
なぜ英国NHSは「脱炭素」を本気でやるのか?医療政策として読む「Net Zero NHS」実は脱炭素政策の多くが健康格差対策や医療費抑制と同じ方向を向いている?

以下にも関連するが
英国NHS(National Health Service)が公表した
「Delivering a Net Zero National Health Service」
という報告書

正直に言うと、最初は
「医療と脱炭素?」
「また環境意識高い系の話かな」
と思っていた。
しかし読んでみると、これは環境政策の話というより、
医療政策そのもの
だった。
■ 気候変動は健康問題である
NHSは冒頭から
"The climate emergency is a health emergency."
(気候危機は健康危機である)
と断言している。
日本では気候変動というと、
環境省
再生可能エネルギー
CO₂削減
という話になりがちだ。
しかしNHSの視点は違う。
熱波
洪水
感染症拡大
大気汚染
食生活の悪化
健康格差
これらはすべて医療の問題である。
つまり気候変動対策は、
環境政策ではなく保健医療政策
なのである。
■ NHSは英国最大の企業である
もう一つ驚いたのは規模感だ。
NHSは130万人以上を雇用する英国最大の組織であり、
英国全体のCO₂排出量の約4%を占める。
つまり、
「医療は被害者」
ではない。
「医療も加害者」
なのである。
だからこそNHSは
2040年に直接排出ゼロ
2045年にサプライチェーン含めて実質ゼロ
という大胆な目標を掲げている。
■ 面白いのは脱炭素の中身
読んでいて面白かったのは、
脱炭素の具体策が
私たちが普段考える医療改革とかなり重なることだ。
例えば
オンライン診療
予防医療
病気の重症化予防
歩行や自転車利用の推進
病院の省エネ化
地域調達
在宅医療
など。
つまり
病気を減らす
移動を減らす
無駄な医療を減らす
という方向性そのものが脱炭素につながる。
■ 私が一番興味深かった部分
私が特に興味深かったのは、健康格差との関係である。
NHSは
大気汚染は貧困地域ほど深刻
緑地へのアクセスも所得格差がある
気候変動の被害も弱者に集中する
と指摘している。
これは日本でも同じだろう。
健康格差研究で知られるマイケル・マーモットが長年指摘してきたように、
健康は医療だけで決まらない。
所得
教育
住宅
交通
コミュニティ
環境
これらすべてが健康を規定する。
そう考えると、脱炭素政策と健康格差政策は実はかなり重なっている。
■ 日本はどう考えるべきか
もちろん日本が英国をそのまま真似する必要はない。
しかし、
人口減少
高齢化
医療費増大
エネルギー価格上昇
地方の交通弱体化
という課題を考えると、
予防
デジタル化
地域包括ケア
在宅医療
コンパクトシティ
などの方向性は共通している。
そして興味深いのは、
それらが結果として脱炭素にもつながるということだ。
■ 医療は治療だけではない
医療というと、
病気になった人を治療する仕組み
と思われがちだ。
しかし本来は
健康を守る社会システム
である。
そう考えると、
気候変動
環境
交通
都市計画
住宅
食
まで視野に入れるNHSの発想は非常に示唆的だ。
「医療が健康を守る」
から
「社会全体で健康を守る」
へ。
Net Zero NHSは環境レポートではなく、
21世紀の医療政策論として読む価値があると感じた。
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