
【連載小説】第22話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』
“黒犬の尻尾”はおもしろくない
むくれた嫁 お気楽三人組
勅② 来客
三人の四方山話は緩やかに続いていた
そしてチョウマを訪ねた都からの遣い
幻想と現実が交わる祈りと魂の叙事詩
「なぁ吾作よぉ。お前、何か知ってっか?
あぁ?」
平吉の馴れ馴れしさを意に介さず吾作は答える。
「何がよぉ」
「だぁかぁらぁ。
チョウマさんのことに決まってっぺ?」
「チョウマさんのことってさぁ。
オラだって、いろいろ知ってるよぉ」
「なになに?」
「畑仕事熱心にやってるって」
ペチッと吾作の頭を留蔵が叩いた。
「おぉん?」
留蔵にガンを飛ばして吾作が睨む。
「畑仕事じゃねぇよぉ!
何かしら昔のことでも知らねぇかぁってことよ」
吾作は腕を組んで考える。
「昔のことってさぁ。
防人してたって聞いたけど」
「んんん。じゃあ、そのときのお友だち?」
ペチッと今度は平吉の頭を叩く留蔵。
「あぁん?」
留蔵にガンを飛ばして平吉が睨む。
「アホぉ!
都の役人と田舎の防人がどうしてお友だちになるのぉ?」
「あぁ。そうかぁ」
三人揃って首を傾げた。
様子を見ていたヨネはすっかり呆れた表情で首を項垂れる。その目は男たちの会話をシラケて見ていた。
「よし!
何か思いつくまで吾作の獨酒呑んで考えるべ!」
「おぉ!」
と吾作と平吉は留蔵の提案に同意する。
「勝手にしておくれ。結局それかぁ?」
とヨネは踵を返して家に帰る。
三人の男どもは構わず仲良く肩を組んで吾作の家に入っていった。
村の中も人影を見なくなってきた。
雨がひとしきり強くなってきたからだろうか。
春の雨だが今日は冷えて空は暗い。雨粒が身体に刺さるように、雨音がザーザーと騒ぐ。
チョウマはその日、畑仕事はせず草鞋と笠を編む仕事をしていた。
雨でも畑仕事はできるが興に乗り切れずに、家に籠もって内職に励んでいた。
昼飯は、味噌を塗りつけて焼いてから山椒を振りかけたおにぎりを三個と香の物を少し、食べて済ませた。
囲炉裏では五徳の上に鉄瓶を載せて、湯を沸かしていた。
鉄瓶の蓋が蒸気で震えてカタカタと音がする。
部屋は囲炉裏の火と、灯っている行灯の灯りが届かない隅などは、やや暗く肌寒い。
雨脚が強くなってきた扉の向こうに、人の気配。そして扉を叩く音。
ドンドンドン。
特に予定はなかったが、不意の来客にも動じることなくチョウマは声をかけた。
「はい! どちらさま?」