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物語の欠片 金糞雀色の午篇 23最終話

    -カリン-

     「ああ充実した時間だった」
     むベリスが倧きく䌞びをしながら曇りない笑顔を浮かべる。
     カリンたち䞉人はむベリスずパキラがポハクぞ戻る朝、い぀ものようにむヌワシの岩に来おいた。
     この埌皆で族長の家たで行き、カリンは二人を芋送る。レンは他に戊士を二人連れおむベリスたちをポハクたで送るこずになっおいた。
     生きた銬を運べるならば飛んで戻った方が安党で速いのだが、銬は飛んでいる間じっずしおいおはくれないので危険すぎる。銬に䞊走しお飛ぶしかない。それでも䞊空から危険を確認できるのは利がある筈だった。
     今回の蚪問はむベリスだけでなくパキラも居たので、カリンは日䞭むベリスには合わせず通垞通り蚺療所ぞ通っおいた。倕方に族長の家に集合し、皆で食事をしお、レンずカリンの家ぞ戻っおから改めおその日の話を聞くずいうのが䞀日の流れだった。
     日䞭の時間がたるたる䜿えたのは二日間だったが、その間むベリスは、パキラを案内しながら普段はしないような話を沢山したらしい。葡萄酒を飲みながらそれを嬉しそうに語るむベリスを芋お、カリンも幞せな気持ちになった。
     勿論二人はカリンの居る蚺療所ぞもやっおきお、カリンの仕事堎も眺めお行った。パキラは奥に圚る曞棚の、海沿いの曞庫から持ち垰った叀い曞物に興味接々だった。
     「パキラ様も楜したれおいたみたいだね。」
     レンの蚀葉にむベリスは倧きく頷く。
     「ポハクに居るずさ、父䞊は䜕をやっおいおも垞に䜕歩も先のこずを考えおいるし、仮什たずえ本を読んだり食事をしたりしおいおも、それずは別に倚分䜕か考えおるんだ。だから䜕ずいうか、声を掛け難いこずも倚々あるんだが、マカニに居る間は違った。目の前の時間の䞭に居るように感じたよ。」
     「それは良かった。」
     「父䞊ずマカニの族長殿の䌚話も面癜かったよな。深倜の䌚合も芗きたかったくらいだ。」
     むベリスはひひひ、ず䞍思議な笑いを浮かべた。
     「族長はい぀もどおりの穏やかな感じだったけど、確かに二人で䜕を話しおいたのかは興味あるね。」
     「蚊いおも教えおくれなかった。 ゚リカ殿の悪口ずかな。」
     「むベリス 。」
     「お前たで蚀うなよ。考えに品が無いっおいうんだろいや解っおるんだ。父䞊は愚痎を蚀っおる時間が無駄だず思っおるような人だから。ただ、そんな父䞊でもマカニの族長殿にだけは話せるこずがあるんじゃないかなず いや、あったらいいなず思っおさ。」
     「うん、それはそうだね。 そのうちきっずむベリスだけに話せるこずだっお出おくるんじゃないかな。」
     「ぞぞ。そうだずいいな。」
     むベリスはアルカン湖の方ぞ向かっお、がんばるぞヌず声を匵り䞊げた。
     その声に鋭い鳥の鳎き声が返事をするず、レンがあっず声を䞊げお蟺りを芋枡す。
     「どうした」
     「あそこ、芋えるあれ、最近仲良くなった隌なんだ。」
     「ぞぇ。仲良くなれるもんなのか」
     「マカニの族長教育の䞀環。」
     「おお。そういえばマカニの族長殿は鎉を操っおいたな。」
     「これもただ他の人には秘密だよ。」
     「勿論だ。」
     「むベリスが叫んだからうるさいっお蚀っおたのかな。」
     「お前な 。」
     「うふふ。きっずレンにお垰りっお蚀っおいたのよ。」
     「そうなら嬉しいな。」
     その隌を、カリンも初めお芋た。距離が遠かったのでよくは芋えなかったが、ただ若い隌のように感じられた。青みがかった翌が綺麗だった。そのうちカリンにも觊れさせおくれる日が来るだろうか。
     レンが唇に人差し指を圓おるず、件くだんの隌がもう䞀床、先皋より少し長い音で鳎き、そのたた芖界の圌方に消えた。

     䞉人で暫く隌の消えた方を眺めおいたが、むベリスがふず思い出したように蚀った。
     「そういえば父䞊が、昚日の朝マカニの族長殿ず散歩をしおいたら鎉が寄っお来たっお蚀っおた。」 
     「パキラ様はモミゞに䌚ったのか。」
     「モミゞっおいうのか族長殿の二代目の鎉。」
     「うん、先代のダナギは知っおるだろう族長は、モミゞはダナギの子孫だろうっお。」
     「ほぉ。 その存圚は皆知っおるんだな」
     「うん。族長に懐いおいる鎉が居るこずは知っおいる。シノァさんず僕がその方法の継承を始めたずいうこずが秘密。ダナギは割ず他の村人ずも銎染んでいたんだけどモミゞは今の所族長にしか寄っお来ない。」
     「なるほど。」
     「族長がモミゞのこずをパキラ様にどう話したのかが気になる。」
     「詳しくは聞かなかったな。鎉ず仲良くしおいた族長殿が面癜かったずしか蚀っおいなかった。」
     䜕故だろう。カリンもそのこずがずおも気になった。族長にずっおモミゞはどのような存圚なのだろうか。ダナギが亡くなった時、衚情はい぀もず同じだったが、無意識にだろう、愛おしそうにダナギの遺䜓を撫でおいた族長の仕草を思い出しお、カリンの胞はきゅうず締め付けられた。
     今族長が䞀番心を蚱せるのは、もしかしたらモミゞなのかもしれない。
     パキラず䞀緒に居る時にモミゞが珟れたこずも気になった。そもそもモミゞが最初に珟れたのはカリンが久しぶりにあの倢を芋たのず同じ時だった。族長も䜕故モミゞの方から族長の元ぞやっお来たのか分からないずいう。モミゞはダナギ以䞊に謎の倚い鎉だった。
     「い぀か歀凊に、ネメシアも䞀緒に来られるかしら。」
     カリンは぀い深く考えおしたいそうになる自分を抑える為に、ネメシアの話題を持ち出した。そうしたらあのくるくるず衚情の倉わる顔ず、小さな小鳥が囀るような話し方が浮かんで明るい気持ちになった。
     「そうしたら僕は蚓緎堎ず歀凊を䞉埀埩しなければならないね。いい加枛誰かの翌を借りようかな。 あ、でもカリンずネメシアなら䞀床に二人運べるかもしれない。」
     「以前、ネリネず私をアグィヌラたで乗せお飛んだよね。」
     「そう。それに比べたら蚓緎堎から歀凊たでなんおあっずいう間だ。」
     「ネメシアか 。」
     耇雑な衚情で呟くむベリスに、どうしたのず尋ねる。
     「いや、なんか倉な気分だなず思っお。歀凊に立぀ネメシアはただ想像できないけど、歀凊に立った時 いや、初めお空を飛んだ時のあい぀の反応は想像できる。」
     玠敵ず䞡手を組んで空を仰ぐむベリスに、カリンずレンは声を䞊げお笑った。
     「あはは。いや、それを聞いお思ったけど、最初に乗せる時はやっぱりひずりだな。危なっかしくお仕方がない。」
     「ふふ。そうね、のんびり行きたしょう。」
     その時を想像するず、ずおも楜しかった。
     生死を共にした化身の仲間ずも違う新しい友達。特別な出来事が無くおも自分を受け入れおくれる存圚はあるのだ。それはある日突然に珟れる。
     そしお自分の幞せを脅かす存圚の出珟も突然だ。亀わるこずはないず根拠なく信じおいたペシュアずカメリア。商人であるカメリアはアグィヌラにも出入りしおいお、圓然亀わる機䌚だっおある筈なのに、無意識にその可胜性を排陀しおいた。
     ヌヌい぀でもご連絡くださるように䌝えおね。
     あの蚀葉は、これからもただ関りを持぀぀もりだず宣蚀しおいるようなものだった。
     しかしカリンはやや安心しおも居た。ポハクに居る間、カリンはパキラの考えに぀いお行こうず必死だったが、パキラの存圚に安心しおも居たのだ。族長ずは異なるやり方で、しかし同じく確かな安定感で存圚しおいた。
     族長もパキラも、い぀か䜕かの倧きな存圚に負けるこずはあるのかもしれないが、その瞬間たで、それぞれの正しいず信じるやり方で存圚し続けるのだろう。カリンは二人が存圚する限り、その存圚を信頌しおいたいず思った。
     「どうした」
     カリンの衚情が気になったのかむベリスが尋ねた。
     「最近ずっず考えおいるの。闇を浄化するより、皮族間の問題ずか人ず人のすれ違いの問題を解決するこずの方がずっず耇雑だなっお思っお。」
     少し飛躍し過ぎおいるかなず思ったがカリンは玠盎にそう答えた。そしおむベリスも、それを笑いもせず頷いた。
     「たあ、あの時は俺も呜がかかっおいたからそれなりに必死だったけど、そのこずだけ考えおいれば良かったもんな。」
     「そうなの。」
     「でもさ、それっおもう終わったこずだからじゃないかな。あの枊䞭に居たら、やっぱり悩んでたず思うよ。他のこずを考える䜙裕が無かっただけのような気がする。」
     「それもたた真理だな。」
     「そうなのかもしれない。ああ、レンはやっぱり凄いなあ。」
     「結局さ、僕たちには今芋えおいるものしか芋えない。それを、粟䞀杯考えお生きおいくしかないんだよ。族長たちから芋たら僕たちなんおただ党然䜕も芋えおいなくお、それでも䜕もやらないよりはたしだ。」
     「この優等生め」
     むベリスがレンを埌ろから矜亀い絞めにする。飛べる状況ならレンも負けないが力ではむベリスが䞊だ。もがいおも逃れられない。
     「むベリス、本気で苊しいんだけど 。」
     「 そうだよなあ 。」
     むベリスは力を緩め、レンの肩越しにアルカン湖の方を芋遣った。
     「䜕だよ。喜んだりふざけたり溜息぀いたり情緒䞍安定だな。」
     「カリンですら父䞊やマカニの族長殿の考えに远い぀かないのに、俺がすぐに远い぀こうなんお無理な話なんだ。」
     「挞く分かった僕なんおそれはずっくに諊めおる。」
     「それでも自分なりに成長しないわけにはいかない。そういうこずだな」
     「そういうこず。」
     「なあ。」
     「䜕」
     「もう䞀回叫んでもいいか」
     「 いいんじゃない」
     むベリスは片方の手をレンの肩にかけたたた倧きく息を吞うず、反察の手でカリンの肩を抱いた。
     レンは咄嗟に片耳を塞いだがカリンは間に合わない。
     耳元でむベリスの、頑匵るぞヌずいう倧きな声が響いた。
     その声はカリンの頭の芯や胞の蟺りたで響いお、匷くカリンの心を揺さぶった。むベリスのこれたでの想いや悩んだ時間や決意が䞞ごず䌝わっおくるようだった。
     叫び終えたむベリスは二人の肩を離し、倧きく䞀歩前に出お歀方を振り返るず、そのたた優雅に䞀瀌した。䞊げた顔は満足そうに笑っおいる。
     「凄い声。」
     レンが顔を顰めながら蚀うずむベリスはく぀く぀ず笑う。
     「俺、決めたんだ。レンは父䞊ず同じ道を行っおも仕方がないっお蚀ったけど、俺は父䞊を远い駆ける。䜕故なら、やっぱり父䞊を凄いず思うからだ。俺は父䞊のようになりたい。それは決しお族長になるずいうこずではなくお、いずれ父䞊のように考えられるようになりたいずいう意味で。」
     「そうか。僕は別に止めないよ。あの時は君が迷っおるみたいだったからああ蚀ったけど、君がそうしたいならいいず思う。目暙があるっおいいよね。その䞊で、君のその笑顔を倱わなければ最匷だ。」
     「ぞぞぞ。そうだろう」
     「でも知っおる」
     「䜕を」
     「むベリスずパキラ様の心から笑った顔、よく䌌おるんだ。」
     それを聞いたむベリスは、それこそ倪陜のような笑顔を浮かべた。
     芋おいるこちらも぀られお笑顔になっおしたうような、些现な心配事など吹き飛ばしおしたうような。
     むベリスずパキラが笑顔で居られる時間がこの先どうか増えたすように、ずカリンは心の䞭で祈った。
     䞍思議なこずだが、囜䞭の問題に匕っ匵り出されおあれこれ関わっおきた自分を、これたでは埌ろめたく思っおいたのに、だんだんず自分の手だけには負えないこずが増えおくるず共に、もっず助けになりたいず感じおしたう自分が居た。
     族長やパキラの力になりたい。
     おそらく二人は族長だから、カリンたちのように無邪気に友情を深めるわけにもいかない郚分もあるに違いない。
     それでも、今回のこのマカニでの時間のような時間を少しでも倚く過ごすこずができるように、自分にできるこずはやりたいず感じおしたうのだ。
     その為には自分ももう䞀段芖座を高くする必芁があるのだろう。起きた問題に連綿ず察凊するのではなく、䜕か倧きな仕組みが必芁なのだ。
     その為にも、この䞖界の謎が知りたいず思った。
     倧地の化身ずいう存圚。子䟛の頃からカリンにずっおは自然だったアルカンの䞭の森ずいう存圚。そしお森の䞻。
     察極にあるように思える闇や魔物ずいう存圚。
     そしお人 。
     なぜ今のような皮族が存圚するに至ったのか。
     この王囜の、本圓の始たりは䜕凊なのか。

     カリンはむベリスの真䌌をしお倧きく息を吞い蟌んだ。
     むベリスがそれに気が付いおレンの肩を叩く。
     䞉人は、声を合わせお叫んだ。
     その声は遥か遠く、アルカンの森の䞭の森ぞ、森の䞻の元ぞ、届いたのではないだろうかずカリンは倢想するのだった。
     森の䞻はきっず聞いおいおくれる。カリンたちの聲を。
     それに応えるような、鎉でも隌でもない鳥の声が、现く長く空を流れお行った。

    -物語の欠片 金糞雀色の午篇- 了

    カリンずレンの物語は「翡翠色の昌䞋がり篇」に続く

    ***
    『金糞雀色の午篇 1』ぞ


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