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擬䌌の母⑯

執筆日⑯2026幎9月26日土


同宀には䞭囜人が二人いた。

委さんずいう五十歳のおじさんず、林飛韍ずいう二十五歳の若い男である。䞭囜語をたるで分からない俺が、リン・フェむロンず呌ぶず、圌は倧いに喜んだ。

「䜕故分かた 䜕故分かた」
「うヌん、察戊栌闘ゲヌム分かる フェむロン」

「分からない分からない」
「カプコンの 、䌚瀟名蚀っおも分からないよね。えヌず、たず林は、日本語でも、りんず読むのね」

「うんうん」
「フェむロンっお蚀うのは、スヌパヌストリヌトファむタヌⅡで、ブルヌスリヌモデルのキャラで、フェむロンずいうのがいるの。だから䜕ずなく分かったんだ」

「おヌ、ブルヌスリヌ ブルヌスリヌ あちょヌ」

 ヌンチャクを振り回しおいるパフォヌマンスの真䌌をしおいるのか 圌は単玔で劙に人懐こい。名前を呌んだこずがきっかけで、劙に懐かれたようだ。

 先日釈攟されたダクザ者の原がたたここぞ残っおいたら、きっず圌もフェむロンを気に入っただろう。

 フェむロンの二倍歳の違う委さん。圌は囜に垰ったら䞭華料理の匁圓屋をやりたいず倢があるようだ。い぀も寝ながら炒飯か䜕かを䜜っおいる玠振りをしおいた。次郎に合わせたら気が合うかもな。寝た状態で宙に向かっおフラむパンを握り、おたたで䜕かを匕っかき回しおいる。あくたでも想像でそのような動きを毎晩のようにする為、非垞に滑皜だった。カメラがあれば、写真を 、いや映像を撮っおおきたいほど。

 委さんはカタコトでも倚少の日本語はできる。こっちぞ来お朝昌晩ず䞉぀の仕事を真面目に働いおいたず話す。

「どこで働いたんです」
「暪浜、䞭華街」
「ぞヌ、たたいいずころいたんですね。でも䜕で東京ぞ」

 真面目に働いおはいたが、䞀時競銬にハマり、向こうに䜏む嫁ず嚘にこっ酷く怒られたらしい。そこでもっず金をもらえる郜内ぞ来お頑匵ったらしい。
 ビザも切れおしたったので、絊料をもらい、暪浜の䞭華街にいる知り合いぞ䌚っおから垰ろうずした時、運悪く職質を受け捕たり、ここぞ。
 圌はもう、ここに䞉ヶ月もいるようだ。

「神嚁さん、向こう、匁圓箱ない。䞭で色々分かれおる匁圓箱、䞭囜ない。神嚁さん、どこで売っおる」

「うん、日本だず、合矜橋商店街たで行けばあるでしょう」
「え、どこ」

「河童橋。うん、浅草のほうですよ」
「分かんない。駄目」

 そう蚀っお委さんは悲しそうな顔をした。

 フェむロンは、どこか子䟛らしい幌い郚分が残っおいる感じで話しおいお非垞に面癜い。
 日本語をゆっくり話せば、少しは理解できる圌。
 話すのは委さんよりも酷い。

 䞀床目は二癟䞇を積んで、停留孊生のビザを手に入れたようだ。しかし、日本に到着しおすぐ捕たったらしい。

「䜕でおたえ、日本に留孊しにきたのに日本語党然できないんだ」

 そう怪したれ、停造の孊生蚌が䞀発でバレおしたい、日本の地を䞀瞬螏んだだけで匷制送還。

 二床目も䞉ヶ月持たなかった。
 新倧久保にある普通のファミリヌレストランで働き、道を歩いおいるずころを刑事に芋぀かり、職質を受け、たた捕たったのだ。運がないのもそうだが、可哀盞ずいう以倖蚀葉が芋぀からない。

 それでも飛韍は、い぀も明るく元気いっぱいだった。時には䞭囜の蚳分からない歌を口ずさみ、眠くなるず床に転がり昌寝をしおいる。

 ここ巣鎚留眮所内で䞀日に読たせおくれる本は、午前で䞉冊ず午埌で䞉冊遞べた。本の入ったプラスチックの箱を担圓たちが檻の前たで持っおきお、䞀宀から順番に本を䞉冊ず぀遞んでいく。ゞャンルはバラバラで、挫画本もあれば小説もある。雑誌だっお叀いけどあるし、゚ロ本もあった。

 い぀も俺は挫画本二冊ず小説䞀冊を遞んだ。挫画本䞉冊だず、時間を朰せないのである。

 自分で小説を曞くようになっおから、䞀切小説は読たないようにしおいた。読みたくないのではなく、読む時間があれば自分で䜜品を曞きたい。そういう状況䞋の䞭に自分を眮いおいた。
 しかしこの檻の䞭じゃ執筆掻動もできない。仕方なく時間を朰す為に小説を読んだ 、いや、目を通した感じが正解か。

 フェむロンは枕代わりになる厚い幅のある本を二冊遞び、残りの䞀冊は必ず゚ロ雑誌を持っおくる。

 そういえば匁護士の奎、あれだけ雑誌を差し入れるなんお蚀っずいお、二回しかただもらっおないな。早く送っおこないかな。毎床同じ本ばかりじゃ飜きちたう。

 たたたた睡魔が襲い寝ようずしおいる時、フェむロンが話し掛けおきた。

「か、神嚁さ。神嚁さ」

 神嚁さんず蚀いたいのだろうが、フェむロンの日本語の発音は非垞に酷い。

「ん、どうした」
「神嚁さ、やっおる やっおる」

 そう蚀っおフェむロンは股間の蟺りに右手を軜く握り、䞊䞋に玠早く動かした。マスタヌベヌションしたのかず聞きたかったのだろう。

「する蚳ねえだろ」

 留眮所のトむレは各郚屋の片隅にあり、䞀応ドアは぀いおいるもののガラスがあり䞭は䞞芋えである。䟿所に籠もっお悪さや手淫をしないよう譊察偎の防埡策でもあるのだ。

「俺、六回。ここ、来お、六回、やった」

 人目もはばからず飛韍は笑顔で話す。この䞭に数ヶ月もいるのできっず我慢できなかったのだろう。
 でも圌が䜕回オナニヌしたかなんお、俺にはどうでもいい事だけは確かである。

「はいはい 。フェむロン、俺、ちょっず眠いから寝かせおよ  」

そのたた目を閉じるず、フェむロンは俺の膝蟺りに自分の頭をコテンず乗せ、暪になった。䜕故か人肌でも恋しいのか。男に膝枕など気持ち悪いものであるが、無邪気な飛韍の顔を芋おいるず幌い子を寝かせおいるような感芚になった。
 隣で同じように寝転がりながら、委さんがこちらを向いお埮笑んでいた。

 そんな飛韍に、面䌚ぞ来た人間がいた。

「おい、䞃番。接芋だ。出ろ」

 担圓がフェむロンを呌びに来る。誰か友達でも来おくれたのだろうか圌は俺のほうを芋お、䞀瞬だけニダリず䞍敵に笑う。

 郚屋で暪になり倩井を眺めおいるず、䞉分もしないでフェむロンは垰っおくる。

「どうした、フェむロン」

「歊狭、歊祖、小韍 。䞉人、友達、面䌚、来た。でも、日本語、みんな、駄目。譊察、おたえ、垰れ。垰っおきた」

 可哀盞に  。

 たずもに日本語の話せないフェむロンは、䞭囜語での䌚話を蚱されなかったのである。

 匁護士以倖の面䌚は、垞に担圓の譊官が䞀人暪に付き添う。そこでどんな䌚話をしたのか、䞀語䞀句挏らさず曞くようなのだ。䞭囜語だず分からないので、その堎で面䌚は打ち切りにされたのだろう。

 午埌になり、本を遞ぶ時間がやっおきた。い぀もなら楜しそうに本を物色するフェむロン。しかし今日ばかりは郚屋から出ようずもしない。よほど先ほどの面䌚での担圓の察応に、腹を立おおいたのだろう。

「ほら、フェむロン。゚ロ本だぞ」

 少しでも元気付けようず俺ぱロ本を借りおきたのだが、フェむロンは「神嚁さ、いい 。ありがず、ありがず」ずだけ短く答えるず、その堎でふお寝しおしたった。


 昌を少し過ぎた頃だった。店のドアが開く。

「いらっしゃいた  」

 顔を䞊げた瞬間、僕の身䜓が固たった。

「  神野」
「久しぶりだな、時田」

 神野は前ず倉わらない顔で笑っおいた。

「䜕の甚」
「䜕の甚っお、客だよ。コヌヒヌでも飲もうず思っおな」

「悪いけど、うちの店は満垭なんだ」

 店内には、ただ空垭がいく぀もある。神野もそれを芋おいた。

「満垭」
「そう。予玄が入っおるんだよ」

「誰もいないじゃねえか」
「これから来るんだよ」

「そうか  」

 神野は店の䞭を芋回した。

「神嚁はいないのか」
「おたえには関係ない」

「そうか」

 それだけ蚀っお、神野は笑った。

「じゃあ、たた来るわ」
「もう来なくおいいよ」

 神野の足が止たる。

「  䜕だっお」
「だから、うちの店にはもう来なくおいい」

「時田、お前  」
「悪いけど、僕はおたえず話すこずなんお䜕もないから」

 神野はしばらく僕を芋おいた。やがお、薄く笑う。

「そうか。分かったよ」

 そう蚀っお店を出おいった。ドアが閉たる。
 僕はしばらく、そのドアを芋぀めおいた。

 神野がたた店ぞ来た。倖から芋おいるだけでなく。神嚁がいなくなったこずを確認するために。
 僕はカりンタヌの䞭で、ゆっくり息を吐いた。

 しばらくしお、たたドアが開く。

「いらっしゃいたせ  」

 反射的に声を出した。
 そしお、蚀葉を倱う。

 たた神野だった。
 だが、今床は䞀人ではない。

 その埌ろに、もう䞀人男が立っおいる。

「  内沢」

 思わず名前が口から出た。
 高校時代、僕らの呚りで幅を利かせおいた男。
 あの頃の蚘憶が、䞀気に蘇っおくる。

 神野は䜕も蚀わず、僕の顔を芋おいた。内沢は、店の䞭をゆっくり芋回しおいる。

「久しぶりだな、時田」

 内沢が蚀った。

「  䜕しに来たの」
「䜕っお、昔の仲間に䌚いに来ただけだよ」

「だったら垰っお」
「そう簡単に蚀うなよ」

 神野が暪から口を挟む。

「さっきは俺䞀人だったから、話を聞いおもらえなかったみたいだからな」
「話すこずなんおないっお蚀っただろ」

「たあ、そう蚀うなっお」

 神野は笑っおいた。内沢は䜕も蚀わない。
 ただ、僕を芋おいる。

 昔ずは違う。
 高校生だった頃の内沢ずは、䜕かが違う。
 それだけは、はっきり分かった。

「神嚁がいないっお、本圓なんだな」

 神野が呟く。

「  だから䜕」
「別に」

 神野はティッシュで錻をかみ、カりンタヌの䞊に攟り投げる。

「ただ確認したかっただけだよ」

 僕はカりンタヌの䞭で、二人を芋た。
 神嚁から蚀われおいた。
 神野や倧田が来たら、譊察を呌べず。
 だが、今はただ二人ずも䜕もしおいない。

 それでも僕は、厚房の奥に眮いおある包䞁のこずを思い出しおいた。
 僕は内沢から目を離さなかった。

「か、垰っおもらえたせんか  」
「あ、おたえよ 客に向かっお䜕もしおねえのに垰れだ」

 内沢は腕たくりをしお、手銖たでびっしり入った刺青を芋せおくる。ダクザになったずいう噂は本圓だったんだ。

「りッチン、ここっお喫茶店だからさ、ずりあえずコヌヒヌもらおうぜ」
「ああ、のど也いたしな。おう、次郎。アむス」
「おい、俺もアむス」

 今譊察を呌んでも、客ずしお来おいるだけ。仕方なく僕はグラスを甚意した。

「はい、アむスコヌヒヌです」

 内沢は䞀口飲むず、その堎で吐き出す。そしお僕にグラスごずぶ぀けおきた。

「な、䜕をするんですか」
「おたえ、こんなク゜たずいもん客に出しやがっおよ」

 たた別の角床から僕にコヌヒヌが掛かる。

「おい、時田。おたえ、俺にもたずいコヌヒヌをわざず出しやがったな」

「  」

 癟十番通報しよう。携垯電話を぀かむ。電話を掛けようずした時、内沢から手銖を぀かたれた。

「腹枛っおんだ。䜕か䜜れよ、テメヌ」

 この男が知子ず貎子を  。

「嫌だ」
「あ」

 こい぀らが知子を殺した。
 指先で包䞁を探る。

 その時ドアが開いた。

「マスタヌ、お腹枛っちゃったヌ」
「今日はミヌト゜ヌス倧盛り䞉぀で」
「あれ マスタヌ」

 い぀もの高校生䞉人組。
 カりンタヌに座るダクザを内沢を芋お、声を倱っおいる。

「きょ、今日はえ、営業しおなくお」
「次郎 違うだろ ミヌト゜ヌスの泚文入ったんだから、ずっずず䜜れや、五人分」

「あ、あの僕たちは、や、やっぱり  」
「おいおい、坊䞻。俺がおたえらの分も奢っおやるよ。座れ」

「は、はい」

 神野が入口ぞ行き、怅子を眮き換えた。誰も出さないずいうアピヌル。もしあの子たちに䜕か被害が及んだら  。

「䜜る 䜜るから絶察䜕もしないで」
「聞き分け良くなったじゃねえか、次郎」

 倧人しく背を向け、麺を茹でだした。
 どうしたらいい 譊察を呌んだずころで間に合うはずがない。神嚁は留眮所、来れるわけがないのだ。

 タオルで身䜓に掛かったコヌヒヌを拭う。

「早く䜜れや、この野郎」

 氎を掛けられた。ごめんね、高校生の子たち。せっかく来おくれたのに。
 五人分のミヌト゜ヌスを眮く。

 䞀口食べた神野は、床に皿ごず萜ずす。

「たずい。たず過ぎるわ、おたえのパスタ」

 ミヌト゜ヌスぞフォヌクも぀けず、皿ごず僕に向かっお投げおくる内沢。

「神野の蚀う通り食えたもんじゃねえな。胃がおかしくなっちたうわ。医者行かねえずな」
「そ、そんな  」

「ほら、次郎。慰謝料払え。同玚生のよしみで五䞇円でいいよ。そのぐらいなら払えんだろ あ」

 貎子を止めずいお本圓に良かった。僕はレゞから五䞇円を取り出し、テヌブルに眮いた。

「たた来るわ、次郎。腕䞊げずけよ」
「おたえ、センス無さ過ぎだよ、時田」

 床ぞ唟を吐いおドアを開ける神野。

 高校生たちは誰も動かない。圓たり前だ。
 内沢たちがいなくなるのを確認しおから声を掛けた。

「あ、あの 、本圓にごめんなさい。あ、新しく䜜り盎すから」

 黙っお店を出おいく䞉人組。
 僕はシャッタヌを閉めるず、床掃陀から始めた。


 䞉回目の地怜。今日も俺は護送車に乗っお東京地方怜察庁ぞ向かう。

 牢屋を出お、䞀宀の前を通る。五番の乞食が鉄栌子にしがみ぀いお俺を芋おいた。

「五番 。俺、地怜行っおくるね」
「おい、勝手に話すな」

「え、俺出るの ここ出るの」
「ううん、違うよ。出るのは、俺だけ。五番はただ、そこ」

「え、座っおればいいの 座っおればいいんでしょ だ、駄目」
「党然駄目じゃないよ。ゆっくり奜きに座っおいればいいんだよ。じゃあね」

 俺は笑顔で乞食に埮笑んだ。

「話すなっお蚀っおんだろうが」

 留眮所の担圓の怒声が飛ぶ。

「ただ、ここ、いれるの」
「うん、ただ倧䞈倫。ただ、ご飯、䞉回タダ。お颚呂、五日で䞀回タダ。分かる」

「ん、うん 。ここにいればいいんでしょ だ、駄目」
「駄目じゃないよ。いいんだよ。ここにいればいいんだよ」

「行っちゃうの ここ、いちゃ、だ、駄目」
「ううん、駄目じゃないよ。五番はただここにいおいいんだよ」

 乞食ず話をしおいお、䜕故か無性にせ぀なくなる。倧袈裟なゞェスチャヌも含め、䜕ずか分かっおもらうよう䌚話をした。

「立぀の 駄目」
「たた倜になったら戻っおくるから。倧䞈倫だよ」

 い぀もなら「喋るな」ずうるさい担圓も、黙ったたた俺ず乞食の䌚話を眺めおいた。
 乞食は寂しそうな衚情で、俺を芋送っおくれた。

 倖ぞ連行され、護送車ぞ乗り蟌む。

 窓の内偎には鉄栌子。
 倖郚から内郚が芋えないようプラむバシヌ保護や安党確保のために、カヌテンや窓にスモヌクが貌られおいる。

 䞀芋倖から芋るず䜕も芋えないが、䞭からは普通に景色は芋れた。窓から芋える若い女を芋るず、どの容疑者たちも目で远う。それぞれが勝手な劄想で頭がいっぱいになっおいるはずだ。
 過ぎ行く飲食店の看板を芋ながら、出れたら䜕を食べようか考える。

 点呌が終わるず、お決たりの固い怅子の䞊で埅機しお、ひたすら時間が終わるのを埅぀。今日は頌むから䞋痢になる奎出ないでくれよな。

 あ、今日は倕食が五番ず䞀緒じゃないから、匁圓のおかず分けおあげられないなあ  。

「巣鎚、神嚁」
「はヌい」

 䞉床目の怜事ずの察面。

「おい、神嚁 キサマが週に䞀回のアルバむト ふざけんなよ」
「だっお本圓にそうなんですよ。オヌナヌの束本さんも、同じ事蚀っおたせんでした」

 小銬鹿にするようにおどけお蚀っおやった。
 叩けば埃が出る身䜓でも、埃を出さないようにするやり方もある。叩いおも埃が出なければ、この囜では起蚎にはならない。

 様々な知略を駆䜿しお、俺は起蚎たで持っおいかせなかった。怜事は俺の顔を芋る床、悔しそうな顔をした。

 もうちょいで二十二日。俺を囜が拘束できる暩利もあず僅か。
 ぞぞ、埅っおいろよな、次郎。


 翌朝。
 い぀もの時間に目が芚めた。

 垃団から起き䞊がり、店の䞭を芋る。
 ただ悪倢を芋おいるようだった。

 昚日、神野ず内沢に荒らされた店。床は掃陀した。割れた皿も片付けた。テヌブルも拭いた。
 それでも、昚日のこずが頭から離れない。

 今日、営業するか  。

 しばらく店の入口を芋぀めおいた。

 神嚁はいない。
 神野ず内沢は、たた来るず蚀っおいた。
 だったら、店を閉めおいたほうがいいのかもしれない。

 でも、ここは僕の店だ。
 䜕で僕が逃げなきゃならない

 そう思う䞀方で、昚日の高校生䞉人の怯えた顔が浮かんだ。
 あの子たちが、たた来おくれるだろうか。さすがに無理だ。

 そんなこずを考えおいるず、携垯電話が鳎った。

「もしもし」
「次郎」

 盎暹だった。

「うん。どうしたの」
「母ちゃん、退院したよ」

「え」

 思わず声が出た。

「本圓」
「うん。昚日退院した」
「良かったじゃん」

 久しぶりに、心から嬉しいず思った。

「それでさ  」

 盎暹の声が少し䜎くなる。

「次郎に話したいこずがあるんだ」
「話したいこず」

「うん。電話じゃなくお、盎接話したい」
「分かった。い぀でもいいよ」

「今から行っおいい」

「今から」
「駄目」

「いや、駄目じゃないよ」

 店を芋る。
 昚日のこずが頭をよぎった。
 それでも、盎暹が来るずいうなら、店を開けよう。

「じゃあ埅っおるよ」
「うん。すぐ行く」

 電話を切った。
 しばらく携垯電話を芋぀める。

 圌の母芪が退院した。
 それは本圓に良かった。

 だけど、盎暹がわざわざ「話したいこずがある」ず蚀っおいる。
 䞀䜓、䜕だろう。

 僕は立ち䞊がった。
 店の䞭をもう䞀床芋枡す。

「  やるか」

 昚日のこずを考えおいおも仕方がない。
 シャッタヌを開ける。

 朝の光が店の䞭ぞ差し蟌んできた。

 テヌブルを拭き、怅子を䞊べる。コヌヒヌ豆を確認する。
 昚日たでず同じように、店を開ける準備を始めた。

 神野が来るかもしれない。
 内沢がたた来るかもしれない。

 それでも今日は、盎暹が来る。
 僕はい぀もの堎所に立っお、客を埅぀こずにした。

 䞀時間もせずに盎暹は来おくれる。幞い客は誰も来なかったので、たたあい぀らが来る前にシャッタヌを閉めた。

「おい、時ダン。そんなわざわざ」
「いいんだ、これで。話したいこずがあったんでしょ」

「うん  」
「おばさんのこずでしょ」

 答えずずも圌の衚情で䜕ずなく分かっおしたった。圌の涙を芋た瞬間、二人で静かにしばらく泣いた。

「お願いがあるんだ  」
「䜕でも」

「母ちゃんさ、次郎の顔芋たがっおいるんだ。でもさ、抗癌剀のせいなのかな。芋おもさ、驚かないでほしいんだ。む、無茶を蚀うようだけど、できれば笑顔で接しおほしい」

「  」

 もちろんず蚀おうずしお声が出ない。しっかりしなきゃ。本圓に悲しいのは本圓の血が繋がった圌なんだから。僕はい぀だっお名前の通り二の次。それでいい。

「た、頌むよ 、次郎  」
「うん  」

 明日、圌の家に行く玄束をした。
 この日、店を開けずにそのたた眠った。


 明日でずうずう二十二日。
 前日になり、担圓の出川刑事がこっそり内緒で教えおくれた。

「明日は五本だず思うぞ 。倚分だぞ。倚分  」

 結果を知っおいおも、譊察官は容疑者に情報を掩らしおはいけない。だから向こうの出すヒントで、こっちがある皋床勝手に解釈する必芁がある。

 五本  。

 ぀たり明日、俺は眰金五十䞇で起蚎されずに嚑婆に戻れるずいう事だ。自分の思うよう起蚎できず、怜事の奎、悔しくお堪らないだろうな  。

 俺は自然ず口元がニダけた。実際にこうしお捕たっおしたったから詊合には負けたが、勝負には勝ったずいったずころだ。

 このギリギリたで留眮所に閉じ蟌められた二十二日間を振り返る。
 最初の二日間は刑事拘留で取調宀にお調曞を取る。
 あずは地怜で十日拘留を二回。
 合わせお二十二日間で、起蚎になるかどうかが決たるのだ。

 留眮所の䞭は退屈で窮屈だったが、ここに入った事は本圓に勉匷になった。匷がりでも䜕でもなく、いい経隓ができたず思う。俺が捕たった事で心配をかけたみんなには申し蚳ないが、囜が決めたくだらない法に違反しただけで悪い事をしたずいう気持ちはどこにもなかった。

 停めおはいけないずころに駐車をしお芋぀かっおしたった。その皋床の事ず倉わらないず感じる。

 さお最埌の留眮所の倜だ。

 二十二日ぶりに黒いスヌツを着お、䞡手に手錠をはめたたた鉄栌子の倖を歩く。他の郚屋の仲間ぞ笑顔で簡単な挚拶を枈たせる。みんなも笑顔で「頑匵っおね」ず玠盎に祝犏しおくれた。䜕を頑匵るのか分からないが、みんなの気持ちはずおも嬉しい。ただしばらく檻の内偎で時間を過ごすようなのに笑顔で芋送っおくれるなんお。

 䞀宀の前を通る。五番の乞食が鉄栌子にしがみ぀いお俺を芋おいた。

「五番 。俺、今日でここ、出るの。じゃあね、バむバむ」
「え、俺出るの ここ出るの」

 俺は笑顔で乞食に埮笑んだ。

「ただ、ここ、いれる」
「うん、ただ倧䞈倫。分かる」

「ん、うん 。ここにいればいいんでしょ」
「いいんだよ。ここにいればいいんだよ」

「行っちゃうの いちゃ、だ、駄目」
「ううん、でもごめんね、俺はバむバむなんだ。五番はただここにいおいいんだよ」

 乞食は寂しそうな衚情で、俺を芋送っおくれた。
 留眮所を出るず、担圓の出川刑事が俺に話し掛けおくる。差し入れでもらった掋服類をどうするか。凊分するか持っお垰るか。

「䜿っおいたゞャヌゞずかの衣類。䞀宀の五番に党郚あげお䞋さい。いいでしょ、これぐらい」

「分かった。ありがずな」

 もうこれで心残りは  。

「あ、あずですね  」
「䜕だ」

「五番に䞀回でいいから、カレヌラむスの差し入れしおもいいですか」

「気持ちは分かるができないんだよ  」
「䜕でですか」

「出る人間が䞭の人間に差し入れは、法埋䞊犁止されおいる」
「じゃあ、二千円だけ枡しおおくから五番が元々持っおいたっお事にすれば  」

「こっちの立堎も分かっおくれ 。最初の時点で金銭はいくらかっおすべお蚘録に残っおいるんだ。正盎おたえの気持ちは嬉しいよ。ありがずう。でも譊官である以䞊、芏則がすべおなんだ  」

「  」

 やっぱり公務員は芏則芏則かよ。たあしょうがないか。
 ボ゜ッず呟く声が聞こえる。

「これは独り蚀だぞ 。運動の時、私のポケットからタバコが䞀本ぐらい、五番の前にこがれおしたう事はあるかもしれないがな  」

「ありがずう、出川さん」

 俺は笑顔で手錠を掛けたたた、護送車ぞ向かった。

「もう捕たるような真䌌、すんなよ」
「分かっおたすよ、出川さん。お䞖話になりたした」

「それずな、圌女ず籍を入れおやるんだぞ」

「たたそんな事蚀っおるし 。あ、出川さん、そうそう  」
「ん、䜕だ」

「俺、小説曞いおるっお蚀ったじゃないですか」
「ああ、どうした」

「あずで、俺の曞いた凊女䜜『川越デクレッシェンド』を巣鎚譊察眲の生掻安党課ぞ出川さん宛おでプレれントしたすよ」

「䜕だ、おたえ、本圓に小説曞いおたのか」

「ひっでえなあ 。嘘なんお぀きたせんよ。それに俺の曞いた小説、出川さんに芋おもらいたかったんですよ」
「そうか 。ありがずな」

「出川さんには、よくコヌラ奢っおもらったじゃないですか」
「そうかそうか  」

 俺は担圓の出川刑事ずガッチリ握手をしお、護送車に乗り蟌んだ。これから地怜に向かい、晎れお釈攟っお流れだ。

 䞡手に手錠、そしお犯眪者は䞀本の瞄で繋がれながら護送車ぞ乗り蟌む。
 い぀もず違うのは手荷物がある点。これでようやく釈攟されるのだ。

「おい、おたえのカバンはここに眮いおおくぞ。䞭身は䜕が入っおいるんだ」
「パ゜コンですよ。乱暎に眮かないで䞋さいよね」

「パ゜コン 分かった。こういう颚に眮いおおくからな。これで壊れないよな」

 二千四幎圓時、パ゜コンを持っおいる人間がただそこたで倚くなかったせいか、譊察官は劙にビクビクしおいた。䞀台二十䞇ぐらいはする。
 䞀般人では浞透しおいるパ゜コンも、歌舞䌎町では珍しく、増しおや犯眪者たちが集う地怜ぞ行く護送車の䞭では皀だったのだろう。

 少しゞャブの効いたブラックゞョヌクでも蚀っおおくか  。

「別に壊れおもいいっすよ」
「え、䜕でだ」

「その時は囜の金で匁償しおもらいたすから」
「ふざけんじゃねえ」

 護送係の譊察官は顔を真っ赀にしお怒っおいた。それを芋お俺たち犯眪者たちは倧笑いする。

 護送車の金網越しに芋える街の颚景。い぀だっお芖線は街を歩く女、そしお食堂やラヌメン屋、レストランに釘付けだった。結局のずころ、男の本圓に欲するものっお女ず食い物なんだよなあ。

 女を口説く為に男は無理をしお芋栄を匵る。芋栄を匵るず蚀う事は、金を䜿う。よっお経枈は動く。今の䞖の䞭、男がしっかりず金を皌げない状況だから、こんな䞍況になっちたっおんのかもしれないな。

 若い女が楜しお倧金皌ぐシステムを䜜り過ぎだ。それを容認しおいる銬鹿な政府。ただただ䞍況は続きそうだな。たあ囜の経枈事情なんおどうだっおいいや。

 もうじき肉が食える  。

 頭の䞭は、血の滎るステヌキでいっぱいになっおいた。

 前に護送車であの五番ず䞀緒に乗った時を思い出す。

 䞀本の瞄で繋がれた俺ら眪人たちは、地怜に着くたで䞀切の私語を犁止される。非垞に退屈だった俺は五番を芋るず、圌もこっちを無蚀のたたゞッず芋぀めおきた。譊官がこっちを芋おいない隙を芋蚈らい、俺がガシャッず音を立おながら䞍意に䞡腕を䞊げるず、圌も同じように物真䌌をしおくる。
 呚りの眪人たちはそのやり取りを数回芋お䞀気に吹き出し、車内にいた譊官は党員に「笑うな 静かにしろ」ず怒鳎っおいた。

 地怜の垰り道、倧塚、池袋の連䞭を先に䞋ろし、残り巣鎚メンバヌだけになった時、珍しくその譊官は俺を芋ながら「今日はありがずうな」ず意味䞍明の台詞を蚀っおくる。

「え、䜕でお瀌なんか 䜕か俺したしたか」
「いや 、たあ、本圓は私語なんお犁止なんだけどさ 。こんな䞖知蟛い商売だろ、うちらは。ああいう颚に車の䞭でドッず笑いが起きるなんお滅倚にない事なんだ。䜕か嬉しくおな  」

 そう照れ臭そうに話す譊官。

 留眮所生掻を送っお䞀぀倉わった事がある。今たでの俺は、譊察を䞀぀の敵察組織ずしおずっず憎んでいた郚分があったが、実際は䞀人䞀人の人間の集合䜓に過ぎないのだ。このように人間臭く奜感が持おる奎だっお䞭にはちゃんずいる。
 こんな感情を持おるようになったのも、俺を担圓した出川刑事のおかげかもな。

「あ、雚  」

 五番が倖を眺めながらポツリず呟く。

「ん、雚 党然降っおないじゃないか。䜕を蚀っおんだよ」

 笑いながら譊官が蚀うず、五分ほどしおザヌザヌぶりの雚が降っおきた。これには俺も驚いたが、普段路䞊で生掻しおきた圌にずっお、倩候の倉化を感じ取るのは圓たり前の事だったのかもしれない。

 あ、五番にどうにかしおカレヌラむス、ご銳走しおやりたかったな  。

 そんな事を思い出しおいる内に、護送車は地怜に到着する。䞀本の瞄で繋がれたたた地䞋ぞ向かう階段を降りた。

 よく芚えおおこう。い぀か自分の手でこの事を䜜品ずしお曞くたでは  。

 数名の譊官ず俺ら眪人たちしか通らない通路を黙々ず歩きながら、地䞋の集合堎所ぞ向かう。薄暗い䞭を進み、䜕床か巊右に曲がる。䞀列瞊隊で指瀺されながらだから、ただ黙っお歩くのみ。

「池袋方面、総員二十䞉名、到着」

 い぀もの集合堎所ぞ行くず、俺たちはベンチに座らされ、自分の名前を呌ばれるたで倧人しく埅぀。

「巣鎚、神嚁」
「はい」

 呌ばれた時だけ立ち䞊がり、返事をする。それからたた硬い朚のベンチがある檻の䞭ぞ振り分けられた。どのように区別されおいるのか知らないが、ここでは別々の者同士が適圓に振り分けられおいるような気がする。
 するず向かいに座る男が立ち䞊がり、牢屋に近づく。

「看守さん 、玙を」

 非垞に嫌な予感がする。案の定、男は片手錠になり、トむレットペヌパヌを䞡腕でクルクルず巻き出した。

 レッツ、ショヌタむム。これから異臭挂うりンコタむムの始たりだ。他人がク゜をしおいる空間にただ黙っお座っおいるのは、拷問以倖の䜕ものでもない。
 それでも文句䞀぀蚀う暩利すらない俺たち。堅い朚のベンチが尻に食い蟌んで痛い。

 はあ 、毎床の事ながら、ここぞ来る床悪い事はしちゃいけないっお反省する。

 ブリッ 、ブリリ  。
 ゲッ 、あの野郎、ひょっずしお䞋痢かよ  。
 ブリッ 、ブリュリュ  。プヌ  。

 もう ク゜したら早く氎で流せよ、この銬鹿っ そうやっお怒鳎り぀けたいが、それさえも犁じられおいる俺ら。郚屋の䞭にいる党員が手錠を掛けた䞡腕を䞊げ、黙っお錻を぀たんでいた。最埌の最埌でずんだ味噌が぀いたもんだ。

 地䞋鉄に乗っお池袋駅たで向かう。たずは癟合子に連絡を入れないず。

 返しおもらった携垯電話を取り出し電話を掛けようずするず、いきなり着信が入る。知らない番号だった。末尟がなんで、どこかの譊察眲ずいうだけは分かる。

 釈攟されたばかりなのに䜕故 これ以䞊やたしい事などないので、電話に出た。

「あ、こちら川越譊察眲です」
「は」

「川越譊察眲なんですが。神嚁韍䞀さんですよね」
「はあ、䜕でしょうか」

「ご家族の方から捜玢願いが出おたしお、それで電話をしおみたずころなんです」
「捜玢願い 䜕で あ、なるほど」

 俺が捕たっおから二十二日間経぀。倧方匟の韍也蟺りが心配しお譊察にっお事も考えられる。

 それにしおも぀いさっきたで巣鎚譊察眲にいたのに、䜕もこい぀ら分からないのか。適圓に嘘を぀いおおこう。

「そうなんですか。ちょいず仕事で倧阪のほうぞ行っおたしおね。それで出発する前知人のずころに泊めおもらったんですが、その時携垯を忘れおしたったんですよ」

 よくもたあ俺もこうポンポンず出おくるもんだ。

「ああ、そうですか」
「たあ、そんな蚳なんで捜玢願いは取り消しずいお䞋さい」

「かしこたりたした」
「お隒がせしお申し蚳ないですね。お疲れさたです」

 あずはどうするか ずりあえず歌舞䌎町ぞ向かうずしお、家でも倧隒ぎになっおいる可胜性がある。譊察に捕たっただなんお、絶察におじいちゃんだけには知られたくない。韍也に電話を入れおおくか。

「あ、兄貎」
「おう、久しぶりだな」

「䜕をやっおたんだよ ずっず連絡぀かないからさ、家じゃ倧隒ぎだよ」
「悪かったよ。仕事で倧阪ぞ行っおおさ、携垯こっちに忘れおしたったんだ」

「家じゃ兄貎宛おにオレオレ詐欺の電話あっおさ」
「はあ、オレオレ詐欺 䜕だそりゃ」

「パヌトの緑さんいるじゃん」
「ああ、で」

「緑さんが電話を取ったらいきなり兄貎が事故ったっお。それで芪父に『韍ちゃんが事故っちゃったヌ』っお倧袈裟に蚀うもんだから芪父も焊っお出おさ」
「うん、それで」

「盞手が急いでいるずころいきなり突っ蟌たれ、それで家に電話をしたずね。で、芪父もパニくっおいるからさ、俺が代わったの。たず状況を聞こうず思っおさ」
「ああ」

「そしたら知り合いの車屋に芋せたら結構いっちゃっおるから、ずりあえず癟䞇円を振り蟌んでくれっお」
「ぞえ」

「で、俺も車屋だから、どこにそんな事故したばかりで査定を出せるずころがあるのっお聞いおさ。そんな車屋があるなら逆に玹介しおほしいっお。それで話にならないから兄貎を出しお䞋さいっお蚀ったんだ」
「うん」

「そしたらおたえの兄貎はブルブル震えちゃっお電話で話せる状況じゃないなんお蚀うからさ。ああ、じゃあそれ兄貎じゃないっすねっお。元々嘘だず思っおたから色々぀っ蟌んだら、盞手、䜕も蚀えなくなっちゃっおね。向こうから電話を切っちゃったんだ。で、オレオレ詐欺なんだっお分かっお。でもそういえば兄貎を芋た人間が誰もいないっお話になっおさ、どっかで無茶しおさらわれお監犁されおんじゃねえのっお捜玢願いを出したんだよ」

「銬鹿か 。俺が䜕で換金なんおされなきゃいけねえんだよ。今さっき川越譊察から電話あったから、取り䞋げずいたよ」

「でもさ、連絡ぐらい぀けるようにしずいおくれよ。兄貎の仲がいい先茩の坊䞻さんや月吉さんずかに聞いおも分からないっお蚀うしさ。倧隒ぎだったんだぜ」
「悪かったよ。䞀本電話をしずきゃよかったな」

「坊䞻さんずかも心配しおたから連絡しずいたほうがいいよ」
「ああ、すぐするよ」

 電話を切っお坊䞻さんや月吉さんぞ掛ける。みんな、連絡぀かずの俺が、もうずっくに殺されたんじゃないかず倧隒ぎだったらしい。

 匟の韍也に本圓の事を蚀えなかったのは、おじいちゃんの耳に入るず困るからだ。譊察のご厄介になんお倖聞悪いだろうし、いらぬ心配を掛けおしたう。なので仕事で倧阪にずいう線は厩せない。

 坊䞻さんだけには真実を䌝え安心させた。

 そういえば䞭に入っおいる時、癟合子に亀田先生ぞ連絡しずけっおメヌルしおいたけどうたく蚀い蚳できたかな 電話をしおみるず、タむミング良く先生が出おくれた。

 事情を話す。

「䜕だ、この野郎 。たあ、これはうちの女房や由銙には蚀えないなあ。俺ずおたえの話だけにしずこう。いきなりおたえの圌女から電話あったから、䜕かず思ったよ」

 亀田先生はい぀たでも、ブツブツ文句を蚀っおいた。

 さおず、明日は次郎の店でも顔を出すかな。電話でも入れずくか。
 あれ、さすがにもう充電がないか。


いいなず思ったら応揎しよう