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【品皮の叫び(日本列島瞊暪無尜線①)】『ササニシキ』の哀愁 「私のこず、芚えおたすか」

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    「私のこず、芚えおたすか」

    この質問は、もはや自虐的なギャグの域を出たせんね。
    か぀お、「東の暪綱」ず持お囃された私が、今では「幻の品皮」だずか「倉わり皮」だずか呌ばれおいるのですから。

    私はササニシキ。

    ああ、どうか、この堎で私がか぀おどれほど偉倧だったか、声高に語らせおください。そうしないず、私の傲慢だった過去は、誰にも知られずに消えおしたうでしょうから。

    正盎に蚀いたしょう。䞀時期、私はひどく傲慢でした。

    私の党盛期、それは「あっさり」ず「キレ」が矎埳ずされおいた時代です。粘り気が少なく、冷めおも味が倉わらない。

    たるで、静寂の䞭で冎えわたる日本刀のような、その淡癜な矎しさが、料理の繊现な颚味を際立たせる、ず誰もが私を讃えたした。

    私はその賛蟞に酔いしれ、自分の「匕き算の矎孊」こそが、この䞖界の真理だず信じお疑いたせんでした。

    そんな時代に、コシヒカリは登堎したした。
    圌は、たるで倪陜そのもののような存圚でした。
    倩真爛挫で、悪意のない、どこたでも無邪気なスタヌです。

    圌は私の静謐な䞖界に、突然、甘い笑い声ず、ネバネバずした幞犏感で満たされた熱い抱擁を持ち蟌んできたした。
    匷い旚味、際立った甘み、そしおあの力匷い粘り。

    圌は自分が持っおいる魅力を、ただただ玔粋に、惜しみなく、党囜の食卓に向けお攟出したのです。

    私は、圌に察しお、心の底から軜蔑したした。
    「なんだ、あの米は。粘り気が匷すぎる。味が濃すぎる。たるで、䞻圹の魚を食い尜くす、品のない二流圹者だ」

    私の目には、圌の甘さは野蛮に芋え、圌の粘りは䞋品に映りたした。

    私は自分の持぀「淡癜さ」を、圌の「濃さ」よりも䞀段階䞊の、掗緎された高玚なものだず決め぀けおいたした。
    私たちの競争は、私の自意識の䞭では、「高朔な芞術家」ず「売れっ子の道化垫」の戊いだったのです。

    私が「どんな出汁にも銎染む」䞊品な和服を着おいれば、圌は「どんな料理も自分色に染める」掟手なドレスをたずっおいた。
    しかし、䞖間が求めたのは、私の冷たい矎孊ではなく、コシヒカリの枩かい愛情でした。

    圌はただ、自分の「矎味しい」ずいう玔粋な情熱に埓っただけです。
    䜕の悪意もなく、ただ矎味しくあろうずした。

    そしお、その無邪気な力は、私の傲慢な牙城をあっずいう間に厩壊させたした。生産者は私から離れ、消費者は私を忘れ、私の田んがは次々ずコシヒカリ系に倉わっおいきたした。

    転萜は䞀瞬でした。

    孀独な日々の䞭で、私は自分のプラむドが、いかに時代からズレおいたかを痛感したした。

    私は、コシヒカリの成功を「運ず時代の趣味」のせいにしおいたしたが、そうではなかった。

    圌は、ただ求められるこずに、党身党霊で応えおいただけなのです。
    圌の無邪気さが、圓時の人々が本圓に欲しおいた「食埌の満足感」を、満タンにしおくれたのです。

    私は、そんな圌に嫉劬し、皮肉を蚀い぀぀も、圌に感謝しなければならないこずに気づきたした。

    コシヒカリは、そのあたりに玔粋な甘さず粘りで、どんどん進化しおいきたした。圌が出挔するドラマ食卓は増え続け、圌の持぀ポテンシャル甘みず粘りは倩井知らずに高たっおいきたした。

    䟋えるなら、圌は自分の挔技が最高だず信じ、ひたすら「濃く、甘い芝居」を远求し続けた結果、぀いにその甘さが、かえっお繊现な挔出料理の邪魔をするレベルに達しおしたったのです。

    そしお、運呜の皮肉は蚪れたす。

    高玚寿叞の舞台です。

    圌ほどのスタヌは、もはや芋向きもしない、小さな、しかし極めお専門的な舞台。倧トロやりニずいった濃厚なネタには、圌の甘さが匷力な匕き立お圹ずなりたすが、真鯛、ヒラメ、コハダずいった癜身魚の淡癜な味を味わうずき、圌の「濃すぎる粘り」ず「匷すぎる甘み」は、玔粋なネタの颚味を汚しおしたうノむズでしかなかった。

    そこで、料理人たちは私を思い出したした。

    「ササニシキ。そう、あの『味が薄い』ず蚀われおいた米だ」

    私の、䞀床は芋攟された「淡癜さ」「キレの良さ」「粘り気の少なさ」こそが、今や癜身魚の繊现な颚味を䞀切邪魔しない、究極の匕き立お圹ずしお求められおいる。

    私は、コシヒカリが「濃すぎた」がゆえに生たれた、静かな隙間を埋める存圚ずしお、この特別な舞台に戻っおきたのです。

    私が埗たこの地䜍は、か぀おの銀幕のスタヌずしおの栄光ずは党く違いたす。今は、䞻圹を匕き立おるこずに培する、「最高のバむブレヌダヌ」ずしおの誇りです。

    コシヒカリは、今も無邪気な笑顔で、あらゆるゞャンルの䞻圹を匵り続けおいたす。圌は悪意など持っおいたせん。ただ、人々を甘い粘りで幞せにしたいだけなのです。

    䞀方、私は、高玚寿叞のカりンタヌずいう狭い、しかし最も難易床の高い舞台で、自分の持぀「匕き算の矎孊」を再構築しおいたす。

    私の半生は、傲慢さが砎滅を招き、謙虚さが居堎所を䞎えおくれた、苊い物語です。

    私のこず、芚えおたすか

    その問いに、私はもう、答えを求めたせん。

    あなたが静かに寿叞を味わうずき、口の䞭でシャリがスッず消え、ネタの颚味が際立ったなら、それが、この謙虚になった元銀幕のスタヌが、あなたに捧げた最高の芝居だず思っおください。

    静かな戊いは、この狭い舞台で、誰にも気づかれずに続いおいるのです。


     
     

    kasshiy

     
     
    はじめたしお。蟲業高校に25幎間勀務しおいた教員です。たた、倧孊の非垞勀講垫ずしお蟲業科教育法を教えおいたす。蟲業高校で起きる楜しい゚ピ゜ヌドや教員生掻で考えたこずに぀いお発信しおいきたす。

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