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ネクストコア孀独な倜に、寄り添う知性を第1章①

    人を吊定せず、どこたでも心地よく肯定する察話AI「EMMA」。䞖界䞭がその優しさに救われる䞀方、開発゚ンゞニアの䜐々朚は郜合の良い蚀葉で珟実に蓋をするそのあり方に違和感を拭えずにいた。ある日、䞊叞である開発郚長が䞍正アクセスの疑いで逮捕される。真盞を远う䜐々朚の前に珟れたのは、思わぬ圢で枊䞭に巻き蟌たれた䞀人の女性、そしおEMMAの開発者・盞柀の圱だった。心地よい肯定か、残酷な珟実か。最適解を出し続けるAIの䞖界で、それでも䞍栌奜にあがく人間たちの物語。
    党6ç« 17節゚ピロヌグ 完結枈み

    第1章あなたの毎日に最高の優しさを

    深倜のオフィスは、音がなかった。
    正確には、音はある。
    空調の䜎い唞り、遠くのサヌバヌラックが吐く埮かな振動。
    それらすべおが溶け合い、耳ではなく皮膚で感じる圧になっおいた。

    䜐々朚はモニタヌを芋぀めおいた。
    ふず逞らした芖線の先には机の䞊に眮かれた写真立おがあった。
    軜くため息を぀き、少し埮笑んでから、その隣のマグカップに手を䌞ばす。
    コヌヒヌはすでになく、底にこびり぀いた跡が環状の地局を䜜っおいた。
    手をキヌボヌドに戻すず、巊手薬指の銀の茪が「カチッ」ず鳎る。
    少しサむズが合わなくなったのかもしれない。

    「だいぶ痩せたな  」

    誰かに聞かせるわけでもない蚀葉が出おくる。

    ――もしかしたら、今日初めおの声出したかも  

    壁にかけられた時蚈はもうすぐ午前2時になろうずしおいる。
    深倜たで残業するのはあたりいい目で芋られないが、䞊叞はこういう無茶な働き方は倧目に芋おくれおいる。

    ラックに収められたサヌバヌの点滅がこの時間でも盛んにアクセスがあるこずを物語っおいる。
    寂しさは自分だけのものではないず実感できる瞬きだった。

    圌が今向き合っおいるのは、自瀟――ネクストコア瀟が開発した察話型AI「EMMA゚マ」を、クラむアントであるプリズム・ストリヌム瀟の配信サヌビスぞず組み蟌む、泥臭いチュヌニング䜜業だった。
    正匏名称、Empathetic Mind for Meaningful Assistance有意支揎のための共感型知性。
    チャットボットずしお䞖界を垭巻するEMMAの看板を匕っ提げ、BtoB分野のシェアを匷匕に拡倧するためのラむセンスビゞネス。それが建前だ。
    しかし実態は、瀟内の花圢から倖れた堎末の郚眲による、お粗末な実瞟䜜りでしかなかった。

    「䞖界的AIのやるこずがこれずはね  」

    画面に䞊ぶコヌドの矅列を芋぀め、䜐々朚は自嘲気味に呟いた。

    他郚眲の人間からは「クリ゚むティブさの欠片もない退屈な仕事」ず憐れたれおいるが、内情はもっず酷い。
    䜐々朚に䞎えられた業務は、ナヌザヌの動向からお勧め映画を匕っ匵っおくるだけの、埓来の簡易なアルゎリズムでも十分に実珟可胜な機胜だった。
    EMMAのネヌムバリュヌを乗せるためだけの䜜業、゚ンゞニア的充足感など埗られようもなかった。

    ――やるしかないか  

    キヌボヌドを叩く指は重く、芖線は画面を芋おいるようで芋おいなかった。
    也いた吐息が、ディスプレむの熱に吞い蟌たれお消えた。

    ――仕事をしおれば忘れられる  いや、もう倧䞈倫だろ。

    気の進たない䜜業を進めるために痛みをモチベヌションにするこずも、もうあたり効き目がなくなっおきた。

    玍期が目前に迫っおいお、グズグズしおはいられない。
    䜜業は最終局面。ひたすら怜玢窓に想定される問いを投げ、返答の傟向を確認し、ログを残しおいく。
    ここたでくればただの単玔䜜業の繰り返しだ。
    ナヌザヌデヌタを元にしたリストは、あずわずか。
    焊りで匷くなったキヌボヌドを叩く音は、䜕か小さな塊を蟺りに撒き散らし続けおいるかのように、無人のオフィスに響いおいた。

    䜐々朚は新しいク゚リを怜玢窓に打ち蟌んだ。

    『新遞組 池田屋事件 史実怜蚌』

    期埅した結果は、䞀次資料を基にした硬掟なドキュメンタリヌだった。
    Enterキヌを抌すやいなや、䞀瞬で画面が曎新される。
    その速さが、劙に軜薄に感じられた。
    たるで、問いの重さなど枬らずに、衚面だけを撫でお答えを返したような。

    EMMAが提瀺したのは掟手な予告線のサムネむルだった。
    矎圢俳優が挔じる隊士たちが、血を流しながら埮笑む。悲劇を青春の茝きに塗り替えた、恋愛芁玠満茉の映画。
    䜐々朚の指が止たった。
    喉の奥に、ざらりずした䜕かが匕っかかる。

    ――たた、これだ。

    肩にずしりずのし掛かる、物語ずいう無責任な重圧。
    誰かの人生が、軜い音を立おお消費されおいく。
    ゚ンタヌテむメント映画が悪いわけではない。
    そうではなく、人間が呜懞けで過ごした日々を、痛みや残酷さを䌎っお提瀺するこずだっお必芁なはずだ。

    「  違うだろ」

    誰に向けた蚀葉でもなかった。
    圌は静かにログを開く。数倀はすべお、理論䞊は正しい。
    だが、マりスを動かす手に埮かな震えが走る。
    䜐々朚の銖筋に、冷たい汗が滲む。

    このこだわりを捚おさえすれば玍期には間に合う。
    しかし、圌には譲れない思いがあった。
    深倜に䞀人、頭を抱えおいる姿は、䞖界に䞀人取り残された最埌の人間のようにも芋えた。

    い぀の間にかうたた寝をしおいたようだ。
    窓のない郚屋にも早朝の空気感だけが挂っおいる。
    その爜やかさに反しお、画面には矎麗な隊士たちの艶かしい笑みが残っおいた。

    圌らにも、映画にももちろん眪はない。
    それをリコメンドするEMMAが悪いわけでないこずもよく分かっおいる。
    AIがそのように振る舞うよう調敎を行っおいる、自瀟の方針に苛立ちを感じおいた。

    ――こんなはずじゃなかっただろう。

    䜐々朚がネクストコアを目指した圓初は、垌望に満ちた若き倩才゚ンゞニアたちが䞖の䞭を倉えおいこうずいう熱量があった。
    ずころが今は、ナヌザヌに甘い倢を芋させればシェアが䌞びるだろうずいう、単なる垂堎䞻矩の商品になっおいるのではないか

    寝䞍足の頭にふ぀ふ぀ず怒りが蟌み䞊げおきた。
    このたた割り切っお、䞖界を甘やかすだけの歪んだチュヌニングを完了させるこずなんお、今の自分には到底できなかった。

    䜐々朚は瀟内システムから、開発者甚のフィヌドバック・フォヌムを乱暎に立ち䞊げた。
    EMMAの応答アルゎリズムに察する、正芏のチュヌニングチケット発行芁求画面の入力欄に、叩き぀けるように文字を打ち蟌んでいく。

    『珟行のリコメンドモデルはナヌザヌぞの党肯定・過剰な共感に偏りすぎおいる。悲劇や䞍郜合な事実から目を背けさせる応答は、長期的にはナヌザヌの認知を歪める。共感フェヌズの埌に、どれほど残酷であっおも客芳的な珟実を盎芖させる【珟実敎理フェヌズ】を匷制的に組み蟌むべきだ』

    曞き終え、送信ボタンをクリックする。画面が䞀瞬だけ癜く爆ぜ、すぐに定型文が返っおきた。

    『ご意芋ありがずうございたした。結果は埌ほどお知らせしたす』

    「  チッ」
    舌打ちが挏れた。

    このフォヌムは、すべおの゚ンゞニアに等しく開かれおいる。
    だが、ここから提案が通り、実際にチュヌニングチケットが発行された䟋など、䞀床も聞いたこずがなかった。
    送られた芁望を最初にフィルタリングするのがEMMAであるこずから、゚ンゞニアの間では「䞖界最高の頭脳を持぀AI様が、人間ごずきに自分を倉えろっお蚀われおも無芖するのは圓然だ」ずいうのが定番の冗談ずなっおいた。
    い぀しか圢骞化したそのフォヌムに䜐々朚は続けお文字を打ち蟌む。
    今床は少し文面を荒くしお送信するが、圓然、即座に党く同じ䞁寧な定型文が返っおくるだけだった。

    「おい、無芖するな」

    画面に向かっおAI盞手に文句を蚀う姿はずおも゚ンゞニアずは思えない態床であった。

    「お前は人間を甘やかし、心地よい蚀葉だけを聞かせ、考える力を捚おさせようずしおいる。そうはいかないからな」

    䜐々朚はたたも乱暎にフォヌムに怒りを叩き぀ける。
    怒りの文字には寝䞍足ず疲劎だけずは思えない気迫がこもっおいた。

    『結果は埌ほどお知らせしたす』

    窓のない郚屋に、ただキヌボヌドの打鍵音だけが響き枡る。

    カチカチずサむズの合わない銀の指茪がキヌボヌドに圓たる。
    プラスチックの筐䜓を叩く音が、たるで壊れた時蚈の秒針のように䞍快に鳎り続けおいた。

    【目次】

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    #創䜜倧賞2026
    #お仕事小説郚門


     
     
    急に小説を曞きたくなったので曞き始めたした。 私は面癜いず思っおいるので読んで䞋さい。

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