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ホームレスW杯 よくある質問シリーズ #2 「仲間はずれを生み出さないスポーツとは?」

    ダイバーシティサッカー協会のクラウドファンディング、大詰めが近づいて来ました。たくさんのご支援、本当にありがとうございます! 残りの期間も、少しでも多くの方に私たちの活動内容や目指していることに共感していただけるよう、頑張ってまいります。

    さて、前回に引き続き、ホームレス・ワールドカップにまつわる「よくある質問」シリーズです。

    今回の質問は、
     「仲間はずれを生み出さないスポーツって、どんなスポーツ?」
    です。

    これは実は、よく訊かれる質問というわけではないかもしれません。

    私たちダイバーシティサッカー協会は「仲間はずれを生み出さないスポーツの居場所づくり」を掲げています。これは実は、「仲間はずれを生み出さない居場所」をつくるために、「仲間はずれを生み出さないスポーツ」をつくろう、ということなのです。

    回りくどい言い方ですみません。
    こういう言い方をするのは、ともすればスポーツは、仲間はずれを生み出しやすいものだからです。

    だからこそホームレス・ワールドカップの日本チームは、「仲間はずれを生み出さないスポーツ」を体現できるチームでありたいと考えています。

    「スポーツ嫌い」を生み出す体育や部活動

    私は大学で15年間、スポーツの実技科目も担当してきました。必修科目なので、スポーツを好きじゃない学生も取らなければいけません。驚いたのは、その数の多さです。

    体育もスポーツも大好きだった私は気づいていなかったのですが、どうやら高校生までの体育や部活動の経験から、身体を動かすこと自体への苦手意識や、運動の得意不得意による序列が固定化することで劣等感を植え付けられ、スポーツ嫌いになってしまう人がとても多いということのようでした。

    だから「スポーツで仲間はずれを生み出さない世の中を目指しています」というと、スポーツがポジティブな経験だった方には「いいですね!」と共感していただきやすいのですが、そうでない方には「私はスポーツで仲間はずれになった方なので...」というような反応も少なくないです。

    「そうそう、そうなんです! だからこそ私たちは、スポーツを仲間はずれを生まないものにしようとしていまして、、」とお話しを続けたいのですが、なかなかそこまでの機会がないことが多いのです。

    だからこれは「よくある質問」というより、「是非訊いてほしい質問」かもしれません。

    「誰も仲間はずれのいないサッカー」の衝撃

    私は子どもの頃からスポーツが大好きで、体育も部活動も特に疑問を抱くことなく楽しんでいました。大学時代に出会ったラクロスという競技では、日本代表に憧れて練習に励み、社会人クラブチームで日本一になったり、留学先でスコットランド代表に選んでもらったりもしました。スポーツといえば高みを目指して切磋琢磨するもの、ということに違和感を抱くことはありませんでした。(ただおそらく幸運だったのは、本当に「体育会系」を地で行くようなスパルタなチームに所属したことが一度もなかった、ということでしょうか。)

    「スポーツ交流サロン」での原体験

    そんな私が衝撃を受けた現場が、ダイバーシティサッカーでした。まだダイバーシティサッカー協会が法人化する前、私は一研究者として練習に参加させてもらったり、イベントの企画や運営をお手伝いさせてもらったり、という関わり方をしていました。

    2017年か2018年のことだったと思います。その日、川崎の方の使われなくなった倉庫を改修したフットサル場で開かれた、東京の野武士ジャパン(日本代表としてHWCを目指していなかった頃も、国内の練習会をそのように呼んでいました)の練習に他団体を招いて行う「スポーツ交流サロン」に、私はかなり遅れて到着しました。

    現場に着いた瞬間、とても和やかで優しい雰囲気だったことを覚えています。交流のために招かれていたのは、川崎市で就労支援事業を行うNPO法人FDAさんで、参加者には知的障害のある方が多く含まれていました。またダイバーシティサッカーの運営仲間が、小さなお子さんをたくさん連れてきていました。

    そんななかで、参加者をごちゃ混ぜにして何チームかに分け、交代交代でフットサルをやっていきます。遅れてきた私も、ひとつのチームのゴールキーパーとして仲間に入れてもらいました。

    知的障害のある方とサッカーをして気づいたこと

    知的障害のある方とサッカー(もちろんスポーツも!)をしたのは、その日が初めてでした。「どうやって意思疎通をしたらいいのだろう?」「ルールはちゃんと守られるんだろうか?」などの不安を感じていたことを覚えています。

    始まってみると、いくつも発見がありました。まず言葉のやり取りで意思疎通ができているか分からなくても、ボールのやり取りをすれば、お互いの意思をちゃんと感じることができる、ということです。

    知的障害をお持ちと思われるチームメイトの女性は、ゴールキーパーの私がボールを持つと、ちゃんとパスを受けられる場所に立ってこちらに身体を向けてくれます。パスをすれば、ちゃんと相手ゴール方向にボールを運ぼうという意図がみてとれます。誰が味方なのかとか、どっちのチームがどっちに攻めるのかとか、そういうことはちゃんとわかってプレーされているのだな、と理解できました。

    ただしその方は、コーナーキックの場面になると(コーナーキックというのがあることも、わかっているようです)、それが敵のボールでも味方のボールでも、とにかくご自身で蹴ろうとされるのです。

    驚いたのは、それに対する他の参加者の反応です。誰もその方が全てのコーナーキックを蹴ることを咎めたりしないのです。その方がボールを蹴るまでみんなでじっと待っていて、ボールが蹴られれば何事もなかったようにフットサルのゲームが進行していきます。

    「ああ、ルールなんて厳密に守らなくたって、ちゃんとみんなで遊ぶことができるんだ」

    これはとても大きな気づきでした。

    その人らしくいること > 一律のルールを守ること

    同じように、まだチームに混ざってフットサルをするには小さ過ぎる子どもたちが、プレー中にボールを追いかけてコートに入ってきてしまうことが多々ありました。そんな時も、みなさん文句も言わずにプレーを一時中断したり、子どもに危険がないように注意しながらプレーを続けたり、と、決して子どもたちを邪魔者扱いしたりしないのです。

    そうしてしばらく様子を見守っていると、古くからの野武士メンバーのお一人だけは「いまのはこっちボールだ」とか、「子どもが入ったら危ないじゃないか」と、ちょっとだけカリカリしていることにも気づきました。なんと他の参加者のみなさんは、その姿も微笑ましく見守るだけなのです。

    その人がその人らしく、自身のやりたいことをやろうとする。そのことが、自然と受け入れられ、誰も「それは間違っている」と正義を振りかざさない。でもフットサルをみんなで楽しむ、という最低限の共通了解は絶妙に保たれ続けているのです。

    こんなスポーツの現場は、私はそれまで経験したことがありませんでした。

    誰もが一律に従うべきルールが存在し、それを守れないことは反則として罰せられる。逆にルールが許す範囲で「勝つ」という目的のために行動を最適化し、それを最も上手くできる人が当然の権利として「勝利」を手にする。それがいわゆる「近代スポーツ」の「常識」です。

    しかし「楽しくない人が誰もいない」ということに最適化しようとすると、逆にルールに縛られることに大きな意味がなくなっていく。しかもそれが、阿吽の呼吸で、言葉で合意を作らなくても(配慮だけで!)成立してしまう。そんなスポーツのあり方が、そこにあったのです。

    この時の経験が、私自身の大学のスポーツの授業や、法人化してからのダイバーシティサッカーの現場作りの理想形になりました。

    「仲間はずれを生み出さないスポーツ」を通じて「仲間はずれを生み出さない社会」を考える

    そうして辿り着いたのが、このメソッドです!・・・というような虫のいい話ではありません。今でも試行錯誤の連続です。ポイントは、「みんなが」楽しい、というのは、常に「今ここに集ったみんなが」ということだということです。だから、どんなグループにも当てはまる一つのやり方は存在し得ないようなのです。

    しかもそれをスポーツという、競技者同士を比較して優劣をつけるゲームを使ってやろうというのだから、とにかくハードルが高いのです(でもだからこそ意味があります)。「勝ったら楽しい/負けたら楽しくない」というような浅い水準での楽しみ方ではないものが、求められます。

    じゃあ勝ち負けをつけないことにしては?という考え方もあり得ます。でも「勝ったら楽しい」「上手くプレーできたら楽しい」という達成感も、楽しさのひとつです。それが好きな人が多いから、スポーツに夢中になる人がたくさんいるわけです。「みんなが」の「みんな」には、当然「勝つのが楽しい」人も含まれています。

    だから「勝ったら楽しい」が「勝たなくても楽しい」と両立するようにしないといけないわけです。

    つまり「楽しい」の多様性を包み込むことができるスポーツの現場が、ダイバーシティサッカーの目指す「仲間はずれを生み出さないスポーツの居場所」です。

    これを作るには、運営側の試行錯誤だけでは足りません。参加者のみなさんにも試行錯誤してもらう。これが必要不可欠です。

     自分の「楽しい」と、他の人の「楽しい」はちょっと違うらしい。
     自分の「楽しい」が、他の人の「楽しい」の邪魔をしてしまうかも...。
     じゃあ、自分の方が、他の人の「楽しい」に合わせないといけないのかな?
     あれ? ここでは自分の「楽しい」も、他の人の「楽しい」も、同じだけ大事にしてもらえるらしい。
     じゃあ、他の人の「楽しい」を邪魔せずに、新しい自分の「楽しい」を作るにはどうしたらいいだろう?
     それとも、自分も「楽しい」ままで、他の人の「もっと楽しい」を作れないだろうか?
     
    …
     あれ? 他の人の「楽しい」が、自分の「楽しい」になってきたかも!

    こんな内的経験を、参加者の皆さんに知らず知らず通過してもらうのです。

    多様な「楽しい」は、ちゃんと共存できる。そこに至るためには、他の人の「楽しさ」(=多様性)への感度が求められます。ダイバーシティサッカーが作る居場所は、好きなサッカーをしながら、その感度を育む場なのだと言ってもいいかもしれません。

    これは実は、「仲間はずれを生み出さない社会」の作り方の実験だともいえます。

    「楽しさ」を契機に「仲間はずれ」をなくしていく

    ほとんどの「よい社会」の構想は、一つの「正しさ」を目指したものであり、それぞれの構想の「正しさ」は、他の構想の「正しさ」と両立しない、とアマルティア・センという人が『正義のアイデア』という本のなかで言っています。

    それなら「正しさ」ではなく「楽しさ」を両立するために、試行錯誤を繰り返してみてはどうか? これが私たちダイバーシティサッカー協会が提起する社会のあり方です。

    センの本に出てくる喩えで、ひとつしかない笛を3人(作った人、一番上手く吹ける人、一番貧しい人)のうち誰が所有するのが「正しい」か、というお話があります。これが一意に決まらない、というのがセンさんの説明ですが、私なら笛を使って3人で遊んだらどうか?と答えます。

    一番上手く吹ける人に演奏してもらってそれを聴くのを楽しんでもいいし、他の二人が吹き方を教えてもらって上達する楽しみや上達してもらう楽しみを得てもいいし、演奏する以外の全く新しい使い方を考え出してもいいかもしれません。笛という物理的存在は有限(誰かが所有すれば他の人は所有できない)ですが、それが生み出す3人の楽しさは無限かもしれない。

    スポーツも社会も「勝者総取り Winner takes all」では必ず不平等を生み出し、分け前を受けられない「仲間はずれ」が生まれます。「勝者は勝ちだけを得る Winner takes the win only」ならば、「敗者も勝ちではない別のものを得る Losers take something other than the win」ことができます。

    既存の社会にはない新しい「楽しさ」を生み出し続けることができれば、「勝者」になることに躍起になり過ぎなくていいのではないか。だから「みんなに遊ぶ自由のあること(”Playfulness for All”)」が、「仲間はずれのいない社会」への道なのではないかと思うのです。

    おわりに

    最後はかなり抽象的な話になってしまいました。

    私たちの国内での活動は、フツーのスポーツとはちょっと違う「仲間はずれを生まないスポーツ」を作るための工夫を織り交ぜていて、それが広がっていけばきっと「仲間はずれを生まない社会」に近づいていくのではないかと考えている、というお話でした。

    ホームレス・ワールドカップという世界大会に出る際にも、私たちが考えるスポーツのあり方を体現することを目指しています。日本チームは残念ながら、上位進出を狙えるような「サッカー強者」ではありません。サッカーが上手い人もそうでもない人も、両方チームには含まれています。

    そんななかで、みんなが「勝つこと」だけでなく、どんな実りのある経験と楽しさをそれぞれに持ち帰ってくれるのか、楽しみにしていただきたいと思います。

    ありがたいことに大会形式は、全チームが最終日までずっと試合を出来るようになっています。チーム全員の楽しさを作る試行錯誤の連続を、オスロでも精一杯楽しんで来たいと思います。

    次回はもう少し具体的に、サッカーを通じて国内でどんな仕組みづくりをしていきたいのか、ということをお話しできればと思います。

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    ホームレス・ワールドカップ日本チームのオスロ大会出場と国内活動基盤強化に向けたクラウドファンディングを継続中(6/30、23時まで)です!

    https://readyfor.jp/projects/diversity-soccer-2025

    ご支援・ご声援、よろしくお願いいたします!

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