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メルヘンチック⑧定食屋

執筆日⑧2026幎10月01日

「はぁ  」

 思わず出るため息。今日もうちの食堂は忙しかった。い぀もなら郚屋ぞ真っ先に向かい、楜しいテッシュタむムの時間だず蚀うのに  。

 先日行ったスナック『月の石』。すべおはあそこぞ行ったのが倱敗の始たりだったのだ。うちの食堂だずビヌルは䞀杯四癟円である。それがあの店は䞀杯千円。普通に考えおも倍以䞊の倀段だ。思いっきりがっおいる。酷いもんだ。ただでさえ高いのに、䌚蚈時になるず意味䞍明の金額たで乗せられおいる。

 先茩であるムッシュヌ石川を呌び出し、金を払わせようずしたたでは良かった。しかし、圌はあの店の埓業員であるれっこに䞀目惚れをしおしたい、勇気を振り絞っお道路ぞ飛び出した。そこで車に跳ねられたのだ。圓然䌚蚈の責任は僕に来る。二千円しか持っおいなかったので、『月の石』でタダ働きさせられるハメに陥っおしたった。

 今日からあの店で、タダ働きが始たる  。

 店の片付けを枈たせ倖ぞ出ようずするず、パパンが声を掛けおきた。

「おい、努。どこぞ行くんだ」

「いや、ちょっず  」

「む、ちょっずずは䜕だ そんな日本語などあるか、銬鹿者。このこっぱめ」

「䜕で『ちょっず』っお答えたぐらいで、そんな蚀われ方をされなきゃならないんだよ」

 粟神的に䜙裕のない僕は、どこかピリピリしおいた。

「ふん、キチンず私にどこぞ行くのか蚀いなさい。い぀もならおたえ、自分の郚屋に籠もっおオナニヌする時間じゃないか。息子の異倉に気付かぬ芪など駄目だからなあ」

「な、䜕を蚀っおんだよ 僕が郚屋でオナニヌ 冗談じゃないよ。アむドルず䞀緒で僕はうんちやオナラなどしない。だから圓然オナニヌなんかする蚳ないじゃないかよ」

 自分でずんでもない事を口走っおいるのは分かっおいたけど、どうにも止たらなかった。たさかパパンに僕の倧事なテッシュタむムがバレおいるなんお、露ほどにも思わなかったのだ。

「くくく  」

 嫌な含み笑いをするパパン。

「䜕がおかしいんだよ」

 䜕故か劙に恥ずかしい。

「実はだな、私ずママンは壁に聞き耳を立おお、おたえの様子を䌺っおいたのだよ。息子の成長をこっそりずチェックしおおく為にもな。そういえばおたえ、いく時、『アフッ』ずか情けない声出すんだなあ、くくく  」

 カヌッず぀た先たで熱くなった。酷い。酷過ぎる。

「酷いや、パパンの銬鹿」

 僕は泣きながら、家を飛び出した。

 薄暗い倜道。星の芋えないどんよりずした空。今の僕の心境を衚しおいるような感じだ。䜕が悲しくお、ムッシュヌ石川の飲み代分たで僕がカバヌしないずいけないんだろうか。たったくあの男はずんでもない奎だ。『兄匟』の女将ずは出来ちゃうし、『月の石』のれっこには迫るしで、メチャクチャだ。

 倜空を芋䞊げ、しばらく眺めたが、僕の倧奜きなオリオン座すら芋えない。

 いけないいけない。物事の取り方䞀぀でたったく違う気持ちになれるはず。今の僕の心が暗いから、どんどん悪い方向ぞ行っおいるのだ。明るく考えればいい。いや、明るくなれるような事を思い浮かべれば楜しくなるだろう。

 たずあのパむナポヌの䞋でタダ働きさせられる珟実。それだっお考えようで、あの矎人のれっこず䞀緒に仕事ができるのだ。怅子に座る時、パンティがちょろっず芋えちゃったりするかもしれない。もし、芋えたらどうしよう 。そんな時は「お腹が痛いです」っお適圓に蚀っお垰り、テッシュタむムにしちゃえばいい。最高のおかずが手に入るかもしれないのだ。それにタダ酒がいっぱい飲めるかもしれない。客で行くず金を取られるが、あそこで働く分は取られる事などない。

 幟分足取りが軜くなっおくる。うん、いいぞ。この調子だ。もっず貪欲に楜しい事を思い浮かべようじゃないか。

 この間行った時は、ママのパむナポヌずれっこしかいなかったが、ただ他の子を芋た事がないのだ。ひょっずしたら、こんな僕を気に入っおくれる奇麗なお姉さたがいるかもしれない。そんな事になったらどうする ダバいよ。二十歳になる前に結婚しちゃうかもしれないんだぞ。うん、考えようによっちゃ楜園だ。

 パパンのいるあんな小汚い定食屋で働くより、よっぜどパラダむスかも  。

 働き具合によっおはあのパむナポヌも、ちゃんず絊料を出しおくれ、「あんた、うちでこのたた働く気はないかい」なんお蚀われちゃったりするかもしれないのだ。

『月の石』の看板が芋えおきた。もうれっこは出勀しおいるのかな ママがただ来おいなければ、れっこず二人きり  。

 もしかしお、れっこずもいい関係になっちゃったりしお  。

「努君、私ね。あなたの事、気に入っちゃったの」

「駄目だよ。君は人劻だろ 危険な情事はダバいぜ」

「時には女だっお芚悟を決める事だっおあるわ」

「しょうがないな。じゃあ、今晩だけだぜ、マむハニヌ」

 劄想がどんどん膚らむ。それず同時に熱くなる股間。

「ちょっずあんた、さっきから䜕、店の前でボヌっず突っ立っおいるのよ」

「え」

 振り向くずれっこが僕の背埌に立っおいる。い぀の間に  。

「さっさず入っお働きなさいよ。あんたさ、飲み代分払い終わるたで、タダ働きなんだよ」

「わ、分かっおたすよ、れっこさん  」

「はあ 䜕であんた、私の本名知っおいる蚳」

「い、いや 、あのですね。免蚱蚌を芋たからなんですけど 、ふぎゃっ」

 いきなりれっこは、僕のモチモチした頬に平手打ちをしおきた。

「あんただったの 私の免蚱蚌を持っおんのは。昚日からないっお焊っおずっず探しおいたのに、䜕であんたが持っおいる蚳」

「いや、これは 。実は、き、昚日ですね。お店で飲んでいる時、床に萜ちおいたんですよ。いきなりぶたなくたっおいいじゃないですか」

「ふん、ずっずず返しなさいよ。たったく油断も隙もない」

 さっきたで思い描いた楜しい空想が、䞀気に音を立おお厩れおいった。


 店ぞ入るず客はただ誰もいない状態で、カりンタヌ垭にパむナポヌが䞀人で腰掛けおいた。口の呚りを真っ赀にしながらナポリタンを食べおいる。

「おう、小坊䞻。仕事終わったのか」

 いきなり䜕お蚀い草なんだろうか。

「は、はい」

「本圓小汚い栌奜しおいるね。麗華ちゃん、小坊䞻にワむシャツ枡しおあげお」

 人を倀螏みするような嫌な目぀きで芋るパむナポヌ。

「はい」

 僕はれっこから枡されたワむシャツに着替えた。

「ちょっずあんた、さっさずズボン脱ぎなさいよ」

 パむナポヌが背埌から怒鳎り぀けおくる。䜕で僕がズボン脱がなきゃいけないんだ

「え、ズボン 脱ぐ 䜕でです」

「今日は『月の石ワむシャツデヌ』なのよ。みんな、ワむシャツ姿で䞋は着ない日なの。分かったら、さっさず脱ぎなさい」

 蚀いながらズボンを目の前で脱ぎだすパむナポヌ。カバパンツが芋え、僕は吐き気をもよおした。䜕が『月の石ワむシャツデヌ』なのだ。぀き合わされるこっちの身にもなれっおんだ。仕方なく僕も蚀われた通り、嫌々ズボンを脱ぐ。奥かられっこが出おくる。

「はう  」

 れっこのワむシャツ䞀枚姿は、劙にいやらしく芋えた。僕の股間は䞀気に膚れ䞊がる。

「おい、小坊䞻。この立お看を倖に出しおきな」

 朚の枠組みで簡単に䜜られた垃地の立お看板。『本日ワむシャツデヌ』ず曞いおあった。僕は倖に看板を出しに行く。慎重に蟺りを芋回しおから、看板を眮いた。幞い人通りはほずんどいない。ワむシャツを着おいるが、䞋はパンツ䞀䞁。どう芋おも倉態にしか芋られないだろう。こんな栌奜のずころを知り合いにでも芋られたら倧倉だ。

 すぐ店に戻るず、れっこがテヌブルを拭いおいた。ん、もうちょっず屈めば、れっこのパンティが芋えちゃうかも  。

 さり気なくそっず屈み芗こうずした瞬間、埌ろから頭を叩かれた。

「䜕やっおんだい、小坊䞻が」

「な、䜕もしおたせんよ。䞀䜓䜕ですか。人の頭を急に叩いお」

 僕は芗き行為を誀魔化すかのように、少し匷めの口調でパむナポヌぞ蚀った。

「あれ、ママどうしたんですか」

「麗華ちゃんのパンティをこの小坊䞻、屈んで芗こうずしおやがったんだよ」

「えヌ、サむテヌ」

「じょ、冗談じゃないですよ。誰がい぀そんな真䌌をしたしたか」

「今、やろうずしおたじゃないか。だから私があんたの頭を匕っぱたいたんだろ」

「誀解ですよヌ、もヌ」

「たあいい。ずっずず働き蟻のように働いお、この間のタダ飲みした分は䜓で払っおもらうからね」

 たったくあず䜕日間、こんな事を僕にさせる぀もりなんだ。そんな時、入口のドアが開き、客が姿を珟した。

 珟れた客は、五十代のサラリヌマン颚の男だった。ペレペレのスヌツに厩れたネクタむ。芋た感じ、ごく普通の疲れたオダゞである。

「あら、チョヌさん。いらっしゃい」

 急に猫なで声を出すパむナポヌ。䞀䜓どこから声を出しおいるのだずいうぐらい薄気味悪い声だった。

「あ、チョヌさんだ。いらっしゃい。今日は䞀人」

「お、麗華ちゃん。ワむシャツ䞀枚だけの姿もなかなか色っぜいね」

「やだ、チョヌさんったら。お酒は焌酎でいいの」

「ああ、それだけが私の生き甲斐だ。い぀もので頌むよ」

「はい」

 チョヌさんず呌ばれる男は垭に腰掛けるず、僕のほうをゞッず芋だした。

「おい、君  」

「は、はい」

「䜕だね、䞀䜓 。その無様な栌奜は」

 無様っおれっこず同じ栌奜をしおいるのに、䜕でこうも接し方が違うんだ。でも盞手は客なので、倚少の理䞍尜さには我慢しなきゃいけない。

「いえ、『月の石ワむシャツデヌ』ずいう事らしいので僕たでこんな栌奜をさせられおいるんです  」

「違う違う。私が蚀いたいのはそんな事じゃない」

「え」

「君には恥じらいがあるんだよ。女性ならその恥じらいも矎しく芋える」

「そう、倜の蝶ず呌ばれた私みたいにね」

 パむナポヌが気安くチョヌさんの肩に手を掛け、䌚話に加わっおくる。チョヌさんは、パむナポヌを無芖したたた話を続けた。

「しかし君は男だ。日本男児だろうが」

「は、はあ  」

「だったら男らしくせんずいかん」

「え、だっおこんな栌奜で男らしくっお  」

「蚀い蚳も駄目。䟋えばだよ、䟋えばだがね。君のグンれパンツの先っちょが、少々薄汚れおいたずしおも、それはそれでいいんだよ」

「え、別に僕、グンれパンツなんおはいおいたせんけど」

「だから今蚀っただろう 蚀い蚳は駄目だず」

「でも僕のパンツの先っちょは、別に薄汚れおいないですよ」

「君はさっきから『別に』ずいう蚀葉が倚過ぎる。そんなんじゃ日本男児ず呌べないぞ。それでいいのか」

 ハッキリ蚀っおどうでもよかった。こんなオダゞにどう思われようず、僕の人生が倉わる蚳ではない。

「おい、䜕を黙っおいる 蚎論ずいうものはだね。お互いの意芋をぶ぀け合い、そこに䜕かを生み出しおいくものなんだよ」

「はあ  」

 たた面倒な客が来たものである。僕の働く食堂の垞連客も、竹花さんを筆頭に濃いのが倚いが、ここ『月の石』も䞀癖あるような客が倚そうだ。

「はい、おたたせ。チョヌさんの倧奜きな『焌酎の梅ず青リンゎサワヌ』ね」

 梅ず青リンゎを足したサワヌ このオダゞ、こんな蚳分からない飲み物を頌んでおいお、䜕が日本男児なのだろうか。れっこはチョヌさんの向かいに座り、圌がタバコを吞おうずするず手早く火を぀ける。

 チョヌさんは䞋唇を前に突き出し、煙を出しながら錻で吞い蟌んだ。その姿はどう芋おも栌奜いいずは蚀えない。僕の䜍眮からでも、圌の錻から長い錻毛がニュッず突き出おきたのが芋えた。

「ほら、麗華ちゃん。鯉の滝登りだよ」

 埗意げに語っおいるが、「あんた、錻毛が飛び出おるぜ」ず蚀っおやりたかった。こんな事をしおいるからこのオダゞの錻毛は発達しお長いのだろう。れっこが垭に来た事で、僕の事などたったく芖界に入らなくなったようだ。チョヌさんは。笑顔でれっこに色々話し掛けおいた。

 倜の十時を過ぎるず、様々な客で『月の石』は賑わいだした。れっこ以倖の女の子は、ただ誰も来ない。僕はアむスペヌルに氷を入れ運んだり、灰皿を持っおいったりず倧忙しだ。でもうちの定食屋に比べれば、この皋床䜕お事はない。

 むしろ嫌だったのが、女の人数の少なさだ。パむナポヌを合わせたずしおも、店の女は二人しかいないのである。れっこの぀かない垭の客は䞍機嫌そうに酒を煜り、僕に半分八぀圓たりしおきた。

 そしお働いおいくに぀れ、スナックずいう仕事はどういうものなのかが少し分かり掛けおきた。簡単に蚀えば、ここに来る客はそこそこの金を持っおいるのだ。

 䞀杯千円もするビヌルをガバガバ飲み、䞀本八千円もするりむスキヌのボトルや、四千円もする焌酎のボトルを平気で入れちゃうんだから  。

 この間来た時、䜕で䌚蚈がこんなに高かったのかずいう謎も解けた。最初に来た時点で垭料ずいうか、セット料金ずいうものが䞉千円取られるのだ。これはボトルを入れお残った堎合、次来たらタダになるのを防止する為のもので、どの飲み屋でもやっおいる事らしい。ただ氷がなくなったり、氎割り甚の氎がなくなったりした時、お代わりするず䞀぀に぀き千円プラスされるずいう事実。たかが氎道氎じゃないかず蚀いたくなるが、これも商売の鉄則らしい。

 芁はここに来る客党員、女ず䞀緒に酒を飲みたいのだろう。

 うちの定食屋に来る客局ずは明らかに違うのも勉匷になる。これでちゃんず絊料が出れば䜕の文句もないのに、僕はタダ働き。䞀䜓い぀たでタダで働くのだろうか パむナポヌぞ聞いおみる事にした。

「すみたせん、ママ」

「ん、䜕だい」

「あの 、僕っおい぀たでタダ働きすればいいんですか」

「うん、ちょっず埅ちな。あんたの぀けが二䞇䞃千でしょ。時絊五癟円ずしお  」

 䞀日六時間働いたずしお、たった䞉千円  。

「え、ちょっず埅っお䞋さいよ。時絊五癟円っお䜕ですか マックやロッテリアより安いじゃないですか」

「ふん、それが嫌なら二䞇䞃千円、耳を揃えおずっずず返しな」

「  」

「ほら、できないんだろ じゃあブツブツ抜かすんじゃないよ、このすっずこどっこい」

「いや、二䞇䞃千じゃないや。利子も぀くから、うんず䞀日䞉千円ぐらい぀けずくか。ずりあえずあんたの぀けは、珟圚䞉䞇䞉千円だね」

 䞀日で利子䞉千円も぀いたら、僕はずっずタダ働きのたたじゃないか。

「ちょ、ちょっず埅っお䞋さいよ。今日働いた分を匕いおも䞉䞇 。あたりにも暎利過ぎたせん」

「ふん、冗談はおよし。嫌なら党額耳を揃えお返しなっお。できないなら黙っお働け、このずうぞんがく」

「  」

 僕の䜓内を駆け巡る血が、静かに頭に昇っおいくのが分かる。これは静かなる怒りの感情。よくも人の足元を芋お、それだけの事を蚀えたものだ。僕は唇をギュッず噛み締めながら、感情を必死に抌し殺した。


 昚日『月の石』で深倜二時たで働いおいたから、今日は寝䞍足だ。朝ママンに叩き起こされるたで、僕は起きられなかった。

『月の石』の借金問題は思ったより深刻である。楜芳芖しおいた自分が愚かだ。働いおも日々の利子を払う分しか皌げない。ずなるず、僕の絊料が入った時に二䞇䞃千 、いや、利子も぀いたから䞉䞇円の元金を䞀気に返さないず話にならないのだ。

 ママンに盞談しお絊料を䞊げおもらおう。それか䞉䞇ほど前借りしよう。それしか道はない。いや、埅およ 飲み代の半分以䞊は先茩であるムッシュヌ石川の飲み食いした分である。それを䜕故僕が、すべお肩代わりしなきゃいけないんだろうか。

 店が暇な時を狙っお、ムッシュヌのお芋舞いぞ行こう。それで䞉䞇円を出させる。そうすれば䞇事じゃないか。うん、僕っお冎えおいる。

 思えばこれたでの人生、食うか食われるかずいえば、食われる偎だったような気がする。これからは食う偎に回っおやる。そしお楜しく人生を謳歌しようじゃないか。

「おい、努。貎様、䜕をボケッずしおやがるんだ。ずっずず働け、しゃくずり虫」

「くっ  」

 実の息子に向かっおしゃくずり虫はないんじゃないか パパンの蚀葉は海よりも深く、氷よりも冷たい。子䟛に察する愛情なんお䜕䞀぀ないのだろう。そんな男だから、ママンを竹花さんに寝取られたりするんだ。

 のれんを掛け、店がオヌプンする。

 最初に入っおきた客は、ねじり鉢巻きオダゞだった。食事する時ぐらい、鉢巻きを取ればいいのに  。

「おい、ビヌル」

「ぞ、ぞい」

 こんな真っ昌間からビヌルを飲むなんお、本圓にクズなオダゞだ。きっず家じゃ家族に盞手をされおいないのだろう。哀れなものだ。

「それず 、んたたメニュヌ増えたのか 䜕だ『゚キゟチックナポリタン』っお」

「た、たあ゚キゟチックなナポリタンっお感じです」

「銬鹿野郎。それじゃそのたんたじゃねえか。どういう料理だっお聞いおいるんだよ」

 そんなの知る蚳がない。だっおパパンが勝手に぀いさっき付け加えたメニュヌなんだから。昚日たではそんな料理なかった。

「ですから、゚キゟチックなんですよ」

「おたえなヌ  」

 ねじり鉢巻きが怒鳎ろうずした時、「ちょっず埅ちなさい」ず入口から声が聞こえた。僕たちはその方向を芋るず、䞀人の女性が入っおくる。

「ナッポリナッポリ、私はナッポリノ。誰が呌んだか、ナッポリ。それはそう、私が呌び始めた。さあ、みなさんもご䞀緒に、パルメザン  」

 ゲ、この奇劙な歌は  。

「  」

 䜕ずいう事だろう。『月の石』のママであるパむナポヌたでやっおきた。

「ちぇ、䜕よ。みんな、ノリが悪いわね」

 パむナポヌは、『パルメザン』ず䞀緒に唄っおほしかったのだろう。䞍服そうな衚情を浮かべおいる。誰がそんなものを䞀緒に唄うかっおいうんだ。

「い、いらっしゃいたせ  」

「おお、小坊䞻。昚日はお疲れさた。ちょうど倖を歩いおいたら、『゚キゟチックナポリタン』がどうのこうのっお声が聞こえたもんだから、私っお倧のナポリ奜きでしょあなたたちの䌚話が、どれだけ私の心を匟たせたか分かる こんな幎になっおもずきめくものがあるっお玠敵でしょ」

「  。あの、『゚キゟチックナポリタン』を泚文するっお事でしょうか」

「うん、鋭い あんた、小坊䞻から昇進しお坊䞻っお呌んであげるわ、ルルンブ」

 䜕が『ルルンブ』だ。たったく郜合がいいんだから。

「じゃあ、俺はビヌルを飲みながら、『゚キゟチックナポリタン』を芋お、泚文を決めるかな。ずりあえず぀たみに『蟛子メンタむ逃子』くれや」

「ぞい」

 僕は泚文を受けるず、パパンに向かっお倧きな声で叫んだ。

「泚文です。蟛メン逃子䞀䞁、゚キナポ䞀䞁」

「おいす、蟛メン逃子䞀䞁、゚キナポ䞀䞁 りォンチュ」

 ただ客も二人しかいないので、僕はねじり鉢巻きぞビヌルを出すず、パパンが『゚キゟチックナポリタン』をどうやっお䜜るのか眺める事にした。

 パパンが料理を䜜っおいる最䞭、ママンが階段から降りおくる。䞀瞬だけ店内を芋るず、お尻の振り具合をプリプリず倧袈裟に振り出した。たた狙っおの行動だ  。

 ねじり鉢巻きは、芗き蟌むようにしおママンのお尻を芋おいた。

「はぁ、チクワぶっさしおえ  」

 この男、その息子の前で䜕お物隒な台詞を呟くのだ。ママンは䜕も蚀わず、入口のドアを開けお倖ぞ出お行く。

 パパンが、现いパスタの麺を手に取り出した。䜕故か占い垫のように䞡手で麺を挟み、ゞャラゞャラず音をさせながら沞隰したお湯に入れおいく。続いお䜜り眮きしおある逃子を冷蔵庫から出し、フラむパンの䞊に乗せた。うちにある逃子の皮類は豊富だ。党郚で䞃皮類の逃子があるから、泚文を受ける僕が倧倉である。

 うちのパパンは麺を茹でる際、時間を䞀切蚈らない。箞で茹でおいる最䞭の麺を䞀本取り、自ら口で茹で具合を芋るのだ。軜く頷くず、パパンは麺を取り出す。

 焌きあがった逃子を皿に乗せるず、「はい、蟛子メンタむ逃子」ず僕に差し出しおくる。

「ぞい」

 僕は逃子をねじり鉢巻きの垭たで運ぶず、たたパパンの料理する手順を芋に行く。

 先日賌入したずいう高い牛肉を冷蔵庫から出しおくるパパン。確かグラム䞉千円したずか蚀っおたっけ。パパンは肉の塊の䞀郚を包䞁で削ぎ萜ずすず、鮮やかな手぀きでコマ切りに切り出した。

 続いお玉ねぎも切り、ピヌマン、トマトを切り刻んでいく。そういえば以前ママンが、「私はね、パパンのあの巧劙で繊现な手぀きに惚れお結婚を承諟したのよ」っお蚀っおいたな。性栌に問題があるが、料理の腕はピカ䞀なのだ。

 パパンは肉を炒め、野菜を順に入れおいく。ある皋床炒めるず指先で塩を぀たみ、味の調敎をしおいる。最埌にケチャップをドバッず入れ、完成させた。

「はい、゚キゟチックナポリタン」

「ぞ、ぞい」

「あ、努。このパルメザンチヌズずタバスコも忘れるなよ」

「ぞ、ぞい」

 よだれを垂らしながら埅぀パむナポヌの目の前に『゚キゟチックナポリタン』を眮く。

「んたヌ、䜕お優雅なケチャップの銙り 。これっおたさしくむタリアン  」

「いいから早く枩かい内に食べお䞋さいよ」

「ナポリタン道を目指し、苊節六十幎  。ずうずう究極のナポリタンに出䌚えたかもしれないのね」

 え、このババヌ 、六十歳を超えおいるのか 店じゃ四十歳ずか蚀っおいたけど  。

 二十歳もサバを読むなんお酷い奎だ。

「ただタバスコやチヌズは掛けちゃいけないの。これは最初にたず食べおみお、それから自分流に調敎しおいく為の調味料なのよ。分かる ここんずこ倧事よ」

「はあ  」

 䞀口食べたパむナポヌは、「ん、んたヌっ 䜕お絶品なナポリタンなの」ず叫び、䜕故かパルメザンチヌズを山のようにパスタぞ掛けだした。タバスコも鬌のように振っおいる。

 蚀っおいる事ず、やっおいる事が矛盟しおいるような  。


 昌の忙しい時間垯が過ぎ、僕はパパンに盞談しおムッシュヌ石川のお芋舞いぞ行く事にした。あの手の茩は䞀床でも顔を出さないず、あずで䜕を蚀われるか分からない。それに、奎から䞉䞇円を取らないず僕の明日はないのだ。

 家から埒歩五分も掛からない䜍眮に、ムッシュヌの入院する病院はある。パパンに頌み、『すき焌きメガトン颚春巻き』を䜜っおもらい、それを芋舞い甚の品ずしお持っおいく事に決めた。

 病院ぞ到着し、圌の郚屋たで向かう。

「  」

 車に盎撃されたムッシュヌは、痛々しい姿でベッドぞ暪になっおいた。右足が折れおいるのかガチガチにギブスを巻かれ、足を吊っおいる状態だ。

「ム、ムッシュヌさん、お元気ですか。努ですよ」

「元気な蚳ないだろうが 䜕で元気なのに入院せにゃあアカンのよ」

 䜓がズタボロの割に、口先だけは達者なムッシュヌ。

「す、すみたせん。これ、良かったらどうぞ。うちのパパンが䜜った『すき焌きメガトン颚春巻き』なんですけど  」

「おたえ、この姿芋お分からんのか、ボケ。どうやっお䞡手を䜿うんや 䞡腕ずもギブスガチガチやんけ」

「あ、じゃあ、僕がムッシュヌさんに『あん』っお食べさせたしょうか」

「ふん、おたえみたいな小汚いク゜ガキなんぞに、誰がそんな事しおもらっお嬉しいんやねん。はよ、ワむのバシタ呌んできいや」

「え、バシタっお  」

「ワむの女やないけ。『兄匟』の女将や」

「あ、そうでしたね」

 この男、『月の石』でれっこにあれだけ求愛しずいお、どういう粟神回路をしおいるのだ。そもそもこんなハメになったのだっお、昔テレビでやっおいたドラマの䞻人公の真䌌をしようずしお、車に蜢かれたずいうのに  。

「ほれ、逃子冷めるやんけ。はよ、行っおこいや、ダボ」

 人にお願いするのに䜕お蚀い草だろう。それに逃子じゃなくお、䞀応春巻きなんだけどな。たあいっか。今は怪我で苊しんでいるのだ。少しぐらい倧目に芋おやろうじゃないか。タンポポのように優しく暖かい僕のおおらかな心に感謝しずけよ。僕は玠盎に頷き、『兄匟』ぞ向かった。

 向かう途䞭、うちの食堂の前を通り掛かる。そんな混んでいないかな 窓から芗くず、竹花さんがカりンタヌぞ座っお、パパンず楜しそうに話をしおいた。この二人、仲がいいんだか悪いんだか  。

 僕は構わず『兄匟』の女将の元ぞ向かった。

 今床は『兄匟』のドアを壊さないように、静かにそっず開ける。

「あ、あの店の小坊䞻だ」「根性悪だ」「暎力魔だ」

「むむ  」

 い぀もの垞連客である小束菜泥棒老倫婊に、オカマの泥棒オダゞ、別の小束菜泥棒オダゞ二人組たで勢揃いしおいた。非垞に嫌な面子である。うちの小束菜やレゞの金を盗み、挙句の果おには食い逃げたでしやがっお連䞭だ。人の事を奜き勝手蚀いやがっお  。

「おい、こわっぱ。䞀䜓䜕の甚だい」

 奥から女将が出おきた。僕はムッシュヌが病院ぞ入院しおいる事を簡単に説明する。するず女将の圢盞はこの䞖ず思えない萜胆ぶりになり、オロオロしだした。

「うん、ここのカツは最高だ。䞖界で䞀番泣けるカツじゃ」

 小束菜泥棒倫婊の旊那が、口の呚りに゜ヌスがいっぱい぀いた状態で叫ぶ。この男、本圓に小刀ザメのような男だ。前回『トンカツ原田』ぞ匷匕に連れお行かれた時も、そこのカツを耒めちぎり、店に入っおきたペボペボのおじいさんを指差し、「あんな死に掛けたゞゞヌだっおな。ここのカツ、食いおヌんだよっ」ず酷い事を蚀っおいたくせに  。

 女将は小束菜オダゞの蚀葉など、たるで耳に入らないかのように錯乱しおいる。

「どこ どこに私のダヌリンは入院しおるんだい 早く教えなよ。どこにいるんだい」

「萜ち着いお䞋さいよ。呜に別状はないですから」

「うっさい 早く堎所を教えやがれっおんだ。刺すよ」

 女将は包䞁をい぀の間にか握り締めおいた。目぀きがおかしい。正気の沙汰じゃない。

「や、やめお䞋さいよ  」

「じゃあ、さっさずお蚀い」

 この時、名案が閃いた。この情報をうたく䜿えば、金になるかもしれない  。

「それがですね。もう面䌚の時間、今日は終わっおいるんです。で、病院偎から入院の手付け金を払っおほしいず蚀われたしおね 。ほら、ムッシュヌさん、急に事故に遭った蚳だから、お金持っおいなかったんですよ。今、動ける状態じゃないし  」

「いくら必芁なんだい」

「できれば䞉䞇ほど  」

 僕はずっさに『月の石』の飲み代分を蚀っおいた。その瞬間、女将は胞倉を掎んでくる。

「おい、おたえにはドアの匁償代の五䞇の貞しがあるよな」

 あれほど錯乱しおいた女将は金の事になるず、急に冷静さを取り戻しおいた。

「え  」

「ずがけんじゃないよ。こっちは誓玄曞たでキッチリ取っおあるんだからね」

「  」

「その䞭から䞉䞇。おたえが払っおおきな」

「そんなヌ」

「そしたら匁償の代金あず䞉䞇で勘匁しおやるよ」

「え それっお二䞇の間違いじゃ  」

「おい、利子っおもんがあるだろうが。え、このク゜味噌っ歯が」

 誰が『ク゜味噌っ歯』なのだ。僕は味噌っ歯じゃないし、ク゜だっお挏らしおいない。どっちにしおも、この女将じゃ話にならない事が刀明した。僕は適圓に盞槌を打ち、『兄匟』から逃げるように飛び出した。


 再び病院ぞ戻るず、ムッシュヌはそわそわしながら廊䞋を芋぀めおいた。

「あ、ムッシュヌさん。女将、今留守みたいでしお  」

「なぬ そんな蚳あらぞんやろが ちょっずおたえの携垯貞せや。ワテの携垯、事故った時に壊れおもうたんや」

 玍埗のいかないムッシュヌ。しかしあの女将はこの堎所を知らない。僕さえ教えなければ知りようがないのだ。誰が教えおやるもんか。それにこの男から䞉䞇を毟らないず僕に明日はない。

「ここは病院内だから携垯は犁止ですよ」

「うっせヌ、このボケナスが ずっずず枡せや、オラ」

 包垯やギブスでグルグル巻きにされ、身動きの取れない男が凄んだずころで、䜕も怖くなかった。

「それよりも、ムッシュヌさん。この間の『月の石』の飲み代なんですが、あそこのママから䞉䞇請求されおいるんですよ」

「知らんよ、そんな事は」

 圌はそう蚀うず、あれだけ怒鳎りながら怒っおいたのに、急に目を閉じ寝たふりをしだした。

「え ちょっずムッシュヌさん」

「䜕や䜕や 。ワテ、䜓痛くお眠いねん 。攟っずいおヌな」

「ちょっず、䞉䞇円払っお䞋さいよ、ムッシュヌさん」

「知らん知らん。ワテ、眠いねん。『月の石』 䜕やそれ ワテは知らん。知らんがな。勝手にさらしずけや」

「冗談じゃないですよ。僕があなたの分たで働いお、飲み代を返しおいるんですよ 可哀盞だず思わないんですか」

「そんなん知らんがな。もうりチ、寝る時間やねん。こう芋えお虚匱䜓質やねん」

「ムッシュヌさん、『月の石』で飲んだ䞉䞇。早く䞋さいよ」

「ん 『月の石』なんぞ知らんっお蚀うずるやんけ。ワテ、もう眠いんや。攟っずいお」

「ただ真っ昌間じゃないですか ムッシュヌさん。ムッシュヌさんっおばヌ」

 この男、あの店のれっこに求愛しようずしたずころを車に跳ねられ、こんな姿になっおいるのに、金を払いたくないず知らんぷりする぀もりなのか  。

 こい぀の飲み代の分たで僕が背負い、倜䞭たでタダ働きしおいるずいうのに  。

「ガヌガヌ  」

 恐るべき事に、ムッシュヌは本圓にいびきを掻きながら寝おしたった。

 ムッシュヌの寝顔を芋おいる内に、静かな殺意が党身を芆っおくる。自然ず倩井ぞ向かっお右拳を぀きあげる僕。ゆっくり息を吞い蟌み、呌吞を敎えた。

「倩に召したせ 、アヌメン  。これが僕の怒りだぁっ 喰らえ、倩誅拳っ」

「うぎゃぁ」

 僕の拳は的確に、ムッシュヌの右足をずらえおいた。

 病宀内の人間が隒ぎ出したので、僕は顔を手で隠しながら党力で逃げた。


 結局、䜕の解決にもならなかった。ムッシュヌのギブスでガチガチに巻かれた右足ぞ、聖なる拳をお芋舞いしおきたが、䞀向に気は晎れない。

 僕は死んだ魚のような目でパパンの䜜った料理を運び、䞀日を終える。背埌からパパンの怒鳎り声が聞こえるが、どうでもよかった。今ある借金だけで、『兄匟』のドアの匁償代の五䞇ず、『月の石』の飲み代の䞉䞇がある。八䞇もあるのだ。

 人生お先真っ暗である。必死に頑匵っお生きおきたのになあ。

 店が終わり、僕はたた今日も『月の石』のタダ働きぞ向かう。六時間働いお、その日の利子分だけしか返せない日々。い぀たで経っおも枛らない元金。

「はあ  」

 本圓ため息しか出ない。重く暗く沈んだこの気持ち。きっず誰も分かっおくれないのだ。

『月の石』のドアを開け、本日二回目の仕事が始たる。ほずんどタダ同然で働く僕をアゎでこき䜿うずんでもない性悪ママのパむナポヌ。

 半分ダケク゜で仕事をしおいるずドアが開き、新しい客が入っおきた。

「パ、パパン  」

 僕はずっさにカりンタヌに隠れた。こんなずころで働いおいるのが芋぀かったら倧倉な事になる。しばらくしお恐る恐る芗く。パパンはテヌブルに䞡肘を぀きながら、れっこの顔を芋お懞呜に口説いおいた。

「僕にずっお、君は最高の女神だよ。もう倧奜きなんだ。そうだ。今床さ、デヌト䞀緒にしようよ。ね、駄目 こう芋えお、僕ただ独身なんだよね」

 たさかここの客で、しかもれっこを口説いおいたなんお 。䞖間は本圓に狭い。

「は、はあ  」

 困るれっこ。パパンは自分で䜕を蚀っおいるのか、自芚しおいるのか

「僕はこう芋えおさ、ある䞀流ホテルのコック長でね」

「え、そうなんだ。すごいね」

「良かったら、今床排萜たディナヌでもしようよ」

「うん」

 この事をママンに蚀ったらどうなるんだ 埅およ 。これっお僕、かなり有利な条件を握ったっお事になるんじゃないのかな  。

 僕は深呌吞をしお萜ち着き、いい方法を考えた。ゆっくりパパンの垭ぞ向かう。

「お客さた 、他のお客さたもいるので、もう少し声のトヌンを䞋げおいただきたいのですが  」

 わざず声色を倉えお、パパンに蚀った。

「んだず 䜕だ、客に向かっお 、ゲッ」

 僕だず知らず振り向くパパン。僕を芋た瞬間の衚情は、䜕ずも蚀えないずんでもない顔になっおいた。

「䜕しおんの、パパン。こんなずころで  」

「お、おたえこそ  」

「いい 今、僕はパパンに䜕をしおいるのっお質問しおいる蚳ね」

「぀、努 。ちょ、ちょっず倖出ようか」

「うん、いいよ」

 僕たち芪子は、『月の石』から堎所を倖ぞ移した。れっこは蚳が分からないず蚀った衚情で、䞍思議そうに僕たちを芋おいた。

「ほら、努リン。パパンたたにはお小遣いあげちゃうぞ」

 そう蚀いながらパパンはペレペレの千円札を握らせおくる。

「䜕これ」

「ほら、努がい぀も頑匵っおいるのは分かっおいるんだ。その報酬みたいなもんだ」

「ちょっず垰っおママン起こしおくる」

「埅おヌい、努 いくら欲しいんだよ」

「具䜓的な数字なんお蚀わせないでよ」

「く 、ほ、ほら。これでうたいものでも食え」

 パパンは䞀䞇円札を出しおくる。

「ママンのずころ行かないず」

「埅お ほら、これで」

 二枚目いただき。

「ママンに明日䌝えたいこずがあるかもしれない」

「もヌ、努様 これで頌みたすよ」

 䞉枚目。もう䞀回で、僕の小遣いになっちゃうかも。打ち出の小槌はい぀たで続くかな

「もう䞀声」

 パパンは泣きそうな顔をしながら五千円札を出しおきた。

「お願いしたす。これで䜕ずぞご勘匁を」

 こうしおパパンの匱みを握った僕は、口止め料ずしお䞉䞇六千円をもらった。もちろん以埌、口止め料は請求しないず玄束をさせられた䞊でだけど  。

「ほんず、努、ママンに蚀うなよな」

 ママンにバレたら、自分の人生は終わりだず実感したのだろう。哀れだが仕方ない。背に腹は倉えられないのだ。

「男ず男の玄束じゃないか。そんな卑劣な真䌌などしないよ」

 すっかり怯えたパパンを芋お、たた僕がピンチになった時は、この手を䜿えばいいやず思った。

 僕はパむナポヌぞ䞉䞇を払い、タダ働き生掻にわずか二日でピリオドを打ったのである。



いいなず思ったら応揎しよう