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連茉小説 | 春、ふたりの゜ナタ #9 《完結》

この䜜品は #創䜜倧賞2024 応募䜜品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》


 最埌の孊校が終わった。

 扇ヶ谷の家に戻るず、玄関にスヌツケヌスが䞊べられ、お手䌝いさんが私を出迎えおくれた。
「お嬢様の荷物ももうこちらにたずめおございたす。寂しくなりたすが、たた垰っおきた時はご連絡くださいね」
「ええ、今たでありがずう。きっず連絡するわ」
 慌ただしく階段から降りおきた母が、私の存圚に気づく。
「あず時間埌に空枯に向かうわよ。あなたも早く支床しお」
「はい、お母様」
 そう蚀っお早々ず廊䞋の奥ぞ去っお行く母。その背䞭をじっず芋おいた。

 これからりィヌンに行くずいうのに、䜕の感情も湧かなかった。
 私の心はぜっかりず穎が空いおしたったようだ。
 クラスメヌトたちは私が垰る時、泣いおお別れを蚀っおくれたけれど、䜕の悲しさも私には湧かなかった。
 すでに、私の感情も涙も、今朝の時点で䜿い果たしおいたから。
 今朝、真名に告癜された。私が転校する前に間に合うように小説を曞き䞊げおくれた。きっず䞀生懞呜曞いおくれたんだろうなず思っお、嬉しかった。
 読んでいくうちに、なんずなく私に䌌たルナずいうキャラクタヌが登堎しお、その人物に感情移入しながら読んでいった。だんだん、ルナず぀くしの関係はたるで私ず真名のようだなっお思っおいっお  。
 途䞭で真名の私ぞの感情に気付いた。

   本圓は、前からなんずなく気付いおいた。


 母に愛されない私は誰にも奜かれないず思っおいた。
 母が私に関心がないず気付いおから、私は母の興味を匕きたくおピアノを頑匵った。苊手なコンクヌルも出続けたし、週末も遊ばずに厳しいレッスンに耐えた。
 そんな私を芋お私を奜きず蚀われおも、それは私に察しおの奜意じゃないず感じた。孊校のみんなも結局、䞊蟺の私しか芋おないんだっお思った。
 䞀幎の終わり、先茩から鍵を枡されお、準備宀で䞀人でピアノを匟いた。
 初めお自由を感じた。あんなに小さな郚屋の䞭にいるのに、広い䞖界ぞ解攟された気分になった。無理しお匟いおいたピアノも、本圓は嫌いじゃないこずに気付いた。
 むしろ、音楜が前よりも奜きになった。
 誰も知らない堎所にいるのはなんお居心地が良いんだろう。
 私は䞀人でいる方が奜きなんだ。そう思った。
 でも真名ず䌚っお、だんだん倉わっおいった。

『さっきの曲、すごくきれいで、たるでこの桜みたいな曲だった』
『  凄い。 䜜曲もしちゃうなんお。やっぱり月代さんは凄い人なんだね』
『私、あの曲すごく奜き』

 真名はずおも繊现で、私の䜜った曲を理解しおくれた。
 私がありのたたで䜜った曲を、奜きず蚀っおくれた。
 初めお誰かに「私」を認めおもらえた気がした。

 私は真名に䌚いに孊校ぞ行くのが楜しくなった。
 私は䞀人がっちだから、友人に奜かれる真名が玠敵だず思った。
 仲良くなりたくお、音楜準備宀ぞ初めお他人を招き入れた。
 䞀緒に過ごすうちに、私の䞭で「特別な人」に倉わっおいった。
 真名も私ず同じ気持ちでいるような気がしおた。
 でも真名の気持ちが本圓かどうか確かめたくお、い぀も詊すようなこずばかりしおいた気がする。

 垰囜しおから、母の様子がい぀もず違った。
 「私の挔奏を芋たい」ず蚀っおきたのだ。
 今たでそんなこず蚀われたこずなかったから驚いたけれど。
 もしかしたら、母は私に興味を持っおくれ始めおいるんじゃないかず期埅した。
 でも、いざ母に芋られるず私の指は石のように固たっお、動かなくなった。
 緊匵ず焊りでい぀も通りに挔奏が出来ない。母の顔は怖くお芋れなかった。
 ため息ず䞀緒に、母はこう蚀った。
「  いいわ、私の遞ぶ先生を぀けおあげるから、もっず緎習に励みなさい」
 そう蚀っお、週末は母の知り合いに頌み、レッスンを付けおくれたのだ。
 でも私は、自ら玄束を砎っおしたった。
 叩かれた時に感じたのは、い぀も凪のように静かな母だけど、本圓は嵐のような倧きな感情が枊巻いおいるのだずいうこず。そういう人だず初めお知った。
 本圓に傷぀けおしたったのかもしれない。
 そう思っお、ずおも申し蚳なくなった。
 でも、母から「私をりィヌンに連れおいく」ず蚀われお、真っ先に思ったのは真名のこずだった。
 真名ず離れるのは嫌、ず思った。
 でもこれ以䞊逆らっお、母に芋捚おられるのが怖かった。
 だから、嫌っお蚀えなかった。
 真名が告癜しおくれた時、嬉しかったのず同時に、勇気があっおすごいなず思った。
 自分の気持ちに正盎にいようずする真名を芋お、私はどうなのか考えおいた。

 私は真名のように匷くなれない。 
 そんな情けない私が、真名の隣にいる資栌、あるのかな


 車は高速に入り、私ず母を乗せお囜際空枯ぞ向かう。
 車窓から、黄昏時の街䞊みが凄い速さで目の前を通り過ぎお行く。
 誰かず過ごす時間は有限なんだず知った。
 もっずたくさん話したいこずがあった。今気づいおも遅いけれど。

 囜際空枯の第二タヌミナルに到着する。
 空枯内は各囜ぞ向かう䟿の案内のアナりンスが響き、本圓に日本を出るんだなず感じた。
「行くわよ」
 母はチェックむンカりンタヌぞ向かっおいく。
「はい  」
 私は母の埌を远っお歩き出そうずした時だった。

 チャリン。

 空枯の床ぞ鍵が萜ちる音が響いた。
 音楜準備宀の鍵だ。慌おお準備したから荷物に玛れ蟌んでしたったようだ。
 私が持っおいおももう意味ないのに  。
 䌚った時に真名に枡せばよかった。そうしたら  。
 その時、真名があの郚屋で䞀人、寂しそうに座っおいる情景が浮かんだ。
 あそこから芋える、校庭の桜を䞀人芋おいる真名の姿が目に浮かんだ。
 衚情は分からなくお、でもその背䞭は寂しそうだった。
 その時私は、急に真名が曞いた小説の結末を思い出した。

《春の囜に平和を取り戻した埌。トンネルが぀くしのいる䞖界に通じるようになった。しかし、今すぐトンネルを出ないず次に開くのは十幎埌になっおしたう。぀くしを送り出そうずするルナ。぀くしは垰りたくない、ず話す。ルナは「ここにずっずは居たらダメ、぀くしは自分の䞖界ぞ戻っお。たたい぀かきっず、䌚いたしょう」ず、぀くしず玄束をする。泣きながらトンネルを抜ける぀くし。振り返るず、トンネルはもう閉じおいお、春の囜ぞはいけなくなっおいた。悲しみに包たれる぀くしだったが、ルナず過ごすこずで勇気を埗た぀くしは孊校ぞ行き、友人を䜜るこずができるようになった。それから時が経ち、十幎埌、倧人になった぀くしは䟋のトンネルの前に立っおいた。トンネルの䞭から春颚に乗っお、桜の花びらが぀くしの顔に萜ちおくる。おわり》。

 私はハッずした。
 もしかしたら、真名はずっず埅っおいる぀もりかもしれない。
 私が垰っおくるたで、それこそ十幎の月日が経ったずしおも。
 その間、真名はずっず䞀人で桜を芋るのかしら。
 そんなこずないわよね、きっず違う人が隣にいお  。

 その時、私の胞はきゅうっず締め付けられた。

 ああ、嫌だ。埅っおいおほしい。他の人を遞ばないで欲しい。
 わがたたかもしれないけれど。

 真名の隣は私でいたい。


「有垌子 なにしおるの 早くこちらぞ来なさい」
 母が立ち尜くす私に気づき、呌びかける。
「  」
「  有垌子、早く」
 私は母の声に怯え、震える手をぎゅっず抌さえ぀けた。
 そしお、母をたっすぐ芋た。

「  お母様、  私行けない」

「  どういうこず」
「  私、自分の生き方は自分で決めたい」
「  」
 母は静かに驚いたような目をしお私を芋た。
「私、お母様に嫌われたくなくお、蚀えなかったけれど、ずっずピアノを匟くのが苊痛だったの」
「  」
「でもお母様の埌を远いかけなきゃっお、じゃなきゃ眮いおいかれちゃうっお思っお、ずっず䞍安だった。だから、私頑匵らなきゃっお思っお続けおいたけど、でもだんだん蟛くなっおきお  」
 母は黙っお聞いおいる。䜕を思い聞いおいるのかはわからない。
「今幎、先茩から鍵をもらっお  、音楜準備宀の鍵で、そこでこっそり匟くようになっお。誰も芋おいないから、すごく気が楜になっお、ピアノが楜しいんだっお初めお気づいお。それで奜きに、自由に曲を䜜っお匟いおいたの」
「  」
 母は少し䜕か思うような衚情をした。私は続けお話す。
「音楜準備宀で自由に匟いおいる時間が倧切なの。私の曲を奜きず蚀っおくれる人がいるの。その人ず過ごす時間が、私にずっお今すごく倧事なの  だから  っ」

「わかったわ」

「  え」
 聞き間違いだろうか。母は確かに今わかった、ず蚀ったんだろうか。
 母は衚情を倉えずに続ける。
「私、あなたを䞀人にしおしたったこずに負い目を感じおいたの。だから今床こそ偎で面倒を芋ようず思ったの。でも、それも私の勝手だものね」
「  え」
 意味がわからなかった。だっお、母は  。
「私のこず、どうでもいいんじゃないの  」
「  この間もそういうこず蚀っおいたけれど、そんなこずないでしょう。あなたは私の嚘なんだから」
「  だっお、私芋たの  。お母様がむンタビュヌで『家族よりもなによりピアノが奜き。私はピアノにしか興味が持おない』っお  」
「  そういうこず」
 母は玍埗したように深くため息を぀いた。
「そんなのを気にしおいたのね」
「気にするわ  、お父様だっお  」
 父ず聞いお、母は少し寂しげな衚情を浮かべた。
「  きっず私がいけないのね。あたり二人ずの時間取れなかったから  。でもね、そのむンタビュヌは違うわ。私、そんなこず蚀っおない。『今は、家族ずの時間よりピアノに集䞭したい』ずは蚀ったず思うけれど」

 そんな  、じゃあ私はずっず勘違いをしおいたっおいうこず  

「蚘事なんおね  、ほずんどは嘘ばかりだず思っおるわ。どうしおも、気を匕くようなこずを誇匵しお曞かれおしたう。だから私は、あたり気にしないようにしおたんだけど。有垌子たちは、そうじゃなかったのね  」
 そんな  。
「でも、この間私のこず叩いた  」
 私は頬の痛みを思い出しお、頬を手で抑えた。
「それは、ごめんなさい  。あなたから『私のこずなんお、どうせ興味ないでしょう』っお蚀われお、びっくりしたの。私はこんなに愛しおいるのに、䌝わっおないこずが悲しかった。でも、私はこんなにも自分の気持ちを䌝えられおないんだっお気づいた。だから、やっぱり偎に眮かなきゃいけないんだっお思ったのだけど  」
「  」

 愛しおいるっお蚀った 私のこず。

「あなたは子䟛の頃から、芪に気を遣っお、自分の気持ちを蚀わない子だった。でも、い぀のたにか、有垌子も倧人になっおいたのね」
 母は私に近寄り、私の頭に手を眮いた。こんなに枩かい手  。

「愛しおいるわ、本圓よ」

 その瞬間、私の頬に倧粒の涙が溢れるのを感じた。
 声を䞊げお、私は母の胞で泣いた。
 母はそんな私のこずを優しく抱きしめおくれた。
 私の䞖界が、光で満たされお行くのを感じた。

 母は私の涙を拭っお、少し埮笑んだ。
「それに  」
「  」
「準備宀のピアノ、ただ残っおいるのね」
「え  」
 私はきょずんずしお、母を芋た。
「あのピアノは私が盎したのよ」
「えっ  うそ  」
 䞀人目のピアニストっお、たさか母のこずだったなんお  。
「あのピアノは私のお気に入りでね、あなたず同じようにレッスンが蟛い時は、音楜宀に行っお奜きな曲を奜きなように匟いおいたわ」
「  お母様もそんなこずを思うのね」
「圓たり前でしょう。誰だっお蟛い時期はあるわ」
「  そうだったのね」
 私は少し母に芪近感を持぀こずが出来た。
 母も最初から完璧じゃなかったのだ。
「幎代物だったから調子が悪くお、ある時に準備宀に仕舞われおしたったの。それが悔しくっお、こっそり忍び蟌んでピアノを盎しおたわ。それだけじゃ面癜くないから、この準備宀をピアニストたちの秘密の隠れ家にしようっお思い぀いたの。音楜が奜きな埌茩たちの助けになりたすようにっお  。たさか今でも続いおるなんお思わなかったけれど」
 私は手に握っおいた鍵を芋た。
 この鍵は、母の代から巡り巡っお私の元ぞ匕き継がれたんだ。
「ふふっ」
「なにがおかしいの」
 母はキョトンずしお、私を芋る。
「いえ、別に  」

 やはり私ず母はどうしたっお、ピアノを通しお繋がっおいるのだ。



 有垌子がいなくなっお、䞀月ひず぀きが経った。
 私はあれから、心の䞭にぜっかり穎が空いたようで、がうっずするこずが増えた。
 どうやったら、この穎は埋たるんだろう  。
 春は過ぎ、梅雚がやっおきお、しばらく憂鬱な日々が続いた。
 そんな䞭、文芞コンクヌルの結果発衚の日がやっお来た。
 千景、やたちゃん、姫子には私がずっず小説を曞いおいたこずを話した。
 䞉人ずも芋せお芋せおず盛り䞊がっおいたが、さすがに恥ずかしくお読たせなかった。
 みんなで結果発衚の茉った掲瀺板を芋に行った。
 なんず、私の小説は䜳䜜を獲っおいた。
「嘘でしょ  」
 最初、目を疑ったが、確かに私の名前が曞かれおいた。
 みんなで顔を芋合わせる。
「すげぇ」
 ハむタッチしお、やたちゃんたちも䞀緒になっお喜んでくれた。
 頑匵っおよかった、心からそう思った。
 掲瀺板の䞋に貌り付けおあった䜜品講評の所には䞀蚀、陜河ナむ先生からの蚀葉が添えられおいた。

《技術党般はただ未熟ですが、䜜者の匷い想いが物語党䜓に䞀぀の匷い光を攟ち、私の心に匷く響きたした。私もこんな玠敵な恋をしおみたいな。》

 私は嬉しくお、思わず顔がニダけおしたった。
 じわじわず受賞の喜びを噛み締める。
 でも  。
 ああ、有垌子もこの堎にいたら良かったのに  。
 どうしおも、そう考えおしたう  。

 いや、有垌子もりィヌンで今頃、頑匵っおるんだ。
 私だけい぀たでも元気がなかったら有垌子に心配されおしたう。

 そうだ、早く次の䜜品を曞こう。
 創䜜に打ち蟌んでいたら、きっず有垌子のこずを考えなくお枈む。


「いっおきたす」
 今朝たで降っおいた雚が止み、通孊路のあちこちにできた氎たたりがきらきらず光っおいる。それを飛び越えるように、私は孊校ぞ向かう。

 久しぶりの早朝の教宀。
 窓の倖からは、気が早い蝉たちの鳎き声が聞こえおきた。
 私はノヌトを広げ、さぁどうしようかず考え始めた、その時。

 ピアノの音が聞こえた。

 華やかな春の音色が窓の倖から聞こえおくる。
 私は顔を䞊げ、たさか、ず思い぀぀、窓から、音楜準備宀を芋た。
 窓が開いおいお、誰かの圱が芋える。

 私は急いで教宀を出お、萜ちそうになるくらいの勢いで階段を数段飛ばしで飛び降り、誰もいない廊䞋を走り抜け、ピアノの音が響き続ける音楜準備宀ぞ向かった。

 ドアを開けた。
 そこには確かに、楜しそうにピアノを奏でる有垌子の姿があった。
「有垌子」
 私の声に、有垌子は挔奏する手を止めた。
「なんで  」
 有垌子は私の方を芋お、口を開いた。
「  びっくりした」
 そこにはい぀もず同じようにいたずらっぜく笑う有垌子がいた。

 私は䞀気に気が抜けたように、倧きく息を吐いた。
「びっくりするに決たっおるでしょう  」
 有垌子は嬉しそうに「ふふふ」ず笑う。
「それで、どういうこず」
 有垌子は優しい目をしお蚀う。
「  母の気が倉わったの」
「お母さんの」
「䞀ヵ月前の出発の日、私が駄々を捏ねたの。私はこの郚屋で過ごす時間が倧切で、真名ずいる時間がなにより倧事なんだっお」
「  」
   今、私ずいる時間が倧事だっお蚀った
「そう蚀ったら母が、あなたの奜きにしなさいっお」
「  」
「真名」
 有垌子が私の元ぞ歩み寄っお蚀った。

「私もあなたが奜き」

「  」

 有垌子は私の返事を聞く前に、私にキスをした。

 有垌子の柔らかい唇が觊れる。
 䞀瞬のような長いような時間が流れる。
 有垌子の優しい銙りに包たれ、私はくらくらしお倒れそうだった。
「倧䞈倫」
 有垌子は私の腰を抱き止める。
「う、うん  」
 有垌子のきれいな顔が近くにあっお、䜙蚈にくらくらした。
「埅たせおごめんね  」
 少し申し蚳なさそうに埮笑む有垌子。
「ううん  、っおそうだよ」
 私は我を取り戻し、有垌子に噛み付くように蚀った。
「こんな䞀ヶ月も連絡よこさないで   いたなら蚀っおよ   私がどれだけ  」
 そこたで蚀っお、私は長いため息を぀く。
 どうせ有垌子のいたずら心なんだろう。
「ふふ、ごめんね。違うの」
「え」
 有垌子は私の手を匕いお、ピアノの前たで連れお行く。
 ピアノの前に座り、有垌子は眮いおある楜譜を指差した。
「昚日たで、ずっずこの曲を䜜っおいたの」
「え  」
 私は拍子抜けしたような顔をしおしたった。
「曲   もしかしお、䞀ヶ月この曲を䜜っおいたの」
「そう。  真名が私のために小説を曞いおくれたでしょう。すごく嬉しくお、だから私も䞀生懞呜、真名のために曲を䜜ろうっお思ったの」
 私のための、曲  。それをずっず  。
「有垌子  」
「真名」
 有垌子は私の手を優しく取っお、隣の怅子に座らせた。

「来幎もたた䞀緒に、桜を芋たしょう」

 そう蚀っお、有垌子は矎しい指先で、鍵盀を優しく匟き始めた。
 初倏の音を掻き消すように、有垌子の生み出す春の音色は倧きく私の心の䞭に暖かな光ずなっお広がっおいった。


 この曲のタむトルは『春、ふたりの゜ナタ』。


《おわり》

いいなず思ったら応揎しよう

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