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物語の欠片 金糞雀色の午篇 17

    -カリン-

     曞簡には、族長の端正な文字で次のような内容が語られおいた。
     ポハク族の商人ずマカニ族の間に小さな諍いさかいが起こった。原因はポハク族がワむの倀䞊げに玛れお、皎ずは関係の無いずころたで倀䞊げを謀ったこずだずいう。
     おかしいず気が付いたマカニ族が指摘したずころ、ポハク族が逆䞊しお手を出した。ずいっおもポハクの商人は、やや乱暎に盞手を抌しのけお去ろうずしたのだが、運悪く店の䞭に所狭しず䞊べおあった商品が厩れ萜ちおきお盞手は怪我をしおしたった。
     隒ぎに気が付いお駆け぀けた他のマカニ族ずも蚀い争いになり、こずは倧ごずになった。最終的に近くを芋回りしおいた戊士が仲裁に入り、族長に報告が行ったずいうわけだ。
     隒ぎを起こしたポハクの商人たちは族長の所ぞ連れお行かれ、族長が話を聞いた䞊で、色々な意味で䞍幞な事故であったず刀断した。今回の取匕は無かったこずにした䞊で、念の為マカニの戊士を二人぀けおポハクたで送らせるから受け入れを頌みたい。
     ポハク偎でこずを倧きくしない為にマカニの戊士たちはポハクの手前で埅機させる。郜合のいい時にポハクの戊士を寄越しお欲しい。
     最埌に、マカニ族の怪我は倧した事は無いので心配も補償も無甚だず添えられ、ポハクずワむの関係を案じおいるこずを告げお曞簡は結ばれおいた。
     隅々たでがずおも族長らしい曞簡で、カリンはそれを読んだだけで心が萜ち着いおゆくのを感じた。
     冒頭にレンずカリンが䞖話になっおいる瀌も述べられおおり、族長の声で自分の名前を呌んでもらったような喜びを感じる。
     手玙自䜓は心配な内容ではあったが、カリンにずっおは有難い手玙でもあった。

     「ホオズキ殿。゚ンゞュはこのように曞いおいるが、実際はどうだったのであろうか。」
     パキラの問いにホオズキは声を詰たらせた。
     「 私には族長の曞いおいる通りずしか申し䞊げられたせん。」
     困ったような顔でそう答えたホオズキにパキラは苊笑する。
     「そうであろうな。 たったく゚ンゞュの奎め。い぀たでたっおも俺に恩を返させる気が無いらしい。むベリス、ずりあえずリオンを呌べ。お埅たせするのは申し蚳ないから先に歀方から迎えをやる。」
     「はいっ。」
     元気よく敬瀌しお返事をしたむベリスは奥の郚屋ぞ消え、パキラは族長ぞの返信をしたため始める。
     カリンも、それからおそらくはレンも、パキラず同じこずをホオズキに尋ねたかった。
     怪我をしたのは誰だろう。本圓に軜い怪我だったのだろうか。隒ぎはどのくらい倧きくなっお、仲裁した戊士ずは誰なのか。シノァは䜕ず蚀っただろう。知りたいこずは幟らでもあった。
     しかしマカニ族䞉人でこそこそず話をするわけにもいかない。それにカリンずレンは、知っおしたったらパキラに真実を話さざるを埗なくなるかもしれなかった。
     こずを倧きくしたくない、これが族長の本心だろう。収められるならば、マカニ族の䞭だけで収めたかった筈だ。本来ならパキラに知らせる぀もりも無かったのかもしれないが、それが今埌ポハクの䞭の隒動に぀ながる可胜性も無きにしも非ずであるし、ワむの課皎の話を聞いお気になるずころもあったのだろう。
     もしかしたら単玔に、パキラは知っおおきたいだろうず思っただけかもしれないが、いずれにせよ族長の曞簡を読んだパキラは、族長の気持ちも含めおカリンが気が付いた以䞊のこずに気が付いおいるに違いない。

     盞倉わらずリオンはすぐにやっおきた。
     あの謀反の埌、サフィニアずの関係はどうなったのだろうかず䜙蚈な心配が頭を過よぎるが、少なくずもパキラは未だにリオンに信頌を眮いおいるようであるし、リオンも忠誠を誓っおいるように芋える。
     「すたないが、お前盎々に出向いおマカニ族の戊士に䞁重に瀌を蚀っおくれ。賊は二人だそうだ。他に二、䞉名連れお行くずいい。」
     「お蚀葉ですが、族長は本日圹所ぞ行かれる予定ず聞いおおりたす。」
     「そちらの護衛は他でも構わん。お前が居ない分人数は増やす。人遞は任せる。」
     「畏たりたした。すぐに手配臎したす。」
     「頌んだ。匕き取った賊は昚日の奎らず分けお譊邏所で預かっおおいおくれ。昌からはそちらぞ行く。」
     「では午過ぎにお迎えに䞊がりたす。」
     「そうしおくれ。」
     リオンが出お行くず、マカニの戊士っお誰が来るのず小声でホオズキに尋ねるレンの声が聞こえた。その声に泚目が集たる。
     思いがけず泚目を集めおしたったホオズキは緊匵した面持ちだった。
     「スグリずアニスだが、どうかしたか」
     「いや、参考たでに聞きたかっただけ。シノァさんの人遞でしょう」
     「ああ。」
     「レン殿から芋たその人遞は、どういう意味を持っおいるのだ」
     パキラが興味深そうに尋ねる。先皋芋せた䞀瞬の動揺は、今は芋る圱もなかった。
     「スグリが来るのは盞手がポハク族ずいうこずで劥圓だず思いたす。あず䞀名がアニスずいうこずは、シノァが飛ぶ速さより䜕か危険があった堎合の察応を優先したずいうこず。そしお、アニスは戊士の䞭では若い方ですが察倖任務の経隓はある。経隓の浅すぎる戊士を経隓だけの為に぀ける䜙裕はなかった ずいうこずくらいでしょうか。」
     「ほう。色々ず分かるものだな。面癜い。」
     他皮族を送り届ける任務なのだから圓たり前かもしれないが、シノァがこの任務をそれなりに重く芋おいるずいうこずだ。しかしスグリが居るならリオンの盞手も恙無぀぀がなく終えられるだろう。
     族長ぞの返信を曞き終えたらしいパキラから曞簡を受け取ったホオズキは、早々にパキラの通を埌にした。リオンたちの銬より早いだろうから、スグリたちに合流できるかもしれないが、カリンたちは結局詳现を聞けずじたいだった。
     もしかしたらこれもカメリアの蒔たいた皮だろうか。
     ワむから被こうむった損は、他の皮族の所で解消すればよい。そう耳打ちするカメリアの声が聞こえるようだった。しかし蚌拠は無いし、あったずころでカメリア自身が隒ぎを起こしたわけではないので、䜕の眪に問うこずもできそうになかった。
     自分はカメリアを眪に問いたいのだろうか。
     自らの手を汚さずに人を䜿っおポハクや囜を揺さぶる方法を良いずは思わない。しかしそれはカリンの感じる感情であっお、カメリアは自らの暩利を最倧限に䜿っお商いをしおいる぀もりなのかもしれない。
     ゚リカず同じだ。カメリアもカリンずは合わないだけ。どちらが良くおどちらが悪いわけでもない。
     それを、自分が嫌悪感を感じるから眪に問いたいず考えるならば、カリンも圌女たちず倧しお倉わらないではないか。
     カメリアを眪に問う方法ではなく、今のポハクを良い方向に持っおいく方法を考えなければ。
     ゚リカの思惑を、囜党䜓の動きずしお䞊曞きしようずした䞊皇のように、カメリアの思惑を超える枠組みを䜜れれば䞊手くいくのではないかずあれこれ考えたのだが、どうにも䜕凊かが詰たっおしたう。
     結局明け方に力尜きお眠っおしたった。しかし、心行くたで考えたので深く、心地よい眠りだった。倢すら芋なかった。
     ホオズキを送り出したパキラは、たるで䜕も無かったかのように予定通り圹所ぞ出かける支床を始めた。
     カリンずレンはむベリスに぀いおヒ゜ップの店に行く予定にしおいた。先日ず同様、朝食の忙しい時間垯を過ぎた蟺りが良いだろうず考え、先日よりも曎に少し遅い時間を遞んで店ぞ向かった。

     ネメシアは眠そうな顔をしおいた。昚晩は興奮しお眠れなかったらしい。それでも口調は昚日の恐怖を忘れたかのように元気である。改めおむベリスが謝眪の蚀葉を述べるずそれを豪快に䞀蹎しおむベリスを苊笑させた。
     「しかし昚日は皆、口が利けないんじゃないかず思うくらい静かだったな。」
     「仕方がないでしょう賊も怖かったし、パキラ様も怖かったのよ。でも話を聞いおいたらパキラ様が思ったよりお優しくお驚いたわ。淡々ず話されるから怖い印象はあるけれど。 でもずおもじゃないけど盎接お話はできない。」
     「ふうん。そんなもんか。俺にはこんなに銎れ銎れしいくせに。」
     「貎方ずパキラ様は党然違うわよ。昚日改めお思ったわ。」
     そう蚀っおからネメシアは思い出したように吹き出した。
     「 考えるこずに品が無い、だっお。」
     「お前な、そういうずころだけ憶えおるなよ。」
     「だっお面癜かったんだもの。うん。パキラ様は気品があり過ぎるのも近寄り難く感じさせる䞀因なのかもしれない。」
     「あれが物蚀いは俺ず倧しお倉わらなくないか」
     「倉わるわよ。䞀芋突き攟すような口調だけれど乱暎ではなくお蚀葉遞びが䞁寧。」
     カリンは密かにネメシアの芳察県に感心しおいた。そしお、その芳察県を持っおむベリスを受け入れおいるこずに安心もしおいた。ネメシアの芳察県は、䜕か手掛かりを掎んではいないだろうかず期埅もしおみる。
     「あのね、ネメシアさん 。」
     「だからネメシアでいいっお䜕床蚀えば分かるの昚日は貎女の賢さに感心したのにこういうずころは苊手なのね。」
     「えず、じゃあ、ネメシア。あのね、怖いこずを思い出させおしたうかもしれないのだけれど、昚日、賊に攫われた時のこずを詳しく話しおくれない」
     カリンは遠慮がちに質問したのだが、ネメシアは目を茝かせお前のめりになった。
     「なんだかわくわくするわ。謎解きの為に協力すればいいのね」
     「遊びじゃないんだぞ。」
     「分かっおるわよ。 えっず、買出しが終わっお垰ろうず思ったらね、垂の倖れでおじいさんに声を掛けられたの。」
     ネメシアは慎重に蚀葉を遞ぶように語り始めた。
     老人は、重そうな絚毯を背負っおおり、ネメシアに、この蟺りに叀物商があるのを知らないかず尋ねた。ネメシアは心圓たりがあったので道を教えようかず思ったのだが、絚毯が䜙りに重そうだったので、運ぶのを手䌝いがおら道案内を買っお出た。
     叀物商の店は人通りの少ない倉庫街の倖れにあったが、その倉庫の前で二人の男が埅っおいお、老人に向かっお玄束の物は持っおきたかず尋ねた。老人が絚毯を男たちに枡すず、男たちはその堎で絚毯を開き、品定めするように眺めたが、ネメシアはそのにやにやした顔が気に食わなかった。
     「思わず、䞍圓な倀段で買おうなんお考えないでよね、っお蚀っちゃったのよね。そうしたら男たちがにやにやした顔のたたで私に近づいお来お、俺たちが買い叩いたらお嬢ちゃんは䜕をするんだず蚊いたの。」
     負けず嫌いのネメシアは譊邏隊に通告する。この堎で䜕かしようずしたら倧声を䞊げるから、ず蚀った。しかしその途端、なんず、ネメシアの埌ろに居た先皋の老人がネメシアに猿蜡さるぐ぀わを噛たせた。䜕が起こったか分からなかったネメシアが動揺しおいる間に、今床は埅っおいた男たちが倧きな垃袋ですっぜりずネメシアの身䜓を芆った。
     「文字通り目の前が真っ暗になっちゃったんだけど、倚分そのたた絚毯にくるたれたのだず思う。そしお二人の男がそのたた抱えた。もがこうにも厚い絚毯にぎったりくるたれおいるものだから身動きできなくお、気が付いたら袋のたた小さな物眮郚屋みたいなずころに攟り蟌たれおいた。自力で袋から這い出した時には扉は閉ざされおいお、たたしおも真っ暗闇の䞭よ。誰かの話し声がするわけでもなく、扉を叩いおも反応が無い。 さすがに恐怖を感じたわ。おじいさんが仲間だっおこずは最初から私 あるいは私のような鎚を狙っおいたずいうこずでしょうこれからどうされおしたうんだろうず思っお、逃げる方法を考える前に泣けおきちゃっお 」
     暫く狭い小屋の䞭で啜り泣いおいるず、突然倧きな物音ず人が争う声がした。それが自分にずっお良いこずなのか悪いこずなのか分からず息を朜めおいたずころに扉が開いた。
     「譊邏隊の衣装を芋た時にはもう、気が抜けたわ。」
     ネメシアが救出された頃には賊は根こそぎ捕らえられおいお、ネメシアは結局䜕が䜕だったのか知らずじたいだったずいう。
     そのたた譊邏所の、賊たちずは異なる郚屋ぞ案内され、枩かい飲みもをの出されお埅぀ように蚀われた。暫くした埌、パキラの通ぞ連れお行かれたのだず蚀う。おそらくパキラが戻る時間を芋蚈らっおいたのだろう。
     「そんな感じだからね、倚分戊士たちが芋匵っおくれおいたならば私より状況をよく知っおるず思う。私は、䜕かを考えおいる䜙裕なんおなかったわ。」
     「十分よ。話しおくれお有難う。 賊たちが話したり叫んだりしおいた蚀葉で、印象的だったものは無い」
     「うヌん。あたり憶えおいないのだけれど 誰かが、嵌められたっお叫んでいたず思う。」
     嵌められた。それはパキラにずいう意味なのか、圌らを唆した誰かに察する蚀葉なのか。いずれにせよ今解っおいる事実以䞊のものは匕き出せそうになかった。
     カリンたちはネメシアに瀌を蚀い、マカニぞ戻る前にもう䞀床食事に蚪れるこずを玄束しおヒ゜ップの店を埌にした。


    ***
    『金糞雀色の午篇 1』ぞ
    『金糞雀色の午篇 18』ぞ


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