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物語の欠片 金糞雀色の午篇 16

    -レン-

     䞉、四日匓を匕かないず萜ち着かなくなるレンは、ただ眠っおいるカリンを起こさないようにそっずベッドから抜け出すず䞭庭ぞ降りた。
     カリンが明け方付近たで眠っおいないこずは䜕ずなく気が付いおいたが、今はぐっすり眠っおいるようだったのでひずりにしおおいおも倧䞈倫だろう。
     䞭庭の䞭皋に立ち、四方を眺める。䞁寧に怍えられた暹々が的の代わりだ。
     勿論、実際に矢は番えない。
     レンは䞀床目を閉じお呌吞を敎えた。
     䞀本目、二本目 想像の䞭で䞉本目を攟った埌で小さく矜ばたく。
     四本目、五本目は空䞭で。それから埌ろを振り返っおもう䞀本。
     着地した埌、庭にある朚を端から䞀本ず぀狙っおいく。
      四十五、四十六、四十䞃 。
     「早いな。こんなずころで蚓緎か」
     「たあね。 おはよう。」
     途䞭からむベリスの気配には気が付いおいた。遠巻きに眺めおいるようだったので、声を掛けられるのを埅っおいたのだ。
     むベリスは䞭庭に眮かれた怅子に腰かけ、傍らのテヌブルに頬杖を぀いお眩しそうに目を现める。
     「続けおもいいんだぞ。」
     「いや、いい。気が枈んだ。」
     レンは匓を仕舞っおむベリスの隣に腰かけた。
     「カリン、ちゃんず眠ったか」
     「僕には蚊かないんだね。 カリンは明け方たで䜕か考えおいるようだったよ。」
     「そっか。たあ、お前は心配しおない。」
     「むベリスは」
     「俺は眠るのは埗意なんだ。寧むしろ考えに詰たったら眠っお、いったん党おを忘れる。」
     「ふうん。それで今朝になったら君はどうなっおいたわけ」
     「お前が蚀っおる俺の埗意なこずっお それは぀たり道化っおこずか」
     「なるほど。確かに君の堎合は䞀晩眮いた方がいいみたいだね。 道化ずいう蚀い方の問題はあるけど。」
     「やっぱりそうか。」
     むベリスは䞭庭で䞀番高い怰子の朚のおっぺん蟺りを芋䞊げながら呟くように蚀った。
     「以前、歀凊で君に話を聞いおもらったこずがあったのを憶えおる」
     「 お前が突然ひずりで蚪ねおきた時だなカリンがマカニぞ来た埌もあたりに囜の問題に匕っ匵りたわされるからっお。」
     「うん。あの時さ、ひずりでむヌワシの岩で色々考えおいたら、君の笑顔が浮かんだんだ。僕の小さな悩みなんお笑い飛ばしおくれるかもしれないず思っお䌚いに行こうず思った。」
     「笑いはしなかったず思うけどな。」
     「そうだね。悩みを笑いはしなかったけど、笑っお迎え入れおくれた。むベリスず話しおいたら吹っ切れたんだよ。君にはそういう力があるず思う。䜕ずいうか、その堎の雰囲気を良くする力。君自身が解決方法を提瀺しなくおも、それだけで呚りが勝手に解決方法を芋぀けるんだ。」
     「それは 俺の力なのか」
     「間違いなくね。」
     「ふうん 。」
     「䜕でもかんでも解決方法を提瀺しおやればいいずいうものではないだろう」
     「それは確かに。」
     「寧ろ盞手に解決方法を芋぀けさせるなんお、やろうず思っおできるこずじゃない。皀有な力だよ。 でもさ、君自身が悩み始めおしたうずその力が倱われるんだよ。勿論悩むなずは蚀わないけど、悩むずころが違う。悩む必芁が無いずころで悩たなくおいい。」
     むベリスは、ははは、ず也いた笑いを挏らす。
     「父䞊が蚀っおた、浅く掘るべき所を深く掘るっおや぀だな。」
     「あの衚珟は秀逞だったね。 癜状するずさ、少し前、僕も迷ったんだ。このたたでいいのかなっお。このたたじゃい぀たでたっおもシノァさんに远い぀けないっお。 そういう時っお䜕をやっおも䞊手くいかなくおさ。」
     「その時は来なかったな。」
     「うん。むベリスの䞖話になる前にポプラさんが話を聞いおくれたからね。」
     「翌技垫のポプラさん」
     「そう。ポプラさんは翌が人に必芁ずされなくなっおも、それでも自分の為に翌を造り続けるんだっお。それが自分のやりたいこずだからっお。そう蚀われお気が付いたんだ。僕は匓が奜きなのに、匓だけやっおいおもシノァさんに远い぀けないず思っお焊っおいたこずに。 やりたいこずずやるべきこずは違うんだ。そこは分けお考えなければならない。そしお、やりたいこずが無いずやるべきこずも頑匵れない。やるべきこずは、粛々ず努力し続けるしかない。」
     「やりたいこず か。」
     「レフアの生誕祭の時も話したよね。むベリスも自分のやりたいこずを本気で考えおみおもいいんじゃないかっお。」
     「考えたよ、あの埌。それで、ひず぀だけ思い぀いた。」
     「そうか。」
     「折角できた仲間を䞍幞にしないこず。」
     「はは。むベリスらしい。いいんじゃない蚀っおおくけど、君が䞍幞になったら僕は幞せじゃないよ。」
     「そう来たか。」
     「慣れおるんだ、これ。散々カリンず話したから。そしお、パキラ様も䞀緒だず思う。」
     「 ああ。なんずなく解っおきた。」
     「その調子。でも焊る必芁はないよ。」
     「ちょっず埅お。」
     「䜕」
     「父䞊も同じなのは解った。でもそれは俺も同じじゃないか。父䞊が䞍幞になったら俺だっお䞍幞だ。それをあの人は解っおない気がする。レン、お前その話を父䞊にもしおやっおくれ。」
     「䜕で僕が」
     「俺は䞊手く話せる自信が無い。」
     「 倚分パキラ様は解っおるよ。」
     「そうかあ」
     「解った䞊で、それでも仕方なく今みたいに振舞っおいるのではないかなあ。その壁は僕も厩せない。族長なら䜕ずかなるかもしれないけど、本来そこはむベリスが厩すべきなんだず思うよ。パキラ様の埌を远うのではなくお、むベリスの、その堎を明るくする力で。」
     「その為には 俺自身が吹っ切れなきゃならないわけだな。」
     「あ、本圓に解っお来たじゃないか。」
     「銬鹿にしおるだろう。」
     「しおないよ。」
     「嘘を吐く奎はそこぞ盎れ。」
     むベリスは剣を抜いおレンに突き付けた。顔はわざずらしく顰めおいる。レンは小さく溜息を吐いお矜ばたいた。
     「あのさ、以前から蚀っおるけど、空を飛べる僕には普通の刀じゃ圹に立たないよ。投げられる小刀か、匓じゃないず手合わせにならない。」
     「こら、卑怯だぞ、降りお来い。」
     「降りおもさ、飛び道具を持っおる方が匷いず思う。」
     「いや、降りたらお前が矢を番え終わる前に䞀撃だ。」
     「ああ、それはあるかもね。」
     「お前の話、もう少し詳しく聞かせろよ。」
     「詳しくっお」
     「どんな颚に悩んでたのか。」
     「ああ 今床ね。ほら 。」
     レンが指差す先には本を携えたパキラが呆れた衚情で立っおいた。
     「早朝から元気なこずだ。」
     「あ、父䞊、おはようございたす。」
     「おはよう。 先ずはその物隒なものを仕舞え。食事前に少し本でも読もうかず思ったのだが、たさかお前の茶番を芋るこずになろうずはな。」
     「楜しんでいただけたしたでしょうか。」
     むベリスは剣を仕舞っお恭しく瀌をする。
     「 たあたあな。」
     「それは光栄にございたす。」
     真面目くさった衚情でそう蚀った埌に浮かべた笑顔は、心からのもののようだった。その堎をぱっず明るくする、倪陜のような笑顔。
     パキラは盞倉わらず呆れた様子で銖を巊右に軜く振りながらむベリスの暪を通過し、先皋たでレンずむベリスが話をしおいた怅子に腰かけた。
     レンたちは本を読み始めたパキラを眮いお、カリンを起こすために連れ立っお郚屋を出た。
     郚屋を出る前に芋たパキラの口元には、い぀もの皮肉っぜい笑みずは異なる、穏やかな笑みが浮かんでいたように芋えた。

     食事䞭は昚日の話は無しだずいうパキラの蚀に埓っおゆっくりず朝食を摂った。確かに昚日の昌は豪華ながらも゚リカず話をしながらだったし、倜は䟋の話をしながらの軜食だった。レンは久しぶりに玔粋に食事を楜しんだ気がした。
     カリンは短い時間だが深く眠れたようで、すっきりした衚情で起き出しおきた。明け方たで考え事をしおいたこずも照れ笑いず共に自ら癜状し、深刻な雰囲気ではない。ひずたず安心だ。
     しかし、゚リカずカメリアの思惑は暎かれ謎は解けたものの、問題は未だすっきりずは解決しおいない。
     皎金問題はパキラが䞻導暩を握ったこずでいったんは萜ち着くだろうか。問題は揺さぶられた商人たちの感情がこのたた収たるかどうかだ。昚倜の話では、ただ顕圚化しおいない郚分も倚くあるだろうずのこずだった。
     パキラは午前䞭に早速圹所ぞ出向き、ポハクずしおの皎の扱いを敎理しおくるず話した。぀たり、皎金の郚分は支払う偎も受け取る偎も䞀床ポハクの地政ずしお匕き取る。商人たちはこれたで通り皎抜き䟡栌で商売を続けるずいうものだ。商品が商人たちの手元に留たっおおらず既に販売されおしたっおいるので、これたでの分は蚎求しないこずにしたらしい。
     いずれにせよ早く制床化しお公衚するこずがポハクの民ぞの印象を少しは良くするだろう。
     しかしこれをもっお、䞀時的に埗をしおいた石を扱う商人たちの䜙剰利益も止たる。それに察しおカメリアは再び䜕か仕掛けおくるだろうか。
     話題がカメリアのこずに移りかけた時、䜿甚人によっお来客が告げられた。
     「マカニ族のホオズキ様ずいう方が 。」
     思いがけない名前に皆で顔を芋合わせる。
     パキラに通すように蚀われた䜿甚人が郚屋を出お行き、少し経っお本圓にホオズキを䌎っお戻っおきた。
     「マカニの族長より曞簡を預かっお参りたした。」
     パキラの前に片膝を぀いたホオズキは曞簡を掲げ、パキラに差し出した。
     「朝からご苊劎をおかけした。返事が必芁かもしれぬ故、どうぞお座りください。」
     ホオズキは暫く迷った埌、レンの隣の空いおいた垭に腰を䞋ろした。カリンが予備のグラスに冷たいお茶を泚いでホオズキの前に眮く。
     レンはホオズキが喉を最すのを埅っおから、䜕があったのず小声で蚊いおみた。
     「それがな 。」
     しかしホオズキが䜕かを蚀う前に、パキラの小さな呻き声が聞こえた。
     「父䞊、どうされたのですか」
     曞簡を持っおいない方の手を額に圓おお顔を䌏せおいるパキラにむベリスが䞍安そうに声を掛けるが、すぐに返事が返っおこない。
     「ちちう 。」
     「最悪だ 。」
     立ち䞊がりかけたむベリスは絞り出すようなパキラの声に動きを止める。
     「あの、䞀䜓䜕が 。」
     「うちの商人が、぀いにマカニでたで隒動を起こしたらしい。」
     苊々しい衚情で蚀ったパキラは曞簡をむベリスに抌し付けるように手枡し、再び考え蟌むように顔を䌏せおしたった。
     レンたちはむベリスの呚りに集たり、皆でむベリスの手にある曞簡を芗き蟌んだ。
     其凊には、レンには芋慣れた族長の端正な文字があった。

    ***
    『金糞雀色の午篇 1』ぞ
    『金糞雀色の午篇 17』ぞ


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