
苦手だったのは、日本酒じゃなかった。
日本酒は、
苦手だった。
あの、
「クッ」
とくるアルコール感。
どうしても好きになれなかった。
だから、
ビールかワイン。
日本酒は、
僕には関係ない飲み物だと思っていた。
そんな僕が、
日本酒を好きになるなんて、
思ってもみなかった。
きっかけは、
趣味のキャンプだった。
パートナーと、
仲の良い友達夫夫と一緒に、
新潟へキャンプに行った。
せっかく新潟まで来たんだから。
刺身を買って、
地元の日本酒でも飲もう。
そんな軽い気持ちで、
酒屋へ入った。
そこで、
一本の日本酒に出会った。
「あべ」
という名前だった。
焚き火を囲みながら、
刺身と一緒に飲んだ。
驚いた。
あの苦手だった
「クッ」
がない。
するっと飲める。
気づけば、
もう一杯。
もう一口。
止まらなかった。
ハマったのは、
僕だけじゃない。
パートナーも。
一緒に来ていた友達夫夫も。
東京へ帰ってからも、
家で飲んだ。
居酒屋でも飲んだ。
「あべ」がある店を見つけると、
なんだか嬉しくなった。
夫夫で角打ちへ行って、
気づけば、
二人ともベロベロ。
それも、
今では良い思い出だ。
思えば、
日本酒が苦手だったんじゃない。
僕は、
まだ出会っていなかっただけだった。
この感覚、
どこかで経験したことがある。
タイ野菜もそうだった。
最初は、
「なんだか苦手。」
そう思っていた。
でも、
地元の八百屋へ通うようになると、
「うまい。」
が先に来た。
知らなかっただけ。
慣れていなかっただけ。
日本酒も、
同じだった。
一本との出会いで、
世界が変わることがある。
今でも、
新しい日本酒を飲む時は、
少しワクワクする。
もしかしたら、
また新しい「好き」に、
出会えるかもしれないから。
広めたいのは、
日本酒じゃない。
「苦手だった。」
が、
「まだ出会っていなかった。」
に変わる、
あの瞬間だ。
あの夜、
新潟の焚き火の前で飲んだ一杯が、
今の僕を、
ここまで連れてきてくれた。
そういえば、こんな話も書いていた。