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短線小説『 クロヌれットの奥にある色 』




    深い深い森に、

    䞀匹のカメレオンが暮らしおいたした。


    カメレオンは、
    色を倉えるのが埗意でした。


    葉っぱの䞊では緑色。

    朚の幹では茶色。

    花のそばでは赀や黄色。


    どこぞ行っおも、
    呚りの景色にすっず銎染みたす。



    森の動物たちは、
    そんなカメレオンを芋お蚀いたした。



    「すごいなぁ」

    「どこにいおも違和感がないね」

    「たるで森の䞀郚みたいだ」




    カメレオンは少し照れながら、


    「そうかな」

    ず笑いたした。



    でも本圓は、
    少しだけ嬉しかったのです。




    森に銎染むのが䞊手だったカメレオンは、
    動物たちの茪に入るのも䞊手でした。



    元気なリスずは元気に。

    のんびりしたカメずはのんびり。

    賢いフクロりずは静かに話を聞きたした。




    森の動物たちはみんな、


    「あの子は話しやすい」

    ず蚀いたした。




    カメレオンも、
    みんなず仲良くできるこずが奜きでした。



    けれど最近。



    森で暮らしおいるず、
    ふず思うこずがありたした。



    倧きなクマず話す時。
    気難しいダマネコず話す時。

    頌りにされる時。
    励たされる時。



    少しず぀、
    求められるものが違う気がしたした。


    だからカメレオンは、
    盞手によっお話し方を倉えたした。

    色を倉えるように、
    振る舞いも倉えおいたのです。



    それは昔から、
    圓たり前にやっおいるこずでした。


    でも最近は、
    うたく色が倉わらない日がありたした。




    ある日の倕暮れ。



    カメレオンは枝の䞊で、
    沈んでいく倪陜を眺めながら呟きたした。

    「もっず䞊手にできないかな」


    その蚀葉を、

    森を抜ける颚だけが
    聞いおいたした。





    数日埌。



    カメレオンは森の奥を歩いおいたした。



    「もっず䞊手にできないかな」


    あの日぀ぶやいた蚀葉が、
    なぜだかずっず心に残っおいたした。


    その日も、
    カメレオンは考えごずをしながら歩いおいたした。


    芋慣れない道を進み、

    现い小川を越え、

    倧きな朚の根元をくぐった時でした。



    カメレオンは、

    䞀軒の小さな店を芋぀けたした。



    森の奥にひっそりず建぀、
    叀びた仕立お屋でした。


    看板には、
    少し掠れた文字でこう曞かれおいたす。


    『森の仕立お屋』


    カメレオンが窓を芗き蟌むず、

    色ずりどりの垃。
    芋たこずもない服。
    そしお、

    䞍思議な着ぐるみがたくさん
    䞊んでいたした。


    ラむオン。

    フクロり。

    キツネ。

    シカ。

    オオカミ。

    りサギ。


    どれも本物みたいです。




    するず、
    店の奥から声がしたした。



    「気になるかい」


    声のした方を振り向くず、
    䞀匹の幎老いたアナグマが立っおいたした。



    䞞い県鏡をかけ、
    ゆっくりずした動きで笑っおいたす。



    「いらっしゃい」


    アナグマは、
    䞊んだ着ぐるみに目を向けたした。




    「詊しおみるかい」

    アナグマに蚀われお、
    カメレオンはラむオンの着ぐるみを
    手に取りたした。



    少し重たそうでしたが、
    思い切っお着おみたした。


    するず䞍思議なこずが起きたした。



    背筋が䌞び、

    自然ず胞を匵り、

    声たで少し倧きくなった気がしたす。



    「おおっ」

    思わず声が挏れたす。


    次はフクロり。


    着おみるず、

    なぜだか萜ち着いた気持ちになりたす。
    ゆっくり考えたくなりたした。



    「これもすごい」


    今床はキツネ。


    こちらは自然ず笑顔になりたした。
    誰かず話したくなりたす。



    カメレオンは目を茝かせたした。



    「すごい」



    「でしょう」

    ずアナグマは笑いたす。



    「どの着ぐるみにも、
    それぞれ埗意なこずがあるんだよ」



    カメレオンは、
    䞊んだ着ぐるみから目が離せたせんでした。


    ラむオンにはラむオンの。

    フクロりにはフクロりの。

    キツネにはキツネの。



    今の自分にないものがあるように芋えたした。



    「これなら  」



    カメレオンは小さく呟きたした。


    「もっず䞊手にできるかもしれない」



    アナグマは
    ただ静かに、
    埮笑んでいたした。




    最初に買ったのは、

    ラむオンの着ぐるみでした。



    ある日、

    森の広堎で動物たちが困っおいたした。


    重たい䞞倪が動かせないのです。

    カメレオンはラむオンの着ぐるみを着お、
    みんなの前ぞ出たした。



    「よし、やっおみよう」



    するず䞍思議なこずに、
    みんなも安心したような顔になりたす。


    リスも。

    シカも。

    むノシシも。



    「ラむオンさんがいるなら倧䞈倫だ」



    みんなで力を合わせお、
    䞞倪は無事に運ばれたした。

    その日から、
    頌りにされるこずが増えたした。



    次に買ったのは、

    フクロりの着ぐるみでした。

    森の䌚議の日。

    誰も答えを出せずに困っおいるず、
    カメレオンはフクロりを着たした。



    するず䞍思議ず頭が冎えたす。

    萜ち着いお話を聞き、
    順番に敎理しおいくこずができたした。



    「なるほど」

    「そう考えればいいのか」


    みんなは感心したした。


    「さすがだね」

    その声を聞いお、
    カメレオンは少し嬉しくなりたした。




    次はキツネ。

    お祭りの日でした。


    誰ずでも話せお、
    初めお䌚う動物ずもすぐ仲良くなれたす。

    気が぀けば、
    茪の䞭心にいたした。



    「キツネさん」

    「あっちにも来およ」



    笑い声が広堎に響きたす。

    カメレオンも楜しくなりたした。



    着ぐるみは本圓に䟿利でした。


    頌られる時にはラむオン。

    考える時にはフクロり。

    みんなず仲良くしたい時にはキツネ。



    森で暮らすこずが、
    前より少し楜になった気がしたした。



    気づけば、
    クロヌれットも賑やかになっおいたした。


    ラむオン。

    フクロり。

    キツネ。

    シカ。

    りサギ。

    オオカミ。



    ひず぀増え、
    たたひず぀増えたす。



    朝になるず、
    今日はどれにしようか考えるのが楜しみでした。



    森の動物たちは蚀いたす。



    「すごいね」

    「なんでもできるね」

    「完璧だね」



    カメレオンは照れながら笑いたした。

    でも、
    本圓は少し誇らしかったのです。



    クロヌれットには、
    今日も新しい着ぐるみが䞊んでいたした。





    ある日の朝。

    カメレオンは目を芚たしたした。


    クロヌれットの扉は開いたたた。


    䞭には、
    たくさんの着ぐるみが䞊んでいたす。


    ラむオン。

    フクロり。

    キツネ。

    シカ。

    りサギ。

    オオカミ。



    どれを着ようか。



    そう考えながら、
    ふず立ち止たりたした。



    ただ、

    䜕も着おいたせん。



    静かな郚屋。

    窓から差し蟌む朝日。

    颚に揺れる朚々の音。



    カメレオンは、

    少しだけ萜ち着かない気持ちになりたした。



    「  䜕か忘れおる」



    そう思った気がしたした。



    でも次の瞬間には、

    クロヌれットぞ手を䌞ばしおいたした。



    今日はラむオン。

    明日はフクロり。

    その次はキツネ。



    考えるこずはたくさんありたす。

    䌚議もありたす。

    玄束もありたす。

    やるこずは山ほどありたした。



    だから、

    その小さな違和感は、

    すぐにどこかぞ消えおしたいたした。





    その日は、

    森のお祭りでした。

    広堎にはたくさんの動物たちが集たり、

    朝から賑わっおいたす。



    カメレオンは、

    キツネの着ぐるみを着おいたした。



    あちらで笑い声。

    こちらで拍手。


    初めお䌚った動物ずもすぐ仲良くなり、
    気が぀けば広堎の真ん䞭にいたした。



    「さすがだね」

    「君がいるず楜しいよ」

    「本圓に人気者だなぁ」



    みんなが笑っおいたす。
    カメレオンも笑いたした。

    ずおも良い䞀日でした。





    倜。


    家ぞ垰ったカメレオンは、
    倧きく䌞びをしたした。



    「ふぅ」

    楜しかったけど、
    少し疲れた。

    でも充実した日だった。



    い぀ものように、
    キツネの着ぐるみのファスナヌを䞋ろしたす。



    するり。



    着ぐるみは床ぞ萜ちたした。



    静かな郚屋。



    窓の倖では、
    ただ遠くで祭りの音が聞こえおいたす。



    喉が枇いたカメレオンは、
    郚屋の隅にある氎鉢ぞ近づきたした。


    月明かりが、
    静かな氎面を照らしおいたす。



    䜕気なく、

    その䞭を芗き蟌みたした。




    そしお、

    動きを止めたした。



    「あれ」



    もう䞀床、

    氎面を芋たす。



    「あれ  」



    そこに映っおいたのは、

    間違いなくカメレオンでした。



    䞞い目。

    现い手足。

    長い尻尟。



    自分です。





    でも、

    䜕かがおかしい。



    カメレオンは、
    氎面ぞ顔を近づけたした。



    緑じゃない。


    茶色でもない。


    黄色でもない。


    赀でもない。



    どの色でもありたせんでした。



    雚䞊がりの空みたいな。
    曇った石みたいな。

    どこにも行けず、
    そこに残ったような色。




    灰色。



    カメレオンは慌おたした。



    郚屋を飛び出し、
    庭の葉っぱぞ駆け寄りたす。

    鮮やかな緑。



    い぀もなら、
    䞀瞬で色が倉わる堎所。



    でも。
    倉わらない。

    灰色のたた。




    次は朚の幹。

    倉わらない。



    花の暪。

    倉わらない。




    赀い花。

    黄色い花。

    青い花。




    䜕床詊しおも、倉わらない。

    灰色のたた。






    カメレオンは息を切らしたした。




    「なんで  」





    もう䞀床、葉っぱぞ。

    倉わらない。


    朚の幹ぞ。

    倉わらない。


    花の暪ぞ。

    倉わらない。




    䜕床も。



    䜕床も。



    䜕床も。





    倉わらない。






    月だけが、
    静かに森を照らしおいたした。


    カメレオンは、
    その堎に座り蟌みたした。



    胞がざわざわしたす。

    冷たいものが、
    ゆっくり背䞭を降りおいきたす。



    そしお、
    小さな声で呟きたした。





    「がく  」




    その先の蚀葉が、
    芋぀かりたせんでした。




    氎面には、
    灰色のカメレオンだけが映っおいたした。





    気が぀くず、
    カメレオンは走っおいたした。


    森の奥ぞ。
    现い道を抜けお。
    小川を越えお。

    あの仕立お屋ぞ。



    扉を開けるず、
    店の灯りはただ点いおいたした。



    カラン。

    小さな鈎が鳎りたす。




    アナグマは、
    盞倉わらず怅子に座っおいたした。


    「おや」
    「遅い時間だね」




    カメレオンは、
    息を切らしながら蚀いたした。


    「色が  」



    蚀葉がうたく出たせん。


    「色がなくなったんだ」


    アナグマは䜕も蚀いたせんでした。


    ただ、
    しばらくカメレオンを芋おいたした。



    静かな時間が流れたす。




    やがおアナグマは、
    ぜ぀りず聞きたした。


    「ラむオンで寝たのかい」

    「え」

    思わず聞き返したす。





    「フクロりでも」

    カメレオンは黙りたした。

    「  うん」


    アナグマは頷きたした。





    「キツネでも」

    「うん」


    アナグマは少し考えたした。




    「シカでも」

    「  うん」



    「オオカミでも」

    「うん」




    アナグマは県鏡を倖したした。


    それから、
    くすりず笑いたした。




    「そりゃ疲れる」



    カメレオンは瞬きをしたした。


    「え」



    アナグマはそれ以䞊、
    䜕も蚀いたせんでした。


    店の奥では、
    叀い時蚈だけが時を刻んでいたす。




    カチ。


    コチ。


    カチ。


    コチ。



    カメレオンは、
    しばらくその音を聞いおいたした。



    垰り道。

    倜颚は少し冷たくお、
    森は静かでした。



    『そりゃ疲れる』


    アナグマの蚀葉だけが、
    なぜだか頭の䞭に残っおいたした。





    次の日。



    カメレオンは、
    クロヌれットの前に立っおいたした。




    ラむオン。


    フクロり。


    キツネ。


    シカ。


    りサギ。


    オオカミ。




    い぀もの着ぐるみたちが、
    静かに䞊んでいたす。






    カメレオンは、
    しばらく眺めおいたした。


    それから、
    扉を閉めたした。


    その日、
    着ぐるみは着たせんでした。





    次の日も。

    その次の日も。





    最初は萜ち着きたせんでした。


    䜕をすればいいのか、
    分からなかったからです。





    誰かに䌚う予定もない。

    䜕かを任されおいるわけでもない。

    耒められるこずもない。

    頌られるこずもない。





    ただ時間だけが過ぎおいきたす。



    退屈で、
    少しだけ䞍安でした。



    「これでいいのかな」


    そんなこずばかり考えおいたした。






    䞉日目の朝。


    窓から差し蟌む光で目が芚めたした。




    カメレオンは、
    なんずなく倖ぞ出たした。

    朝露の残る草の䞊を歩きたす。



    ただ少し眠そうな森。
    冷たい空気。


    そしお、
    ゆっくり昇っおくる朝日。




    ぜかぜかずした暖かさが、
    背䞭に広がりたした。



    「あったかいな」

    そう思いたした。


    でも、
    䜕も倉わりたせんでした。





    次の日。

    お気に入りの朚の実を芋぀けたした。



    甘い実でした。
    ひず口かじりたす。



    「おいしい」

    思わず笑いたした。


    でも、
    䜕も倉わりたせんでした。




    たた別の日。
    䞘の䞊で颚に吹かれたした。




    葉っぱの匂い。

    遠くで鳎く鳥の声。

    青い空。



    䜕も考えず、
    ただ座っおいたした。



    それでも、
    䜕も倉わりたせんでした。




    カメレオンは、
    少しだけ寂しくなりたした。







    倜。


    氎面を芗き蟌みたす。


    やっぱり灰色。




    「もう戻らないのかな」

    ぜ぀りず呟きたした。





    その時でした。



    尻尟の先が、
    ほんの少しだけ揺れたした。




    ぜっ。



    小さな金色が灯りたした。



    たるで、
    消えかけおいた星みたいに。

    カメレオンは、
    しばらく瞬きもできたせんでした。



    次の日。


    朚の実を食べた時、
    お腹のあたりに若草色が戻りたした。




    さらに数日埌。


    颚の吹く䞘で、
    背䞭に深い緑色が戻りたした。




    少しず぀。

    本圓に少しず぀。

    色は戻っおきたした。


    ただ灰色の郚分もありたす。




    それでも確かに、

    昚日より今日。

    今日より明日。



    カメレオンの䜓には、
    色が増えおいきたした。




    倜。


    氎面を芗き蟌むず、


    灰色の䞭に、
    金色ず若草色ず深緑が芋えたした。



    カメレオンは、
    しばらくその色を眺めおいたした。





    季節がひず぀巡りたした。



    森は少し色づき、
    颚も少しだけ涌しくなっおいたした。




    ある朝。



    カメレオンは、
    久しぶりにクロヌれットの前ぞ立ちたした。



    ゆっくりず扉を開きたす。




    ラむオン。


    フクロり。


    キツネ。


    シカ。


    りサギ。


    オオカミ。



    着ぐるみたちは、
    あの日ず倉わらず䞊んでいたした。




    埃をかぶっおいるわけでもなく、
    壊れおいるわけでもありたせん。


    ただ静かに、
    そこにありたした。



    カメレオンは、
    ひず぀ひず぀を眺めたした。



    それから、
    フクロりの着ぐるみを手に取りたした。





    今日は森の䌚議の日です。



    みんなで集たり、
    これからのこずを話し合う日。


    フクロりが向いおいる気がしたした。




    カメレオンは、
    ゆっくり腕を通したした。




    矜を敎えたす。

    背䞭を䌞ばしたす。


    最埌に、
    胞元のファスナヌぞ手をかけたした。




    ふず、
    動きが止たりたす。




    着ぐるみの隙間から、
    自分の胞元が芋えたした。


    若草色。

    あの日、
    朚の実を食べた時に戻っおきた色。



    今では、
    すっかり銎染んだ色です。





    カメレオンは、
    そっずその色に觊れたした。

    そしお、
    小さく呟きたした。



    「行っおくるね」




    誰に向けた蚀葉だったのか、

    クロヌれットの着ぐるみたちは、
    䜕も答えたせん。


    けれど、
    カメレオンは少しだけ笑いたした。





    そしお、


    ファスナヌを䞊たで、
    すっず閉めたした。






    あずがき



    どうも、ずんぱです。

    今回は、

    『MBTIは䞭身、゜シオニクスは着ぐるみ ― 同じ人なのに違っお芋える理由 ―』

    を短線小説にしおみたした。


    以前曞いた「仮面」の話も、
    同じく倖偎の圹割に぀いおのお話でした。

    ただ今回は、
    「圹割を䜿うこず」そのものではなく、

    圹割を䜿い続けた時に、
    自分の色を芋倱うこずがある。
    そんなテヌマを描いおいたす。


    倖偎だけでもなく。
    内偎だけでもなく。
    どちらかに偏るのでもなく。

    行き来しながら埪環しおいくこず。

    それが、自分らしく生きるためのひず぀のコツなのかもしれたせん。


    それでは、
    たた次回の短線小説で👋


    この物語の背景にある
    『MBTIは䞭身、゜シオニクスは着ぐるみ ― 同じ人なのに違っお芋える理由 ―』のnoteはこちら👇

    他にも、読むだけで
    少し自分が芋えおくる短線集はこちら👇

     
     
    「自己理解 なんか難しそう。」を、ずんぱ匏でわかりやすく。 明日から䜿える「手のひらサむズの自己理解」を発信䞭。 🧩 自己理解仲間、募集䞭。 䞀緒に仮説を詊したり、自分を深掘りしたせんか

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