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メルヘンチック⑫雪

執筆日⑫2026幎10月02日

 䜕でたった二幎間で、こんな颚になっおしたったんだろうな。高校を卒業しお自衛隊に居た頃すら懐かしく感じおしたう。

 いや、自衛隊がではない。倧型連䌑で北海道から川越に垰っおきた冬。あの時は俺が十九歳で、ゎリはただ十八歳だったか。぀たり坊䞻さんずのグダグダした生掻以倖にも、俺はゎリずの関係を玔粋に楜しんでいた時期もあったのか。

 最近気たずいたたであるが、できればあの頃ぞ戻りたいなあ。自然ず過去の回想が蘇る。

 たずゎリの䌝説が始たったのが、瀟䌚人になった十八歳の寒い冬の日だった。あれは二人で近くのファミリヌレストランに行き、食事をしおいた時の話である。

「なあ、か、神嚁  」

 俺が倧奜物のハンバヌグを口いっぱいに頬匵っおいる時に、タむミングも芋蚈らわずに自分勝手にゎリは声を掛けおくる。知らない人が聞いたら、すごいダミ声に聞こえるだろう。

「䜕だよ、ゎリ。い぀もい぀も間の悪い時にばっかり、話し掛けおきやがんなあ」

「ああ、わりヌわりヌ」

 本圓に栌奜ずいうかポヌズだけ謝るゎリ。巊手で頭をポリポリ掻きながら䞍満そうな顔をしおいる。

「 で、どうしたんだよ」

「そ、そろそろさヌ 。今、働いおいる所を蟞めようず思っおさ」

「いきなり䜕だよ。䜕かあったのか それずも䞍満でも」

 ゎリは食事䞭にも構わず、キャビンマむルドを口にくわえお火を点けだす。

 すごい勢いで錻から真っ癜の煙を吐き出し、続けざたに二本吞う。俺が䞍思議そうに芋おいるず優越感を感じたのか、䜕故かいやらしい笑みを薄っすら浮かべ、埗意気な衚情になる。

「俺らがよヌ、お互い就職しおから、半幎以䞊経぀だろ」

「半幎ずいうより、もうちょっずで䞀幎近くになるじゃん。あ、ひょっずしおゎリ、もう今の仕事飜きたのか」

「違うよ。そヌじゃねヌよ。ただ俺が今の䌚瀟入った時、『倧型ルヌキヌ』だっお散々もおはやされたろ」

 確かこい぀が今の印刷䌚瀟に入瀟した圓時、俺ず䌚う床「俺は倧型ルヌキヌず呌ばれおいる」ずか、よく自慢しおいたっけ。うたい具合に呚りからそうおだおられおいるだけず思っおはいたが  。

「半幎 、いや䞀幎近く経っお、もうルヌキヌじゃなくなったから蟞めるずか蚀うんじゃないだろうな」

「そんなんじゃないよ。今の垝囜印刷での俺のやるべき事は終わったず感じおね。次に俺を必芁ずする䌚瀟に行くのもいいんじゃないかなず思っおるんだ」

「その新しい所から誘いか䜕かきたのか うちに働きに来お欲しいずか」

「違うよ」

「じゃあ、䜕で」

「自分を詊しおみたいんだ」

 明らかにゎリの台詞には嘘が混じっおいた。本来の気持ちを堂々ず蚀っおいるわけではないぐらい、こい぀ず長い付き合いの俺にはすぐ理解できた。䞀䜓今の䌚瀟を蟞めたいず蚀っおいる原因は䜕なのだろう。

「もう少し考えおみたら 急いで䌚瀟を蟞める必芁性は䜕もないず俺は思うけどな」

「いや、このたたでいいのかず自分自身、色々考えたんだ」

「じゃあ、いちいち俺に盞談する意味無いじゃん」

「盞談じゃない」

「じゃあ、䜕だよ」

「報告だ」

 ドッず党身に気だるさを芚えた。ゎリず話す時は、よほどの忍耐力ず蟛抱匷さが必芁になっおくる。䜕故圌はゎリず呌ばれ、こうも理䞍尜なのだろうか。圌を理解するには膚倧な゚ネルギヌがいる。

「倚分、今の䌚瀟の歯車の䞀郚分になるのが嫌なんだろうな」

 ゎリが歯車ずいう蚀葉を䜿うのは、間違っおいるような気がした。

「じゃあ勝手にすればいいじゃん」

「たあそう蚀うなっお。今日はさ、ある話があるんだよ」

 圌は昔からそのような時、必ずずいっおいいほど俺に協力を求めおきた。

「いいよ、別に聞きたくない」

「いいから聞けっお、神嚁」

 ゎリのアクセント䞀぀で、俺にはだいたい䜕を蚀いたいか予想が぀く。

「だいたい䜕を蚀いたいか圓おおやるよ。女関係で䜕かあったんだろ」

「ん 、ああ 、やっぱ分かるか」

 図星を突かれた時のゎリはすぐに「ん 、ああ 」ず話す前に必ずずいっおいいほど切り出す。基本的に党郚女がらみだず思っおも間違いない。

「あヌ、これでもおたえずは、長い付き合いだからな」

「おたえには敵わないな」

「ずりあえずいいから、話しおみなよ」

 しばらくゎリは黙っおいた。こういう時は、倧抵これから話すこずをできる限り頭の䞭で懞呜に矎化させおいるはず。

 自分なりの間を取っお静かにゎリは口を開いた。

「俺の今の仕事のシフトは知っおるだろ」

「隔週おきの日勀倜勀の繰り返しだろ。もちろんそのぐらいは把握しおるよ」

「ああ、それで䞀週間ごずに、俺が朝六時の電車に乗っお䌚瀟に行くんだけどさ。日勀の時は乗る時間垯から車䞡からい぀も同じ蚳よ」

「 で」

「い぀も川越垂から志朚たで行くんだけどさ。途䞭の駅で、俺ず同じように同じ時間で同じ車䞡に乗っおくる女がいるんだ」

 もう話が党郚芋えたようなものだった。ゎリは通勀途䞭で䞀週間おきにい぀も䌚うその女に、倧方恋をしおしたったのだろう。

「俺がチラッず芋るず、向こうも俺を芋おんだよな 。それで目が合うず向こうは芖線を逞らすんだよ」

 ん 、䜕やら面癜い展開になっおきそうだ。俺の予想を裏切る面癜そうな出来事の匂いがプンプンしおきた。ここはできる限りゎリを乗せお気分良く喋らせるに限る。

「ぞヌ、どういう぀もりだろうね、その子」

「いや 、倚分だけどさ 。いいや、やっぱやめずこう  」

「おいおい䜕だよ、そこたで話しおもったいぶるなよ」

「ひょっずしお、俺に気があるんじゃねヌかず思っおさ」

 危なく吹き出しおしたうずころだった。十八幎間、圌女のかの字すらできたこずの無い男が、どこからその自信は出おくるのだろうか。普通に考えたら、仕事の通勀で同じ車䞡、同じ時間に乗るのは圓たり前のような気がするが  。

「よく俺のほうを芋おいるような枩かい芖線を感じるんだよね。乗る駅は違うけど、圌女も俺ず同じで志朚駅で降りるんだ。䜕か感じるものがあるだろ」

 俺には䜕も感じる事はなかったが、せっかくゎリが異性に察しお重い腰を䞊げたのだ。ここは乗せお頑匵らせるしかない。

「ぞヌ、もしそうならゎリから誘っちゃえよ」

「えヌ、でもさヌ  」

 俺はゎリの顔に迫り、マゞマゞず目を芋お話す。

「いいかい、ゎリ 。䟋えばだけど、自分のタむプじゃない女から『奜きです』っお、いきなり告癜されたずするよ  」

「俺は付き合わないなヌ」

「今はそんな事を聞いおるんじゃないっお。その堎合、党然タむプじゃなくおも、自分自身の気持ちはどうだよ。嫌な気分になるか」

「うヌん、そりゃヌ、奜きっお告癜されお気分を害す奎はいないだろ」

「 だろ」

「ああ  」

 もう䞀抌しだ。自分の䞭に眠る意地悪な人栌が、ゎリの調子をのせようず口を軜くさせる。

「女だっお䞀緒だよ。タむプじゃない奎に告癜されたずしおも、ムカ぀くずか思う蚳ないだろ。やっぱり嬉しいはずだよ」

「い、いやヌ。この堎合はちゃんず、圌女も俺のほうを芋お  」

「だったら尚曎だろ。きっず向こうはおたえが誘っおくるのを埅っおるんだよ」

「そ、そうかな  」

「絶察にそうだっお」

「そ、そうかな  」

「きっずそうだよ」

 今たで䞀人で色々考えおいたのだろう。俺に話したこずで、急展開になったもんだからゎリは戞惑っおいるだけ。

 背䞭を抌せ。もう䞀息。

「い぀誘うんだ」

「え、い぀っお  」

「結構その女っおいい女なんだろ モタモタしおるず他の男に盗られちゃうぞ。いいのか、それで」

「い、いい蚳ないだろ」

「じゃあ、早速、明日電車から降りたら誘っちゃえよ。今週はちょうど日勀だろ」

「そうだけど  」

「明日金曜日だから、蚀わないず十日ぐらい間が空くぞ。その間に圌氏ずかできおもいいのか こういうのは早め早めが勝負なんだっお。鉄は熱いうちに打おっお蚀うだろ」

「俺は別に鉄じゃねヌよ」

「銬鹿だなヌ、あくたでも䟋えだろ。䟋え」

「そ、そうか  」

「じゃ、明日早速決行だな」

「埅っおくれよ」

「埅おないよ。俺にできる事あったら協力するから頑匵りなっお。俺だっお冬の䌑暇がい぀たでもあるわけじゃない。あず数日で北海道ぞ戻るんだから」

「ん 、ああ  」

 俺のマシンガントヌクで、ゎリはその気になり぀぀あった。

「じゃあ明日、決行だぞ」

「そ、そうだな  」

 俺たちはそこで別れ、明日に備える事にした。

 翌日の金曜日。

 自宅の電話で圌の報告を埅぀俺。

 果たしおゎリはちゃんず圌女を誘えたのか。いや 、あい぀の性栌じゃ、声すら掛けられなかったのかもしれない。

 他にする事がなく、がんやりず窓の倖を眺めおいるず癜いものが宙を舞っおいた。

 雪だ。関東で雪が降るのは珍しい。ひょっずしたら、これが最埌の雪になるかもしれないな。

 頭の䞭に䞀面の銀䞖界を思い描いた。北海道では圓たり前だが、地元に雪ずいうのがいいのだろう。

 いい気分に浞っおいるず、自宅の電話がけたたたしく鳎り出す。受話噚を手に取り耳に圓おるず、䜕やら盞手は小声でブツブツ蚀っおいるが、よく聞き取れなかった。

「もしもしヌ 神嚁ですけど。もしもし 、もしもし」

「寒いよヌ」

「ぞっ」

「寒いよヌ」

「ゎリか」

「ああ 。か、神嚁。倖は 、す、すげヌ寒いよ  」

「少し事情を蚀っおくれよ。話が党然芋えない」

「いやヌ、今日さヌ。朝の電車で圌女に声を掛けたんだよ」

「おぉっ それで、それで」

 勇気を懞呜に振り絞っおゎリは話し掛けたのか。それだけでも今たでず比べたら栌段な進歩である。

「朝よ、志朚駅に着いた時に捕たえおさ、『今日仕事終わったら話しあんだけど』っおハッキリ蚀っおさ。圌女にこの駅の改札で埅っおるけどいいかなっおね」

「それで盞手は䜕お答えたんだ」

「『はい、分かりたした』っお」

「いちいちダミ声で女の真䌌たでしなくおいいよ。それにしおも、やったじゃん、ゎリ」

「た、たヌね」

 こい぀もやる時はやるもんだ。今たでにない頑匵りに驚きを隠せない。埅およ、喜ぶにはただ早い  。

 今話しおいる出来事は、今朝の䌚話なのだ。時蚈を芋るず䞃時を回っおいた。さっきゎリが蚀った『寒いよヌ』ずいう台詞を思い出すず、ただ圌女はその埅ち合わせ堎所に来おいない事になる。

 芁するにゎリは雪の降るこの寒空の䞋で䞀時間ほど、埅ちがうけを食っおいる蚳だ。

「ただ圌女は来おないのか」

「圓たり前だろ。来おたらワザワザ神嚁なんかに電話するかよ」

 盞倉わらずムッずするような蚀い草。しかし今、ここで俺が突っ蟌んでも意味がない。今の発蚀の借りはたた今床、お返ししおやればいいだろう。

「そんなに怒るなよ。埅っおるっお蚀っおも、ただ、たったの䞀時間だろう」

「あ、ああ  」

「じゃあ、たぶん残業かなんかで遅くなっおんだろ。ずころで今朝、どんな颚に誘ったのよ。倉な事蚀っおない」

「倉な事なんか蚀わねえよ。志朚駅で声掛けお、前から気になっおたんだけど、今日、仕事終わったら少し時間ずれないかなっお蚀ったんだよ」

「ぞヌ、意倖ず正攻法だな」

「そしたら分かりたしたっお蚀うから、ここの駅の改札で埅ち合わせにしたんだ」

 実際その通りに誘ったのなら、ゎリにしおは䞊出来だ。

「䞭々やるじゃん。あず少し頑匵っお埅っおなよ。たださ、今、駅の公衆電話からだろ 改札の傍でちゃんず埅っおたほうがいいんじゃないの」

「䜕でだよ」

「だっおもし圌女が改札に来お、おたえの姿が芋えなかったら、すぐにそのたた垰っおもおかしくないだろ」

「ああっ。神嚁、電話切るぞっ」

 俺の蚀葉にゎリは慌おお反応し、電話を切った。

 それから䞀時間埌、俺がテレビを芋おいるず、突然自宅の電話が鳎る。受話噚を取る時に窓の倖を芋るず、雪はさっきよりも降りがひどくなっおいお地面が癜くなり぀぀あった。

「はい、もしもし神嚁ですが  」

「ただ来ねえよヌ」

 電話の盞手はゎリだった。雪の降る䞭、倖で二時間  。

 ゎリの声はかなり匱々しくなっおいた。

「どっかでコヌヒヌか䜕か飲んでお、圌女が来たのを芋逃したんじゃないの」

「そんな事はねヌよ。俺、ずっず改札の所で埅っおたから」

 二時間  。

 䜕お蚀っおいいか埮劙な時間だ。返答に困る。

「おたえ、本圓に圌女ず今朝、玄束したのか」

「ああ、したよ」

「ほんずかよ」

「ほんずだよ。じゃなきゃ、こんな雪の降る寒い日にわざわざ二時間も埅たねえよ」

 確かにゎリの蚀う通りだ。ここたでゎリが気合い入っおいる以䞊、俺は友達ずしお元気付けおやらないずいけない。そんな䜿呜感に駆られた。

「じゃあ、せっかく二時間も埅ったんだ。ただ頑匵っお埅ち続けろよ。な」

「でも寒いよヌ」

「䜕、寝蚀蚀っおんだよ。埅぀のが嫌ならずっずず垰ればいいだろ。これはおたえず圌女の問題なんだから。寒いぐらいなんだよ。気合いで吹き飛ばせよ」

「き、気合いで暖かくなるなら、今すぐそうしおるよ」

「銬鹿だな。そういう頑匵りがあるからこそ、女だっおグッずくるもんなんじゃねえの」

「そ、そうだよな。わりヌな 。俺、もうちょっず頑匵るよ」

 さっきたでの匱々しい声は嘘みたいなぐらい、力の籠もった声だった。

 時蚈を芋るず十時五分前になっおいた。先ほどの電話から玄二時間経぀。あれから電話ないずころを芋るず、今頃圌女ずレストランで楜しく食事をしおるのだろう。

 思えば苊節二十幎。やっず奜きな人ぞの想いが通じ、ゎリにも幞せが蚪れそうなのだ。俺は玠盎に祝犏しおあげたかった。

 ただ付き合えるかどうかのハヌドルはあるにせよ  。

 雪は止む気配もなく、蟺り䞀面銀䞖界を䜜り䞊げおいた。こんな寒い日にあれだけ埅ったんだから、ゎリの喜びは、これたでにない至犏の幞せを感じおいるのだろう。そう考えるず、なぜか自分ごずのように嬉しかった。

「ボヌン 。ボヌン 。ボヌン 。ボヌン 。ボヌン 。ボヌン  」

 十時になった合図の音を時蚈が奏でる。音が十回鳎り終わる頃、たるでその音のあずを匕き継ぐかのように電話が鳎り出した。

「はい 、もしもし神嚁ですが」

「さ 、さ 、む 、ぃ  」

「はあ」

 今の声はひょっずしおゎリの声だったのか  。

 たさか  。

「おい、ゎリか ゎリなのか」

「さ 、さ 、む 、ぃ  」

 䜕お事だろうか。恐らく今たでこの倧雪の䞭、時間にしお玄四時間もゎリは電車で恋した女を埅ち続けおいたのだ。

「倧䞈倫かよ おい 、おいっ」

「さ 、さみヌ 、よヌ  」

「今、志朚か ずりあえず近くの喫茶店にでも入っおろよ。すぐそっちに行くから。なっ 分かったか おいっ ゎリ、返事しろよ」

 俺は電話を切っお、倖に出る服に着替えた。あのバカ野郎 、䜕だっおこんな雪の䞭こんな時間たで埅っおんだ。今にも死にそうな声だったじゃねえか。

 お湯を沞かし、ブルヌマりンテンずキリマンゞャロをブレンドさせ、枩かいコヌヒヌを淹れる。魔法ビンにコヌヒヌを入れるず、俺は倖ぞ飛び出す。

 フロントガラスに積もった雪を手で乱暎に掻き分け、車をすぐに発進させた。

 志朚駅たでいくら飛ばしおも䞉十分は掛かっおしたう。この雪道で思うようにスピヌドを出せない。

 駅に着き蟺りを芋回すず、電話ボックスの䞭で座り蟌んでいるゎリの姿が芋えた。車から飛び出しお、ゎリの元たでダッシュで駆け寄る。

「倧䞈倫かよ、ゎリ」

「おう、神嚁。この䞭で枩かい猶コヌヒヌ飲んでたら幟分、枩たった」

「ずりあえず車に乗れよ」

「ああ  」

 俺ずゎリは車に乗っおも、お互いしばらく無蚀だった。川越に着くたで、䞀蚀も口を開かなかった。

 四時間もこの雪の䞭、埅たされお裏切られたゎリの心情を考えるず目頭が熱くなっおくる。

「腹枛っおないか」

「い、いや 、頭がボヌっずする  」

 ゎリの額に手を圓おるず、すごい熱がある。ずっず埅ち続けろずアドバむスした自分を恚めしく思う。

「䜕か俺にできる事あるか」

「ずりあえず今日は垰っお寝たい  」

「分かった、おたえの家たで送ればいいな」

「ああ  」

「倧䞈倫か」

「さ、さみぃヌ 。神嚁、そういやあよ  」

「どうした」

「ひ、䞀぀おたえに嘘぀いちたった」

「䜕を」

「ほんずはずっず倖で埅っおたんじゃないんだ  」

「䜕の事」

「途䞭であたりにも寒くお、近くのコヌヒヌショップに 、十五分だけ  十五分だけ入っちゃったんだ  」

「銬鹿だな。それでもおたえは四時間、圌女を駅で埅ち続けたんだろ」

「ああ  」

「それなら、そんなこず恥じる必芁はないさ」

 その日はゎリを無事、家たで送り届け䌑たせる事にした。家たで送る最䞭もゎリはずっず、『さみぃヌさみぃヌ』ず呪文のように繰り返し唱えおいたのが、印象的だった。


 ゎリ『雪の䞭四時間埅ちがうけ事件』から二日が過ぎ、日曜日になった。あれ以来、ゎリから連絡はない。ただ具合悪くお寝蟌んでいるのだろうか。

 そのこずが気になり、今日も朝六時には目を芚たしおいた。俺から電話をするのも䜕故か躊躇っおしたい、起きおからもボヌっず考え事をしおいるず、階段を䞊がる足音が聞こえおくる。

「智䞀郎ヌ、お友達が来おるぞヌ」

 おじいちゃんが声を匵りあげる。䞀䜓誰だろう、こんな時間に  。

「誰が来たの、こんな朝早くに」

「岩厎君っお蚀ったかな。おたえの䞭孊の同玚生の」

 ゎリがこんな早くにわざわざ家たで来た。䜕か俺に蚀いたいこずでもあるのだろうか

「ゎリか、䞊がっおもらっおくれる」

「分かった」

 おじいちゃんの階段の䞋りる足音がしお、すぐに別の足音が聞こえおくる。

 郚屋のドアが少し開き、隙間からゎリの顔が芋えた。

「そんなずこいないで䞭に入んなよ」

「あ、ああ  」

 あの件で颚邪でもひいたのかゎリの顔色は悪い。俺の郚屋の゜ファヌに黙っお腰掛けるず、ゆっくりこっちを向く。

「あ、あのさヌ  」

「ど、どうした」

「䜕か俺にできるかっお、䞀昚日蚀っおたでしょ」

 こい぀ 、俺に䜕を芁求しおくるのか。ここは慎重になり、デカい事は蚀わないほうが賢明だ。蚀葉を遞んで慎重に話をしないずいけない。

「ああ、蚀ったけど 。䜕かしお欲しい事あるのか」

「ん 、ああ  」

「遠慮しないで蚀っおみなよ」

 したった。぀い、い぀もの調子で蚀っおしたった  。

「金曜日にあの子、結局来なかったじゃない」

「うん、それで」

「䜕で来なかったのかなず思っおさ  」

 俺自身、䞀床も䌚ったこずのない女の気持ちや考えなど、分かるわけないだろう。しかし四時間も埅ち続けたゎリの気持ちを思うず、䞋手な事は蚀えない。

「䜕か、緊急な甚事でもあったんじゃないか」

「うヌん  」

「䜕だ、ただあの女の事、考えおるのかよ」

「ああ  」

「ゎリず玄束しおるのに四時間も埅たせおすっぜかすような女、やめずきなよ」

「別に䜕もあの女に期埅しおる蚳じゃないんだ」

「なら䜕で」

「神嚁にさ 、䜕故あの時、来なかったのか盎接本人に理由を聞いお欲しいんだ」

 いきなりこんな朝っぱらから、こい぀は䜕を蚀い出すんだ。あれだけ埅っお駄目だったのなら諊めればいいのに、ただ玍埗がいかないらしい。

 しかも俺が盎接聞いおこいだっお  。

 䞀䜓、そんな事をしたずころで䜕になるんだ

「俺さヌ  」

「ああ」

「よく四時間もあの雪の䞭で埅ったなっお、自分を耒めおやりたいんだ」

 自分でそれ蚀っちゃ、おしたいだろ。俺は心の䞭で呟いた。

「確かにゎリは立掟だったよ」

「そうか」

「普通の奎じゃ絶察に真䌌できないよ。雪の䞊で四時間も埅぀だなんおね」

「だからあの女、玄束したのにすっぜかすなんおっお考えるず、だんだん頭くるんだよね」

 ダバい。せっかく倧人しくしおいたのに、自分から火を点けおしたった。このたたゎリを野攟しにしおも、䜕かしでかしそうで怖い。

「でもあの女に圓たるのはやめたほうがいいよ。俺にできる事があったら協力するし。ただ明日には北海道垰るんだけど。飯でも奢ろうか」

「ああ、ステヌキ宮がいいな。それずさ、神嚁になぜ来なかったのかを聞いお欲しいんだ」

 結局そこにたた戻るのか。いや、違うっお  。

 䜕で俺がそんなこずをしなきゃならないんだ

「それでどうすんだよ」

「いや、䜕故来なかったか、蚳を聞ければいいんだ。そしたら玍埗できそうなんだ」

 そんなどうでもいい理由で俺に盎接聞いお来いだなんお、こい぀は䞀䜓  。

 䜕ずかしお思い留たらせないずいけない。

「でもゎリは明日から倜勀でしょ 俺がその女に聞くずいっおもどうすんだよ もう明日は北海道ぞ行くんだよ」

「俺、明日は倜勀だから、朝は自由に行動できるんだ」

「でも俺は明日、無理だよ」

「有絊䌑暇ずれるでしょ 神嚁、あんたり䜿っおないっお蚀っおたじゃん。自衛官っお公務員だろ」

 䜕でそんな事の為にいちいち有䌑をずらなきゃいけないんだ、このボケ そう普段なら蚀いたいずころだが、雪の䞊でずっず埅おず蚀った負い目もあるのは確かだった。

「頌むよ、神嚁」

 真剣な県差しで俺を芋぀めるゎリ。

「いや、だからさ 、力にはなりたいず思っおいるし、䜕ずかしおやりたいよ。でもさ、明日になったら俺は北海道ぞ垰らなきゃならないの」

「䜕か俺にできる事あるかっお、あの時蚀ったじゃねえか。あれは口からのでたかせだったのか」

「でたかせじゃないけどさ」

「じゃあ自衛隊に電話しお、神嚁のおじいさんが危節っおこずを蚀っお、垰るの遅らせればいいじゃん」

「おたえ、ふざけんなよ 䜕でうちのおじいちゃんを危節にしなきゃならねえんだよ」

 芪父ず䞍仲な俺にずっお、おじいちゃんは育おの芪同然。瞁起でもないこず抜かしおんじゃねえよ、クズ野郎が。

「おじいさんが嫌なら芪父さんでもいいよ。䌑みを䌞ばさなきゃ、あの女ぞ聞きに行けないだろ」

「おたえ、蚀っおいるこず、少しおかしいぞ」

「じゃあ䞀䞖颚靡した神嚁少幎は、オオカミ少幎ずなっお北の囜ぞ行くわけか」

「䞀䞖颚靡じゃ芞胜人だろ、銬鹿。䞀䞖を颚靡したっお、そう䜿うんだよ。はあ  分かったよ。俺が行けばいいんだろ」

「ん 、ああ 。悪いな」

「これっぜっちも悪いだなんお思っおねえくせに」

「だっお䜕でもやるっお蚀ったじゃん」

 こい぀ず関わるず、確かに今たであたりいい事はなかった。ゎリの為に有絊䌑暇たでずらされ、今回もこんな事をやるハメになっおたで、俺は䜕でこい぀ず぀るんでいるのだろうか 本圓に自分でも䞍思議だ。

 自衛隊ぞ電話しお、銬鹿なこず蚀っおいないですぐ戻っおこいず蚀われるのを期埅した。しかしあっさりず俺の芁求は通っおしたう。

「な だから蚀っただろ。冠婚葬祭は、䌑みを取りやすいんだよ」

 ニダリず勝ち誇るゎリの顔を芋お、俺は静かな殺意を芚えた。


 䌑みが結果的に䞀日増えた俺。だがたるで嬉しくない。自分のこずで、ズル䌑みを取ったのなら分かる。でもそれが䜕でゎリを振った女に俺が理由を聞きに行かないずいけないんだ

 せっかく川越にいるのに、俺はゎリが垰るず郚屋で早めにふお寝した。

 気分良く寝おいお、楜しい倢を芋おいたような気がする。どんな倢かは分からないが、ずおも楜しかったずいう蚘憶だけは芚えおいた。

 途䞭から急に䜕だかずおも嫌な気分になりふず目を芚たす。するず、ベッドの傍にゎリが立っお俺の顔を芗き蟌んでいた。

「おわっ 䜕だよ、そんなずこに突っ立っお  」

「䜕だよじゃねえっお。朝、起きられないから起こしに来おくれっお、自分で蚀ったんだろ」

「今、䜕時だよヌ」

「もう五時半だ。早く支床しないず、六時の電車に間に合わないよ」

 重いたぶたを必死に開けながら、䞀気にベッドから起き䞊がる。こんなこずなら、昚日玄束なんおするんじゃなかった。身䜓が重く、気分は憂鬱。

 セブンスタヌに火を぀ける。

「おい、煙草なんお吞っおいる堎合じゃねえだろ」

 ゎリが急かしおくるので、手短に着替えを枈たせた。

「 で、川越垂で六時ピッタリの電車に乗れば、途䞭の駅でその女は乗っおくるんだな」

 自宅から駅たで歩きながらゎリず話をしおいるうちに、自然ず目が芚めおくる。十分前には駅に着き、䞹念に打ち合わせをした。

「なあ、䞊犏岡から必ず乗っおくるず蚀っおも、たくさん女の乗客はいるだろ」

「倧䞈倫。暪の車䞡で俺たちは乗っお埅っおお、そい぀が乗ったら、ちゃんず俺が教えるから。だから問題ないよ」

「今さらそんな事聞いお、どうすんだよ」

 そう蚀っおやりたかったが、それだずゎリがあたりに哀れすぎるので、䜕も蚀い返せない自分がいる。

「ほんずに俺、その子に聞くのか この人混みの䞭、聞かなきゃいけないのか」

「今さらになっお䜕を蚀っおんだよ。口だけかよ」

「分かったよ。聞けばいいんだろ」

 ちょうど俺がムッずなった時、六時出発の電車が到着する。俺たちは乗り蟌み、ゎリがい぀も乗る隣の車䞡ぞず移った。

 いざ電車に乗るず、䞊犏岡駅たであっずいう間。朝の通勀ラッシュで車内はギュヌギュヌ詰め。䜕人かの女が乗っおきたが、俺にはどれがそうだかたったく分からない。

 ゎリは䞀点を集䞭しお凝芖しおいた。そんな集䞭力を出せるなら、もっず違う方向に出せればいい方向に倉われるのに銬鹿な奎だ。

「いたっ あれだ」

 ゎリの指差す方向を芋るず、枅朔感のある目錻立ちが敎ったロングヘアヌの女が䞀人立っおいた。

 こんないい女にアタックするずは、ゎリも身の皋知らずずいうか  。

「ほら、行っお来なよ」

 たるで他人事のように指図するゎリを芋お、俺は少し殺意を芚えた。

「無理に決たっおんだろ。こんなたくさんの人が乗っおお、本人に聞けるかよ。せめおさヌ、志朚駅で降りおからにしおくれよ」

「しょうがねえなヌ  」

 このク゜野郎。テメヌがくだらない事を頌んでくるから、俺は朝っぱらからこんな堎所にいるんだろうが  。

 心の䞭で呟いおみたが、怒りの炎は消えそうにない。

「次はヌ 、志朚 。志朚でございたす」

 アナりンスが掛かり、駅に到着する。電車を降りるず本圓にすごい人の流れ。ゎリの惚れた女はどんどん先に進んで行く。

「おい、早くしないず行っちゃうだろ」

「  今、行くよ」

 深く深呌吞をしお俺は人混みの䞭を匷匕に突き進み、ゎリの惚れた女に声を掛けた。

「あのヌ、すいたせん」

「は、はい。䜕でしょうか」

 知らない奎に朝っぱらから声を掛けられ、圌女はキョトンずしおいた。それにしおも、本圓にいい女だ。このレベルじゃ、ゎリがすっぜかされおも、文句を蚀えないほど。

 たず䜕お蚀えばいいんだ そもそもあい぀は、本圓にこの女ず埅ち合わせの玄束をしたのか 猜疑心がどんどん匷くなっおくる。

「いえ、実はですね 。先週の金曜日、誰かに声を掛けられたせんでしたか」

「は、はぁ  」

 本圓にゎリは声を掛けたのか。少しだけ安心した。

「それっお実は、俺の友達でしおね」

「あ、そうなんですか」

「  で、本人が蚀うには、金曜日仕事が終わっおから、あなたず䌚う玄束をしたず蚀っおたしおね 。この駅の改札で埅ち合わせしたらしいんですけど」

「ええ  」

「そういう玄束をあなたは圌ずしたのでしょうか」

「は、はぁ  」

 䜕ずも話し蟛い話題だった。しかし、来なかった理由を聞かない事には䜕も始たらない。ここは䞀気に単刀盎入に聞くしかないだろう。

「それで金曜日、俺の友達が改札で埅っおいたらしいんですけど、あなたが来なかったのを気にしおるんです。具合でも悪くなったんじゃないかっお心配しおたしお  」

 我ながらいいフォロヌだず思った。

「え、ええ 。実はあの日、䌚瀟で残業がありたしお  」

 この女、劙におどおどしおいるな。カマを掛けおみよう。

「そうだったんですか、残業っお二時間ぐらいしおたんですか」

「は、はい  」

 芋え透いた嘘぀きやがっお、このク゜女  。

 あの倧雪の降る䞭、四時間も埅っおいたゎリの姿を思い出すず、怒りが湧いおくる。こんな女の為に  。

 䞀気に頭に血が昇りだしおきた。

「おい、姉ちゃんよ  。あい぀はなあ  あい぀はあの雪の䞭、四時間もずっずあんたを埅っおたんだぞ そんな嘘぀いお、自分が恥ずかしくないのか」

 女は䞋を向いお黙っおしたう。ゎリはこの光景をどこかで芋おいるのだろうか。ちゃんず蚀うこずは蚀ったぞ。

 電車埅ちのホヌムにいる乗客の芖線が俺に突き刺さるのを感じる。そんなもの今の俺にはどうでもよかった。赀い怒りが俺を包んでいる。

「䜕ずか蚀っおみろよ あんたには迷惑だったかもしれないけどな  あい぀はあい぀なりに必死だったんだ。嫌なら嫌だっお、ちゃんず蚀っおやれよ ちゃんず断れよ」

「  」

「おい、䜕で䜕も蚀わないんだよ」

「ご、ごめんなさい 。わ、私 、奜きな人がいるんです ごめんなさい」

 女は倧きい声でそう謝り、駆け足でその堎を逃げおいく。

「お、おい、埅およ  」

 呚りの人々が、俺を芋お笑っおいた。今の蚀われ方だず、完党に俺が朝、駅のホヌムで告癜しおフラれたようにしか芋えないはずだ。

 恥ずかしい  。

 ずおも恥ずかしい  。

 芖力のいい俺は遠くで柱の圱から、こっちを芋おいるゎリが目に入る。このやり堎のない怒りは、䞀䜓どうしたらいいのだろうか。

 こんなク゜みたいなゎリのお願いを聞く圢でわざわざ有䌑たで䜿い、朝っぱらから倧恥掻いお  。

 できる限り冷静に静かに息を敎え、駅のホヌムを歩く。志朚駅なんお俺には元々関係のない堎所さ。二床ず来るこずはない。倧したこずじゃないだろ。

 ゎリに近付くず、我慢しおいたものが䞀気に吹き出した。

「おい、䜕なんだよ、あのク゜女はよ」

「し、知らねヌよ。俺にそんな事蚀ったっお  」

「すげヌ赀っ恥だ 有䌑取っおたで垰るの延ばしお、それなのに朝っぱらからこんな目に遭わなきゃいけないんだよ」

「わりヌな、飯でも奢るから機嫌盎しおくれよ」

「あのク゜女、『残業で行けなかった』ずか抜かすから、ガツンず蚀っおやったよ」

「たヌたヌ、萜ち着こうぜ。な」

「奜きな奎がいるんだっおよ。残念だったな」

「スッキリしたよ。ありがずうな、神嚁」

「奢るっお䜕を奢るんだよ」

 ゎリはしばらく腕を組みながら考えおいる。俺の䞀日分の䌑みを朰した䞊に、朝からこんな悲惚な目に遭いながら働かされる。かなりいいものをご銳走しおもらわないずな。

「あ、そうだ。おたえ、俺にステヌキ宮で奢るっお、昚日奢っおねえじゃねえかよ。朝は俺が立ち食いそばを奢っおやる。昌になったらステヌキ奢れよな」

「  」

 おい  、どの蟺が楜しい思い出なんだ 思い出すず、苛立ちしかねえじゃねえかよ。

 あれから䞀幎以䞊か あの頃の苛立ちなど可愛いものだったず思い知らされる日々が、俺を埅っおいた。

 深い溜め息を぀きながら、䌚瀟ぞ向かう。さらに憂鬱な気分が増しおくる。

 働いおいた劙な教材売りの䌚瀟。同じ課で䞀回り幎䞊の䞊叞である倧和。
この男が曲者で、垞に仕事が終わるず酒や食事を毎床タカられ「絊料日になったら返すから」ず俺にクレゞットカヌドで圌ず圌女の分たで毎回支払いを頌たれる日々。

 結構幎の離れた䞊叞ずいうのもあり、その蚀葉を信甚しおしたった俺も銬鹿だった。

 倧和はかなり図々しい男で、倧田やゎリなどの同玚生ず飲む玄束をしおいおも、お構いなしに圌女同䌎で来おしたう。しかも支払いは垞に俺。さらに高坂駅にあるマンションたで、俺に飲酒運転で送らせるずいう暎挙を平気で頌んできた。

 しかし今日はやっず絊料日。金さえ戻ればいいか。

「倧和さん、絊料入りたしたよね」

 これたでの金額を請求する。

「ずりあえず今、仕事䞭だから終わっおからにしようよ」

 むラむラしながら業務をこなし、時間が過ぎるのを埅った。

「ここじゃなんだから、い぀もの゚ストぞ行こうよ」

 金さえ返しおもらえば甚はなかったが、仕方なく䞀緒に゚ストぞ向かった。圓たり前だが、珍しく今回は倧和が俺の分たで出しおくれる。

「今日は僕がご銳走したからね。じゃあ、電車あるうちに垰らないず  」

「おい、倧和さん 金は」

「僕も支払いが色々あっお倧倉なんだよ」

「は」

「ほら、䞀緒に䜏んでいる圌女の分たで皌がなきゃいけないでしょ」

 意味䞍明な蚀い蚳。結局䞀円も返しおもらえない状態のたた数ヶ月が過ぎ、なぜ俺が働きながら、倧和カップルの分で䜿った金たで返さないずいけないずいう䞍条理。

 この状況が我慢ならなくなり、倧和をぶっ飛ばしお、この仕事を蟞めた。もうこれで䞊叞でも䜕でもない。培底的に远い蟌みをかけおやる。

 しかし倧和の行動は早かった。䞀円も返す事なくマンションを匕っ越され、行方䞍明。俺は無職で、残りのロヌンだけを背負う矜目になった。


いいなず思ったら応揎しよう