
公務員がいきなり独立して14年|脈絡なく独立して生き抜くための7つの知恵
独立・起業にまつわる記事は、人気があるようです。
会社員のうちに準備しておくこと。
独立前に身につけるべきスキル。
安定収入をつくる方法。
最初の顧客を獲得する方法。
おそらく、どれも大切なことだと思います。
ただ、霞ヶ関の公務員を辞め、特に周到な準備もないまま独立して14年目を迎えた僕から申し上げますと、結局のところ必要なのは、気合いと根性と粘り強さに尽きるなと思います。

ということで、いきなり身も蓋もない話になりました。
もちろん、戦略も必要です。
営業力も、専門性も、人脈も、お金の管理も大切です。
しかし、それらがすべて揃ってから独立できる人は、そんなに多くありません。
少なくとも僕は、揃っていませんでした。
自分で道を切り拓いたというより、人に拾っていただき、仕事を任され、よくわからないまま目の前のことに対応しているうちに、できることが増えていった道のりでした。
計画どおりに進んだというより、計画から外れた場所で生き延びてきた14年です。
気づいたら、思ってもみなかったところにたどり着いていました。
そこで今回は、これから独立を志す方にはおそらく何の参考にもならない「脈絡なく独立して生き抜くための7つの知恵」を共有したいと思います。
1.止めろと言われても、やる。
独立して数年が経ったころ、昔の先輩から連絡を受けました。
「自分の部下が、コーチとして独立したいと言っているんだよね」
困ったなあと思っていたところ、
「山ちゃんのことが思い浮かんだから、一度話を聞いてやってくれない?」
とのことでした。
実際にお会いしてお話ししましたが、僕のアドバイスは、徹頭徹尾「や・め・て・お・け」。
理由は簡単です。
本気でやる人間は、「やめておけ」と言われてもやるからです。
独立したい理由を並べ、周囲から賛成を集めなければ動けないのであれば、まだ機が熟していないのかもしれません。
独立すると、もっともらしい理由を添えて「やめておけ」と言われる場面が、何度もあります。
それでもやる人が、結果として続けているだけなのだと思います。
2.誰にも相談せず、やる。
僕が霞ヶ関に入るにあたり、恩師をはじめ、お世話になった方はたくさんいました。
また、僕の父親は、僕が入った官庁の所管団体に勤めていたので、息子が所管官庁へ入ったことを、とても喜んでくれていました。
しかし、役所を辞めるとき、その方々には一切相談しませんでした。
相談したのは、妻だけです。
お世話になった方々への、信じられないくらいの不義理。
でも、こうした決断は、その瞬間には誰にも理解されるものではありません。
相談すれば、心配して止めてくれるでしょう。
それは悪意ではなく、その人が僕を大切に思っているからです。
しかし、自分でも説明しきれない決断について、相手に理解や賛同を求めるのは、無理な話です。
立派に生き残った姿を見て、あとからわかってもらうしかありません。
独立には、その時差を引き受けるハラが求められます。
3.自己否定を極める。
「自己肯定感」という言葉がありますが、起業したら、その言葉はいったん封印した方がよいと思っています。
行うべきは、徹底的な自己否定です。
ただし、ここで否定するのは、自分の人格ではありません。
自分のサービスが必要とされるはずだという、都合のよい思い込みです。
自分のサービスが、世の中にとっていかに必要のないものなのか。
なぜ、それにお金を払わなければならないのか。
ほかの方法では、本当に駄目なのか。
自分が提供する必要は、どこにあるのか。
なぜ、あなたでなければならないのか。
世間の誰よりも自分のサービスを否定し尽くした先に、それでも残る意味や価値があります。
それこそが、顧客へ伝わるものです。
売ろう、売ろうとするほど、セールストークは臭くなります。
自分の価値を信じてもらおうと必死になるほど、存在から腐臭が漂い始めます。
自己肯定より先に、自己否定を極める。
それでも否定できなかったひとしずくが、ようやく商売の核になります。
4.横に嫌われ、上に好かれる。
独立起業すると、孤独になります。
温かい仲間に囲まれたいと思うのは、人情です。
ただ、温かい仲間が、そのまま仕事につながるとは限りません。
厳しい言い方をすると、力のない者が集まって互いを認め合っていても、大きなインパクトは生まれません。
一方、質の高い仕事の現場は、常に人材不足です。
力のある人は、自分と同じ水準で仕事のできる人や、自分にない能力を持つ人を探しています。
僕自身、起業した当時、哲学の知識をベースに業界批判をしたことで、多くの方に嫌われました。
一方で、その批判をおもしろがってくれた一部の力のある方々に拾われ、仕事の幅が広がりました。
全員に好かれる必要はありません。
むしろ、何を言えば誰に嫌われ、誰に見つけてもらえるのか。
力のある人は、どのような思考や振る舞いを評価するのか。
これは、力のある人へ媚びるという話ではありません。
基準の高い人から見ても、自分の仕事には価値があるのかを問い続けるということです。
それは、常に研究しておくべき事柄だと思います。
5.「知識」や「人」を主語にしない。
僕らの業界では、
「○○理論では、このように説明されています」
「著名な○○さんが、こう言っています」
という語り方をする人が結構います。
もちろん、先人の知恵を学ぶことは大切です。
僕自身も、哲学や心理学をはじめ、たくさんの知識を使って仕事をしています。
ただ、現場で問われるのは、その理論を知っているかどうかではありません。
目の前で起きていることを、あなた自身はどう見るのか。
その知識を使って、何を考えるのか。
そして、相手にどのような言葉を返すのか。
「○○理論が言っている」
「○○さんが言っている」
という言葉の後ろへ隠れている人は、現場ではあまり信頼されません。
知識や人の名前を主語にするのではなく、自分を主語にして話す。
そして、その言葉が外れたときには、自分で責任を引き受ける。
専門性とは、知識をたくさん持っていることではなく、知識を自分の判断として差し出せることなのだと思います。
6.誰もやらない自己ブランディングをする。
研修会社からコーチとしてアサインしていただくときや、プロジェクトへ参画するとき、僕はいつも、
「一番めんどくさそうな人を回してください」
とアピールしていました。
普通のコーチが苦手としそうな、パワハラ案件。
左脳系で、論理のガードが異様に堅い人。
頭がよすぎて、相手の問いを先回りして処理してしまう人。
そうした方々への対処能力は、磨きに磨いてきました。
華やかなキャッチコピーをつくることだけが、自己ブランディングではありません。
「こんなときには、あの人しかいない」
という第一想起を、特定の場面で獲得することもブランディングです。
みんなが取りにいく、わかりやすくて格好のよい場所を狙っても、そこには強い競合がいますし、経験を積んだ重鎮がいます。
それよりも、誰もやりたがらない仕事を見つけ、そこで異様に強くなる。
独立直後の人間にできる自己ブランディングとは、そのくらい偏ったものであるべきでしょう。
7.ビジネスマンから解脱する。
僕らのような実体の見えにくいビジネスは、「良いこと」を言って売ろうとすると、どうしても変な匂いがします。
立派な未来を語り、顧客の不安を刺激し、自分に頼れば人生や会社が変わると伝える。
そうして売る人は、次第に教祖的なポジションへ近づいていきます。
教祖は、自分より下にいる人には売れます。
しかし、自分より経験も能力もある人には、なかなか売れません。
向こうには、こちらの欲が見えているからです。
大切なのは、商売を「能力の交換」へ戻すことだと思います。
僕には、相手の話を聞き、まだ言葉になっていないものを捉え、本人とは違う角度から問いを返す能力があります。
相手には、僕にはない経験や知性、そして事業を動かす力があります。
僕は自分の能力を差し出し、その対価としてお金をいただく。
そこに、過剰な夢や救済を載せる必要はありません。
独立して生き残るために必要だった最後の知恵は、上手なビジネスマンになることではありませんでした。
売ろうとする自分から少し離れ、自分が差し出せる能力を淡々と磨くこと。
つまり、ビジネスマンから解脱することでした。
以上、公務員がいきなり独立し、14年間、脈絡なく生き延びてきた人間の知恵でした。
真似をすることは、まったくおすすめしません。
再現性も、おそらくありません。
それでも一つだけお伝えできるとすれば、独立とは、準備の整った人が成功することではないのだと思います。
理解されない時差を引き受ける。
自分の価値を疑い尽くす。
嫌われることを恐れず、面倒な仕事を拾い、自分の能力を磨き続ける。
結局のところ、必要なのは気合いと根性と粘り強さです。
脈絡なく独立して生き残る人というのは、自分が歩いた後に、ようやく道ができている人なのだと思います。
<ご参考>
■ お仕事面での自己紹介
■ 個人的な自己紹介