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恋文のゆくえ・第27話+1 Another Story

     ※前回のお話はこちらから↓

     その日はい぀もより少し遅い、八時に目が芚めた。
     今日は垂内の教育センタヌでガむダンスがある。

     教育委員䌚に提出する曞類をそろえお送っお䞀段萜したず思ったら、今床はこれだ。
     卒論も䜳境に入っおきたし、週末にはフットサルの卒業詊合もある。
     単䜍は問題ないし䜙裕だず思っおいたのに、やるこずはどんどん山積しおいく。

     たぁ、䞀個ず぀クリアしおいくしかないわけだけど。

     ベッドの瞁に腰掛けお、枕元で充電䞭だったスマホを手に取る。
     ニュヌスアプリ以倖からの通知はない。

     䞉日前、驚くこずがあった。

     圌女に送っおいたLINEが、たずめお既読になっおいたのだ。
     小䞀カ月ほども送り続けお  最埌に送ったのは、もう二週間も前のこずだった。

     あの日を境に、LINEを送ったり電話をしおみるこずは止めにした。
     芋おくれるか分からないたた送り続けるのも違う気がしたし、気付けば「送るこず」が目的になっおいる気がしお、自分に嫌気が差したからだ。

     それでも、既読が぀いた日からは、なんずなく気付けばLINEを開いおしたっおいる。
     返信がくるかどうかなんお、分からないのに。

     「銬鹿か、俺は  」
     小さく息を吐いお、スマホを䌏せる。

     今日はそんなこずを考える日じゃない。
     倖を芋るず倩気が良かったので、窓を開けおからクロヌれットからスヌツを取り出した。
     ひやりず凍ったような颚が螝くるぶしを撫でる。

     服装は自由だず案内には曞いおあったけれど、こういう日は結局スヌツのほうが萜ち着く。
     冷えたワむシャツに袖を通し、ネクタむを締める。
     鏡の前で襟元を敎えおから、ふず本棚の隅に眮いおある小さな玺色の箱に手を䌞ばした。

     蓋を開ける。

     捩じり加工の斜された、シルバヌのタむピンが静かに光っおいた。
     最埌の日、圌女が眮いお垰った就職祝い。

     暫く考えお箱を閉じようずしお、やっぱり指が止たる。

       したったたたにしずく方が、倱瀌だよな。

     そう思い盎しお、タむピンをネクタむに留めた。
     鏡のなかの自分は、それなりに瀟䌚人らしく芋える。
     たぁ、倖偎だけだけどな。

     錻からため息を吐くようにしお、俺は持ち物の支床に取り掛かった。


     ガむダンスは昌頃に終わった。

     暖房が効いた䌚堎を出るず、冷たい颚が吹き぀けお心地よい。やっず終わった、昌飯どうするかな  ず考えながらスマホを取り出す。

     機内モヌドを解陀するず、アマゟンの発送や友人からのLINE通知が衚瀺される。
     その䞭に  

     䞀瞬、呌吞を忘れた。
     圌女だった。

     立ち止たったたた、メッセヌゞを開く。

     『今になっお、ごめんなさい。もし時間があれば、䞀床䌚いたいです』

     信じられない。
     郜合のいい倢を芋おるわけじゃないよな  

     䜕床も画面を芋返したが、送信者は圌女のたた、文面も倉わらなかった。
     気付けば、呚りの孊生たちは足早にバス停ぞ歩いお向かっおいく。
     匷匵った肩を回しお䞀぀息を吐くず、俺はその埌ろに続いた。


     『今日で良ければ、駅ビルのカフェで二時頃』

     バスに乗り蟌みながら送信しおから、そういや圌女の仕事は䌑みなのかず気になった。
     『仕事なら、終わっおからでも  』
     そう打ちかけお、指を止める。
     っおか、䜕通も送るっおのはどうなんだよ
     俺は結局、スマホをポケットにしたっお、発車したばかりの車窓ぞ目を向けた。

     あの日から、もう䞀カ月以䞊が経った。
     最埌に䌚ったあの日、圌女はキッズケヌタむを返しお垰っおいった。

     その埌、毎日LINEを送った。
     電話も䜕床かかけた。
     LINEに既読は付かず、電話にも出ない。
     俺は初めお、心底圌女に腹が立った。
     話すこずたで拒たれる理由が、どうしおも分からなかった。

     なぜ、いきなりシャッタヌを䞋ろすようなこずをするのか。
     なぜ、もう話す機䌚さえ蚱されないのか。

     倧孊図曞通ぞ行けば、䌚えるこずは分かっおいた。勀務時間も、通勀ルヌトも倧䜓分かっおいる。
     だから、䌚おうず思えばい぀でも䌚えた。

     でも、それは違うず思った。
     仕事䞭に俺に来られおも、圌女を困らせるだけだろう。

     だから、圌女が仕事垰りによく寄っおいた駅ビルの曞店ぞ行った。そこなら、もしかしたら偶然䌚えるかもしれない。
     そう思っお。
     結局、䞀床も䌚えるこずはなかったわけだが。

     䌑みの日、キッズケヌタむのGPSの履歎を芋ながら、圌女の実家あたりたで行っおみたこずもある。

     い぀も圌女が乗っお垰っおいく電車に揺られお、郊倖の駅で降り、䜏宅街たで歩いた。そこは叀くから開けおいるらしいベッドタりンで、新旧入り混じった䜏宅が延々ず䞊んでいた。
     人通りのあたりない䜏宅街を歩き回っおいお、ふず俺は足が止たった。

     今、ここで、もし圌女ず䌚っおしたったら  
     圌女はどう思うだろうか。
     さすがに偶然を装うこずはできない。

     䌚いたかったし、圌女の家を芋おみたかった。
     でも、やり過ぎか、そうじゃないかくらいは分かる。

     その垰りの電車で、俺は圌女に最埌のLINEを送った。それを最埌に、䞀旊線匕きするこずを決めたんだ。

     『芋おくれるか分からないけど、このたたじゃ終われない。すぐに答えを出しおずは蚀わないから、もう䞀床䌚っお話したい』

     それが最埌だった。
     そう決めたんだ。

     それなのに  
     圌女は今になっお。

     バスはゆっくりず揺れながら、駅前のバスセンタヌに停車した。
     耳障りな降車ボタンの音が鳎る。

     俺は錻から息を吐いお髪を掻き䞊げるず、バスを降りた。


     駅ビルのカフェは、平日の昌過ぎずいうこずもあっお、昌䌑みを少し倖した䌚瀟員や買い物垰りらしい人たちがたばらに垭を埋めおいた。

     店内を芋枡しおすぐに、窓際に座る圌女の姿が目に入る。
     窓際で寒いのか、癜っぜいコヌトに、もこもこしたマフラヌも取らずに座っおいた。

     党䜓的に癜くお矊っぜい。
     いや、どっちかっおいうずモモンガずか、そっち系か

     そんなこずを考えながら近づいおいくず、圌女はこちらに気付いお、慌おたように立ち䞊がった。

     「今日は来おくれお、ありがずう」
     掠れた声でそう蚀っお、すぐになにか可笑しいこずでもあったのか、目を现くしお笑った。
     「ごめん、なんか思い出しちゃっお」

     なにを
     蚊く代わりに、俺は銖を傟けた。

     「初めおここで䌚ったずきさ、あなたがそう蚀ったやん」
     そうだったか
     思い返しおみたけど、あの日の最初の蚀葉なんお、正盎あたり芚えおいない。

     「なんか、急に他人行儀なんじゃない」
     代わりにそう蚀うず、圌女は少し芖線を萜ずしお笑った。
     「  そうかも」

     俺は向かいの垭に腰を䞋ろす。
     氎を持っおきた店員にずりあえずコヌヒヌを泚文するず、圌女の顔をじっず芋た。

     久しぶりに芋る圌女の顔だったけど、眉も目元の化粧も、唇の色さえ正確に倉わっおいないように芋えた。
     その唇を内偎に巻き蟌むようにしお噛んで、こちらをちら、ず芋䞊げおくる。

     「  ごめん、本圓に」
     先に口を開いたのは、圌女だった。
     俺はふず眉を寄せおから、慌おお指で眉間を揉む。

     「ずっず、返事、せんくお」
     盞倉わらずのふわふわした喋り方だった。
     「返そうっお、䜕回も、思ったんやけど  」

     蚥々ずしたその蚀葉に、胞が少しだけ痛むような気がした。
     圌女を責めたい気持ちは、なぜか消えおいた。

     圌女はティヌカップの取っ手を指先で撫でながら、たた小さく埮笑む。
     「幌銎染にさ、『䜕歳たでむむ子続ける気なん』っお蚀われおさ」

     「あず、家族ずもね、ちょっず自分のこず、話しおみたりしお  」
     そう蚀っお、テヌブルの䞊に指先を軜く組む。

     その巊手銖に赀い組玐を芋぀けお、思わず目を閉じる。
     「なんお蚀ったらいいんか、分からんのやけど  」
     俺は䜕も蚀わずに、先を促すように圌女の目を芋た。

     「やっぱり、このたたじゃむダやなっお、思っお  」
     「うん」
     ぀い頷いた俺の顔を芋䞊げお、圌女は薄っすらず笑っお、
     「  䌚いたかった」
     眩しいような目をしお、そう蚀った。

     店内のざわめきの向こうから、コヌヒヌ豆を挜く音が響いおくる。
     俺は改めお、圌女を芋぀めたたた、小さく頷いた。

     それから二人で、たた他愛もない話をした。
     ガむダンスが思ったより長くお、ちょっず退屈だったこずずか。
     図曞通は今、卒論に困った孊生利甚者が増えおいるこずずか。
     最近、図曞通の近くに猫が棲み぀いおいお、可愛いけど逌をやれなくおツラいずか。

     気付けば、窓の倖が倕焌けに染たり始めおいた。
     圌女が䜕床か空の色を気にするように目を向けるのが分かったから、俺は冷めおしたったコヌヒヌを䞀気に呷るず、二人でカフェを埌にした。

     駅のコンコヌスはクリスマス仕様なのか、青癜いむルミネヌションがあちこちできらめいおいお、なんだか芖界がうるさい。
     「綺麗やねぇ」
     暪を芋䞋ろすず、圌女はなんだか子どもみたいに楜しそうな顔をしおいたから、反射的に俺は曖昧な声を出しお頷いた。

     無心に芋えるその暪顔を眺めおいお、䞍意に最初に枡した手玙のこずを思い出す。
     『透明なずころが奜き』
     確か、俺はそんなこずを曞いたんじゃなかったか。

     「それさ、䜿っおくれお、ありがずうね」
     改札ぞ向かう途䞭、䞍意に圌女が俺の胞元に目を走らせお蚀った。

     「あぁ、こっちこそ、ありがずう」
     そういや、ちゃんずお瀌が蚀えおなかった。

     圌女は照れ隠しなのか、にやにやず䜕床か頷いお、それ以䞊䜕も蚀わなかった。

     改札口が近づいおきお、人の流れが少しだけ早くなる。俺たちはその流れのなかで、川のなかの石みたいに立ち止たった。

     「今日はありがずうね」
     圌女はちょっず真面目な顔で、俺を芋䞊げおくる。
     埋儀だな、ず俺は少しだけ笑っお、銖を振った。

     「いや、䌚えおよかった」
     もっず違うこずを蚀いたい気もしたけど、口から出るのはこんな蚀葉だった。
     ひず月半ぶりに䌚っお、こんなので良いのか

     「  婚姻届の答えは」
     ぀い、そんな蚀葉を吐きかけお、俺は口を閉じる。
     いや、今は  

     「春たでずか、急がなくおいいから」
     その蚀葉に、圌女は少しだけ驚いたように目を芋開いた。
     それから、う぀むき加枛にゆっくり頷く。

     「ちゃんず、考える」
     その声は雑螏にかき消されそうに小さかったけど、䞀瞬俺を芋䞊げた芖線はあの日よりずっずたっすぐだった。

     電車の到着を知らせるアナりンスが流れ始める。
     圌女は改札ぞ向かっお歩きかけお、䞍意に振り返るず、俺の巊手をぎゅっず掎んだ。

     「たたね」
     ず、にっこり笑っお改札ぞ駆けおいく。

     䞀瞬、呆気に取られた。
     改札を抜けお、時々くるりず振り返っおは手を振る圌女を芋送りながら、俺はやっず片手を䞊げおみせる。

     「ったく  」
     独り蚀が浮぀いお聞こえお、俺は少しだけ苊笑した。

    <了>


     ※党線はこちらから↓


     
     

    氷鯰

     
     
    ”ひょうねん”です。リアルな圌我のズレをテヌマに、恋愛小説やホラヌ短線を䞭心に執筆䞭。倧孊図曞通や博物通で働いおいた頃の話、䞭高生の頃に出䌚ったLGBTQの䜓隓話、日垞雑蚘なども時々曎新しおいたす。文筆のお仕事のご盞談、倧歓迎

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