メインコンテンツへスキップ
見出し画像

五本指ソックスの歴史!――スペインで消え、日本で蘇り、世界へ渡った靴下の話

    こんにちは!
    靴下工房Toréを運営しているアクルです。

    これまで大手アパレルOEMの現場で、中国工場と一緒に数百万足の靴下を作ってきました。

    このnoteでは、その経験をもとに、普段あまり意識されない靴下の仕組みをできるだけ分かりやすく書いています。

    靴下はとても地味な存在ですが、実は身体・工業・文化が交差する、なかなか奥の深い世界です。

    今回は、五本指ソックスの歴史について!


    手袋は、中世ヨーロッパではすでに5本指が一般化していました。
    それなのに靴下が5本指になるまで、数百年かかりました。


    手袋と靴下の分かれ道


    手袋が5本指になったのは、当然のことでした。

    指でものをつかむ。道具を使う。細かい作業をする。
    指が独立していなければ、手が使いにくいですからね。

    では足はどうでしょうか。
    足は靴に覆われています。
    靴の中に収まりさえすれば、指は一まとめでも困りません。

    日常生活の中で、足の指を「意識的に」個別に使う場面は、長いあいだあまり重視されてきませんでした。

    靴下が「袋」のままで十分だったのは、靴という存在があったからだと思います。

    手袋と靴下の運命を分けたのは、指の「使われ方」の違いでした。

    画像
    用途を考えればとうぜん

    1970年、スペインで最初の一足が生まれた


    五本指ソックスが初めて工業生産されたのは、1970年頃のことです。

    スペイン・バルセロナのカルセン社が、自社の編み機を改造して「足にも使えないか」と試みました。
    コンセプトは「足指を動かすことは健康の源である」。

    発想自体は、間違っていなかったと思います。
    しかし製品は売れませんでした。

    指先のバランスが悪く、素材はナイロン・アクリル系の合成繊維。

    「履けるもの」ではあっても、「履きたいもの」ではありませんでした。

    製品は広がらず、やがて市場から姿を消していきました。

    画像
    アイデア、技術、品質
    すべてが噛み合う瞬間はむずかしい

    日本の手袋職人が拾い上げた


    このスペインの五本指ソックスに目を留めた人物が、日本にいました。

    当時、手袋メーカーの役員だったニッティド創業者・井戸端隆宏。

    「手のスタンダードを、足にも」という発想で、1974年から再開発に着手します。

    3年かけて編み機を改良しました。

    足の指は、手の指とは太さも長さも違います。
    その違いを一本一本計算し直し、指幅に合わせた設計に作り変えました。
    素材も合成繊維から綿主体に変えました。

    スペインで消えた発明が、日本で「履ける靴下」として蘇りました。

    ここに、日本ならではの背景があったのではないかと私は考えています。

    日本には足袋がありました。

    親指だけを独立させ、下駄や草履と組み合わせて使う、日本固有の足の文化です。

    「指を個別に包む」という発想が、日本人には比較的なじみやすかったのではないかと思うんですよね。

    画像
    もともとの文化も後押しした

    それでも、売れませんでした

    再開発に成功しても、市場の反応はまだまだ厳しく。

    見た目の奇妙さ。 履きにくさ。 価格の高さ。

    この三重苦が重なり、一般消費者にはなかなか受け入れられませんでした。

    そこでとった戦略が、作業服市場への転換でした。

    機能を重視する農業や工場の現場なら、見た目の特殊さは問題になりません。

    足指が分かれていることで、踏ん張りが利く。蒸れにくい。

    そういう実績を一つずつ積み上げていきました。

    画像
    あきらめずに継続することの大切さ

    1988〜1989年頃、「冷え取り」が爆発させた


    転機は、意外な場所からやってきました。

    1988〜1989年頃、中部地方の医師がシルクの五本指ソックスの重ね履きによる「冷え取り健康法」を提唱しました。

    健康志向の高まりとぴったり重なりました。
    数年後には一大ブームになりました。

    「作業着」だった五本指ソックスが、「健康グッズ」として日本市場に定着した瞬間でした。

    画像
    ついに転機がくる

    同じ頃、アメリカでも別の流れが生まれていた

    日本で健康市場を開拓していた同じ時期、アメリカでは全く別の流れから五本指ソックスが生まれていました。

    1999年に創業したとされるカリフォルニアのInjinji社が、「パフォーマンストゥソック」を展開します。

    コンセプトは健康ではなく、スポーツパフォーマンスでした。

    指を個別に包むことで摩擦が減り、水ぶくれができにくい。
    足指の自由度が高まり、バランスや安定性を意識しやすい。

    ランナーやトレイル愛好家に支持され、現在は世界各国で販売されています。

    スペインで生まれ、日本とアメリカでそれぞれ独立して復活しました。

    「健康」と「スポーツパフォーマンス」、2本の川が別々に海へ流れていったわけです。

    画像
    よいものはちゃんと広がっていく

    成長市場として、世界へ

    現在、五本指・トゥソックス市場は調査会社によって推計に幅がありますが、健康・スポーツ・ヨガ・ミニマリスト系フットウェアの文脈で成長市場として扱われています。

    最大市場は北米で、アジア太平洋がそれに続きます。


    足袋→靴下→五本指

    歴史をたどると、こういう流れになります。

    足袋(親指だけ独立)→靴下(全部まとめて袋)→五本指ソックス(全指独立)。

    五本指ソックスが1970年頃まで工業製品として広がらなかったのは、誰も思いつかなかったからではありません。

    靴の中で足指を個別に包む必然性が、長いあいだ市場に見えにくかったからです。
    技術や品質が追いつかなかったのもそうですし、消費者の気分もあったでしょう。

    そして今、その良さがしっかりと伝わるようになりました。

    次に生まれてくるのは、どんな靴下でしょうね。


    最後まで読んでいただきありがとうございます。

    靴下工房Toréでは、「派手ではないけれど毎日履ける靴下」をテーマに靴下を作っています。

    Xでは、靴下の仕組みや量産の裏側についても発信しています。 興味があればぜひのぞいてみてください。

    Toréの靴下はこちらから ↓↓


     
     
     
    くつ下を作って販売しています/ 1日平均1000足/ 小売店様に卸も/ 量販業界20年/ お仕事のご依頼お気軽に/ 靴下マニア1人社長/ 元大手OEMで数百万足/ 量販業界のリアル/ 2022年起業/ 足のことを考えた毎日履ける靴下 『Toré』2026年よりスタート/

    あなたへのおすすめ