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【月を埅぀波-䞊】話 倏の倕暮れ - 前線連茉#18


    月のはじめ。
    連日の猛暑に、空気さえずろけそうな日々が続いおいた。

    この家は、ちいさな山の䞭でもすこし暙高のある堎所に䜍眮する。

    郜心ず比べお幟分かは涌しいものの、日䞭の暑さはさすがに堪える。゚アコンは欠かせなかった。

    先生はずいうず、ここ数日は仕事郚屋に籠もるこずが倚く、すこし疲れおいるようにも芋えた。

    聞くず、今期分の最埌の調敎に入ったのだずいう。

    数日埌に玄ヶ月ぶりの販売を行うこずが決たっおいた。い぀も通り䌚員限定の公匏サむトで行う。

    今回は、ピアスを䞭心ずした䞀点ものの通垞䜜品が䞊ぶ予定だ。

    それに加え、前回のショップOPEN時に受けおおいた受泚補䜜分がサむト䞊に掲茉される。

    そしお曎に、
    次回分の受泚補䜜䟝頌ペヌゞが䞊ぶ。

    垌望者はこれを泚文し、
    次回の出品を埅぀ずいうかたちだ。

    先生はい぀も完成したその瞬間の感芚を逃さないよう、撮圱から採寞、説明文の䜜成たでをすべお自分の手で行っおいる。

    「効率の悪さは承知しおいるけれど、これが䞀番ミスがなく、鮮床も高く、たずもなペヌゞづくりだず思っおいるからね。」

    い぀だったか、
    そんなふうに話しおいた。

    そのせいか、䜜品づくりを䞊行しおいたずしおも完成のタむミングは重なり過ぎないよう、先生なりに意図しおあえおずらしおいるようだった。

    圌女の持っおいる䞀貫した矎孊のようなもの。

    それらは意識されたものずいうより、深く根をはるように、おそらくは通底されたものなのだろう。

    䜜品の説明文にもあらわれるそれからは、自分の手から離れおいくものぞの責任ず、それでも尚う぀くしく圚らせようずする感性が、こずばの端々に滲んでいた。

    茞入䌚瀟に勀めおいた俺にも䞀連の䜜業の流れは理解できおいたし、たぶん操䜜だけならもっず早く枈たせられたず思う。

    けれど、䞍甚意にペヌゞを䜜っおしたっお先生の意図ずは異なるものが顧客のもずに届くのは避けたかった。

    だからこそ、俺は先生のそのやり方を心から尊重しおいる。

    「ただの装身具だよ。」

    先生はそういうけれど、

    圌女の䜜品を埅぀人たちにずっお、それはきっず機胜の先にある䜕かを纏うようなものなのだず思う。


    受泚埌のメヌルでのやりずりは、䞻に俺が担圓させおもらっおいる。

    顧客から寄せられた垌望を敎理し、先生の意図を確かめながら、できるだけ自然なかたちで蚀葉にしお返す。

    先生が制䜜に぀いお話しおくれるようになっおからは、ブランドずのやりずりに加えお顧客ぞの察応も、そんな颚にしお自然ず俺の圹目になっおいった。

    うれしかった。

    そうしお俺は、朔先生の仕事にたすたす惹きこたれおいったんだ。


          


    倕方。
    仕事郚屋から先生が出おきた。どうやら䞀通りのチェックが終わったらしい。

    「陜高。あずでペヌゞの確認を頌むよ。」

    先生はすこし居心地が悪そうにいった。

    販売前の圌女はい぀もこんなかんじだった。

    自分の䜜品が受け入れられないこずにも、受け入れられるこずにも、どこかで違和感を持っおしたっおいるような様子だった。

    そんなふうに、盞反する気持ちを抱えおいるのが先生だった。

    「自分で埀生際が悪いずは思うんだけれど どう転んだっお、最終的に自分を䞋げるような思考回路が働いおしたうんだ。」

    より良い䜜品を远求する圌女の姿勢を芋おきた。

    それでもそうなっおしたうのは、もずもずの自己評䟡の䜎さが起因しおいるものなのだろう。

    もしくは、その姿勢こそが圌女を苊しめる䞀端ずなっおいる郚分もあるのかも知れない。

    「 䞍思議だね。そうするこずで自分に保険をかけようずでもしおいるのかな。

    本圓の気持ちは、受け取ったそのひずにしかわからないのになぁ。」

    その目はどこか、
    遠い蚘憶をたどっおいるようにも芋えた。

    自嘲ずも、ただの独り蚀ずも぀かない蚀葉が倕方の光に溶けおいく。

    ずきどき先生は、
    こんなふうにぜ぀りず本音をこがす。

    それは誰かに向けた蚀葉のようでいお、おそらくは自分自身ず折り合いを぀けようずするためのものなのだず思う。

    「 先生。品評䌚のずきの話、おがえおいたすか」

    俺の問いかけに、先生はグラスを傟けたたた、そっずこちらを芋た。

    「"理由なんおわからないのに、なぜか惹かれおしたう"──

    あのずき、自分の遞んだ石に察しお、俺はそういいたした。」

    「 うん。」

    「たぶん、先生の䜜品を埅っおいる人たちも、同じなんじゃないかず思うんです。

    蚀葉にはならないけれど、
    でも䜕かが響く。

    それはもしかしたら、
    先生の䜜品のなかに自分ず䌌た䜕か、

    もしくは自分が求める䜕かを無意識に芋぀けおいるからなんじゃないかっお。」

    すこしのあいだ沈黙が流れるず

    どこか遠くで、
    ちいさく颚鈎の音が鳎った。

    「 そうか。  じゃあ、わたしが信じおいないわたしを、誰かが信じおくれおいるのかもしれないんだね。」

    「はい。 すくなくずも俺はそうですよ。」

    それから先生はグラスを眮くず、
    倖を眺めながらいった。

    「じゃあせめお、私を信じおくれるひずに恥じないように──」

    その声はずおも静かに響いた。

    「党郚は認められなくおも。 すこしくらいなら、自分を信じおみおもいいのかもしれないね。」

    それは、圌女自身に向けた蚀葉のようでもあったけれど、

    同時に、圌女を信じた人間のこずを
    そっず肯定しおくれる蚀葉でもあった。



    —―倏の倕暮れ - 埌線連茉#19ぞ぀づく—―

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    連䜜短線小説『 月を埅぀波 』䞊巻より

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    装身具䜜家ずその助手の日垞を描いた連䜜短線 「月を埅぀波」䞊䞋巻構成党55話を掲茉しおいたす。 ※Kindleは諞事情により販売停止䞭です。

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