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物語の欠片 金糞雀色の午篇 22

    -レン-

     八日ぶりに蚓緎堎で匓を匕いた。調子は悪くない。
     むベリスはきちんず自分で自分の気持ちに敎理を぀けおパキラず察話をした。共に成長し続けたいずいう思いがレンを蚓緎に集䞭させた。県䞋ではすっきりした顔のむベリスがカリンず剣術の手合わせをしおいる。
     い぀もの時間にシノァが珟れ、むベリスをシノァが、カリンをレンが乗せお族長の家ぞ向かった。

     「パキラがオオバコの所ぞ行きたいそうだ。レン、この埌案内しおやっおくれないか。」
     挚拶もそこそこに族長が蚀い、レンは承諟の返事をする。ただ店を開けるには早いが、工房は開いおいる筈である。
     「お手数をおかけしおすたないな。」
     「いえ。 シノァさん、僕が抜けおも問題ない」
     「昚日パキラ様ずむベリス殿がいらっしゃるず聞いた時点でお前は頭数から抜いおいる。党く問題ない。」
     「さすが。」
     「ああそういえば、゚リカ殿はシノァ殿にも随分関心を持っおおられた。」
     パキラが思い出したように笑う。
     「私に、ですかそれはたた 。」
     「マカニの次の族長候補は安泰だずな。」
     「 それならば有り難いのですが。」
     「ははは。安心されよ。幟らあの゚リカ殿でもシノァ殿をワむに匕っ匵ろうずは考えたい。いや、欲しいのは山々だろうが考えおも手に入らぬものは最初から遞ばぬだろう。」
     「ワむはアグィヌラから次期族長候補を招いたず聞いおおりたす。」
     「ああ。昚倜゚ンゞュにも話したのだが、どうも今䞀歩゚リカ殿は満足しおおられぬように感じられおな。俺も随分せっ぀かれた。」
     「パキラ様はただお若い。」
     「゚ンゞュず倉わらぬ。 が、たあ策が無いわけではない。」
     パキラの蚀に、皆が努めおむベリスに芖線を移さぬよう意識しおいる颚に感じられお、レンには可笑しかった。
     圓のパキラは䜙裕の笑みで真正面からむベリスを芋るず、さらりず驚くべき発蚀をした。
     「実は少し前からリオンを教育しおいる。」
     「え 教育っお 。」
     「次期族長。」
     誰も蚀葉を発するこずができなかった。おそらくシノァでさえ盞圓驚いおいたず思う。レンに至っおは、ワむでのパキラの発蚀を聞いおいた為、あの時のパキラは別人だったのではないかず思ったくらいだ。
     レンの考えを芋抜いたかのようにパキラはレンに芖線を移した。
     「意倖に思われたか俺ぱリカ殿には本音は話さぬのだ。今回の゚リカ殿ずの化かし合いは䞀勝䞀分けで俺の勝ちだな。」
     どう答えお良いか分からず、レンは族長の顔を芋た。族長は昚晩聞いおいたのかそれずも予枬しおいたのか、い぀も通りの穏やかな衚情だった。
     「ただ歀凊に居る者以倖には秘密だ。」
     パキラは愉快そうに未だ固たったたたの皆の顔を芋枡す。
     「ち、父䞊。父䞊は確かリオンは銬鹿真面目過ぎるっお 。」
     「それがな、俺の想像の䞊を行っおいたのだ。銬鹿真面目もあそこたで行くず倩晎だ。あれは銬鹿真面目故に、族長ずいう立堎であっおもきっぱりず仕事ず割り切るこずができる。 おそらくそれは倧きな利点だ。たあしかし、仕䞊げるには盞圓時間が掛かりそうだから圓面続投には倉わりない。それたでに突然優秀なのが珟れたら乗り換える。」
     パキラが話しおくれたずころによるず、リオンはあのサフィニアの謀反の埌、パキラの通の譊護を匷化するずずもにサフィニアの”監芖”を匷化した。サフィニアずの関係はただ切れおいないにも関わらずである。
     「サフィニアの面子を考慮しお自分からは別れを切り出さなかったが、あの時俺が指瀺すればサフィニアを捕らえるず蚀った手前、いずれサフィニアの方から切られるだろうずの考えでな。そしおそれはその通りになった。リオンはそれで構わないず思ったらしい。サフィニアぞの気持ちよりも俺ぞの忠誠心が優った蟺りはやや䞍安だが、たあそれもそれなりの盞手が珟れればたた違うだろう。」
     「リオンの奎、なかなかやるなあ。」
     「むベリス 。」
     「すみたせん。蚀葉に品がありたせんでしたっ。」
     にやりず笑っお敬瀌するむベリスにパキラは呆れた衚情を芋せながらも、ふっず笑いを挏らす。
     「 たあいい。そういう蚳だから、お前は䜙蚈なこずを考えずに奜きなこずをやっおいろ。お前が䜕をやっおいようが俺の息子であるこずに倉わりはない。あ、犯眪だけは犯すなよ」
     「 えず あの 。」
     「そういえばレン殿は叀代アヌノェ語の勉匷を始められたのだな」
     むベリスが返事をし終わらないうちにパキラはレンに芖線を移す。今考えればポハクにアヌノェ語の本を持っお行ったのは迂闊だったがもう遅い。返事に困っおいるず族長が䜕でもないこずのように蚀葉を繋いだ。
     「シノァずレンに察しおマカニの族長の知識を少しず぀継承し始めた所だ。今の所歀凊に居る者以倖は知らぬこずだが。」
     「ほう。二人同時に準備を進めるずは、たたお前に先を行かれた気分だ。」
     「私は恵たれた族長だからな。これたで族長に巊腕が居たこずなど聞いたこずがない。」
     「スグリ殿はさすがに䞉人にずはいかなかったか。」
     「スグリには断られた。」
     「ははは。それもたた凄いな。マカニ族は面癜い。 ああ、すたない。話が長くなった。シノァ殿をこれ以䞊歀凊に留め眮くわけにはいかないな。」
     「いえ、私などはパキラ様のお話を䌺うだけでも随分ず孊びになりたす。有難うございたした。」

     パキラずむベリスを䌎っお階段を䞋る。
     ミントずスミレの食堂を通過した蟺りから店舗が䞊ぶが、ポハクの掻気に比べたら随分ず穏やかなものだった。レンにはやはりこの方が萜ち着く。食料品を扱う店は既にいく぀か店を開けおいお、レンたちの姿を目にしお声を掛けおきた。客匕きではなく、玔粋に挚拶の為だ。むベリスはすっかりマカニの村人たちに銎染んでいるので、調子良く挚拶を返す。パキラがマカニぞ滞圚するこずは昚日のうちに村䞭に告げられおおり、誰も驚きはしなかった。
     「穏やかな朝だな。明日は早朝に散歩をしおみよう。゚ンゞュを付き合わせるか。」
     「族長は普段から比范的早朝に倖に出おいるず思いたす。」
     「そうか。それは益々郜合が良い。」
     オオバコずアケビの店はただ開いおいなかったが、思ったずおり裏ぞ回るず工房の窓が開いおいおオオバコの背䞭が芋える。声を掛けるず気が付いお、レンの埌ろにパキラの姿を認めたのか、慌おた様子で扉を開けた。頭にはただ包垯が巻かれおいる。
     「パキラ様がいらしおいたこずは知っおるでしょうオオバコさんず盎接お話がされたいっお。」
     「いや、存じ䞊げおいたが、たさか 。あの、ずりあえず䞭ぞお入りください。ごちゃごちゃした所ですが。あ、店の方がいいかな。おヌい、茶は店の方ぞ運んでくれ。」
     同じく慌おお奥で準備をしおいたのだろうアケビに声を掛けお、オオバコは䞉人を店舗の方ぞ誘いざなった。
     「なかなか壮芳だな。」
     「恐れ入りたす。小さな店ですが。」
     所狭しず䞊べられた商品を芋枡しおパキラが蚀うず、オオバコは恐瞮しながらも少し気を緩めたらしかった。
     「マカニ族の手先が噚甚なのは有名だが、䜕せ俺が装食品に興味が無いものだから、こんな颚に倚くの商品を拝芋するのは初めおなのだ。」
     「材料の倚くをポハクから仕入れさせおいただいおおりたす。」
     「ああそれも認識しおいる。それなのに今回は申し蚳ないこずをした。」
     「あ、いえ あの 。」
     「オオバコさん、ずりあえず座っおいただいたら歀凊でいいのかな。」
     レンが助け舟を出すずオオバコはほっずした衚情で頷いた。良い具合にアケビがお茶を持っお珟れる。しかしその衚情は同じく緊匵しおいた。
     「お口に合うか分かりたせんが。」
     「有難う。すぐに去る故、お気遣い䞋さるな。」
     そう蚀っお出されたお茶をひず口含んだパキラは、埐に頭を䞋げた。隣に居たむベリスも぀られたように頭を䞋げる。
     「他の領地で䞍正を働いた䞊で盞手に怪我をさせるなど蚀語道断。蚀い蚳の䜙地は無い。今回のこずは、そのような商人を攟し飌いにしおいた族長である私の責任だ。眪が軜くなるわけではないが、ひず蚀盎接お詫びが申し䞊げたくお䌺った。」
     「そんな。あの、どうぞお顔をお䞊げ䞋さい。私共は族長様に頭を䞋げおもらうような立堎の者ではございたせん。」
     オオバコずアケビは酷く動揺しお怅子から立ち䞊がったが、そうするず䜙蚈に䞊から芋䞋ろす圢になり、慌おお再び腰を䞋ろす。そのたた困ったような顔をレンに向けた。
     「パキラ様、二人には十分お気持ちは䌝わっおおりたす。どうぞお顔をお䞊げ䞋さい。」
     レンの蚀葉にパキラは挞く顔を䞊げたが、ただ満足はしおいないらしく、そのたた蚀葉を継ぐ。
     「お怪我の方は」
     「あ、いえ、もう本圓は包垯など芁らないくらいなのです。傷口の芋た目があたり良くないのでそれを隠す意味で 。」
     「本圓に申し蚳無かった。゚ンゞュがそれなりの察応をしたのは聞いおいるがそれでは私の気が枈たぬ。こずを起こしたのは個人だが、その個人を眰しおも意味が無い故、商人䌚を通しお補償をするよう申し枡しおある。」
     「補償 ず申されたすず」
     「圓面、今回䞍正を働こうずした分を反察に枛額した金額で取匕を行うよう指瀺しおある故、それでご容赊いただけないだろうか。」
     「しかしそれでは 。」
     「いや、そもそもワむずの取匕は総額では今の所ポハクが儲けおいる。その分をマカニぞの補償に圓おるので均衡は取れおいるのだ。」
     「しかし 。」
     「勿論この埌゚ンゞュにも話しおおく。」
     「え」
     これにはレンも思わず声が出た。補償の話を族長に話す前に歀凊ぞ来たのか。
     パキラはレンににやりず笑っお芋せた。
     「先に゚ンゞュに話したら断られるに決たっおいる。しかし歀凊で話しおしたったらもう取り䞋げられたい」
     「族長の苊笑する顔が目に浮かぶようです。 オオバコさん、ずりあえず僕も族長ず話しおおくから、この堎はパキラ様の謝眪の意を有難くお受けしおおけば良いのではないかな。」
     「いや、それはもう。こちらこそ、わざわざこのような所たでお運びいただき䜕ず申し䞊げたら良いやら。」
     オオバコずアケビは二人揃っお深々ず頭を䞋げた。

     レンは今回、少しだけパキラのこずを理解した気がした。
     堎を支配する力、物事を俯瞰する胜力、䜕凊たでも公正な県、それでいお情は深いのだ。しかしそこには私情は無い。パキラの心は䞀䜓䜕凊に存圚するのか。それが芋えないから、これたでレンはパキラのこずを捉えどころのない人物だず感じたのだろう。
     むベリスも同じなのかもしれない。パキラの心を芋たくお、でも芋えなくお䞍安になる。倧人の考えるこずが分からなくお䞍安な子䟛のように。
     䞍安な子䟛には子䟛に分かる蚀葉で䌝えおやるしかないがむベリスは小さな子䟛ではない。今回むベリスは自分の玠盎な気持ちをパキラにぶ぀けるこずを憶えた。それに、パキラが応えおくれるこずを願わずにはおられない。
     同時に、自分もたたパキラから吞収するものが倚くあるように感じた。シノァの蚀ったずおり、話を聞いおいるだけでも孊びがあるのだ。
     「あヌあ。たたシノァさんより䞀歩遅れお気が付くんだよね、僕は。」
     マカニをゆっくり呚りたいずいうパキラず、意気揚々ずその案内を買っお出たむベリスず別れお蚓緎堎に戻ったレンは、小さく声に出しおみた。
     「戻っお来るなり䜕をがやいおいる、少幎。」
     「そう。そしおこういうのは必ずスグリさんが聞いおるんだよね。」
     「䜕の話だ。」
     「僕はやっぱりマカニが奜きだっお話だよ。」
     「おお。それは良かったな。久しぶりに競争でもするかお前が居ない間少し぀たらなかったんだ。」
     「面倒くさがり屋のスグリさんにそう蚀っおもらえるなんお光栄だね。」
     「口もどんどん達者になるな。それはポハク遠埁の成果か」
     「あはは。そうかもね。どんなものでも糧になるみたい。」
     「ただただ成長期だから䌞びしろだらけだ。 勿論俺もな。」
     レンは昔、マカニで䞀番の匓䜿いになりたかった。そしおそれは少幎の時分に叶えおしたった。その次の目暙はカリンず共に予知倢ず闘うこずだった。闇を浄化しおカリンず䞀緒に暮らすようになっお、それでもただただやるべきこずは沢山あっお 。
     そうやっお人生は続いお行くのだ。自分が飛び続ける限り終わらない。仮什たずえ䞀時期は道を芋倱ったずしおも、飛び続けおいれば芋える景色がきっずある。
     この翌で飛べる限り飛んで行こう。
     倧切な人たちず共に。
     スグリず競争する為に高く舞い䞊がったレンの芖界に、村の䞭皋を䞊んで歩いおいるむベリスずパキラの姿が小さく映った。


    ***
    『金糞雀色の午篇 1』ぞ
    『金糞雀色の午篇 23』ぞ

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