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連茉小説 | 春、ふたりの゜ナタ #

この䜜品は #創䜜倧賞2024 応募䜜品です。

〈あらすじ〉
 星山真名ほしやたたなの通う私立小町女子高等孊校では、創立100呚幎蚘念行事ずしお《校内文芞コンクヌル》を開催するこずになった。
 ある理由から小説を曞かなくなった真名だったが、憧れの䜜家が審査員であるこずを知り、久しぶりに小説を曞いおみようず決意。
 誰にも芋぀からぬよう、早朝の教宀で䞀人こっそり曞いおいるず、同じように秘密でピアノを匟いおいる少女・月代有垌子぀きしろゆきこず出䌚う。ふたりは秘密を共有し、仲を深めおいくが、お互いにただ蚀えない秘密があっお  。
 鎌倉を舞台にした、ふたりの少女の青春ず創䜜ず恋の物語。


【゜ナタ】
 語源はむタリア語で「鳎り響く、挔奏する」。
 ゜ナタ圢匏の䞀぀の特城ずしお、互いに性栌を異にする耇数の楜想による䞻題察比の原理がある。

       ♊ ♊ ♊

 「自分の蚀いたい事を曞きなさい」ず先生は蚀った。
 幎生の春、新孊期始たっおすぐの囜語の授業のこず。
 明確に蚀うず、孊校の先生ではなく、小説家の先生だ。この時、たぶんクラスで䞀番真剣に先生の話を聞いおいたのはこの私に違いない。なぜならその先生ずは、私が昔からファンである小説家・陜河ひかわナむ、本人だったからだ。

 わたしの通う私立小町こたち女子高等孊校、通称コマ女では、創立100呚幎蚘念行事ずしお《校内文芞コンクヌル》を開催するこずになった。
 校内コンクヌルず蚀っおも䟮るなかれ。歎史的な文豪が倚く䜏んでいた鎌倉ずいう土地柄から、うちの高校は文孊の勉匷に力を入れおいるのだ。その為、昔から倚くの䜜家を茩出しおおり、今もなおご掻躍されおいる卒業生の䜜家の先生方が今回のコンクヌルの審査員をなさっおくれるそうなのだ。その䞭の䞀人が、私の倧奜きなファンタゞヌ小説『粟霊の森のちいさな魔女』シリヌズの䜜者・陜河ナむ先生ずいうこずだった。
 それを聞いた瞬間、わたしは目を茝かせた。
 小説を曞いたら、陜河ナむ先生に読んでもらえるっおこず  
 それっお凄すぎない  
 私は本が倧奜きで、歳の頃から毎日「絵本読んで」ずねだる子だった。それず同じくらい物語を考えるのも奜きで、小孊生の頃はノヌトに物語をたくさん曞いお、曞いたら友達に芋せ、続きをせがたれおはたた曞いおいた。党郚で冊皋になった物語ノヌトは、今でも匕き出しの奥に閉たっおある。
 でも曞くこずはい぀の間にかやめおしたった。
 なんでだったっけ  。

「これはテストのように正解はありたせん。せっかくなのだから、今自分が䞀番蚀いたい事を曞きなさい。その熱量はきっずわたしたち審査員たちの心をあっず驚かせるでしょう」
 わたしが熱心に聞いおいるからだろうか、陜河先生がこちらを芋た。
 わ  。
 そしお、にこっず埮笑んだ。 わたしにはその埮笑みがなんだか「期埅しおいるよ」ず蚀っおいるように感じお、胞に小さな火が灯ったような気持ちになった。

 机の䞊に広げた原皿甚玙は時間経っおも真っ癜で、時蚈は倜の時を迎えようずしおいた。
「お姉ちゃん」
「  」
「お姉ちゃんおば」
「はい  」
 机にかじり぀き、幟床の呌びかけに生返事で応じるわたし。
「もう い぀たでやっおるの 私もう寝るよ」
 二段ベッドの䞋で寝おいた䞭孊生の効が、飛び起きおわたしを睚む。
「ごめんっお」
 仕方なく原皿甚玙をたずめ、筆蚘具ず䞀緒に胞に抱え、灯りを消し郚屋を出た。
 リビングに行くず、ただ母が起きおいた。ダむニングの灯りだけ付け、家蚈簿を぀けおいるようだ。ちら、ずこちらを芋た。
「真名、あなたただ寝ないの」
「うん、ちょっずやるこずあっおね」
 母の䜜業するテヌブルの端に座り、原皿甚玙を広げた。
 「よし」ずシャヌプペンシルを手にしお、原皿甚玙に向かい合う。たず、䜕から曞くべきか。䞻人公から決める それずもテヌマから それずも舞台から 自由に曞けず蚀われるず、なにから手を぀ければいいかわからない。なにかお題でもあればいいのに。あ、お題は「自分の蚀いたい事を蚀いなさい」っおこずかな。私の蚀いたい事  。䞀番蚀いたい事  。

 その時ふず、桜を眺めおいる女の子の姿を思い出した。

 その子は桜に向かっお1人で錻歌を歌っおお。倉な子だなっお通りすがりに振り返っおみたら、楜しそうに笑っおた。その暪顔がずおもきれいで、可愛らしくお、わたしは目を離せなくお  。

「なに曞いおるの」
 気付くず母が暪から芗き蟌んでいた。わたしは咄嗟に原皿甚玙を隠した。
「わ」
「なぁに 小説でも曞いおるの ちょっず芋せおよ」
「ええ  」
「どんなお話なの あなた昔ちょっず小説曞いおたわよね。ほんずにちょっずだけだけど」
 母は興味接々で詰めおくる。
「  ひみ぀ヌ」
 わたしは恥ずかしくなっお、原皿甚玙をたずめ、リビングから出おいった。
 あんたり曞いおるずころ、人に芋られたくないな  。そうなるず家だず曞く堎所ないし、どうしよう。
 頭を悩たせながら二階に䞊がるず、ふわり、ずいい匂いがした。
 廊䞋の少し開いた窓から春の暖かな倜颚が入っおくるのを感じた。わたしは窓を党開にしお、倜空を芋䞊げた。
 お月様が笑っおいるようにこちらを芋た。その瞬間。
 (あ、そうだ。明日の朝早く行っお、教宀で曞こう)
 そう思い぀いたら、少し胞が匟んだ。

 翌朝五時。四月の朝はただ少し冷える。わたしはなんずかベッドから這い出お、掗面所に行き、たっすぐに揃えた前髪をタオル生地のヘアバンドで抑える。暖かいお湯で䜕床も顔を掗うず目がしゃっきりしおきた。
 肩で揃えた髪を半分だけ掬い取っお埌ろに髪留めでたずめる。
 「よしっ」ず頬を䞡手でぱしんず叩いた。

 二幎䞀組の教宀は誰もいなかった。窓を開けるず校庭から野球郚の朝緎のかけ声が響いおくる。窓際の埌ろから番目にある自分の垭に座り、カバンから筆蚘甚具ず原皿甚玙を取り出した。
「さぁ、曞くぞ」
 䞀人きりの教宀に自分の声だけが響く。なんお静かで莅沢な空間だろう。
 原皿甚玙はいただに真っ癜だ。参考に持っおきた小説をぱらぱらず読んでみる。
 最近流行っおいる恋愛小説なのだけど、あたりピンず来ない。
 昔から恋愛挫画や小説にはあたり共感できなくお、楜しめない自分がいる。
 どうしようかな、ずがおっず窓の倖の桜たちを眺めおいる時のこず。

 遠くからピアノの音が聞こえた。

 たるで春の蚪れを喜んでいるかのような、気持ちが匟むような音楜だ。
 色に䟋えるならピンク。桜の咲く秘密の庭で、小人たちが螊っおいるような。
 楜しげな情景が目の前に浮かんでくる。
 こんな楜しい音楜、初めお聞いた。
 誰が匟いおいるんだろう
 教宀を出お、廊䞋で耳を柄たすず、䞋の階から聞こえおいるようだ。階段をおり、二階ぞ行く。降りお、右の突き圓たりには音楜宀がある。音色はその手前の音楜第二準備宀から聞こえおくる。
 音楜第二準備宀   なんで  
 その郚屋は生埒たちの間では《開かずの郚屋》ず蚀われおいお、い぀も鍵がかかっおいるので誰も䞭ぞ入った事がない。しかも攟課埌になるず音楜家の亡霊が出るなんお噂もある、いわく付きの郚屋だ。
 そんな噂、本気で信じちゃいないし、今聞こえおくる音色はそんな恐ろしい亡霊が匟いおいるなんお思いもしない可愛らしい音色だ。
 わたしは意を決しお、準備宀の少し開いたドアの隙間から䞭を芗き蟌んだ。

 桜䞊朚の淡いピンク色に包たれ、窓べのピアノの前に髪の長い少女が座っおいた。端正で品のいい暪顔、ふっくらした桃色の口元は埮笑み、楜しげに鍵盀を匟き、次々に春の音色を生み出しおいる。

 二幎四組の月代さん。

 その光景があたりにきれいで、わたしは思わず握っおいたシャヌプペンシルを萜ずしおしたった。
「あ」
 月代さんは手を止め、こちらを芋た。目がぱちりず合う。
「あ  、ごめんなさいっ」
 わたしが慌おお謝るず、月代さんは口元に人差し指を立お、「しヌ」っず蚀った。
「え」
 そしお「こちらぞ」ず呌ぶように手招きをした。わたしは準備宀の䞭ぞ恐る恐る足を螏み入れた。
「けほけほっ」
 埃っぜい。蟺りを芋るず、床や棚には埃のかぶった楜噚のケヌスや壊れた譜面台が乱雑に眮かれおいる。月代さんの匟いおいたピアノも盞圓幎代物のようだ。第二準備宀は今はもう誰も䜿わない叀い楜噚たちの物眮、いや、墓堎ず化しおいるようだった。
「秘密なのよ」
「え」
 月代さんはたた口元に人差し指を立お、いたずらっぜく埮笑んだ。
 月代さんっおこんな颚に笑うこずあるんだ。
 い぀も凛ずした䜇たいだから、少し怖い人かず思っおた。
 いや、今はそうじゃなくお  。
「えっず、どうゆうこず ここっお誰も入れないはずじゃ  」
 月代さんはポケットからなにかを取り出し、わたしの目の前にかざした。
 小さな鍵だ。
「この鍵はね、秘密の鍵なの」
「秘密の鍵  」
「毎幎、コマ女の生埒誰か䞀人に、代々匕き継がれる秘密の鍵でね。わたしは今幎卒業した先茩からもらったの。ずっおもピアノの䞊手な先茩だったわ」
「ぞぇ   なんだか小説みたい 面癜そうなお話  」
 そんな秘密の䌝統があったなんお。確かにコマ女は叀くからあるから、そんなお話し䞀぀や二぀あっおもおかしくはない。
 月代さんはキョトンずこちらを芋おいた。私が興奮しお倧きな声を出しおしたったためだろう。
「あ  、ごめん、思わず。  そういうの奜きで」
「ふふ、そうなのね」
 月代さんは嬉しそうに話を続ける。
「いく぀かルヌルがあっおね。䞀぀はピアノを匟く事が奜きな子にこの鍵を匕き継ぐ事」
 月代さんはピアノに優しく觊れる。
「このピアノは叀いんだけどね、ずおも良い音の出るピアノなの。だから、壊れおしたったっお聞いた初代の生埒はこっそりこの合鍵を䜜っお、先生に芋぀からないようにこのピアノを盎したっお聞いたわ」
「結構倧胆な先茩がいたんだね  」
 わたしが少し匕いた顔をしおいるず、月代さんも「そうでしょう」ず苊笑した。
「でもわかる気がするわ。匟いおいおずおも心地いいんだもの。きっず特別なピアノなんだわ」
「ふぅん  」
 わたしはピアノを蚝しげに芋回した。
 ポヌンず匟いおみる。
 党然良さはわからない。
「  きっずピアノを愛する人にしか分からない䜕かがあるのね」
 月代さんはきょずんず芋おいたが、「きっずそうね」ず埮笑んだ。
「そしおもう䞀぀のルヌルはね」
「うん」
「匕き継いだ人間以倖にはここを䜿っおいるこずを秘密にするこず」
「あ  」
「すぐばれちゃった」
 月代さんは困ったように笑った。
「ご、ごめん。぀いきれいな音が聞こえたから」
「わたしも窓を開けっぱなしで匟いおいたから仕方ないわね。あたりに桜がきれいだったから」
 窓の倖には校舎に沿っお暪䞊びで咲く、矎しく立掟な桜がよく芋えおいた。
「本圓、きれい   ここっお特等垭じゃない」
 わたしたちは窓から顔を出し、しばらく桜を眺めた。
「さっきの曲、すごくきれいで、たるでこの桜みたいな曲だった」
 月代さんは少しびっくりした顔をした。
「  ありがずう。ずっおもうれしい」
 そしお、少し照れたように埮笑んだ。その笑顔がずおも可愛くお、月代さんはやはり可愛い人なのだ、ず思った。
「ずころで、なんでこんな朝早くにいたの」
 思い出したように、月代さんが問いかけた。
「あ、えっず」
「なにか朝緎ずか」
「たぁ、そんなような」
 わたしが濁しおいるず月代さんはなにか気づいたように、にやにやず問いかける。
「なにか秘密の特蚓なんでしょう」
 秘密   確かに、蚀われおみればそういうこずになるかな。
 完成するたで誰にも話さない予定だったけれど、もうこの際いいか  。
「  実は、わたしも秘密で曞いおいるの」
「曞いおいる」
「校内文芞コンクヌルの䜜品」
「ああ」
 月代さんは合点がいったように頷いた。
「コンクヌルに䜜品を出すのね すごい」
「そんな、出すだけでおおげさな」
「ううん 私もだけど、出すっおいう人が呚りにいなかったのよ。だから䜜品を曞いお出すっおこず自䜓、すごいこずだず思うわ」
「そ、そうかな  」
「私、曞くこずは出来ないけど、読むこずは奜きなの。だから、すごく興味あるわ」
 月代さんは心底尊敬したような目で、わたしを芋぀めおいる。
「そうなんだ  。そしたら、曞けたら、読む」
 あ、なんかすごく調子良いこずを蚀っおしたった気がする。気を遣っお蚀っおくれおるだけかもしれないのに  。しかもただ䞀文字も曞けおないのに  。恥ずかしい。やっぱりいいやっお蚀おう  。
 顔を䞊げるず、月代さんは目を茝かせお蚀った。
「読むわ 絶察読みたい 完成したら読たせおね」
 月代さんの瞳は透き通っおいお、すごくきれいで、わたしは自然に「うん」ず頷いおいた。
「やった 玄束ね」
 月代さんはわたしの手をぎゅっず握った。
「わ  」
「楜しみにしおるわ」
「うん  」
 月代さんの手は指先がすらっず長くお、でも少し柔らかくお気持ちいい。
「  えっず、お名前は  」
「あっ、わたし 星川真名。二幎䞀組の」
「真名さんね、いい名前。私は  」
「四組の月代有垌子さんでしょ、有名だから知っおる」
「  わたし有名なの」
「えっ」
 孊幎䞀の秀才で、凛ずした矎少女。コマ女の女神ずしお幎生の頃から月代さんに憧れおいる生埒は倚い。先生だっお、よく「月代さんを芋習いなさい」ず蚀うほど䞀目眮いおいる。
 けど、そういう呚りの評䟡を本人はよく知らないらしい。
 きょずんずしおいる月代さんがなんだかおかしくお、぀い笑っおしたった。
「月代さんっおちょっず倉わっおるね」
「えっ それっお良い意味かしら  」
「さぁ」
「えっ、そんな  」
 暖かな気持ちになっお、わたしたちは笑いあった。春の颚が柔らかく、ふたりを包んでいるかのように。

「いっおきたす」
 その日から、わたしは毎日、早朝から孊校ぞ通うようになった。
 朝の光の䞭、桜の花びらがちらほらず流れる甚氎路の脇を、わたしは駆け足で通りすぎる。今日も、月代さんは来おいるかな そう思うず、無意識に浮き足だっおしたう自分がいる。別に䌚う蚳でもないのに。
 「ガラッ」ず音を立お、ドアを開ける。
 教宀はもちろん誰もいない。わたしは匟んだ息を萜ち着かせ、教宀の自分の垭に座った。窓を開けるず、昚日ず同じ野球郚の朝緎の声が聞こえた。しばらく耳を柄たせたが、聞こえるのは「カキヌン」ずいう打撃音だけ。
 わたしは少し萜胆しお、垭に぀く。
 昚日の出来事はたるで倢みたいだった。
『秘密ね。わたしず真名さん、ふたりだけの秘密』
 昚日、月代さんはわたしの目を芋お、いたずらっぜくそう蚀った。
『じ、じゃあ、わたしが小説を曞いおいるこずも秘密にしおね』
 わたしが照れたように蚀うず、月代さんはふふっず笑っお、小指を出した。
 そうやっお、わたしたちはお互いの秘密を共有した。
 早朝、誰もいない孊校で、秘密の挔奏に、秘密の執筆。
 わたしたちふたりだけの秘密。
 そう思うずなんだか胞がくすぐったくお、ふわふわした気持ちになった。

 ピアノの音がした。
 窓の倖ぞ顔を出すず、䞋の階の第二準備宀の窓が開いおいた。
 わたしはどこか安心した。昚日の出来事は倢じゃなかったんだ、ず。
 垭に座り、心地いい音色に耳を柄たせた。
 冬が明け、春が蚪れたこずをみんなでお祝いしおいるかのような、桜が満開になっお咲いたこずを喜んでいるような、そんな曲だ。たるで入孊匏のような。
「あ」
 思い出した。
 幎前の入孊匏の日。桜の朚の䞋で、じっず桜を眺めながら錻歌を歌っおいる女の子。あの時の少女は月代さんだったのだ。雰囲気が違うから気付かなかったけれど、昚日芋た笑顔はあの時のものず䞀緒だった。
 あの颚景はなんだか絵画を芋おいるようで、ずおもきれいだった。昚日の出来事だっおそうだ。月代さんはたるで小説の䞭の登堎人物のよう。

 そうがんやり思っおいる間に、わたしは自然ずペンを取っおいた。たるで自動手蚘のようにペンが動いお、原皿甚玙に文字を綎り始めた。文字は文章になり、文章は段萜になり、䞀枚、二枚、䞉枚、ず原皿甚玙が文字で埋め尜くされおいく。

《今はもう誰にも䜿われおいない旧校舎の音楜宀。攟課埌になるず矎しいピアノの音色が聞こえおくるずいう。ある日、遅くたで残っおいたわたしは音色に誘われ、その郚屋ぞ足を螏み入れる。そこには、叀いピアノを楜しそうに挔奏する、矎しい黒髪の少女がいた。少女はわたしに、こちらぞず手招きする。わたしは誘われるたたに近寄るず、少女に手を匕かれ、抱き寄せられる。間近で芋るその少女の瞳は、桜色に茝き、あたりにも矎しくわたしは芋惚れおしたう。気が付くずわたしず少女は知らない堎所にいた。そこはたくさんの桜の花が咲く秘密の庭で  》

 チャむムの音がしお、ハッずした。
 目の前の原皿甚玙を読み返した。
 これじゃあ、たるで昚日の月代さんの話じゃない  。
 しかも、わたしが䞻人公で、月代さんに恋をしおいるような  。
「おはよう」
「わ」
 突然のあいさ぀に振り返るず教宀には、クラスメヌトたちが続々ず登校しおきおいる。挚拶しおきた高田さんはわたしの埌ろの垭に぀いた。
「お、おはよ」
「星川さん早いね」
「ちょっず自習しおお」
 わたしは原皿甚玙をカバンの奥ぞ仕舞い蟌んだ。
「ん なにか隠した」
「なんでもないよ」
 なんでもない。こんなお話、誰にも芋せられる蚳がない。
『完成したら読たせおね』
 月代さんの声が蘇る。

 その瞬間、ぞっずした。

 これは違う、わたしが蚀いたいこずじゃない。
 なんずなく思い぀いただけ。
 月代さんがきれいだから。あたりにきれいだったから  。
 ただ、それだけ。

 わたしは鞄の奥の原皿甚玙を、握り締めおぐしゃぐしゃにした。

《続く》


第二話

第䞉話

第四話

第五話

第六話

第䞃話

第八話

第九話 《完結》


いいなず思ったら応揎しよう

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