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【挫画】『源氏物語』っおどんな話 ヌ 源氏の青春を照らす老女・源兞䟍

    滑皜なキャラクタヌずしお描かれる源兞䟍げんのないしのすけ。
    老いおもなお奜色な女性ずしお描かれるこの女性は、物語においおどのような圹割を果たしおいたのでしょうか

    ここたでは藀壺ふじ぀がの死の前埌「薄雲うすぐも」「朝顔あさがお」巻たで解説しおきたしたが、この先に進む前に少し時間を巻き戻し、源兞䟍の物語をみおみたしょう。

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    平安時代のバリキャリ・源兞䟍げんのないしのすけ

    源兞䟍。
    ちょっず銎染みのない名前ですが、これは兞䟍ないしのすけの職にある源みなもずさん、ずいう意味のあだ名です。

    兞䟍は、内裏の内䟍叞ないしの぀かさずいう郚眲の次官のこずで、倩皇の秘曞的圹割を勀めたす。
    この郚眲のトップは尚䟍ないしのかみず呌ばれ、本来この人が奏請そうせい・䌝宣ずいった倩皇にお䌺いを立おたり倩皇の蚀葉を䌝えたりずいう仕事をしおいたした。
    しかし、垞に倩皇の偎にいるため寵愛を受けるケヌスが増え、次第に皇劃のような扱いずなり職務からは離れおいったそう『源氏物語』では朧月倜おがろづきよが朱雀垝すざくおいの尚䟍ずしお寵愛を受けおいたすね。
    代わりに内䟍叞の実質的なトップを務めたのが兞䟍です。

    重芁な圹職ですから、家柄や教逊、匏兞での䜜法や身のこなしに優れおないず務たりたせん。
    おたけに䞻人である桐壺垝きり぀がおいは、さすが源氏の父ずいうか。
    お幎を召しおも女性には目がなかったようで、宮䞭には采女うねめや蔵人くろうどなど身分の䜎い女官に至るたで矎女揃いだったそう。

    そんな環境で長幎働いおきた源兞䟍は、家柄も教逊も優れ、センスもよく、才気あふれるバリキャリ女性だったのです 


    滑皜な源兞䟍の物語 ヌ 露骚な歌ずBL的じゃれ合い

    そんな優秀な源兞䟍ですが、“老い”ず“奜色”、この二点においお滑皜なキャラクタヌずしお源氏ず亀わるこずなりたす。

    ・

    初登堎は第7垖「玅葉賀もみじのが」。

    圓時19歳だった源氏は、内裏の父・桐壺垝の傍らで、源兞䟍にふず興味を芚えたす。

    「どうしおこの人は老いおもなお奜色心を倱わないのだろう」

    奜奇心ずいうかコワいもの芋たさずいうか 二人きりになったずき源氏は源兞䟍の裳の裟を぀んず匕っ匵り泚意を匕く。19歳の源氏にはただ可愛らしさがありたすね

    するずすかさず源兞䟍が、扇で顔を隠し぀぀振り返る。
    扇は、赀い玙地に小高い森の絵を金泥こんでいで塗り朰した掟手なもので、そこには「森の䞋草老いぬれば」の字が 

    これは『叀今集』の

    倧荒朚森の䞋草老いぬれば 駒もすさめず刈る人もなし

    読み人知らず。
    だが『叀今和歌六垖』では、幎老いお男たちに顧みられなくなった小野小町の歌ず䌝えられおいる。

    ずいう歌の匕甚で、幎をずっお誰も盞手にしおくれないこずを嘆くもの。
    露骚ずも蚀える衚珟に嫌らしさを感じ぀぀も、源氏は぀い苊笑しお、和歌の莈答を続けたす。

    ・

    この堎面でも、枩明殿うんめいでんの蟺りで関係をもったずきも、源氏ず源兞䟍のやりずりは、だいぶ猥耻で開けっぎろげでな印象です。

    しかしだからこそ、テンポよく軜快にやりずりのできる二人の教逊の高さや、色事ぞ向かう溢れんばかりのバむタリティが感じられたす。

    この埌二人は、情事の堎面を源氏のラむバル・頭䞭将ずうのちゅうじょうに芋぀けられ、玫匏郚によるBL的サヌビス党開の男二人の裞のドタバタ劇が繰り広げられるわけですが、
    このずき源兞䟍は、二人が自分を取り合っおるず思い蟌み半ば状況に酔ったように慌おおみせたす。
    でも源氏ず頭䞭将は最初から源兞䟍のこずは県䞭にないわけですから、圌女をほったらかしお二人で戯れあっおしたうわけです。

    才色兌備だけど幎老いおいる。幎老いおるけどい぀たでも若づくり。呚囲に呆れられおるけど気づいおない。

    露骚な歌ず盞たっお、「玅葉賀」の源兞䟍は憐れみず可笑しさをも぀「をこ話」ずしお描かれるのでした。


    「をこ者」ずしおの圹割ずは ヌ ①笑われ者だからこそ蚀える気持ち

    ここで物語党䜓を眺めおみたしょう。

    源兞䟍げんのないしのすけが登堎するのは、第7垖「玅葉賀」、第9垖「葵」、そしお第20垖「朝顔」の3巻です。

    「玅葉賀」の頃、源氏は正劻・葵あおいの䞊うえや恋人・六条ろくじょうの埡息所みやすんどころずうたくいかない䞭、藀壺ふじ぀がず密通しお懐劊させおしたいたす。手元には藀壺そっくりの少女・若玫わかむらさきを匕き取っおいたすが、ただ幌いため兄効のような仲。
    どの女性ずも停滞しおいたこの時期に、唯䞀関係をもおたのが源兞䟍だったのです。

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    政敵の嚘であり、兄・朱雀垝の劃候補でもある朧月倜おがろづきよずの危険な情事を描いた「花宎はなのえん」巻を挟み、次の「葵」巻では、葵の䞊ず六条の埡息所の有名な車争いの堎面を前に源兞䟍が登堎し、「かざし争い」を展開したす。

    それは、賀茂祭で葵を頭に挿すこずず源氏が人のものになっおしたったこずを「かざし」ずいう蚀葉に掛け、源氏の牛車に同乗しおる女性若玫ぞの嫉劬や恚みを蟌めた歌の応酬なのですが 
    自称・源氏の恋人である老女が、盞手が少女だず知らずに嫉劬を詠むずいう、二重䞉重の皮肉が蟌められた滑皜な堎面。

    でもここで源兞䟍が詠んだ嫉劬心は、「䞖間の笑われ者になるたい」ず必死の六条の埡息所や葵の䞊には決しお蚀えなかった気持ちですよね。
    源兞䟍は「をこ者」だからこそ、女君たちの気持ちを代匁するこずができたず蚀えるでしょう。


    「をこ者」ずしおの圹割ずは ヌ ②二぀の王暩䟵犯を結び぀ける

    しかし、源兞䟍の圹割は、それだけではありたせん。
    研究者の䞭にはさらに倧きな圹割を芋出す方々もいたす。

    源氏姓で老女で奜色ヌ。
    こうした圌女の属性は、藀原姓である朧月倜や、少女の若玫、慎たしい朝顔など、その察称にある女性たちを読者に想起させたす。

    たた、皇族の血を匕きながらも滑皜な存圚ずしお描かれる点は、末摘花すえ぀むはなず重なりたす※源ずいう姓は祖先に皇族がいたこずを瀺すもの。
    「扇をもっお源氏に誘いかける」ずいう遊女のような振る舞いは朧月倜ずの共通点ず蚀えるでしょう。

    さらに螏み蟌んでみれば、源兞䟍に桐壺垝の巫女的な性栌を芋出し、源氏が圌女ず関係を結んだこずを、王暩ぞの挑戊だず芋る説もあるようです 

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    最初にご説明した通り、兞䟍は内䟍叞ないしの぀かさの次官です。
    内䟍叞の䞻な仕事は倩皇の秘曞ですが、もう䞀぀、枩明殿うんめいでんの北偎・内䟍所ないしどころに安眮されおいる神鏡を守るずいう圹割も担っおいたした。
    この神鏡は、䞉皮の神噚の䞀぀、八咫鏡やたのかがみを暡したもの。
    故に、内䟍所に詰める神さびた老女官源兞䟍に桐壺垝の巫女的な性質があるず蚀われるのです。

    おたけに圌女は、桐壺垝の愛人でもあるずか、第1垖「桐壺」巻で源氏に「藀壺が源氏の亡き母ずそっくりだ」ず教えた兞䟍ず同䞀人物だずも蚀われおいたす。

    そうした女性を、枩明殿ずいう内裏の神聖な堎で犯した源氏。

    䞀芋本線ず関係のない「をこ話」ずしお挿入された源兞䟍の゚ピ゜ヌドが、桐壺垝の劻・藀壺、朱雀垝の劃候補・朧月倜を犯した、二぀の王暩䟵犯の物語を結び付ける圹割を果たしおいるず指摘されおいるのです。
    別の芋方をすれば、源兞䟍を犯しおもなんの問題も生じなかったからこそ、源氏は朧月倜ずの危ない橋を枡っおしたったのだずも考えられる。

    源兞䟍の圹割をどう捉えるか 孊䌚でも諞説あるようですが、圌女の属性は、源氏呚蟺の女君たちを照らし出す効果があるようです。


    「朝顔」巻での再登堎 ヌ 源氏の青春時代を照らし出す

    そんな源兞䟍みなもずないしのすけが最埌に登堎するのは「朝顔」巻。

    須磚明石隠栖すたあかしいんせいから埩掻し、政界を登り詰める源氏。
    桐壺垝、朱雀垝の埡䞖は過ぎ、初恋の人・藀壺も亡くなり 心に開いた穎を埋めるためか、玫の䞊を攟眮しお、青春時代から付き合いのある朝顔姫君あさがおのひめぎみぞの恋に疟るお話です。

    朝顔ずは最埌たで結ばれるこずのない源氏ですが、邞で偶然、源兞䟍ず再䌚しおしたいたす 

    70歳を超えお尌になっおも、昔ず倉わらず艶かしい様子で源氏に戯れかかる源兞䟍。
    源氏は思わず苊笑するも、源兞䟍のような人が生き残っお、藀壺のような人が早逝しおしたう䞖の無垞を嘆きたす。
    そうしお、はしゃぐ源兞䟍を眮いお早々に立ち去っおしたうのですが 

    源兞䟍の䞀芋唐突な再登堎。
    自身の老いをひしひしず感じおいる源氏に、自らの青春時代がどのようなものだったのか、有り有りず感じさせたのではないでしょうか。

    ・

    源兞䟍は、その滑皜さでもっお、源氏が青春時代に関わった女性たちの気持ちや立堎を照らし出し、源氏の犯した眪をも想起させおきたした。
    だからこそ「朝顔」巻での再登堎は“偶然”ではありたせん。

    藀壺も倱い、自らの老いを意識し始めた源氏の前に珟れた源兞䟍。その姿は圌の青春が䞀䜓どのようなものであったのか鮮やかに蘇らせる存圚だったのです。


    【参考】

    䞉谷邊明1980『源氏物語の䞖界』第二集、有斐瀟、同1989『物語文孊の方法II』有粟堂「源兞䟍物語構造 ヌ 織物テクスト性あるいは藀壺事件ず朧月倜事件 ヌ」
    藀本勝矩1999「源兞䟍 ヌ 末摘花ずの連環 ヌ」『源氏物語の人、こずば、文化』新兞瀟
    岡郚明日銙2005「源兞䟍に぀いお ヌ 桐壺院宮廷の䜍眮づけず「をこ話」の意矩 ヌ」『人物読む『源氏物語』第十巻 ヌ 朧月倜・源兞䟍』勉誠出版
    新矎哲圊2005「本文の差異から読み解く源兞䟍」『人物読む『源氏物語』第十巻 ヌ 朧月倜・源兞䟍』勉誠出版
    栗山元子2005「源兞䟍における老いず奜色に぀いお」『人物読む『源氏物語』第十巻 ヌ 朧月倜・源兞䟍』勉誠出版


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