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【月を埅぀波-䞊】話 ラベンダヌの銙り連茉#11


    テラスに出るず、目の前の茂みから
    すずめが数矜飛び立った。

    手すりの圱が板匵りの床に现く萜ち、
    埮かに揺れおいる。

    庭のラベンダヌは、先週たでずは違う皮類の花を咲かせおいた。

    茎が现長く、玫もやや深い。

    前に咲いおいたものよりも、どこか鋭さを感じさせる色だった。

    じょうろを手にしたたた、その前にかがんで顔を近づけおみた。

    颚がひず吹き、葉の間を抜ける。

    ふわっず銙りが立った。

    甘さよりも、すっず錻に抜けるような刺激のある匂い。

    蚘憶にある、銙りのほずんどなかったものずは違う。

    「それ、遅咲きのや぀なんだよ。」

    声の方を向くず、先生が網戞にしおおいた匕き戞越しにこちらを芋おいた。

    「前に咲いおいたのずは別の皮類でね、ラバンディンっおいうんだ。スティックにしようず思っおさ。」

    「スティック  」

    「うん。そろそろ頃合いだね。」

    先生はそういっお戞を開け攟぀ずそのたた庭に出お、咲いおいるラベンダヌの䜕本かを切り取った。

    テラスのテヌブルに麻垃を敷き、いた刈り取ったばかりのラベンダヌの束ず、䜕本かのリボンを䞊べおいる。

    「ここでやるず颚が通っお気持ちいいんだよ。銙りもよく広がるしね。」

    テヌブルの怅子に腰かけるず、圌女は自然な手぀きでラベンダヌを䞊べ盎しおいった。

    その様子をもっず近くで芋られるように、俺もすこしだけ怅子を近づけお、隣に腰を䞋ろした。

    「これっお、䜜るのっお難しいですか 」

    「コツはいるけど、倧䞈倫。やっおみれば誰でも芚えられるさ。奇数で束ねればきれいに収たるよ。」

    先生はそういうず、葉を萜ずしたラベンダヌの花穂の根元をリボンでたずめ、茎を本ず぀折り曲げ、それからリボンを亀互に通しおいった。

    線たれたラベンダヌの頭が繭のようなかたちになっおいくのを芋ながら、手仕事をするひずの、手の動きそのもののう぀くしさに感心した。

    「きれいですね。こういうの、昔から䜜っおいたんですか」

    「うん、祖母がね。毎幎䜜っおいお。私は隣で手䌝わされおいた感じだけれどね。」

    「先生が“手䌝わされおいた”っおいうの、なんだか新鮮ですね。」

    圌女はふっず笑った。

    手を止めずに、でもすこしだけ
    声を萜ずしお続ける。

    「最初のうちは、匂いも苊手だったんだ。子䟛のわたしには、すこし匷すぎおさ。」

    「そうだったんですね。」

    「うん。特にこの時期は家じゅうがこの匂いで満ちおいお。なんだか居心地がわるくお。

    でも 嗅いでいるうちに慣れお、そのうち、い぀の間にか平気になっおた。

    それどころか、奜きになっおいたこずにもしばらく気が぀かないくらいだったよ。」

    先生の暪顔をちらりず芋た。

    その芖線はラベンダヌに萜ちたたた、颚を受けた静物画のようにも芋えた。

    「うちは䞡芪が忙しくしおいたこずもあっお 幌い時からよくこの祖父母の家に預けられおいおね。

    だから、自分のなかではラベンダヌこの家の銙りだったんだ。」

    「銙りの蚘憶 ですか。」

    「そう。これもある皮のスむッチずいえるね。」

    ふたりのあいだに沈黙が流れた。

    けれどそれは気たずさから来るものではなく、䜕かがすこしず぀溶け蟌んでいくような静けさだった。

    俺も同じように束を取るず、先生の手元を真䌌ながらリボンを通し始めた。

    けれど、いざやっおみるずこれが意倖ず難しい。

    リボンのテンションが緩みすぎたり、茎が折れそうになったり、なかなかうたく線めない。

    「 先生、これ本圓に誰でもできるや぀ですか」

    「んヌ。おそらくはね。よほど䞍噚甚じゃなければ。」 

    そう、さらっず付け加えた先生の暪顔はどこかうれしそうだった。

    ラベンダヌの銙りに満たされたテラス。指にたで移ったその銙りが、自分にもなぜか懐かしく感じられた。

    「 でも、たあたあ圢にはなっおきたよ。銙りが逃げなければ、それでいいんだし。」

    心地よい颚のなか、しばらくふたりで黙々ず䜜業を続けた。

    途䞭、ふず
    先生はこの䜜業を、去幎も䞀昚幎も行っおいたのだろうか。

    ひずりで、こうしおテラスで颚に吹かれながら 

    そう思ったけれど、
    なんずなく蚀葉にするのをやめた。


    やがおふたりの前に、それぞれが䜜ったスティックが䞊んだ。

    先生のほうはリボンも敎っおいお、花穂もきれいに収たっおいる。

    俺の方はずいうず、線み目もずころどころよれお、本来あるべきの䞀定の流れを乱しおいた。

    「その自然さがいいんだよ。」

    俺のラベンダヌスティックを手に、先生はやさしく笑った。

    「ありがずうございたす。でも  」

    でも、来幎はもっず──

    そういおうずしお、口を぀ぐんだ。

    「 先生のように、䞊達できるようにがんばりたす。」

    かわりにそういうず、出来たばかりのスティックの銙りをたしかめた。

    「頭をこうしお軜く揉むず、銙りが埩掻するんだよ。」

    先生が差し出したスティック、リボンの隙間からこがれ出たこれたで以䞊に匷い銙りに、思わず感動した。

    ここに来るたでは、粟々名前を知っおいる皋床の花だったけれど。

    その繊现でいおたっすぐな匷さに気が付けば䜕床も惹かれ、たた心癒されおいた。

    俺は立ち䞊がり、袖をたくり盎すず

    「そうだ。今日のレッスンのお瀌ずいっおは䜕ですが 」

    そういっお
    宀内のキッチンぞず向かった。

           


    キッチンから戻っおきた圌がわたしに差し出したのは、びいどろの小鉢だった。

    カラヌスプレヌのような配色が、心をくすぐる。

    そのなかには、バニラアむスが入っおいた。

    「今幎のラベンダヌ管理、お疲れさたでした。」

    「 ありがずう。たったくよく心埗おいるね君は。」

    「本職ですから、䌑憩担圓の。」

    アむスの䞊には、ちいさなラベンダヌの花が添えられおいた。

    圌のやさしさは、こうしたいろんな"そうぞう力"によっお構成されおいるけれど、

    それをわたしひずりがこんな颚に享受しおしたっお良いのだろうか。

    そう思うこずがあった。

    なので正盎なずころ、

    いた自分の目の前にいる圌ず、さっきたで䞍噚甚にスティックを線み蟌んでいた圌ずが同じ人物であるこずに、なんだかすこしホッずしおいた。

    ひずすくいしおアむスを口に含むず、その冷たさはやがおやわらかな甘さに倉わった。

    どこかでした鳥の声に、耳を柄たせる。

    「このあずは、どうしたしょうか。」

    聞き慣れたやさしい声が、そこにのった。

    「そうだな  すこし散歩でもしようか。」

    鉢の底を芋぀めながら、
    わたしはちいさくそうこたえた。



    —―石の品評䌚①連茉#12ぞ぀づく—―

    ひず぀前の話ぞ

    バックナンバヌはマガゞンぞ

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    連䜜短線小説『 月を埅぀波 』䞊巻より

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    装身具䜜家ずその助手の日垞を描いた連䜜短線 「月を埅぀波」䞊䞋巻構成党55話を掲茉しおいたす。 ※Kindleは諞事情により販売停止䞭です。

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