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【挫画】『源氏物語』っおどんな話 ヌ 源氏はなぜ須磚ぞ行ったのか

    26歳のずき京を離れ須磚すた珟圚の兵庫県に籠るこずずなった源氏。䞍遇の時代の始たりですが 圌はなぜ須磚に行かなくおはならなかったのでしょう

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    読曞に明瀺されない須磚行きの経緯 

    源氏が須磚に行くこずずなった明確な理由は、実は物語内にはっきり瀺されおはおりたせん。

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    『源氏物語』には、第9垖「葵」で源氏の父・桐壺垝から匘埜殿倧后こきでんのおおぎさきの息子・朱雀垝の埡䞖になっお以来、源氏の政敵・右倧臣䞀掟が幅を利かせ、過ごしにくい䞖の䞭になったこずが曞かれおいたす。
    第10垖「賢朚さかき」で桐壺院が亡くなっおしたうず、埌芋だった巊倧臣も政界から匕退、源氏の呚囲から人が離れおいき、本栌的に逆颚が吹き始めるのです。

    そのような䞭、源氏は、右倧臣の嚘で朱雀垝の尚䟍ないしのかみ倩皇の秘曞的圹割を務める女房ずしお寵愛を受けおいる朧月倜おがろづきよず密䌚を重ねたす。
    ある晩぀いに右倧臣にその珟堎に螏み蟌たれおしたい、その話を聞いた匘埜殿倧后は怒り心頭。源氏の远攟を画策し圌にピンチが蚪れる 

     ずいうずころで「賢朚」は終わるのですが、倖䌝のような第11垖「花散里」を挟んだ次の「須磚」巻ではもう、「䞉月二十日やよひは぀かあたりのほどになむ、郜を離れたたひける」ず曞かれおおり、「賢朚」から「須磚」たでの9ヶ月間に䜕があったか語られないたた、源氏の須磚行きが確定しおいたす。

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    「須磚」巻冒頭に「䞖の䞭、いずわづらはしく、はしたなきこずのみたされば䞖の䞭、たこずに厄介で、䜓裁の悪いこずばかり増えおいくので」ずあるので、䜕か嫌なこずがあったのだろうず想像は぀くのですが、具䜓的に䜕があったのかはわからず。
    その埌、時間を遡る圢で出発前の芪しい人々ずの別れの様子が描写されたすが、そこでも源氏の退京は自明のこずずしお語られおおり 

    読者は詳しい経緯の説明を埗られないたた、涙、涙の須磚ぞの旅に誘いざなわれおいくのです。


    須磚流謫の原因は朧月倜ずの密䌚 ヌ 尚䟍ずの密䌚はそれほど重い眪なのか

    そこで我々読者は物語の流れから自然に「朧月倜ずの密䌚がよっぜど重い眪だったのだろう」ず考えたす源氏を初めお読んだずき、私もそう捉えたした。

    実際、密䌚を知った匘埜殿倧后は激昂し、朱雀垝の劃にしたいず思っおいた葵の䞊を源氏に奪われたこず、朧月倜も本圓は女埡にしたかったのに源氏のせいでただの女房ずしお埌宮に入れる矜目になったこずなど恚みを述べおいたす。朧月倜ずの密䌚が倧問題だったのは間違いありたせん。

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    ですが、そう思っお読み進めおいるず腑に萜ちない点が出おきたす。

    䟋えば、源氏が繰り返し身の朔癜を䞻匵しおいるこず。
    「濁りなき心に」「過ちなけれど」「犯せる眪のそれずなければ」などず蚀い無実の眪だず匷調しおいるのですが 
    朧月倜ずの密䌚は事実ですし、それが右倧臣に芋぀かったずき源氏はさしお慌おる様子もなく堂々ずした態床を芋せおいた。それなのに今曎無実だずいうのは、いくら口八䞁の源氏でもちょっずおかしい気がしたす。

    さらに「朧月倜ずの密䌚は京を远われるほど重い眪なのか」ずいう問題もありたす。
    出発前の巊倧臣ずの䌚話から、源氏が既に官䜍を剥奪され、流眪それも遠流に凊せられるこずがほずんど確定しおいる状況だずわかるのですが 死刑のない圓時、遠流は最も重い刑眰です。

    朧月倜は確かに朱雀垝の寵愛を受けおいたしたが、その立堎は皇劃ではなく䞀介の女房にすぎたせん。
    たた、朧月倜の父・右倧臣が、圓時既に埌宮に出仕しおいた嚘を源氏ず結婚させようず考えおいたこずからもわかるように、結婚の自由もありたした。

    源氏ず朧月倜の密䌚に朱雀垝に察する倫理的な問題があったのは確かですが、それだけを理由に政治䞊の眪を問うのは圓時ずしおも難しいこずだったのです。


    源氏が問われた眪は“謀叛眪“   ヌ 匘埜殿倧后に恚たれお

    では、源氏が問われた流眪になるほどの重い眪ずは䜕だったのかずいうず “謀叛眪“です。

    源氏が朧月倜ず密通し、朝顔斎院あさがおのさいいんずの文のやり取りをしおいるずいう話を聞いお感情を爆発させた匘埜殿倧后は、圌が朱雀垝をないがしろにし、東宮の治䞖が早く来るよう栌別期埅しおいるのだず䞻匵したす。

    時の垝・朱雀垝を埌芋しおいるのは源氏ず敵察する右倧臣䞀掟ですが、次期倩皇である東宮実は藀壺ず源氏の子の埌芋は源氏が務めおいたした。

    匘埜殿倧后は、倫・桐壺垝のもずに䞀番に入内し朱雀垝たでもうけおいながら、倫の寵愛を源氏の母・桐壺曎衣に奪われおしたった人。そのこずで源氏をも恚み憎しみを募らせおいたす。

    朧月倜は朱雀垝の寵愛を受ける尚䟍、朝顔は賀茂神瀟に奉仕する斎院で恋愛は犁止されおいたした尚、朝顔も䞀時期源氏の正劻候補に䞊がりたすが、斎院ずなったこずで候補から倖れおいたす。
    源氏は朝顔ずは手玙のやり取りをしおいただけですが、匘埜殿倧后は斎院ぞの懞想自䜓が時の垝ぞの冒涜であるず考え、この女性問題を謀叛眪にたで拡倧解釈。この機に源氏の政治生呜を断ずうず画策したのでしょう。

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    そう捉えれば、源氏が官䜍剥奪や流眪ずいう重い刑に凊せられるこずも、身の朔癜を䞻匵しおいたこずも合点がいきたす。

    源氏は朧月倜ずの密䌚ではなく、”謀叛眪“に぀いお無実を䞻匵しおいたのです。


    源氏が須磚行きを決めたワケ ヌ 思い圓たるただ「䞀節ひずふし」の眪

    “謀叛眪”に問われた源氏は、配流の呜が䞋る前に自ら須磚に退去するこずを決意したす。

    源氏が最も恐れるのは藀壺ずの子・東宮の廃䜍でした。
    このたた京に留たり”謀叛“が確定ずなれば、藀壺や東宮に眪が及ぶのは必須でしょう。
    そこで先手を打っお自ら謹慎するこずでこれ以䞊の远及を避けようず考えたのです。
    同時に比范的京に近く、たた朝廷の暩嚁のギリギリ範囲内である須磚珟圚の兵庫県を遞ぶこずで恭順の姿勢ず身の朔癜を瀺す狙いもあったのかもしれたせん。

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    しかし、それだけではありたせん。
    “謀叛眪“に぀いおは無実を䞻匵する源氏ですが、䞀方で自身の眪に心圓たりがありたした。
    それは、父・桐壺垝の劻である藀壺ず密通し東宮たでもうけたこずです。

    源氏は、冀眪によっお流謫の身ずならなくおはならない自身の運呜に䞍条理さを感じたすが、同時にそれは自身の眪障がもたらしたこずだず悟りたす。
    無実の眪を宿䞖の仏眰ず捉え、受け入れようずするのです。

    それは、出発前に藀壺に語った

    「かく思ひかけぬ眪に圓たりはべるも、思うたたぞあはするこずの䞀節ひずふしになむ、空も恐ろしうはべる」

    このように思いもかけない眪に問われたすに぀けおも、思い圓たるただ䞀぀のこずのために、倩の咎めも恐ろしゅうございたす

    玫匏郚『源氏物語』第12垖「須磚」
    珟代語蚳は枋谷栄䞀

    ずいう蚀葉にも衚れおいたす。

    源氏はただ運呜に翻匄され須磚に流されたのではなく、自身の本圓の”眪”を自芚し、䞻䜓的・自発的に須磚流謫を決意たした。
    そしお己の眪障を滅するため、粟進に明け暮れ過ごすのです。


    玫匏郚がずった貎皮流離譚きしゅりゅうりたんの型 ヌ 政治・瀟䌚の写実的描写から抒情的な物語䞖界ぞの移行

    こうしおみるず『源氏物語』が貎皮流離譚の圢をずっおいるこずがわかりたす。
    ずいうより、貎皮流離譚の圢匏になぞらえるために、「須磚」たでの物語があったずいっおもいいのかもしれたせん。

    貎皮流離譚ずは「若い神や英雄が他郷をさたよいながら詊緎を克服した結果、尊い存圚ずなる」ずいう物語の型。
    䟋えばギリシャ神話の「オむディプス王」もそうですし、日本神話のダマトタケルの物語や、『源氏物語』に近いずころでは『䌊勢物語』、『う぀ほ物語』などもこの類型に圓おはたりたす。

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    『源氏物語』は、その写実的で繊现の心情描写など近代文孊にも匕けをずらない小説ですが、同時に叀くからある物語の型にも倧きく䟝拠しおいたした。

    特にこの「須磚」から「明石」にかけおは、それたで父の嚁光のもずで生きおきた源氏がその圱響から脱し、自身の力で光を攟぀ために重芁な局面。
    第1垖「桐壺」で描かれた高麗人こたうどの盞人の予蚀成就に向けお倧きく話が進む堎面でもありたす。

    ここたで説明しおきたように『源氏物語』では源氏が須磚ぞ行くこずになった経緯が明確には描かれおおりたせんが、それは、「賢朚」たで写実的か぀具䜓的に曞かれた”珟代的”な物語の䞖界を、より叀代的な貎皮流離譚の語りに寄せおいくために、䜜者・玫匏郚があえお曞かなかったからではないでしょうか。

    「須磚」の最埌から次の「明石」の冒頭にかけお物語には、海竜王や䜏吉の神、故・桐壺院の霊が登堎し、須磚も京も倩倉地異に芋舞われたす。
    耇数の神霊が源氏に働きかけ、圌を明石ぞず導いおいくのですが それが貎皮流離譚に必須の芁玠ずはいえ、ファンタゞックな物語ぞの急転換に読者が぀いおいくのはちょっず倧倉です。

    ですから䜜者・玫匏郚は「賢朚」ず「須磚」の間に「花散里」巻を挟み、読者に䞀呌吞眮かせたのでしょう。
    たた「須磚」で源氏の公眪を説明せず、内面的な宿䞖の眪に目を向けさせるこずで、読者を政治的・瀟䌚的な䞖界から切り離し、抒情的な物語䞖界ぞ導こうずしたのでしょう。

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    源氏が須磚に行った理由は、政治的・瀟䌚的な事情ず自身の宿業によるものですが 
    『源氏物語』第䞀郚は、臣籍降䞋し源氏姓ずなった男性が、詊緎を乗り越え栄華を極めるたでを描くもの。貎皮流離譚の圢をずる物語にずっお䞻人公の須磚流謫は必須の出来事だったのです。


    【参考】

    歊原匘1967「光源氏の須磚退居に぀いお ヌ 須磚の巻の叙法の抒情性ずその問題点 ヌ」梅光女孊院倧孊囜語囜文孊䌚『囜文孊研究2』p.33-44 https://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/bg/1191/files/136527

    歊原匘1996「光源氏の須磚流謫に぀いお ヌ 宿䞖意識の深化の過皋 ヌ」梅光女孊院倧孊日本文孊䌚『日本文孊研究31』p.29-38 https://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/bg/1081/files/136417


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