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メルヘンチック⑰リヌグず膝蹎り

執筆日⑰2026幎10月03日

 トレヌニングをしながら、䌑憩の時はひたすらプロレス雑誌を芋る。い぀か俺もこの玙面に茉れるようにならないずな。腹が枛ったので、努の定食屋ぞ行こうかな。あそこなら安いし腹いっぱい食べられる。

 着替えをしようずするず、おじいちゃんから電話だず呌ばれた。

「あ、神嚁、久しぶり。よかったら飯でも行かねえか」

 駄目人間ゎリからの誘い。たあこい぀は銬鹿なだけで、ずこずん関わらなければ無害ではある。

「いいけどあの定食屋にするよ」

「ああ、分かった。あずさ、倧田も行きたがっおいたから䞀緒に連れお行くよ」

「あ、それならさ、努の店っおそこそこ遠いじゃん。぀いでに迎えに来おくれよ」

「ああ、分かった」

 ゎリの乗る車はシビック。俺は通称ゎリビックず呌んでいた。十分もしないで来るだろうが、䞀応倖に出お埅っおいるか。セブンスタヌに火を぀け、タバコを吞っおいるず、実家の隣にあるトンカツのひろむで働く先茩の長谷郚さんがシャッタヌを開けるずころだった。

「あ、長谷郚さん、こんばんは」

「おう、韍䞀、元気か。随分䜓デカくなりやがったなあ」

「ただただ䜓重足りないですけどね」

 長谷郚さんは俺より五぀䞊の先茩。䞭孊時代は孊幎的に被るこずがなかったが、トンカツひろむにいるようになっおからは、よく挚拶する間柄だ。

「そういえばさ、この間よ。俺の銬鹿な同玚生がむトヌペカドりで傷害で捕たったんだよ」

「え、あんなスヌパヌで䜕をやったんですか」

「さあ 五朚っお奎で、同玚生ずいうだけで話したこずもない倧人しめの奎だったんだけどなあ」

「平和な川越も、䜕だか物隒になりたすね」

 プップヌ。

 車のクラクションが鳎り、ゎリビックが到着するずころだった。

「あ、長谷郚さん、友達来ちゃったんですみたせん」

「おう、たたな」

 俺はゎリビックぞ小走りに向かい、ドアを開ける。するず倧音量で音楜が掛かっおいた。

「オヌレ―オレオレオレオレ―、りィアザチャヌンス、りィアザチャヌンピオン、オヌレ―オレオレオレオレ―  」

「うるせえよ、ゎリ。少しボリュヌム萜ずせよ。うわ、䜕だよ、これ 。サッカヌのグッズばかりじゃねえか。おたえ、バレヌ郚だったろ サッカヌなんおたるで興味なかったじゃん」

「いちいち现かい奎だな。リヌグは今、倧ブヌムなんだよ」

「元サッカヌ郚の俺がリヌグに興味瀺しおいないのに、䜕でゎリがハマっおんだよ」

「これからは時代の最先端を远いかけないずな」

「おたえ、䜕で急にサッカヌ奜きになったんだよ」

「だから蚀っただろ 最先端最先端」

「サッカヌじゃなくたっおいいだろ」

「この前、テレビで芋おたらさ」

「ああ」

「ボヌルを蹎っおゎヌルに入れるだろ」

「圓たり前だろ」

「あれ、俺にもできそうだなず思っお」

「  」

「バレヌより簡単そうじゃん」

「おたえ、バレヌもろくにできなかったじゃねえか」

「だからサッカヌにしたんだよ」

「䜕でだよ」

「転職だよ、転職」

「スポヌツを転職みたいに蚀うな」

 途䞭で倧田を拟い、小汚い定食屋ぞ向かう。䞭ぞ入るずチャブヌが、チキンラむスを食べおいた。

「あ、チャブヌ、久しぶり。おたえが先に蟞めちゃったけど、俺もあの教材売りの仕事を蟞めたよ」

「おお、そうなんだ神嚁。䜕だよ、ゎリに倧田たでいるじゃん」

「チャブヌずゎリ 、久しぶりのダブル岩厎共挔だね」

「倧田、テメヌふざけんじゃねえよ 苗字が䞀緒っおだけだろ」

 岩厎宗兞ず岩厎力は、声を揃えお怒鳎る。䜕気にこい぀ら息がピッタリなんだよな。

「神嚁さ、ちょっず聞いおくれよ 。俺が厇拝する偉倧な先茩が捕たっちゃっおさヌ」

「え、䜕で」

「颚林火山を駆䜿しお、膝を䜿おうずしたらしいんだ」

「䜕じゃ、そりゃ」

 そういえば努の奎、氎も持っおこないで䜕をやっおんだ 店内を芋るず倧しお忙しくもないのに、カりンタヌ垭にいるねじり鉢巻きのオダゞに捕たっおいる。

「努ちゃん、今床ちくわのメニュヌも出しおよ。じゃないず自分で持ち蟌みしちゃうよ」

「飲食店でそれはご法床ですよ、ご法床」

 その䌚話を聞いおいたのか、倧田が䞀人でりケだした。

「䜕がおかしいんだよ」

「ご法床 、カタカタだず『ゎハット』 。ゎリ、ハットトリックの蚳だなず思っおさ」

「テメヌ、ふざけんじゃねえよ」

 䜕でこんな䜎レベルの友達しか、俺の回りにはいないのだろうか  。

 ドアが開く。誰が来たのかず眺めおいるず、おどおどした様子で䞋を俯いたたた入っおくる同䞖代の男が芋える。あれ、どこかで芋たこずあるような。あ、うちの近所の桶屋のゞュンだ。

「おヌい、ゞュン。久しぶりじゃねえか」

「ぁ  」

 盞倉わらず人芋知りな奎だ。小孊校から䞀緒なのに、今でも人芋知りをしおいる。圌は俺たちずは離れたテヌブルに座るず、䞀冊のノヌトを取り出した。

 チャブヌがゞュンを芋おニダニダしながら近付く。

「おい、桶屋のゞュン。䜕をやっおんだよ。ん、䜕だこれ」

「あヌ、やめおやめお」

 意地悪そうな衚情で、チャブヌはノヌトを取り䞊げる。

「ゞュン童話、パンくずのベランダ 䜕だ、こりゃ たあ朗読しおやろう」

かずおの家は、ずおも裕犏な家庭でした。

二幎経っお匟の぀ぐおが生たれ、四幎経っおさぶろうが生たれたした。
䞉人の兄匟は仲よく暮らし、すくすくず成長したす。

倧きくなっお人のいいかずおは、匟たちに隙されお、自分の家を取られおしたいたした。

悲しみの䞭、かずおは぀ぐおずさぶろうず喧嘩をせず、離れた堎所で暮らす決意をしたす。
「たた最初から頑匵っお働こう」
圌は黙々ず働き続けたした。

぀ぐおはかずおから奪ったお金で、毎日遊んでいたす。
でもある日、車にはねられお亡くなりたした。
たくさんの欲しいものを買っお、信号無芖しお歩いおいるずころをはねられたのです。

かずおの家の広いベランダ。
自分䞀人の家ずなったさぶろう。
圌はそこに怅子を眮いお、景色を芋ながらご飯を食べるのが日課であり、楜しみでもありたす。

パンを奜む圌は、ベランダにたくさんのパンくずが散らばっおいたす。
それを食べに、スズメが䞀矜飛んできたした。

さぶろうはもっず鳥が来たらいいなず思い、パンくずが出るように掃陀もせず食べたす。
やがおスズメがたくさん集たり、さぶろうはずおも喜びたした。

でもそれは短い時間で終わりたす。
なぜなら黒いカラスの矀れが、スズメを远い出したのです。

すっかり汚くなったかずおの家。
掃陀もしないさぶろうは、家を捚おお出おいきたす。

誰も䜏たなくなった家。
そこぞ、働いお金持ちになったかずおが戻り、綺麗に掃陀をしお楜しく暮らしたした。

かずおは、いなくなった匟たちずの思い出を本にしたした。
その物語はたくさん売れお、かずおは幞せに暮らしたす。

そこぞお金のなくなったさぶろうが、たた戻っおきたした。
今床は匟が困っおも、かずおは助けたせん。

そしお前に、かずおの家を取ったこずはみんなにも知られおおり、誰も圌を助けたせんでした。
さぶろうは泣きながら途方に暮れたす。
そのあずさぶろうを芋たものは、誰もいたせん。

ひずりになったかずおは、ベランダでピザを食べながら幞せに暮らしたした。
なぜなら、ベランダから芋えるお星さたが、い぀も倜は綺麗に芋えおいたからです。

かずおはい぀も綺麗に芋られるよう、ご飯を食べるず綺麗に掃陀だけは必ずしたした。

「  」

 䜕だ、この内容は

 ひょっずしお童話のかずおがゞュンそのもので、カラスが俺たち同玚生 え、それだず俺もカラスの偎

 ゞュンにずっお掃陀ずは、おそらく唯䞀自分でコントロヌルできるこずなのでは

 いじめられお、ノヌト取り䞊げられおも、ベランダ  自分の郚屋だけは綺麗にしおおけば、倜は星が芋える。誰にも邪魔されない。

 声のデカい同玚生たち。圌らが来るず、スズメは远い出されお、ベランダ  ぀たりゞュンの堎所は汚くなる。だからさぶろうは家を捚おお出おいく。

 かずおの、家を奪われおも黙々ず働いお、最埌は䞀人で綺麗に掃陀しお星を芋る。誰にも頌らない幞せ。

 さぶろうの、誰かに来おほしいからパンくず撒いお、でもカラスが来お汚されお、結局逃げる。誰かを求める匱さ。

「䜕だ、これ。ク゜぀たらねえ話だな、桶屋のゞュンよヌ」

 ゞュンはチャブヌに察し、䜕も蚀い返せない。なぜならこの童話は、面癜くするために曞いたものではないから。自分の生き方を正圓化するために曞いた童話だから。

「チャブヌやめなっお、ゞュンが可哀想だろ」

 俺はノヌトを取り返し、ゞュンに優しく手枡した。

 汚れた家も、いなくなった兄匟も、党郚眮いずいお、星が綺麗だから掃陀する。これ、ゞュンなりのメルヘンであり願望なのかもしれないな。䞍噚甚で、誰にも䌝わらないけど、圌にずっおは本気の童話  。

 心の䞭で呟いた。なあ、ゞュンよ。俺も少しはこれでカラスからスズメになれたのかな

 ようやく努がねじり鉢巻きのオダゞから解攟され、俺たちの氎を運んでくる。

「同玚生がここたで集たるのっお、久しぶりだよね。䜕だかこういう堎を提䟛できお嬉しいよ、僕」

「元々寂れた薄汚い店に、安いからみんな来ただけだろ、努」

「だからそういう蚀い方はやめろっお、チャブヌ」

「神嚁は昔から小動物系同玚生には、劙に優しいからな」

 確かに蚀われおみるず、俺はどうもその傟向があるようだ。ただ、人に寄っおころころず態床を倉えるよりはマシだず思っおいる。

「よし、じゃあリヌグで倧ブレむク䞭のゎリの奢りで、この店で䞀番高いメニュヌを持っおきおもらおうか」

「ふざけんじゃねえよ、神嚁。今日二癟二十円しかねえから、おたえに奢っおもらおうず思っおいたんだよ」

「おたえ、ふざけんじゃねえぞ」

「そういえばチャブヌ。圌女は元気」

 倧田が話しかけるのが聞こえ、俺も気になった。確か冚岡ひろみさんっお蚀ったっけ 䞀぀幎䞊のなかなかできた圌女。所沢の時は本圓にお䞖話になっおしたったからなあ。

「うヌん、最近口喧嘩するこずが倚くなったな」

「あんなできた圌女いないぞ、チャブヌ。倧事にしおあげなよ」

 ぀い口を挟んでしたう。

「たあ颚林火山の教え次第だな」

「䜕だそりゃ」

 川越の街は、平和だった。



 たったく昚日は賑やかで倧倉な䞀日だったなあ。チャブヌの奎、前より性栌が悪くなっおいないか あんな底蟺の同玚生たちでなく、゚レガントな女の子たちに来おもらいたいもんだよね、本圓に。

 ただお店開けるたで、少し䜙裕あるよね。ティッシュタむムにいっちゃおうかな。ズボンをおろした時だった。

「ほら、努。そろそろ支床しなさいな。じゃないず離婚するわよ」

「わ、分かったよママン。ちょっず萜ち着いお すぐ行くからさ」

 本圓に短気なのか冗談なのか、よく分からないずころが䜙蚈に怖い。それに絶劙なタむミングで声をかけおくるなんお。ひょっずしお僕の郚屋にも、監芖カメラがあるんじゃないのか

 いやいや、パパンがいない今、僕は皌ぎ時なのだ。経営者ずしおもっずしっかりしなくちゃね。

 ママンの䜜るメニュヌの仕蟌みの手䌝いをしおいる途䞭、入口の扉が開く。僕は慌おお入口ぞ向かった。たたにこうしお時間が分からず、早めに来おしたうお客さんもいる。

「お客さん、すみたせん。うち、昌からの営業なんですよ」

「おいおい、䜕を蚀っおいるのだね、君は  」

「え」

 僕はお客さんの顔をたじたじ芋぀めた。あれ、ひょっずしお  。

「ランバラル」

 い぀の間にか興奮しお叫んでいた僕。目の前には、小孊時代からの同玚生である歊田五郎こず、ランバラルが立っおいた。

 なぜ、こんな仇名が぀いたかず蚀うず、クラスの女の子に向かっお瞄跳びでビシビシい぀も匕っ叩いおいたからだ。その時、「ザクずは違うのだよ、ザクずは  」ず、アニメのキャラクタヌの真䌌をしながら瞄跳びで匕っ叩いたもんだから、そのたたそのキャラクタヌの名前が仇名になったのだ。

 圌はクラスでも乱暎者ずしお、女の子から非垞に嫌われおいた。圌の瞄跳びのトラりマで、倧きくなっおに目芚めた子もいるかもしれないずいう噂も聞いたこずがある。

 でも、䞍思議ず僕には芪切だったのだ。確か高校を卒業しお、北海道の自衛隊ぞ行っおいたはずだけど  。

「久しぶりだな、努」

「うん、久しぶり」

「ちょっず䞭ぞ入れおもらうぞ。コヌラでもご銳走になろうかな」

 そう蚀っおランバラルは、匷匕に店の䞭ぞ入っおいく。

 ちょうどママンが厚房で仕蟌みをしおいる時だったので、ランバラルはカりンタヌ垭に腰かけ声をかけた。

「おばちゃん、久しぶりヌ」

 䞀瞬だけランバラルを芋るず、ママンは無芖しおキャベツの千切りを始めた。ママンは『おばちゃん』ず呌ばれるのが倧嫌いなのだ。

「ランバラル、駄目だよ。お姉さんっお蚀わないず  」

 僕がこっそり圌の耳元で囁く。

「盞倉わらずだな。努の母ちゃんはよ」

「早く蚀わないず、酷い目に遭わされるっお」

「そ、そうだな 。努君のお姉さん、い぀芋おも若々しいですね」

 ママンの包䞁を持぀手が、ピタリず止たる。

「あら、誰かず思えば五郎じゃないの。あんた、北海道ぞ行ったんじゃなかったの」

 若いずか、お姉さんずいう蚀葉に匱いママン。

「ええ、そうなんですけど、今床地元の同窓䌚があるんで急遜垰っおきたんですよ」

「えヌ、僕、地元なのに党然聞いおないよ」

「おたえは昔から、みんなの嫌われ者だったからだよ」

 それはおたえだろうが 。こい぀、ランバラルだけには蚀われたくない台詞である  。

「五郎、コヌラでも飲む」

 お姉さんず呌ばれたママンの機嫌はすこぶるいい。

「もういい加枛䞋の名前で呌ぶのやめお䞋さいよ。恥ずかしいっすよ」

 ランバラルは僕ず同じ䞀人っ子だが、なぜか五郎ずいう名前だった。噂によるず、ランバラルのお母さんが倧の『野口五郎』ファンだったずいう意芋もある。

「ランバラル、その同窓䌚っおい぀にやるの」

「今週の日曜日だよ。どうせ努には声が掛かっおないず思ったから、俺様がわざわざ䌝えに来たんだよ。今日はおたえ、䜕時頃に仕事終わる」

「ん、倜の八時半ぐらいかな」

「じゃあ、その頃たた来るよ」

「分かった」

 ママンの出したコヌラを䞀気飲みするず、ランバラルは颯爜ず消えおいった。

 今日のうちのメニュヌは、比范的たずもだった。

『焌肉定食宮のたれ颚味』。これはママンがよく倖食に行く『ステヌキ宮』のたれがスヌパヌに売っおいたのを芋぀け賌入しおきたらしい。その『宮のたれ』を䜿っお䜜る焌肉定食。でも、これっおただのパクリじゃないのか  。

『逃子ずメンチカツセットラむス付き』。逃子六぀ずメンチカツが䞀緒になったお埗感あふれるセットらしいが、なぜこの組み合わせなのだろう。味噌汁はなぜかなし  。

『コロッケナポリタン、ラむスは別』。これも䜕でこんな組合せなのか分からない。しかもなぜこれだけラむスは別なんだろうか たあ逃子ずメンチカツよりは盞性がいいだろう。でも若干䞀名が、匂いを嗅ぎ぀けおきそうで嫌だ。

「どう、今日の料理は」

 ママンは錻の穎を膚らたせながら興奮しお胞を匵る。

「どうっお蚀われおも  」

「庶民チックにあふれおいる心優しい゚コロゞヌだず思わない」

「うん、僕にはよく分からないよ。それよりお客さんでさ、メンチの代わりにコロッケほしいずか蚀われた堎合、チェンゞしちゃっおいいんでしょ」

「駄目よ、そんな反則は」

「え、反則っお別にお客さんの奜みに出来る限り沿っおあげたいなあず  」

 ママンの目぀きが険しくなる。

「あのね、あんたがそうやっお客を甘やかそうずする方針だから、売䞊がいたいちなの。その蟺お分かり」

「そんなこずないじゃないかよ。だっおい぀もママンの䜜る料理、だいたい残るの二、䞉人前ぐらいじゃないか」

「お黙り、セニョリヌタ。珟実にそれだけ䜙っおいるでしょ 私がやれば仕蟌んだ分なんお、あっずいう間に足りなくなっちゃうわよ」

「こっちだっお苊劎をしおんだ。それをそんな簡単に蚀わないでくれよ」

 僕だっお必死に客ぞ察応しお䞀人で頑匵っおきおいるのだ。料理だけ䜜っお、ずっずず二階でく぀ろぐママンより頑匵っおいる。

「簡単に蚀っちゃうわよ。だっおママンが本気になれば、努なんお倪刀打ちできやしないもの」

 劙に今日のママンは挑発的だ。

「じゃあママンが今日は、䞀人でやっおみればいいじゃないか」

 ぀い感情的になり出た台詞。

「ふん、いいわよ。今日はママンのお手䞊みを芋せおあげるわよ。努はパパンず䞀緒にやる時みたいに、ホヌルで氎でも汲んでなさい」

「ああ、そうするよ。それで芋せおもらうよ、ママンの腕前っおや぀をね」

 こうしおママンが厚房で料理、僕はホヌルでサヌビスずいう初の図匏が完成した。

 お昌十二時ピッタリにのれんを出そうず倖ぞ出るず、僕は蚀葉を倱った。い぀もならパラパラずしか来ない客が、うちの前で列を䜜っおいる。

「ただよ、努。ただ開けちゃ駄目」

 ママンが厚房から声をかけおくる。僕は䞀旊店内ぞ戻るが、意味が分からない。

「䜕で」

「こういうのはね。客の心理をもっず煜らないずいけないの。今日のママンは本気モヌドだから、出し惜しみなしよ」

「だっお倖で埅っおいるお客さん、みんなお腹枛っおんでしょ 早く開けないず可哀盞じゃないか」

「盞倉わらずあんたはお銬鹿ね」

「お銬鹿っお蚀うな おを぀けるずもの凄い銬鹿みたいじゃないか」

「だっおお銬鹿じゃないの。いい加枛、私の蚀うこずに埓順になりなさい。蚀われた通りに動いおいれば倱敗しないんだから」

「じゃあどうしろっお蚀うんだよ」

「努はずりあえず二階ぞ行っお、あんたの奜きなオナニヌしおおいいわ」

「えヌっ   っおいうか、䜕で僕がオナニヌしなきゃいけないんだよ」

「毎晩こそこそ日課のようにしおいるじゃないの」

 絶察にママンは、僕の郚屋にカメラを取り付けおいる  。

「さ、最䜎だぞ、ママン」

 倫婊揃っお息子のプラむバシヌを䟵害しやがっお  。

「现かいこず蚀っおないで、さ、早く二階ぞ行きなさい」

「ちぇ  」

 仕方なく僕は自分の郚屋ぞ行く。それにしおも䜕で今日に限っおあんなお客さんが倖で行列をしおいるんだろう 気になっお窓から眺めおみる。

「うわっ」

 思わず声が出おしたうぐらいの行列。うちの店からあの忌々しい因瞁の店である『兄匟』たで列は続いおいた。䜕十人いるんだ うちは党郚で十八垭しかないから、こんな人数なんお捌けないぞ

 急にドアが開く。ママンが入口に立っおいた。

「䜕をしおんの、努。さっさずオナニヌしなさいよ。じゃないずお店開けないわよ」

「そんな無茶な」

「無茶じゃないの。これも私の蚈算䞊なんだから、あんたがオナニヌしないず困るのよ」

 蚀っおいるこずがメチャクチャだ。息子にオナニヌを匷芁する母芪なんお、この壮倧で広い䞖界でもママンぐらいだろう。

「もう、じゃあ向こう行っおよ」

「あらあら照れちゃっお、たったく。はいはい、たったくしょうがないわね」

 ママンが郚屋から出おいくのを確認するず、僕は垃団の䞊に暪になった。誰がオナニヌなんかするもんか。冗談じゃない。

 特にやるこずもなく暪になっおいるず、自然ず眠くなる。僕はそのたた目を閉じ寝おしたった。

 ふず目を芚たし時蚈を芋るず、二時半になっおいた。

 マズい  。

 僕は慌おお階段を駆け䞋りる。お客さんを十二時から埅たせたたたなのだ。しかし䞋からは人のいる気配がない。

「あれ ママン」

「なヌに」

 ママンは呑気にコヌヒヌを飲んでいた。しかもカップを持぀際、小指が立っおいる。

「䜕をしおんの お客さん、ずっず倖に埅たせおいるじゃないかよ」

「だっおあなた、ただオナニヌしおないでしょ」

「し、したよ 。だから早く開けようよ お客さんが可哀盞だよ」

 しょうがなく僕は嘘を぀いた。

「そう、じゃあそろそろ開けたしょうか」

 良かった。ママンは僕の嘘に気付かないようだ。でもママンは䜕でこんなのんびりしおいるんだろう。急いで僕はのれんを倖ぞ出しに行く。

「おせヌよ、この小坊䞻」

「十二時からじゃねえのか、おらっ」

「䜕を考えおいるんだ、ク゜ガキ」

 ダバい。みんな殺気立っおいる。腹が枛るず、どうしおも人間気が短くなるものだ。だから早く時間通りに店を開ければいいのに  。

「すみたせん、すみたせん  」

 僕は平謝りしながら、のれんを出した。い぀もなら十二時開店なのに、二時間半も埅たせたのだ。そりゃあ誰だっお怒るだろう。ん、埅およ  。

 みんな二時間半も、うちの料理を食べる為に埅っおいたのか

 店を開けるず、空腹のお客さんたちは雪厩のように店内ぞ入り蟌む。僕も慌おお戻るず、ママンが珍しくホヌルに出おいた。

「はヌい、料理はすぐにできおたすよヌ。みなさん、『焌肉定食宮のたれ颚味』を泚文する方はこちらの垭ぞ、『逃子ずメンチカツセット』の方はこちらぞ、『コロッケナポリタン』を頌む人はカりンタヌぞ座っおちょうだい」

 そう蚀うず、ママンはお尻を必芁以䞊にプリプリず振り出した。お客さんたちの芖線はママンのお尻に釘付けだ。

「うぉヌ、俺はコロッケずナポリタン」

「俺は焌肉だぁヌ」

「俺っちは逃子ずメンチだぁ」

 なぜかお客さんのテンションが猛烈に高い。

「努、みなさんにお冷お出ししお。それず各メニュヌ䜕個ず぀かたずめずいおね」

「う、うん  」

 僕は人数分の氎を汲み、各垭ぞ配りだした。

 只今五時半  。

 嵐のような忙しさからようやく䞀息぀ける。恐るべしはママンである。二時半からたった䞉時間で、僕䞀人でやる䞀日分の売䞊を䜜っおしたったのだ。

「どう、努」

「た、たいりたした  」

 本圓に自分で蚀った通りにしちゃうんだから、䜕も蚀えやしない。

「今日の䜙波は、倚分明日にも圱響するわ。努、明日は気合い入れるのよ」

「ねえ、そういえばさ。䜕でママン、あんなにお客さんが集たったの」

 開店前のあの行列は異様だった。それだけじゃなく、次から次ぞずやっおくるお客さんが䞍思議でしょうがない。

「ん、それはね。ママンが今日はお店をやりたすっお、倖に貌り玙したからでしょ」

「え、どこに」

「店の壁に貌っおおいたのよ」

「ちょっず芋おくる」

 い぀の間にそんな貌り玙を貌ったんだ だけど、それだけじゃあの店の混みようはいたいち玍埗がいかない。

「あ、努。もうこれ以䞊忙しくなりたくないし、芋る぀いでに倖の貌り玙剥がしずいお」

「分かった」

 倖ぞ出るず、本圓に貌り玙が貌っおある。『本日はママンがお店に出たす』ずしか曞いおいない。それであの行列 ありえないだろ  。

 僕は貌り玙を剥がしお店ぞ戻った。

「今日は疲れちゃったから、お店もう閉めちゃおうか」

「え、でも垞連さんに悪くない」

「いいのいいの。このミス䞊智だった私がそう決めるんだから、誰にも文句蚀わせないわ」

「え、ママンっお䞊智倧孊出おいたの」

「そうよ。別にこの物語を曞いおいる岩䞊智䞀郎の名前から取ったわけじゃないのよ」

「別に誰もそんなこず聞いおないよ」

「さあさあ、もう芪子のお話はおしたい。私は疲れたから䞊に行っお暪になるわ」

 確かに䞉時間で癟人以䞊の料理を䞀気に捌いたのだ。疲劎はかなりのもんだろう。

 僕はのれんをしたい、店の埌片づけを始めた。僕だけじゃ、『目玉焌きセット』しか䜜れないんだから、今日はもうおしたいだ。


 思ったより早めに店を閉められたので暇を持お䜙す。今日仕事終わったら、同玚生のランバラルず䌚う玄束をしおいたし、少し早いけど僕は圌に連絡をしおみた。

 嫌われ者のランバラルは、地元ぞ久しぶりに垰っおきたずいうのに遊んでくれる友達がいなかったらしく、家でガヌガヌ寝おいたそうだ。 

「せっかく垰っおきたんだから、他の同玚生ずも䌚えばいいのに」

「䜕か知らないけどさ、俺が電話しおも『いない』っお芪が蚀うんだよ。居留守䜿っおんじゃねえかなず思っおさ」

「うん」

 絶察に居留守だろうず蚀いたかったが、あえお蚀うのはやめおおく。

「俺様がわざわざ電話しおやったずいうのにな」

 ランバラルは自分を特別扱いする自分倧奜き人間である。

「瞄跳びで叩かれたのをきっず未だ根に持っおいるんだよ」

「今はさすがにやるわけないだろ。たあいい、これから努、うちたで車で迎えに来およ。もう仕事は終わったんでしょ」

「うん、じゃあ準備しおそっちぞ向かうよ」

 僕はママンに車を借り、ランバラルの家ぞ向かった。小孊時代の同玚生なので、歩いお十分の距離だからすぐに到着する。

 ランバラルは助手垭に飛び乗り、元気よく「出発進行」ず倧声を出した。

 街䞭をドラむブしおいるず、倕方なので仕事垰りのがいっぱい歩いおいる。ランバラルは、食い入るようにを眺めブツブツ独り蚀を蚀っおいる。

「あれはドムだ。あれも䞭ドムだ  」

「ねえ、䜕 ドムっお」

「ああ、ブスっお意味合いだ。正盎に蚀うず傷぀くだろ だから俺様はあえお䞭ドムずかドムっお蚀い方をしお気遣っおいるんだよ」

「  」

 䜕お勝手な蚀い草だろう。僕は黙っお聞くだけにしおおいた。

「今週の同窓䌚、楜しみだな」

「䜕時からだっけ」

「倕方六時から。堎所は『月の石』っおスナック」

「えヌ」

 僕はビックリしお倧声を出しおしたう。『月の石』ずいえば、あのパむナポヌのいる店じゃないか。先日うちの定食屋ぞ来お僕に告癜しお以来䌚っおいない。あの時は店内にいたお客さんが䞀緒に匕き剥がしおくれたから助かったけど、あの物の怪のいる店に今床は自分から行くずいうのか できれば顔を合わせたくなかったのに  。

「䜕でもさ、『生埒䌚長』っおいたろ あい぀があの店の子にハマっおいるらしくおよ。しかもあい぀が幹事だからな」

「で、でもさ、女の子は入りづらいんじゃないかな」

「䜕か知らんけど、『豆タン子』しか女は来ないらしいぞ」

「えヌ、䜕か嫌だなあ」

 䞭孊の卒業匏の時、僕に「奜きです」ず告癜しおきた女の子だった。タむプじゃなかったのでさり気なく断るず、「奜きッちゃあ」ず匷匕に抱き぀かれ、僕は党治䞀ヶ月の倧怪我をしたのだ。豆タン子ずいうあだ名は䌊達じゃない。恐るべき怪力のチビ女。抱き぀かれた拍子に党身の骚がきしみ、䞋手したら耇雑骚折でこの䞖にはいなかったかもしれないのだ。

 あの時、ランバラルが近くにいお「ザクずは違うのだよ、ザクずは  」ず、瞄跳びでバシバシず豆タン子を匕っ叩いお止めおくれたからこそ、党治䞀ヶ月で枈んだのである。

「たあ、豆タン子がただおたえのこずを忘れおいないようなら、俺がこの鞭でたた匕っ叩いお止めおやるよ」

 そう蚀いながらランバラルは腰に差しおあった瞄跳びを目の前に出し、ニダリずした。二十歳にもなっお垞に瞄跳びを持ち歩く男ランバラル。恐るべしだ。

 行く目的地もなく適圓にドラむブをしおいるず、ランバラルが倧きな声をあげた。

「ん、どうしたの」

「ほら、努。あそこ芋おみろよ」

 圌の指差す方向を芋るず、自転車に乗った䞀人の男の姿が芋える。

「あれ、あれっお  」

 僕たちの同玚生、桶屋のゞュンだった。二十歳にもなっお、未だ補助付き自転車に乗る男。

 キコキコず䞀生懞呜に自転車を挕いでいるが、補助付きなのでそんなスピヌドは出おいない。通り過ぎる人々は、そんな圌を振り返り吹き出しおいる。それを本人はたったく気付かないぐらい真剣に挕いでいた。

「ちょっず停めおくれ」

 車を停めるず、ランバラルは玠早い動きで降りた。䜕をする぀もりなんだろう

「ギャハハハ、桶屋のゞュン。久しぶりだな」

 そう叫びながら腰の瞄跳びを抜き、振り回しながらゞュンに近づくランバラル。焊った桶屋のゞュンは、慌おおナヌタヌンをしようずしたが自転車ごず倒れおしたった。

「おたえ、ただ満足に自転車も乗れないのかヌ」

 ランバラルは倒れた状態の桶屋のゞュンぞ、容赊なく瞄跳びを济びせる。瞄跳びを鞭代わりに打たれおいるのだから、圌にずっお堪らないだろう。

「ワハハ、ザクずは違うのだよ、ザクずは ギャハハハッ」

 昔からこのような理䞍尜な光景を目の圓たりにしおいるが、なぜ僕には絶察に攻撃しないのだろう。その郚分はいくら考えおも分からなかった。

 以前ランバラルにそのこずを聞いたこずがある。圌は答えない代わりに寂しそうな笑みを浮かべただけだった。

「やめおやめおっ」

 ゞュンの悲痛な叫び声が聞こえる。䞀分ほど圌を匕っ叩いおランバラルは飜きたのか、僕の車ぞ戻っおきた。

「ちょっず酷くない」

「いいんだよ、あい぀はあれで」

 昔からこの図匏は倉わらない。い぀もおどおどしおいたゞュンは、ランバラルにずっお絶奜の苛め盞手だったのだ。倚分これで、桶屋のゞュンは今週の同窓䌚ぞ来ないこずは確定だろう。

 車を発進させながら、僕はバックミラヌで道路に暪たわるゞュンを芋た。哀れに感じ介抱ぞ向かいたがったが、今はランバラルを圌から匕き離すほうが先決である。

 しばらく車を流しおいるず、ランバラルが口を開く。

「なあ、努さ。お願いがあるんだけど」

 嫌な予感がした  。

「な、䜕だい」

 たたには車の運転をしたいずランバラルが蚀っおきた。免蚱を取っおほずんどペヌパヌドラむバヌの圌に家の車を運転させるのは正盎嫌だ。

「これ、僕の車じゃないからさ」

「ちょっずだけ俺様に運転させろよ」

 出た。ランバラルのわがたた。この男、こうなるず自分の思い通りにしないず気が枈たなくなるのだ。

「だっお事故ったりしたらどうするの」

「ん、保険入っおんだろ」

 別にこい぀の為に、うちは車䞡保険に入っおいるわけじゃないのに  。

「  」

 い぀もランバラルはこうマむペヌスだから、みんなに嫌われるんだ。倚分、今回の同窓䌚で女子が豆タン子䞀人しか来ないのも、ランバラルが出垭するから来ないのだろう。

 そういう僕は、䜕でこんな男ずプラむベヌトを䞀緒にいる

「頌むよヌ、努。でも、駄目なら駄目でいいよ」

 あれ、案倖簡単に匕き䞋がったな。

「うん、ごめんね。うちの車だからさ 、あっ」

 狭い車内の䞭、ランバラルは腰から瞄跳びを取り出し、僕に向かっお構えだした。

「分かった。分かったから 運転倉わるよ、ね」

「初めからそう玠盎になればいいものを 。ほれ、さっさず停めろ」

 仕方なく僕は車を停止させる。こい぀は昔からこうだから、みんなに嫌われるんだ。ランバラルは䞊機嫌で運転垭ぞ座るず、アクセルをベタ螏みしお急発進させた。

「お、おい、ランバラルっおば  」

 すごいスピヌドで車を運転させるランバラル。

「グフフ 、ザクずは違うのだよ、ザクずは  」

 ダバい。この男の目はすでにいっおいる。

「うちの車はザクずは関係ないっお スピヌド違反で捕たっちゃうよ」

「グフフ  」

 よく車に乗るず人が倉わる人間がいるが、ランバラルの堎合、元がダバいのにさらに人が倉わったようにダバさが増しおいる。

「あヌっ 前々、信号赀だっおばぁ」

 このたたじゃぶ぀かる。ぶ぀かっおしたう  。

「むぅ、ニュヌタむプか」

 慌おお急ブレヌキをするランバラル。それでもなかなか車は止たらない。

 ドカンッ

 掟手な音を立お、僕たちは前で信号埅ちをしおいた車ぞ突っ蟌んだ。

 あ、蚀わんこっちゃない  。

 幞い急ブレヌキでほずんど勢いのなくなったずころだったので、ぶ぀かっおも倧した衝撃はなかった。でもどう芋おもこちらが悪い事故である。垰ったらママンに䜕お蚀いわけをしたらいいんだ  。

 ランバラルはすぐ車から飛び出し、ぶ぀けた車のほうぞ向かう。

 䜕やら運転手ず窓口で話をしおいるようだが  。

「おら、䜕でキサマ、俺様が走っおいるのに止たっおやがるんだ」

 げ、䜕おムチャクチャな台詞を吐くんだ  。

「だ、だっお信号赀じゃないですか」

「あヌ 䜕を蚀い蚳こいおんじゃ、おら」

「ひ、ひぃ」

 胞倉を掎みながら運転手を匕きずり出すランバラル。マズい、これじゃ別の眪も重なっおしたう。僕も慌おお車から降り、圌を止めに行った。

「や、やめなよ、ランバラル」

「どけ、努 こい぀はな、俺様が走っおいるのに邪魔をするような奎だ。情けなどいらんのだよ」

「䜕を蚀っおんだよ やめなっお」

 被害者偎の運転手は、今にも泣き出しそうな衚情だった。埌郚座垭には小さな女の子が心配そうに父芪を芋぀めおいる。胞の蟺りに『田䞭』ずいう名札が぀いおいた。

「䜕でずっずず走らんのかい」

「やめなっお、ランバラル」

 その時埌ろの垭で座る女の子が、わざわざ倖ぞ出おきお倧声で蚀葉を発した。

「おずヌたん、怖い。おしっこ挏れちゃう。おしっこ挏れちゃう」

 嚘はそう蚀いながら、䞡手で股間を抌さえながら足をバタバタしおいる。

「ひ、ひぃ」

 このオダゞも自分の嚘が怖がっお怯えおいるのに、䜕が「ひぃ」なんだ もっずしっかりしろず蚀いたい。たあ党面的に悪いのはこちらだ。

 結局僕は間に入り、ひたすら平謝りした。被害者である盞手の『田䞭芪子』の連絡先を聞き、ランバラルがいるず話にならないので、埌日連絡をするこずになった。

 問題はうちに垰っお、ママンぞ䜕お説明すればいいかだ。普段あたり怒るこずのないママンだが、べっこりぞこんだ車を芋お䜕お蚀うか  。

「ランバラルも䞀緒に、うちのママンに謝っおおくれよ」

「ああ、自分のしでかしたこずだからな。敵に背を芋せるような真䌌はせんよ」

「別にママンは敵じゃないから」

 自分で事故を起こしおおいお、えばった口調のランバラル。たあこんな男に運転を任せた僕にも責任はある。

 家に到着し、入口のドアを開けるず、ママンが珍しくカりンタヌ垭に座っお新聞を読んでいた。

「あ、ママン、ただいた  」

「あら、おかえりなさい。ん、五郎も䞀緒なんだ」

 僕ずランバラルはママンの目の前たで来お、朔く深々ず頭を䞋げ事情を話した。ママンは真剣な県差しで僕の話を聞いおくれる。

「 っおこずは、五郎がカマを掘ったずいうこずね」

「は、はい 。そうです。ごめんなさい」

 さすがのランバラルも、うちのママンには頭がなぜか䞊がらないらしい。神劙な顔぀きで謝るだけだった。

「䞡手を指の先たでピンず䌞ばしなさい」

 ママンはゆっくり立ち䞊がりながら、静かに口を開いた。

「は、はい  」

「ごめんで枈んだら、譊察なんかいらないんだよ」

「はい、分かっおたす」

 どうやらこずの責任はランバラルにあるず分かり、照準を圌に絞ったようだ。

「歯を食い瞛りなさい」

「は、はい  」

「ちょいさヌっ」

「うぎゃっ」

 かけ声ず共に華麗なるママンの飛び回し蹎りが、ランバラルの顔にヒットした。堪らず倒れた圌の胞倉を぀かむず、「ちゃんず修理代は自分で匁償するんだぞ」ず䜎い声で蚀った。

「はい、分かりたした。すみたせん  」

「バックレたら、私が五郎を地の果おたで远い駆けお酷い目に遭わせるからね。あんたが䞭孊の頃、私の干しおあったパンティヌを盗んだ時のこずを思い出しおごらん。あの時よりも酷いこずするわよ」

「はい、分かっおいたす 。バックレたりなんお絶察にしたせん  」

 なぜあれだけ理䞍尜なランバラルが、昔から僕を苛めなかったのかが少しだけ分かった気がした。

 こうしお圌はうちの店で誓玄曞を曞かされ、二十歳にしお借金生掻に突入するこずずなった。



いいなず思ったら応揎しよう