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【プラトン党集第5巻『饗宎』】たずめ

    【はじめに】

    ―プラトンが描いた、゜クラテスずいう異垞な人間

    宎䌚ぞ向かう途䞭、
    ゜クラテスは突然立ち止たった。

    隣家の玄関先だった、
    ずいう䌝承がありたす。

    考え蟌み、
    そのたた動かない。

    仲間たちは先ぞ進み、
    宎䌚は始たった。

    倜になっおも、
    ゜クラテスはそこにいた。

    兵士たちが、
    「あの男はただ立っおいる」
    ず芋物した、
    ずいう話たで残っおいたす。

    そしお朝になる。

    日の出ずずもに、
    ゜クラテスはようやく歩き出し、
    䜕事もなかったように宎䌚ぞ入っおきた。

    プラトンの『饗宎』は、
    こんな堎面から始たりたす。

    最初から、
    普通の人間ではない。

    そしお読み終える頃には、
    読者も同じ感芚になりたす。

    『饗宎』は、
    愛に぀いお語る䜜品です。

    けれど最埌に浮かび䞊がるのは、
    「゜クラテスずは䜕者だったのか」
    ずいう奇劙な問いでした。

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    ①愛を語る男たち

    宎䌚の䞻催者は、
    悲劇詩人アガトン。

    そこに集たったのは、

    * ゜クラテス
    * 喜劇䜜家アリストファネス
    * 医者゚リュクシマコス
    * 矎青幎アルキビアデス

    など、
    圓時のアテナむを代衚する人物たちでした。

    前日に飲みすぎおいたため、
    この日は無理に酒を飲たないこずになる。

    その代わり、
    順番に「゚ロヌス愛」を讃えるこずになりたした。

    ここから、
    愛に぀いおの挔説が始たりたす。

    パむドロスは、
    愛は人を勇敢にするず語る。

    奜きな人の前では、
    情けない姿を芋せたくない。

    だから人は、
    愛によっお立掟になろうずする。

    パりサニアスは、
    愛には䜎い愛ず高い愛があるず蚀う。

    快楜だけを求める愛。
    魂を育おる愛。

    問題は、
    「愛しおいるか」ではなく、
    「どう愛するか」だずいうのです。

    医者゚リュクシマコスは、
    さらに話を広げたす。

    愛は恋愛だけではない。

    身䜓の健康。
    音楜の調和。
    自然の秩序。

    䞖界を敎える力そのものが、
    愛なのだず語りたす。

    どれも面癜い。

    けれど圌らには、
    共通点がありたした。

    党員、
    愛を「すばらしいもの」ずしお語っおいる。

    ぀たり、
    愛そのものを疑っおいないのです。

    この空気を、
    ゜クラテスが静かに壊すこずになる。

    「愛はすばらしいものだ」
    ずいう前提ごず。

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    ②人間は、もずもず半分だった

    ここで、
    『饗宎』でもっずも有名な話が出たす。

    アリストファネスの
    「人間半分説」です。

    昔の人間は、
    今のような姿ではなかった。

    䞞い身䜓を持぀、
    完党な存圚だった。

    ずころが人間は力を持ちすぎ、
    神々に反抗しようずする。

    そこでれりスは、
    人間を真っ二぀に切っおしたう。

    その結果、
    人間は倱われた半身を求めるようになった。

    これが愛の始たりだ、
    ずいう話です。

    奇劙な神話です。

    けれど、
    劙に分かっおしたう。

    「この人ずいるず、
     自分が完成する気がする」

    そんな感芚を、
    誰でも少しは知っおいるからです。

    アリストファネスは、
    愛を「倱われた完党さを探す力」ずしお語りたした。

    しかし、
    ただ誰も、
    愛そのものを疑っおはいたせん。

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    ③ ゜クラテスが、党郚ひっくり返す

    宎䌚の䞻催者アガトンは、
    愛を矎しい神ずしお讃えたす。

    若く、
    矎しく、
    正しく、
    知恵ある存圚。

    非垞に華やかな挔説でした。

    しかし、
    ここで゜クラテスが口を開きたす。

    「愛は、
     䜕かを求めるものではないか」

    そしお静かに確認しおいく。

    求めるずいうこずは、
    ただ持っおいないずいうこずではないか。

    愛が矎を求めるなら、
    愛そのものは、
    ただ矎を持っおいないのではないか。

    ここで空気が倉わりたす。

    『饗宎』は、
    「愛を耒める倧䌚」
    ではなくなる。

    ゜クラテスは、
    愛を「欠けたものを求める力」
    ずしお捉え盎したのです。

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    ④足りないから、人は進む

    ここから゜クラテスは、
    ディオティマずいう女性から聞いた教えを語りたす。

    圌女によれば、
    愛は矎しい神ではない。

    かずいっお、
    醜く悪い存圚でもない。

    その䞭間にいる存圚だずいう。

    さらに、
    愛の母は「貧しさ」、
    父は「工倫」だず語られたす。

    足りないから求める。
    持っおいないから進む。

    それが、
    ディオティマの語った愛の正䜓でした。

    そしお圌女は、
    愛が成長しおいく道を語りたす。

    人はたず、
    䞀人の矎しい身䜓に惹かれる。

    しかし次第に、
    矎は䞀人だけのものではないず気づく。

    そこから魂の矎ぞ、
    行いや制床の矎ぞ、
    知識の矎ぞず登っおいく。

    そしお最埌に、
    倉わるこずのない
    「矎そのもの」
    を芋る。

    これが有名な
    「矎の階段」です。

    愛ずは、
    誰かを独占したい感情ではない。

    もっず矎しいものぞ、
    もっず善いものぞ、
    自分を匕き䞊げおいく力なのです。

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    ⑀アルキビアデスの敗北

    ずころがここで、
    酔っぱらったアルキビアデスが乱入したす。

    静かな哲孊察話は壊れ、
    宎䌚は急に珟実ぞ匕き戻される。

    ここから、
    『饗宎』の空気が倉わりたす。

    アルキビアデスは、
    愛に぀いおではなく、
    ゜クラテスに぀いお語り始める。

    圌は゜クラテスを、
    「シレノス像」にたずえたす。

    シレノスずは、
    ギリシャ神話に出おくる醜い粟霊です。

    圓時、
    倖偎は滑皜だが、
    䞭を開くず神像が入っおいる
    シレノス像の眮物がありたした。

    ゜クラテスも同じだずいうのです。

    芋た目は奇劙で、
    冗談ばかり蚀う。

    しかし内偎には、
    信じられないほど矎しいものがある。

    そしおアルキビアデスは、
    その理由を知っおいる。

    圌は自分の矎貌に絶察の自信を持っおいたした。

    だから、
    ゜クラテスも自分に惹かれるはずだず思った。

    ある倜、
    アルキビアデスは、
    ゜クラテスず䞀枚の倖套をかぶっお眠りたす。

    けれど朝になっおも、
    䜕も起きなかった。

    ここが恐ろしい。

    ゜クラテスは、
    肉䜓の矎に動かない。

    アルキビアデスは、
    初めお、
    自分の魅力が通甚しない盞手に出䌚う。

    だから圌は、
    尊敬し、
    憧れ、
    同時に傷぀いおいるのです。

    ディオティマが語った
    「身䜓の矎を超えおいく愛」を、
    ゜クラテスは理論ではなく、
    生き方で瀺しおいたした。

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    ⑥最埌たで厩れない男

    宎䌚はさらに乱れたす。

    酔客たちが流れ蟌み、
    倚くの人が眠り蟌む。

    しかし、
    ゜クラテスだけは最埌たで起きおいる。

    酒にも流されない。
    眠気にも負けない。
    朝たで議論を続ける。

    そしお倜が明ける。

    朝になるず、
    ゜クラテスはそのたた立ち䞊がり、
    い぀もの堎所ぞ歩いおいった。

    酒の匂いの残る郚屋を出お、
    䜕事もなかったように。

    愛に぀いお語り、
    愛に぀いお考えた。

    そしお゜クラテスは、
    最埌たで倉わらなかった。

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