
【ショートショート】梅雨占い
どうせ雨だ。
どんよりとした鈍色の空を前に、織姫は窓枠に頬杖をついた。
一年に一度。彼に会えるチャンスはこの日しかない。
だというのに黒雲は川を覆い隠し、彼の渡る道先を覆い隠してしまう。
「降る……降らない……降る……降らない……」
織姫の足元に、白い花弁がひらひらと舞い落ちる。
「降る……降らない……降らない?」
最後の一枚を指先につまんだまま、織姫はにっこりと微笑んだ。
「じい!降らないって!」
じいは織姫の洗濯物を手際よく畳みながら
「それはようございましたな」
と頷いた。
窓枠に吊るされた風鈴がチリンと鳴るのに合わせるように、ピコンと織姫のスマホが音を鳴らした。
『ごめん!5時から日本戦あるから、今年は🙏』
織姫はそっとスマホを机に置いた。
手に握った花弁のない花の残骸を、床に叩きつけ、踏みにじり、蹴散らした。
「──じい、日本戦って何?年一回の恋人との逢瀬より大事なこと?」
「……国の命運を懸けた戦いでございます」
鉛色の空に雷鳴が轟く。
4年後、ピッチに立った織姫が華麗なボレーシュートを決めた。コーナーポストから静かにカメラを睨みつけ、人差し指をカメラに突きつけた。
テレビの前で、彦星は震えながら応援を続けた。
終


いけいけドンドンなので彦星のドタキャンも仕方がないですね。
田原にかさまの毎週ショートショート【梅雨占い】に参加させて頂きました。
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