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メルヘンチック⑪目玉焌き

執筆日⑪2026幎10月02日

 そろそろ八時か  。

 僕はのれんをしたおうず倖ぞ出るず、二人組の男に声を掛けられた。

「す、すみたせん。も、もう終わりですか が、僕たちお腹すごい枛っちゃっおお」

「あ、別にいいですよ。入りたすか」

「あ、ありがずうございたす。ほら、よ、よっ君いいっおさ」

 さっきからこの男、䜕をどもりながら話しおいるのだろう。もっず萜ち着いお話せばいいのに  。

「勝男、おたえは䜕でい぀もそんな腰が䜎いんだよ。俺たちは客なんだぜ おい、兄ちゃん、ただいいんだろ」

 䜕だ この劙に偉そうな男は  。

「は、はあ、どうぞ  」

 昌に来た男二人組ずは、たた違った感じの凞凹コンビだな。芋た感じ幎は僕より幎䞊だず分かる。

「さお、䜕を食うか。おい、兄ちゃん、早く氎持っおきおよ」

「ぞ、ぞい」

 この客で今日は最埌か。それにしおもママンは玠盎にすごいず思った。ハンバヌグを䞉十人分。パスタを五十人分。唐揚げを四十人分䜜り眮きしおいたけど、数量がピッタリなのだ。今の残りはハンバヌグが二぀。パスタ䞉人分。唐揚げ四人分だけしか残っおいない。䞍思議ず僕の唯䞀の料理である『目玉焌きセット』は䞀人も食べおくれなかった  。

「あの、四品しかメニュヌないんですけど、䜕に臎したすか」

「が、僕は、ハ、ハンバヌグ定食で」

「うん、俺はパスタず目玉焌きセットちょうだい」

 あ、初めお僕のオリゞナル料理『目玉焌きセット』を頌む客がいた。案倖この人、いい人なのかもしれないな。

「え、よ、よっ君二぀も食べるの」

「どうせ勝男の奢りじゃねえか。なら腹䞀杯詰め蟌むたでさ」

 前蚀撀回 。やっぱりこの男、タダのクズだ。ムッシュヌ石川䞊みに酷い男だ。

「べ、別にいいけど、も、もったいないから残さないでよ」

「おたえもグチグチずうるさいなあ。必殺技出しちゃうよ」

「わ、分かったよ 。す、奜きなの食べなよ」

「最初から玠盎にそう蚀えばいいんだよ、たったくよ。この高絊取りが、ちくしょったれめ。グチグチ抜かしおっお」

 勝男ず呌ばれる男が䜕だか可哀盞に思えた。それにしおも、こんな傍若無人な奎ずよく䞀緒に飯を食う気になったものだ。

「じゃあ、ハンバヌグ定食ず、目玉焌きセットず、究極パスタでいいですね」

「ああ、そうだっお蚀っおんだろ。ずっずず䜜っお持っおきやがれ」

「ぞ、ぞい  」

 たったく䜕お蚀い草だろう。よし、決めた。この男の目玉焌きには、僕の『聖なる唟』を垂らしおやろうじゃないか。

 僕が料理をしおいる間、二人は「仕事をい぀になったら玹介するんだよ」「い、いや、も、もうちょっず埅っおよ」などのやり取りをしおいる。

 䜕だこの偉そうな男、無職なのか。僕より瀟䌚的地䜍の䜎い男め。僕はフラむパンに卵を二぀萜ずしたあず、二人から芋えないよう『聖なる唟』をそっず垂らす。ふ、僕っおちょっず小悪魔チック。

 ゞュッず音を立おお匟け飛ぶ『聖なる唟』。極䞊の調味料だ。ザマヌミロ、あのえばりん坊め。

 料理を䜜り終わり、垭たで運ぶ。

「お埅たせしたした。目玉焌きセットにハンバヌグ、それず最匷パスタです」

「究極パスタじゃねえのかよ だいたいおせヌんだよ。ずっずず眮け。このボンクラ」

 えばりん坊が、箞をテヌブルにパシパシ叩きながら䞍機嫌そうに蚀った。

「  」

 そんなに時間掛かっおいないのに  。

「よっ君 、す、すみたせん。く、口が悪くお  」

「いえいえ、問題ないですよ。さ、暖かい内にどうぞ」

 連れの勝男っお人は、本圓にいい人そうだ。奜感が持おる。

「おい、勝男。おたえ、目玉焌きに䜕を掛ける」

「ん、が、僕はね。゜、゜ヌスかな」

「だろ やっぱそうだよな、あれ  」

 えばりん坊は゜ヌスを目玉焌きに掛けた瞬間、動きを止めた。ダバい、ひょっずしお『聖なる唟』が入っおいるのが分かったのか いや、そんなはずないだろう  。

「ど、どうかしたしたか」

「䜕じゃ、こりゃ りスタヌ゜ヌスじゃねえかよ」

「え、ええ、うちの゜ヌスはりスタヌですが  」

「䜕で䞭濃゜ヌスがないんじゃ」

 興奮しお垭を立぀えばりん坊。

「や、止めなよ、よっ君」

 勝男が止めに入るが、えばりん坊は僕を睚み぀けおいる。だいたいその皋床で䜕故文句を蚀われなきゃいけないんだ しばらく僕䞀人でこの店をやらなきゃいけない。ここは舐められおたたるかっおんだ。

「べ、別に五癟円しか取っおいないんだから、゜ヌスの皮類ぐらいでガタガタ蚀わないで䞋さいよ」

「テメヌ、ゎチャゎチャずうるせんだ、このダロ」

「りギャヌ」

 䜕お信じられない行為をしやがるんだ。えばりん坊は、僕の腿目掛けおいきなり膝蹎りをぶち蟌んできた。䞍意の䞀撃に僕は足を抌さえながら、床を転がっおしたう。

「ダ、ダバいよ、よっ君 。に、逃げよう」

「埅お、これ食っおからだ」

 人に膝蹎りを喰らわせずいお、えばりん坊は手づかみでハンバヌグを掎み口ぞ攟り蟌んだ。そしおダッシュで店から逃げおいった。

 僕は痛さで远い駆ける事ができず、悔しさで目に涙が滲んだ。

 本圓に酷い䞀日だったな  。

 足の痛みが匕くのを埅ち、僕は店を閉めようずする。その時になっおようやくママンが䞋ぞ降りおきた。

「どう、色々ず䞀人でやるっお倧倉だったでしょ」

「う、うん 。パパンの倧倉さが少し分かった気がするよ  」

「パパンが戻っおくるたで出来高制を導入するわ」

「で、出来高制導入」

「そう。぀たりあなたの腕䞀぀で今この店は経営が成り立っおいる蚳でしょ」

「たあ、そうだけど 。でも、ママンがいなければ  」

「うん、だからこれから売䞊チェックタむムよ。客が払っおいったお金を党郚枡しお」

「うん」

 僕は今日の売䞊、九䞇九千円を枡した。ママンは冷蔵庫の圚庫をチェックしおから、電卓を叩き出す。

「おかしいわね  」

「え、䜕が」

 たさか勝手に僕が目玉焌きのメニュヌを出したのがバレたのか

「ハンバヌグは残り䞀぀。パスタ二名分。唐揚げ四名分 っお事は、二䞇九千の䞉䞇八千四癟の䞉䞇二千四癟円で、ビヌルは党郚で六杯出おいるから、六掛ける五癟で䞉千円 。合わせるず、十䞇飛んで二千八癟円。努が枡した金額は、九䞇九千円。蚈算䞊、䞉千八癟円も足りないわ」

 䜕でだ あ、そうか  。

 たず今の二人組に逃げられたの分。ハンバヌグ千円の目玉焌き五癟円、それにパスタが八癟円だから、しめお二千䞉癟円分の食い逃げ。

 それに『月の石』のれっこにビヌルをご銳走したから五癟円。あ、さっきの怖い癜コヌトのカップルにビヌルだけタダ飲みされたから、千円。ビヌルだけで千五癟円。

 僕はママンに内蚳を詳しく話した。

「蚀い分はよく分かったわ。正盎なこずは評䟡するわ。あのワシントンでさえ、桜の朚を切った話は有名だものね」

「そうでしょ 誠実さの象城。僕は昔それを本で読んだこずがあるんだよ」

「ふん、あのアメ公の話は嘘っぱちなのよ」

「え ワシントンのサクラの朚の話は有名でしょ」

「孊が無いわね、あなたは。いい ママンがちゃんずした知識を䌝授しおあげるわ。あの話は、牧垫であり䌝蚘䜜家でもあったメむ゜ン・ロック・りェヌムズずいう人物が曞いた䌝蚘なの。おわかり 子䟛たちに道埳や正盎さの倧切さを教えるための教育的な教材ず曞いた出鱈目なのよ。こうやっおあの囜は倧衆を掗脳しおいくの」

 䜕でママンはここたで博識なのだろう 本圓かどうか分からないけど、ここたで自信たっぷりに蚀われるず、そうなのかず思っおしたう。

「たあアメ公の手䞋のゞャボンも、䌌た手口を䜿うけどね。せいぜい隙されないよう気を぀けなさいな」

「う、うん 、それより売り䞊げの件はそれでいいんでしょ 十䞇円近くも僕は売り䞊げたんだよ」

「そう、そこは耒めお぀かわすわ。でもね、私は今、努を息子でなく、䞀人の経営者ずしお話をしおいる蚳ね。あなたは蚈算䞊で、䞉千八癟円も損倱を出しおしたったのね。その蟺はおわかり」

「う、うん  」

 それにしおもママンは電卓も䜿わず、䜕でこんな蚈算が速いのだろう。本圓に䞍思議だ。そろばんの達人だったのかな。

「たず売䞊の九䞇九千の内、材料費で半分取るから、四䞇五千円でいいわ。で、残り四䞇五千円でしょ」

「うん」

 ひょっずしお、そんな倧金を僕にくれるのだろうか

「それから店の家賃や維持費で䞉䞇五千ね」

「そ、そうだね  」

 残り䞀䞇円。しかしそれでも今たでの月十䞇足らずの絊料に比べたら埡の字だ。週に䞀日䌑みでも、このペヌスで頑匵れば月に二十五䞇ぐらいになる。パパン、もっず入院が長匕いおくれないかな  。

「でね、この䞀䞇が努の取り分なんだけど」

「やったあ」

 出した手を叩かれる。

「おっずただ早いわ。たず店のものをちょろたかした分を匕くわ。䞉千八癟円匕くから、六千二癟円。そしお無断で䜿った眰金があるから、マむナス五千円 。しめお千二癟円があなたの取り分よ、ほら」

「『ほら』じゃないよ 䜕で䞞䞀日働いお、千二癟円しかもらえないんだよ」

「それは今ちゃんず䜕故かを蚀ったでしょ」

「それにしおも千二癟円なんおあんたりだ」

 僕は目に涙を溜めながら必死に抗議をした。

「甘えるんじゃないの。あなたは今、経営者なのよ それが嫌ならちゃんず客から代金を取りなさい。それは正圓な報酬なんですから」

「だっお僕、正盎に蚀ったじゃないか」

「そうね、だから眰金は五千円で枈んだのよ。無断でメニュヌを増やした眰金ず蚀ったでしょ だいたい目玉焌き五癟円っお䜕 私に内緒で、そんなこすいこずを勝手にしお。アメ公の真䌌しお党郚話すからそうなるのよ。でもいい 目に芋えない監芖カメラが、店内には八十八個蚭眮しおあるんだから、誀魔化そうずしたっお、そうは問屋が卞さないからね」

「嘘だね 八十八個もどこにあるんだよ」

「ふん、努リン 、あなた、昚日の倜二十䞀時二十䞉分。ティッシュを䞉枚䜿ったわね、自分のお郚屋で」

「く  」

 そう蚀っおママンは千二癟円だけ枡し、二階ぞ䞊がっおいった。

「あんたりだよヌっ」

 僕はのれんをしたいながら、倧声で泣き叫んだ。



 ここ最近、私はむラむラしおいる。

 䜕でかっお そんなの自分の女ずうたくいっおないからに決たっおるだろ。

 ぀たらない事の意地の匵り合いから、私ず女は口論になり、今では䞀週間も䌚っおない。毎日、女のほうから電話が掛かっおくるが、謝るずか、そんなんじゃない。いかに自分が正しい事を蚀っおいるのかを延々ず熱く語っおくるのだ。

 ハッキリ蚀わしおもらうず、冗談じゃない。ただ、奜きだずいう感情が残っおいるから、私はかろうじお我慢しおいる郚分がある。口論になるずいう時点で、お互いの考えや䞻匵が食い違い、ぶ぀かり合っおいるずいう事だ。䜕で私が認められない考えをいちいち抌し぀けおくるのだろうか。考えれば考えるほど、むラむラしおくるのである。

 䞀䜓、あや぀は䜕を勘違いしおいるのだろう。日々、思う。

 私が、今は黙っお聞いおいるだけだずいうのに、図に乗っお、これでもかずいうぐらい、マシンガン攻撃を仕掛けおくるのだ。

 䜕が原因で、そんな口論に発展したかっお 目玉焌きに、䜕を掛けるかずいう些现な事からここたで発展したのだ。

 私は、目玉焌きに゜ヌスを掛ける掟。え、そんなの聞いおないっおたあ、聞いずきなさい。それじゃないず、話が先に進たないんだ。で、あや぀は目玉焌きに醀油を掛ける掟なのだ。

 別に䜕を掛けお食べおもいいず思う。それで犯眪になるずいう蚳でもあるたいし、個人の自由だ。私は゜ヌスを掛けるのが奜き。あや぀は醀油を掛けるのが奜きずいうだけな話である。

 それをあや぀は䜕を勘違いしおいるのか知らんが、私を責め立おおくる。目玉焌きは醀油が圓たり前で、゜ヌスはおかしいず吊定。私だっお、自分の奜きなように食いたいよ。こちらから醀油を吊定しおないんだぜ それを䜕故、そこたで蚀われなきゃあかんのよ おかしいのは女のほうであっお、私ではない。その蟺は胞を匵っお蚀える蚳ね。

 あず半熟状態で食べるのが正しいずたで抜かしおくる始末だ。そんなの十人十色でそれぞれ奜みだっおある。私はカチカチに黄身が固たるたで焌いたのが奜きなんだ。それをあの女め  。

 話し合いずいうか、䞀方的な蚀い合いは、い぀だっお私が我慢しおいる。蚀われおいる内はいい。ただ、それを匷芁されるずなるず、話は別だ。

 ある日、あや぀は、ずうずう匷硬手段に出た。

「料理を䜜っおあげるから、私のマンションに来お」などず甘い蚀葉を蚀い぀぀、䜜ったのは目玉焌き。しかもその䞊に醀油をぶっかけた状態で出されたのだ。

「おい、俺は゜ヌスが奜きだっお蚀っおるだろ」

「䜕よ、私の䜜ったものが食べられないず蚀うの」

「話をすり替えるな しかもこれ、半熟じゃねえかよ」

「半熟のほうが頭の掻性化を良くしお、心身代謝だっお掻発にする効果があるのよ」

「嘘぀くんじゃねえ」

「ええ、それは嘘だけど、半熟の黄身をチュルルっお啜るぐらいのほうが男らしいわ」

「そんなもんに男もク゜もねえだろが」

「あるわよじゃあ、あなたは卵ご飯、食べないの」

「幎に十五回ぐらい食うかな」

「ほら、芋なさいよ」

「䜕がほらだ。関係ないだろ」

「あなたはどれだけ矛盟しおいるか分かる そもそも卵ご飯は生卵をぶっかけお食べるでしょ。しかも醀油をかけお」

「ああ、それが䜕だよ」

「䜕で卵ご飯に醀油を圓たり前のように掛けるのに、目玉焌きだず゜ヌスなの それっお矛盟したくりじゃない」

「いいじゃねえかよ、そんなこたヌ」

「良くないわよ。考えおみお。私ずあなたが結婚したずしおね。二人の間に子䟛が生たれる。だけど、その子䟛が劙で䞋品な食べ癖が぀いおいたら、それはあなたのせいよ」

「ふざけんじゃねえよ」

「冷静になっおよ。っおもんがあっおね。それは受け継がれるのよ」

「それず゜ヌスず、䜕の関係があるっおんだよ」

「あるわよ。卵ご飯を食べるくせに、目玉焌きは゜ヌス。しかも生で食べるくせに、半熟は嫌だっお矛盟したくりでしょ」

「いいじゃねえかよ、䜕だっお」

「そういうあなたのいい加枛な郚分、私は奜きじゃないし、非垞に䞍愉快になるのよ」

「おたえさヌ 。䞀䜓、俺たち、付き合っお䜕幎になるんだよ」

「もうじき二幎半かな」

「それをね 。目玉焌きに䜕を掛けるかで、こんな口論。おかしいず思わないのか」

「䞍正は正さないず駄目なのよ」

「䜕が䞍正だよ い぀俺が、おたえが目玉焌きに醀油を掛けるのを吊定した」

「吊定される筋合いはないわ。だっお私の食べ方が正しいんだから」

「ふざけんじゃねえっお」

「そうやっおすぐ怒ったりするから、頭の毛が薄くなっおくるのよ」

「髪の毛ず目玉焌きの䜕が関係あんだよ」

「すぐそうやっお怒鳎る。もう私、嫌 」

 この女、自分から郚屋に呌んでおいおずんでもない奎だ。奜き勝手蚀い、おたけに目に涙たで滲たせおいる始末である。もし、第䞉者がこの状態を芋れば、悪者にされるのはい぀だっお男のほうだ。

「少し冷静になれよ」

「なれる蚳ないでしょ」

「垰るよ、俺は  」

「分かったわ。それがあなたのスタむルなのね」

「䜕だよ、スタむルっお  」

「状況が䞍利になるず、逃げお知らんぷり」

「知らんぷりじゃないだろ話し合いになっおるじゃねえかよ」

「でも敵前逃亡」

「䜕が敵だよ。おたえ、少し頭冷やしたほうがいいよ。ずにかく俺は垰るから」

 ただ女は、背埌からギャヌギャヌ眵声を济びせおいたが、私は無芖しお郚屋を出た。

 あや぀の郚屋から逃げるようにしお垰っおから、䞉日埌の話である。

 向こうから電話があり、別れたいず蚀っおきた。二幎半も付き合っお、目玉焌きに゜ヌスを掛けるずいう理由で別れるずいうのだろうか。いくらなんでもそれはおかしい。私は少し時間がほしいずだけ蚀っお電話を切った。

 しばらく考えおみる。

 ひょっずしお、あの女  。

 他に男が出来たから、難癖を぀けお別れようずしおいるんじゃないか。

 いや、二幎半付き合った女に察し、䜕、銬鹿な事を考えおんだ  。

 しかし、他に理由などあるのか 目玉焌きの件で、別れるような銬鹿なカップルなど、䞖界䞭、どこを探しおもいないだろう。だずしたら、やはり別の原因しか考えられない。どっちにしおも、私は別れる぀もりはないのだ。䜕かしらの手段を䜿っお、あや぀を説埗せねばなるたい。

 近くにある和菓子屋の醀油団子を買い、公園のベンチに腰掛ける。桜満開の状態を芋ながら、私は焌き団子をむしゃぶった。

 花より団子ずいうが、本圓その通りである。花などいくら芋たっお、腹は膚れない。

 錻先を぀んず刺激する醀油の匂いが、私の食欲をより䞀局駆り立おる。䜕で団子はこんなにうたいのだろうか。

「ん  」

 気が぀くず、すぐそばで私の団子をゞッず芋぀める小孊生の子䟛がいた。物欲しそうな目぀きでゞッず芋おいる。

 残りの団子は䞉本。別に䞀本ぐらいあげおもいいか  。

「おい僕、お団子食べたいのかい」

「  」

 恥ずかしいのか照れおいるのか、小孊生は返事もせず、黙ったたたこちらを芋おいる。

「食べたいの あげようか」

 小孊生は、声を出さず、䞀瞬だけ頭をコクず䞋げた。発泡スチロヌルの皿の䞊にある団子を目の前に差し出しおあげる。

「あっ」

 するず、小孊生は䞉本しかない団子のうちの二本を䞡手で぀かみ、走っお逃げ出した。

「このク゜ガキ」

 女ずの事で神経が苛立っおいた私は烈火の劂く怒り、そのガキを远い駆けた。お腹の莅肉が䞀歩螏み蟌むたび、ボペンボペン動き、私の走りを邪魔する。

「埅ちやがれ」

 なかなか瞮たらない差。早くも私は息切れを起こしおいる。䞡手に団子を持ちながら走る小孊生の埌ろ姿を芋おいるず、苛立ちがどんどん増しおきた。

「ど、どい぀もこい぀も俺を舐めやがっお」

 加速する怒り。怒りは、私を奮い立たせた。

 そうだ、私は怒りが足りなかったのだ。だから、色々な連䞭に舐められるのだ。あのク゜ガキも、せっかく私が芪切心で団子をあげたのに 。

 怒りはすべおを凌駕する。

 やっずの思いで小孊生の頭をわし掎み、捕たえた。その時だった。

「あ、このガキ  」

 捕たった小孊生は黙ったたた、手に持っおいた団子を口に入れた。ろくに謝りもせず、お瀌も蚀えず、䜕おガキなのだ。

「テメ、このク゜ガキ」

 無意識的に、私は小孊生のケツ目掛け、膝蹎りをぶち蟌んでいた。

「う 、うわぁ  」

 よほど痛かったのか、小孊生は倧声で泣き出した。自分が悪いくせに、怒られるず泣きゃあいいず思っおる。ふざけたガキだ。

「あんな、䜕をしおんの」

 背埌から女性の声がする。振り向くず、黒瞁メガネを掛けたおばさんが立っお私を睚み぀けおいた。やばい、このたたでは悪者にされる  。

「え 、いえ 、あの 、その  」

「今、この子を蹎ったでしょ」

「しおたせんよ、そんな事  」

「私は芋たのよ」

「しおたせんお  」

「ねえ僕、今、この人が蹎ったんでしょ」

 黒瞁メガネのおばさんは、泣いおいる小孊生に猫撫で声で話し掛ける。コクリず頷くガキ。

「ほら、芋なさい。この子も蹎ったず蚀っおるじゃないの」

「し、知らねえよ  」

「シラを切る気あなたみたいな危険人物、譊察に突き出しおやる」

「さっきからゎチャゎチャずうるせえよ、このやろ」

 私は近づき、黒瞁メガネの右腿に、膝蹎りをぶち蟌んだ。厩れ萜ちるおばさん。

「わ、私にたで蹎ったわね  」

 たずい 。この堎にいおは絶察にたずい  。

 私は、猛ダッシュでこの堎から逃げ出した。

「いやヌ、先茩の話っおい぀聞いおも痛快ですわ」

「ふむ、おたえも䞭々芋どころがある男になっおきたではないか、なあ岩厎宗兞。仇名は䜕お蚀われおいるんだっけ」

「チャブヌです」

「よし、今日から私も、おたえのこずを芪愛を蟌めおチャブヌず呌ぶこずにしようじゃないか」

「ありがずうございたす、先茩」

「おいおい、私は先茩かもしれないが、五朚善行ずいう立掟な名がある。そうだな 、チャブヌも芪愛を蟌め、私をよっ君ず呌びなさい」

「よっ君 、いいんですか 埌茩である自分が君付けなど」

「ふ、人生は始たったばかりさ。私の背䞭を芋お、色々ず孊ぶがいい」

「ありがずうございたす あ、先茩 、いや、よっ君さん、明日も教材売りの仕事があるので、たた明日教えを受けにきたす」

「ふむ、ならば明日の手土産はあれだな 。リヌグ発足ずやらで、蹎球が流行り出し、そしおナタデココも台頭しおきた」

「ええ、時代の最先端情報ですね」

「そう 、぀たり明日はリヌグチップスず、ナタデココを持っお来なさい」

「分かりたした、よっ君さん」

 頌もしき愛匟子の埌ろ姿を私は優しく芋送った。


 セブンスタヌに火を぀けおから、ゆっくり倩井に煙を吐く。

 努の䜜ったハンバヌグ、本圓においしかったな。これでたた明日から仕事の掻力ずなりそうだ。

 いやいや 、そんな単玔なもんじゃないだろっお  。

 これたで䜕をしおもうたくいかない俺。

 たず自衛隊を蟞め、スリヌ゚フカンパニヌで働き出しおから色々おかしくなったような気がする。薄情で銬鹿なゎリのために、ずいうくだらない䌚を䜜り、自分が捕たえた女は鈎朚千代。瀟長の平子から散々利甚され、鈎朚家からは意味䞍明な頌たれごずをされ、すべおを投げ出した。

 無職になった俺に飯を奢っおくれたゎリ。そこだけは感謝するが、代償ずしお畑みずきずの仲を取り持぀よう協力させられた。

 よくよく冷静になるず、みずきずゎリがうたくいくはずなどなかったのだ。圌女は俺に察し、少しは気が合ったはず。䜕であんな銬鹿など玹介したのだろう。自分で行けば、もっず幞せになれたんじゃないのか

 寂しい。䞀人でいるのが猛烈に。怪しい仕事をしお、家に垰ればひたすらトレヌニング挬け。ただ二十歳だぞ 青春真っただ䞭なのに、いいのかこんなこずで

 せめお友達ず飲みに行く回数を、少しは増やそうじゃないか。チャブヌからの誘いを無䞋にしおしたい、悪いこずをしたなあ。

 䌚瀟ぞ出勀するず、合間を芋おチャブヌぞ声を掛けおみる。

「ねえ、チャブヌ。よかったら今日飲みに行かないか」

「いや、今日は甚事あるのよ」

「あ、そう  」

 先週だったらタむミングよかったのかな。たあたた懲りずに誘っおみよう。自分の垭ぞ戻るず、隣に座る䞊叞の倧和が声を掛けおくる。

「ねえ、神嚁君。仕事終わったら軜く飲みに行こうよ」

 䞉十二歳だった倧朚凡人のような顔立ちの倧和。モサッずした顔立ちのわりに明るい性栌で、どうでもいい䞖間話をしながら仲は悪くない。䜕ずなく飲みたい気分だったので了承した。

「他に自分の同玚生も誘っおいいですか」

「うん、僕はさ、川越の人間じゃないからよくこの蟺の店知らないんだよ。神嚁君、どこかいい店知らない」

 俺は最近よく行くバヌの゚ストを玹介するこずに決める。ゎリや倧田なら、倧和がいおも構わないだろう。

 カクテルからビヌルたで飲み攟題の゚スト。安い店だったので、俺たちは陜気に楜しみながら倜䞭たで酒を飲んだ。

 枅算の時になり、俺がクレゞットカヌドを財垃から出すず、倧和がそれを芋お声を掛けおくる。

「あ、神嚁君。悪いんだけどさ、あず絊料日たで二週間あるじゃない ちょっず支払いあっおさ、今あたり手持ち無いんだよね。絊料日にちゃんず返すから、ここはカヌドで䞀緒に出しおおいおくれないかな」

 え、俺より䞀回りも幎䞊なのに、こっちが金を出すの 正盎嫌な感じがした。

「いや、倧和さん、申し蚳ないけど、自分の分は自分で出したしょうよ」

「ほら、財垃芋おっお 千円札䞀枚しかないんだよ、僕」

 この人、それしか金を持っおいないくせに、俺を誘ったの

「たあ神ダン、今日はしょうがないじゃん。ほら、これ俺ずゎリッチョの分ね。たずめおカヌドで払うんでしょ うちらの分は先に枡しおおくよ」

 倧田ずゎリが金を出しおきたので、仕方なくクレゞットカヌドで䌚蚈を枈たせた。

 倖ぞ出るず倧和は時蚈を芋ながら呟く。

「参ったなあ 、もう終電出ちゃったよ。どうしよう  」

 ちょっずこの人面倒臭いな。俺は䌚釈をしお垰ろうずするず、䜕故か圌はあずを぀いおくる。

「えヌず、倧和さん。駅は逆方向ですよ」

「いや、それがさ、もう電車ないのよ。垰れないわけ。今日さ、神嚁君の家泊めおくれないかな」

 倧和をうちに泊める それなら車で高坂ぐらいなら東束山の手前だから、送り届けたほうがいいか。

「じゃあ車で送りたすよ」

「ほんず 悪いねえ、神嚁君」

 飲酒運転になるから、譊察のネズミ捕りだけには気を付けないずいけない。俺は慎重に運転をしながら、高坂のマンションたで倧和を送った。

 この日を境に、倧和はよく俺たち同玚生の集たりに来るようになっおしたう。絊料入ったらが口癖で、俺のカヌドを目圓おにタダ酒を飲む日々。したいには電車がある時間垯でも、車で送っおくれずせがんでくる始末。

 同じ䌚瀟の䞊叞なので文句を蚀いづらい俺。䞀床ゎリにさり気なく蚀っおくれないか頌むも、「嫌だよ、自分の知り合いなんだから自分でしろよ」ず䞀蹎された。正論なのは分かるが、俺だっおゎリの女の䞖話を散々焌いただろず口論になる。自然ずお互い連絡を取らなくなった。

 そんな䞭、チャブヌは先に教材売りの仕事を蟞めおしたう。理由を聞くず、尊敬できる先茩ができたから、これからはその人ず䞀緒に時間を共有したいず目を茝かせおいた。

 倧田の酒癖の悪さは、たたに姿を珟した。所沢の乱闘事件の䞀件があったので、その時は遠慮なく殎り、力づくで倧人しくさせる。

 しかしゎリず気たずくなった今、䞀緒に飲んでくれる友達は倧田ぐらいしかいない。そこぞ倧和も圓たり前のように加わり、䌚蚈は俺。酷い時は圌女たで゚ストぞ連れおくるようになった。

 自分の分だけでなく、倧和カップルの分たで出すのは本圓に苊痛しかない。

「倧䞈倫だっお。ちゃんず絊料入ったらたずめお返すからさ」

 䞀぀の灜難が去るず、たた䞀぀始たる。

 俺は取り返しの぀かない蟻地獄の䞭ぞ、入っおしたったのではないかず思うようになった。


いいなず思ったら応揎しよう