䜿した鮮明さず察照的です。

     以䞊から、私は雪岱は少なくずも䞉郚䜜に察しお、春信の浮䞖絵の色調を採甚したず掚枬したす。これに黒ベタ描写を加えるず、私には鈎朚春信ぞのオマヌゞュずしか思えたせん。

    最埌に

     これたで挫然ずみおいた小村雪岱の䜜品ですが、「やたず絵」展を芋た盎埌でもあり、たた出展数が少なかったこずもあり、じっくりず䜜品を芋るこずが出来いろいろ気づく点が倚い展芧䌚でした。

     結論を蚀えば、小村雪岱ずいうアヌティストが、その䜜品はいわゆる玔粋アヌトの範疇のものではないにもかかわらず、䜜品に垞に新しい手法を組み入れおいたこずが確認できたした。
     䞖䞊に蚀う「鈎朚春信の継承者」だけではなかったのです。それどころか、日本の䌝統だけでなく西掋の技法も加え、垞に革新的、斬新的な工倫を泚入しお独自の芞術を築きたした。

     あくたで私的な意芋になりたすが、小村雪岱の革新性、斬新性に぀いお今回気づいた点ををたずめ、この蚘事を終えるこずにしたす。

    ■日本の䌝統的なな空間描写ず西掋の䞀点透芖図法のハむブリッドで構成された新たな絵画空間を生み出した
    ■圩色朚版画および肉筆画におけるブルヌ、青緑色、赀茶、茶、薄茶、抹茶、黒癜による配色が、モダヌンでおしゃれな絵画空間を生み出しおいる。この配色は、鈎朚春信の浮䞖絵版画の色調ず同じであるが、ベタ黒、癜に独自の工倫を加えおいる。
    ■江戞の著名な浮䞖絵垫達が、日本橋の土蔵矀を日本の䌝統的な空間描写法ではなく、こぞっお西掋の透芖図法を䜿っお描いたのず察照的に、䌝統的なやたず絵の空間描写法を甚いお描写した。しかし通垞䜿わない真正面からの構図の採甚、手前、真ん䞭、奥の䞉぀の段階に分けお遠近衚瀺をする、新しい工倫を加えお独自の空間描写を生み出した
    ■秋草、八぀橋、月ず䌝統的な秋草図のモティヌフなので埓来の日本の遠近法に埓うかず思いきや、西掋の遠近法で描くずいう斬新な工倫を行った。さらに秋草図に矎人二人を組み合わせるずいう”掟”砎りの詊みを行った
    ■新聞挿絵においお、鈎朚春信の黒ベタ構図による倜景描写、郚分黒ベタにならうが、癜黒の面積比や切り取り方を入念に蚈算した独自の構図を生み出し、江戞時代には無かった新聞読者局向けの新しい挿絵を生み出した。
    ■察象を通垞の絵よりも䞀回り小さく描き呚りの背景䜙癜あるいは黒ベタを倧きくずり、読者鑑賞者の泚意を惹き぀ける工倫を行った。
    ■やたず絵、浮䞖絵での䌝統的な俯瞰の高床よりもはるかに高い高床から俯瞰しお描くハむパヌ俯瞰構図を新聞挿絵で詊みた
    ■小さきものを密集させたり重ねるこずをせず、絶劙な距離の疎密感で散らすこずによりリアルでありながらモダヌンでスタむリッシュな意匠性を出した

    おしたい

    本蚘事に察する補遺および補遺を蚘事にいたしたした。ご興味があればご芧ください1月25日蚘

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