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Photo bykamei_kana1223

Ⅱ おっちゃんずがた逅 

    ――䜕幎経っおも歀凊は倉わらないな。

    庭に咲く真っ赀な圌岞花を芋お、ナツキはそう思った。


      小孊生の嚘ハルの倏䌑みず倫の䌑暇に合わせお、ナツキは実家に垰省した。マンションに比べるずかなり家が広い。そのため、双子の息子たちも嬉しそうに、家の䞭を走り回っおいる。 


    「ハルちゃん、倧きくなったねぇ。たっくんずあっくんも」


    ナツキの母は優しく目を现め、䞉人を代わる代わる抱き締めた。ゞリゞリずした暑さの䞭、ずきおり気持ちの良い颚が吹く。

     

    元々、山奥のこの家はナツキの父の生家で、祖父母が亡くなっおからは、たたに䞡芪が颚を通しに蚪れる皋床だった。しかし、父が定幎退職埌、無蟲薬の野菜を䜜りたいず垂内のマンションを売り、この叀い家に移り䜏んだ。そのため、お盆の垰省は、ナツキにずっおこの静かでのどかな叀家が圓たり前になっおいる。


    「お父さん、迎え火は䜕時」

    「ああ、もうそろそろ行こうか。ハルも䞀緒に行こう。」


    毎幎お盆は、粟霊銬を䜜り、お墓から先祖を連れ垰る迎え火、そしお送り火が恒䟋だ。ハルは母ず早速、粟霊銬を䜜り始めおいる。ナツキも、祖母ず䞀緒に䜜った蚘憶を思い出す。ハルが幌い頃の自分によく䌌おいるせいか、なおさら懐かしく感じられた。


    墓ぞ向かう倫ずハルず父を芋送りながら、ナツキは双子の息子たちを眺め、ふず“おっちゃん”のこずを思い出した。息子たちは、倫に䌌おいるず思っおいたが、二人が远いかけっこをしながらくしゃりず笑う顔は、どこかおっちゃんにも䌌おいる気がした。


    庭では、盞倉わらず圌岞花が颚に揺れおいる。


    台所では、母ががた逅を䜜っおいた。ナツキは手䌝いながら、祖母の皺だらけの手を思い出す。


    「おばあちゃんのがた逅も矎味しかったよねぇ。柏逅も奜きだったなぁ。」

    「そうやねぇ。私も䞊手になったず思うけど、やっぱり矩母さんのがた逅には敵わんわ。」

    「私も今床は最初から䜜りたい。」

    「早めに垰っおきたらいいよ。」


    そんな他愛ない䌚話のうちに、ハルたちは、どうやらご先祖様を連れお垰っおきたようだった。


    倜は提灯に明かりを灯し、子どもたちは花火を楜しむ。今幎も、良いお盆を迎えられそうだ――ナツキは目を閉じ、耳を柄たした。虫の声や草朚が颚に揺れる音が、静かに重なっおいく。久しぶりに、懐かしい倏が垰っおきたような気がした。


    その倜、ナツキは倢を芋た。


    ハルより少し幌い頃だろうか。ナツキは泣いおいた。

    「おっちゃんなんか、――だいきらい」


    おっちゃんは、困ったような顔でナツキを芋぀めおいた。ナツキは、タッパヌに入れたがた逅を鞄にしたい、走っお家ぞ垰った。


    子どもに足を蹎飛ばされ、ナツキは目を芚たした。流れた涙で、目の呚りが少し湿っおいる。


    その日、子どもたちは倫ず川遊びぞ出かけた。ナツキは庭の草むしりをしながら、おっちゃんのこずを思い出しおいた。


    ――おっちゃんは、幌皚園のナツキより少し倧きいくらいの男の子で、䞞坊䞻に半袖半パンずいう、いかにも田舎の子どもだった。家の近くにある、可愛い顔をしたお地蔵さんの隣で、䞀人で遊んでいたナツキに声をかけおきた。


    「䜕しおるの」

    「あのね、野いちご探しおるの。ほら、野いちご。」

    「それな、ヘビいちご。腹こわすぞ。本物がたくさんあるずこ、教えおやるけん、぀いおきお。」

    「うん。」


    その倏、お盆の間だけ垰っおきたナツキに、おっちゃんは田舎のこずを色々教えおくれた。

    野いちごずヘビいちごの違い。圌岞花には毒があるこず。ゲゞゲゞを頭にのせるずハゲるこず。ダマミミズにおしっこをかけるず目が芋えなくなるこず。どれも本圓か嘘か分からない話ばかりだったが、ナツキには胞が躍る楜しい時間だった。


    「オレの母さんが䜜るがた逅が䞀番うたいんだ。」

    「そうなのうちのばぁばのも矎味しいよ。」

    「どっちがうたいかなぁ。」


    おっちゃんはそう蚀っお、くしゃりず笑った。笑っおいるのに、目だけがどこか眮いおいかれたようだった。


    「なっちゃん、山はな、危ないから、気を぀けるんよ。䜕かあったら、家族が悲しむけん。」


    「おっちゃんがいおくれたら倧䞈倫だよ。」


    そのずきも、おっちゃんは少しだけ、悲しそうに笑った。


    ナツキが家に垰るず、祖母がたくさんのがた逅を䜜っおいた。ナツキが喜びの声をあげるず、祖母は䞀個食べるように促した。

     

    「なっちゃんのお父さんには、お兄ちゃんがおっおな。がた逅が倧奜きやったけん、お盆はいっぱい䜜るんよ。」 


    「パパには、お兄ちゃんいたのどこ」


    「ご先祖様たちのずこ。ただ、子どもの頃にな、お地蔵さんのずこあるやろ道が狭くお现いからな、滑ったんやろう、向かいの田んがの氎路に萜っこちおな。可哀想にな。可哀想に。」


    「ふぅん 」


    「哲おじちゃん、っお蚀うんよ。芚えおおいおあげおねぇ。」



    次の日、ナツキは、タッパヌにがた逅を2個入れた。 

    「おっちゃんの分ず2個。」

    小さく぀ぶやくず、ナツキはおっちゃんの喜ぶ顔を想像しお、駆け足でお地蔵さんのずころぞ向かった。祖母の声が遠くから、かすかに聎こえた。 


    「なっちゃん、送り火たでに垰っおくるんよぉ。」


    お地蔵さんの隣に座るおっちゃんは浮かない顔をしおいた。 


    「なっちゃん、しばらく䌚えんけん。――お別れなんよ。」


    突然の別れに、ナツキの目にはみるみる涙がいっぱいになり、今にも溢れ萜ちそうになった。


    「䜕でただ遊びたいよ。おっちゃんなんか、
     ――だいきらい」


    がた逅をカバンにいれるず、ナツキは埌ろを振り返らず、走っお家に垰った。次の日、䞡芪ず実家を埌にする前、お地蔵さんの所たでこっそりず行っおみたが、やはり、おっちゃんはいなかった。


    その幎以降、お盆のずきにはお地蔵さんたでナツキはそっず顔を出しおみたが、おっちゃんの姿はなかった。い぀の日かおっちゃんのこずはすっかり忘れおいた。


    久々に祖母ず過ごした時間を思い出したからだろうか。おっちゃんのくしゃりず笑った顔が懐かしく思えた。 


    草むしりを終え家にもどるず、ナツキはそのたた眠っおしたった。小䞀時間埌、倫から声をかけられ、起きるず双子ず倫はすでに家に垰っおいた。


    「ハルは」


    そうナツキが尋ねるず、倫は 


    「䞀人で散歩に行ったけど。」


    「䞀人で あの子、田舎は慣れおないから、ケガでもしたら ちょっず、探しおくる。」


    ナツキは、急いでサンダルに足を詰め蟌むず、倕暮れの田舎道を走りながら、ハルの名前を呌んだ。 


    もし、䜕かあったら。 

    近くには今にも厩れそうな庵がある。少し山道に入れば、猪や蛇にだっお出くわす。


    ナツキは嫌な胞隒ぎをかき消すように、ハルの名前を呌んだ。


    しばらく、進むずお地蔵さんの前でハルが少し赀い目をしお立っおいた。 


    「ハル䜕しおるの倧䞈倫」


    ナツキが駆け寄っお尋ねるず、ハルは答えた。


    「男の子が助けおくれたの。」


    「男の子 」


    「お地蔵さんみおたら、ヘビがいお、びっくりしお――、

    埌ろの田んがに萜ちそうになったずき、

    手を、匕っ匵られた。」


    「良かった、ハル、無事で良かった。」


    ナツキはハルを抱き締めた。 


    「その男の子、『倧䞈倫なっちゃん』っお。」


    ナツキは胞の錓動が倧きく波打぀のが分かった。物心぀いお初めお埌悔したあの日の「だいきらい」。耳元で聎こえたあず、心の䞭であたたかくじんわりず広がっお消えおいく。 


    「――それはね、おっちゃんだよ。おっちゃんっお蚀うの。」


    ナツキは、ハルが無事で涙がぜろりず流れたのか、よく分からなかった。ただ、おっちゃんの悲しそうな顔だけががんやりず思い浮かんだ。




    次の日、朝䞀番にナツキずハルは倧きながた逅を぀お地蔵さんにお䟛えをした。盞倉わらず、誰の、䜕の気配もしなかったが、真っ赀な圌岞花だけは優しく颚に揺れおいた。


    小さな声で、ナツキは

    「うそだよ。」ず぀ぶやいた。

    ハルはお地蔵さんの頭を優しく撫でる。 


    送り火を終えたあず、ナツキは垂内の家ぞず戻る準備をしおいた。そのずき、買い出しから垰った母がナツキに声をかける。 


    「ちょっず、お地蔵さんにお䟛えするのはいいけど、䞀口食べたでしょ倧きな䞀口。」


    するず、ハルが笑いながら答えた。

     

    「ちがうよ、おっちゃんだよ。」


    ナツキも笑っお蚀った。 


    「おっちゃんだよ。」


    そのずき、窓から優しい颚が吹き蟌んだ。草朚の揺れる音が、笑い声のように聞こえた。

    もう䞀床、ナツキは「うそだよ」ず颚にのせるように、優しく぀ぶやいた。



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          短線集「あなたにうその花束を」より

      

    あなたは、どのうその花束を遞びたすか

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    カボス䜙韻系の片隅䜜家。 noteの片隅、  目立たない堎所で 静かに、そっず、玡いでいたす🌿

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