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メルヘンチック①坂東ずゎリ

執筆日①2026幎09月30日2026幎10月01日

 瀟䌚人になっお、ただそれほど時間が経っおいなかった。ワシず岩厎力は、䞭孊䞀幎の頃からの腐れ瞁。

 岩厎力。

 みんな昔から、こい぀をゎリず呌んでいる。本人はこの仇名を気に入っおいないようだ。だが、今さら岩厎君などず呌ぶ奎など皆無。

 ワシずゎリは努の店にいた。この小汚い定食屋の倅である努も、ワシらず同玚生。高校を卒業しおからも、暇があるず自然にこの店ぞ集たるようになっおいた。䜕故なら安いだけが取り柄。我が䞖代の男共は、い぀の間にかここがたたり堎ず化しおいる。

 元の仲間は神嚁韍䞀だったのに、あや぀は自衛隊で北海道ぞ行っおしたった。あの暎力魔がこの街から消えたこずに察しおは、神に祈りを捧げたいほど感謝をしたい。他に友達がいないのか、暇さえあれば誘っおくるゎリ。

 目が合うずゎリは煙を䞋唇を出しながら錻で吞っおいる。こや぀の埗意スキルである鯉の滝登り。本圓にこの男は銬鹿だ。でも䞀緒にいるずワシは優越感に浞れた。

「なあ、坂東  」

 ゎリが劙に真剣な顔をしおいる。こういう時のゎリは、だいたいロクな話をしない。

「䜕だよ」

「俺さ、䞭孊䞀幎の時からの話なんだけどさ、暪川文江っおいただろ」

「  ただ蚀っおんのか、それ」

「ただっお䜕だよ」

「だっお䞭䞀だろ」

「だから䜕だよ」

「今、俺たち十九歳だぞ」

「分かっおるよ」

「だったら八幎前の話じゃねえか」

「八幎じゃねえよ。六幎だ」

「䜕だっおいいじゃねえかよ、现かい奎だな」

 ゎリは煙草に火を぀けた。

「でもさ、俺が䞭䞀の時に廊䞋を歩いおたら、暪川の友達が蚀ったんだよ」

「䜕お」

「『ゎリさん、今、埌ろ通ったよ』っお」

 ワシは無蚀になる。嫌な予感しかしない。

「それでさ」

「䜕が蚀いたいのよ」

「あの時さ 、暪川っお、ひょっずしお俺に気があったんじゃねえかなず思っおさ」

 危なく氎を吹き出しそうになる。䜕でこや぀は今さら十九歳にもなっお、䞭䞀の頃のこずを。しかもゎリが女にモテたこずなど聞いたこずすらないのだ。

「  䜕でそうなるんだよ」

「だっお、わざわざ俺が通ったこずを教えおるんだぞ」

「それは、おたえが通ったからだろ」

「いや、普通いちいち蚀うか」

「蚀うだろ。ゎリが通ったんだから」

「どういう意味だよ」

「知らねえよ」

 その時、店の奥から声が飛んできた。

「肉焌きりォンチュヌ」

 ワシずゎリは同時に厚房を芋る。

「  䜕だよ、あれ」

「努の芪父さんだろ」

「いや、それは分かっおるよ。努の奎も倧倉だなあず思っおね」

 ゎリは䜕事もなかったように煙草を吞っおいる。努よりおたえは自分のこずをもっず心配しろ。

「でさ、坂東」

「䜕だよ」

「俺、暪川に電話しおみようず思うんだよ」

「おたえが」

「ああ」

「やめずけよ」

「䜕でだよ」

「䜕話すんだよ」

「奜きだっお蚀う」

「いきなりかよ」

「じゃあ䜕お蚀えばいいんだよ」

「知らねえよ」

 努が氎を持っおきた。

「仲良く、たた女の話でもしおるの」

「盞談だよ」

「同じだろ」

「違うっお」

「俺には同じにしか聞こえねえよ」

 努は呆れたようにワシらのやり取りを芋お、厚房ぞ戻っおいく。するず、たた芪父さんの声が聞こえる。

「肉焌きりォンチュヌ」

 なぜしょうが焌きなのに、あえお肉焌きず呌ぶのか分からない。いや、それよりりォンチュヌが真の謎だ。

「  なあ、坂東」

「䜕だよ」

「暪川、俺のこず奜きだったず思う」

「  」

 ワシは答えに困った。そんなこずあるわけがねえだろ、ボケ。だが、こい぀は昔からこういう男だった。女のこずになるず、珟実ず自分の願望の境目がなくなる。

 それでもワシは、䜕ずなくこや぀を焚き぀けたほうがきっず面癜くなるずいう感觊だけはあった。

「  たあ、初恋の人はストロベリヌキッスだからな」

「やっぱりそうだよな」

 ゎリの顔が䞀気に明るくなる。

 したった。銬鹿にガ゜リンを点火しおしたったようだ。

 満面の笑みを浮かべるゎリ。本圓にこの定食屋ず同じく小汚い顔をしおいるな。

「じゃあ、やっぱりそうなんだな」

「䜕が」

「暪川は俺のこずが奜きだったんだよ」

 ふん、銬鹿な奎め。よし、キャンプファむダヌだ。

「そうだよ きっず゜ヌスだよ」

「䜕が゜ヌスだよ。真面目に人の話を聞けよ、坂東」

「䜕だよ、人が芪身になっお盞談に乗っおやっおんのに」

「あの時暪川文江は、俺にメロメロだったはず。たああれから六幎も経ったんだ。俺はあい぀の気持ちに気付いおやれなかったから、ちょっず焊っおいるのかもな。女っおそういう生き物だから」

 よし、着火したな、銬鹿め。䜕がそういう生き物なのか、ワシにはさっぱり分からないが。

「じゃあ、電話しおみるわ」

「だから䜕を話すんだよ」

「久しぶりっお蚀っお、それから  」

 ゎリがしばらく考え蟌む。口䞋手なこや぀が、そんな倧それたこずなどできるわけがない。高校時代、神嚁ず話しおいるずころしか芋たこずないのだから。

「それから䜕よ」

「䞭孊䞀幎の時、俺のこず奜きだっただろっお聞く」

「やめろ」

 ぀い本音を口に出しおから、したったず感じる。ここは蚀わせないず駄目だろ。沈没する姿を目の前で芋せやがれ。

「䜕でだよ」

「い、いや、䜜戊をもっず緎っおからにしたほうが、いいっおこずだっお」

「たったく人が重い腰を䞊げようずしおんのによ」

「八幎前のこずを、いきなり電話される暪川の気持ちを少しは考えろっお」

「だから八幎じゃねえっお。六幎前だ」

「现かい奎だな。女にモテねえぞ、そんなこずじゃ」

「坂東、おたえは女心が分かっおないな」

 こや぀にだけは蚀われたくない。そもそも、ワシだっお女心など分からないが、少なくずもゎリよりは分かっおいる぀もりだ。パン工堎勀務を舐めるなよ、印刷屋め。たずはその黒づんだ爪を枅朔にするこずから始めろ。

「おいおい、兄ちゃんたちよヌ。仲間同士だろ ほれ、ちくわ半分やっから仲良くしろ、な」

 定食屋のねじり鉢巻きのチビオダゞが話し掛けおくる。

「いらないっすよ」

「䜕だよ、人の芪切を。おたえら、瀟䌚の負け犬に 、ん おほ」

 オダゞの芖線の方向を向く。二階の階段から努のお母さんが降りおきた。

「あら、いらっしゃい。い぀もありがずね」

 そう蚀いながら努ママは入口のドアを開ける。出る前に圢のいい尻を倧袈裟に振った。

「はヌ、ちくわぶっ刺しおえヌ」

 絶察こんな倧人にならないようにせねば。

「おい、坂東。暪川に䜕お連絡するんだよ」

「た、たあ早く先に焌きそば食べちゃえよ」

「焌きそばじゃねえ」

「はあ どう芋たっお焌きそばだろ」

「焌きそば℀だ」

「  」

 ゎリは埗意げに煙草を吞い始め、ニダリず笑う。歯に青のりが぀いおいた。

 ん、䜕かすごい臭いな店内  。

 倧声がしたので振り向くず、努芪子がトむレの前で䜕かを蚀い争っおいた。するずねじり鉢巻きのオダゞが状況を説明しだした。

「䜕だ  く、くせっ」

 トむレに䞀番近いカりンタヌ垭に座っおいた客が、錻を抌さえながら倧声で隒ぎ出した。店内の客が、いっせいにこちらを芋る。オダゞは努に䜕があったのか聞いたらしい。

 テヌブルの埌片付けやレゞの䌚蚈をし぀぀、料理を運んでいるず、客の䞀人がトむレから出おきお、「くさっ」ず倧声を䞊げた。䜕があったんだず思い、その客のずころぞ行くず、「䜕だよ、あの䟿所。臭くおたたんないよ」ず非垞に䞍機嫌だった。うちのトむレは和匏の䟿噚である。客があたりにも「臭い、臭い」ず連呌し倧隒ぎするので、仕方なく様子を芋に行く事にした。

 ドアノブに手を掛け少しだけドアを開くず、凶悪な異臭が錻を぀く。

「う、うぐぁ」

 バタン  。

 思わずドアを閉めおしたうぐらいの臭さだった。䞀䜓、今の臭さは䜕だ
 䞀瞬気の遠くなるようなもの凄い臭さだ。最埌にトむレに行った客は、あの倧男しかいないはずである。あの野郎め、うちでク゜だけしお垰りやがったのか  。

 別に自分が悪い蚳ではないが、このたたではマズいず感じる。早くあの巚倧グ゜を䜕ずかしなければ  。

 あんなでかいク゜は生たれお初めお芋た。垞軌を完党に逞した䞖界暙準のク゜。いや、あんなでかいのは、䞖界を探しおも皀だろう。倧きく息を吞い蟌んで、トむレの䞭に入る。先ほどず倉わらない状態で巚倧グ゜は暪たわっおいる。

 もう䞀床、氎を流しおみるが、やはりビクずもしない。他に方法が思い぀かないでいるず、「おたえ、さっきから䜕をやっおやがんだ」ずパパンが入っおきた。

「  」

 いやいやチビオダゞさんよ。わざわざ努の頭の䞭の声たで真䌌しお話さないでもいいから。

 しかし空気を読たないオダゞは、ただただ埗意げに口を開く。䞀䜓この人は䜕人の真䌌ず勝手な心理描写をしおいるのだ

「うぉっ、䜕じゃこりゃ」

 パパンは錻を抌さえ、トむレから出おしたう。僕も䞀旊、倖ぞ出る事にした。店内の客たちは食べるのも忘れ、野次銬根性䞞出しでトむレの近くたで集たっおいる。

「マスタヌどうした」

「䜕があったんだ」

「ん、䜕か臭いな、この蟺  」

 このたただず近所で「でかいク゜のある店」ず倉な噂を立おられおしたう。

「おい、努。䜕だ、ありゃ」

「し、知らないよ。倚分、さっき飯も頌たず、トむレだけしおいった倧男のせいだ」

「流しおも駄目なのか」

「二回流しおみたけど、ビクずもしないよ」

「ふむ  」

 僕たち芪子は二人しお腕を組みながら、巚倧グ゜の察策を考えた。

「たずは窓ずいう窓を党開に開けよう。この悪魔のような異臭が店に染み蟌んだら、誰䞀人、客なんか来なくなるぞ」

「おいおい、マスタヌ。俺たちを䟮るなよ。俺たちゃよ、マスタヌの料理が食いたくお、毎日のように来おるんだ」

 垞連客の竹花さんが、自信満々に蚀った。

「ふん、この臭いを嗅いでも、そう蚀えるのか」

 パパンはドアを少しだけ開く。

「ゲッ、くさっ 䜕だ、このドブの腐ったような臭いは 。冗談じゃねえ、こんなずころで飯なんか食えるかよ。マスタヌ、カりンタヌに勘定眮いずくからな」

 そう蚀っお、垞連の竹花さんは垰っおしたった。おぞたしい臭いは、人間の枩かい心たでいずも簡単に砎壊しおしたう。

「いやいや、おじさんさ 。俺、さっきからカレヌ食べおんだけど」

「おう、悪い悪い。おじさん気が利かなかったな。ちくわ半分食うか」

「い、いらないっすよ」

 しかしどんなク゜があるんだ あたりにみんなが隒いでいるので、ワシも芋に行っおみるか。

「なあ、坂東」

「䜕だよ」

「暪川っお、今でも可愛いかな」

「知らねえよ」

 野次銬を掻き分けおトむレを芗く。

「うおっ」

 思わず声が出る。県前には、倧きな倧きなりンコがあった。暪四センチ、長さ二十センチぐらいの巚倧グ゜である。蓄膿症で本圓に良かったね、むシシ。

「ずりあえず今日の営業は終わりにしお、入口ののれんをしたおう、努」

「分かったよ、パパン」

 店内ぞ残っおいる客に、「お代は結構ですから」ず匷匕に垰っおもらうよう促す努。ラッキヌ、飯代タダ 

「あ、坂東君たちもお代結構だからさ。悪いけど今日は垰っおもらえる」

「努、ハンバヌグ定食もちょうだい。あ、逃子も」

「いや、だから垰っおよ。頌むからさ」

 涙目で必死に懇願する小動物を芋るようで、さすがにいたたたれなくなっおきた。でもただカレヌが半分残っおいるんだよな  。

「おい、坂東」

 ゎリがワシの肩に手を眮いおくる。

「䜕よ」

「分かっおやれよ。人にはそれぞれ事情っおもんがあるんだから」

「おたえに蚀われたかねえよ」

「ねえ、頌むから坂東君も、ゎリッチョも垰っおよ。お代いらないから。あず君たちだけなの」

「え」

 蟺りを芋回すず、あれだけ䞀人で䜕圹も実況䞭継しおいたはずのねじり鉢巻きたでいない。逃げ足だけは速いチビ野郎め。絶察あんな倧人になっちゃあかん。そもそも反面教垫ずいう蚀葉は、あのねじり  。

「頌むから垰っおよ 僕はこのあず巚倧䞀本ク゜ずの戊いが埅っおいるんだから」

 こうしおワシたちは、小汚い定食屋を远い出された。あずで芚えおろよ、こんな䞊客を。


 宛おもなく圷埚い歩きながら、ワシたちは公園に向かう。ベンチに腰掛けようずするず、ゎリが声を掛けおきた。

「なあ、ドむツ食堂行っおコヌヒヌ飲もうぜ」

「金ねえよ」

「嘘぀くなよ。努のずころで金遣っおねえだろ」

「これはだな、明日の貎重な昌飯代にする予定なんだよ」

「おたえは暪川の件で、俺を焚き぀けたんだ。責任を取る必芁性がある」

 䜕なのこのお銬鹿。もう䜕を蚀っおいるのか分からない。

 どうやらゎリの䞭では、暪川文江が自分を奜きだったずいう歪曲した事実だけが、郜合よく八幎間ずっず保存されおいたらしい。その保存状態が良いのか悪いのかは、ワシには刀断できなかった。

「たあ、電話するなら勝手にしろよ」

「たださ、今倖だろ 暪川の電話番号分からねえんだよ。坂東、分からねえか」

「知るわけねえだろ」

「そこを䜕ずか頌むよ、バンむッちゃん」

「バンむッちゃん 䜕じゃ、その気持ち悪い呌び方は」

「坂東䞀だから、略しおバンむッちゃん」

「垰っお寝るわ  」

「あヌ、埅っお埅っお ほら、チャブヌにずりあえず、電話ボックスから掛けおみようよ」

「自分で掛ければいいだろ」

「同じ苗字だから岩厎っお蚀うの、䜕か嫌なんだよ。頌むよ、バンむッちゃん」

 本圓にこや぀は面倒臭い奎だ。せめおコヌヒヌぐらい奢るずいえば、付き合っおやっおもいいのにケチんがめ。

「嫌だね。垰っおお眠の時間垯だ。神嚁に頌みなよ」

「あい぀は今頃北海道で匍匐前進だろ。頌むよ、バンむッちゃん」

「䜕で俺がチャブヌに電話しなきゃいけないんだよ」

「暪川の電話番号を知るために。ほら、善は急げっお蚀うだろ」

「それはこういう時に䜿う蚀葉じゃねえよ」

「じゃあ䜕お蚀うんだよ」

「知らねえよ」

「じゃあコヌヒヌぐらいご銳走しろよな、ドむツ食堂で」

「暪川の電話番号さえ手に入れば、うどん奢っちゃうよ」

「え、ドむツ食堂にうどんなんおあったか」

「ねえよ、そんなもの。駅前の立ち食いそばで」

 倩ぷらにいなり寿叞でも぀けさせるか。仕方なくワシはチャブヌに電話をしお、卒業アルバムから番号を聞き出すミッションに成功した。

「ほれ、暪川の。うどん啜りに行くぞ」

「ただ甚件は終わっおないだろ」

「え、䜕を」

「坂東が今から暪川に連絡をしお、䌚話を枩めおからだっお」

 䞀䜓こや぀は䜕をぬかしおいるのだ

「うどんが先だ」

「電話だっお な、バンむッちゃん。倩ぷらも぀けちゃうよ」

「ふ 、いなりもな」

 仕方なく暪川文江の自宅ぞ電話をするこずになった。しかしなぜワシが自分の癟円玉を投入しなきゃいけないのだ

「あ、すみたせん。私、坂東ず蚀いたしお、文江さんの䞭孊時代の同玚生なんですが。ええ、はい 。あ、暪川 久しぶり。䞭孊の時䞀緒だった坂東なんだけど。え いや、クラス䌚ずいうか、そうじゃなくお。実はさ、おたえのこずを䞭孊時代から今でもずっず奜きな奎がいるんだよ。今日さ、久しぶりにあったらさ、未緎たらしくずっず暪川暪川蚀うわけさ。でね、たあ付き合えずかそういうんじゃなくおね ここたで匷い気持ちあるなら、ちゃんず告癜しろっお蚀っちゃったわけよ。そこでさ、このあず本人に代わるから。そこで電話じゃなく、実際に䌚っお聞いおやっおくれないかな あ、もちろん䞀人じゃ嫌だったら俺も同垭するからさ。その時はほら 、暪川の仲良かった友達を連れおきおもいいし 。じゃあ、今から代わるね」

 ワシは電話ボックスを出お、ゎリに受話噚を枡した。劙にもじもじしおいるゎリ。こや぀は䜕をしずるんじゃ。あれだけ豪語しおいたくせに、いざずなるず本圓にどうしょうもない。

 駄銬に鞭を打ち蟌むようゎリの尻を叩き、ボックスぞ抌し蟌む。そうだ。あずで癟円玉を返しおもらわないずな。どこが暪川がゎリに惚れずるんじゃ。

「あ、坂東」

「䜕よ」

「電話切れちゃった、お金無くなっちゃっお。癟円貞しずいお」

「䜕だよ これで二癟円になるんだぞ」

「頌むっお、バンむッちゃん 恩にきるから。小銭持っおないんだっお。終わったらうどんパヌティヌ開催だ。倩ぷらもいなりも぀けちゃうよ」

「ぜ、絶察だからな」

 仕方なくポケットから癟円玉を取り出す。

 今日のワシは、誰がどう芋おも玚の働きだろう。たず岩厎宗兞 、チャブヌに電話しお暪川文江の連絡先を聞く。さらに圌女ぞ電話しおホスト圹を買っお出る。どさくさに玛れお友達連れおこいず蚀ったが、うたくいけばダブルデヌトチャンス。いや、ゎリはどうせ沈没するから、ワシだけむッシッシな状況。

 本圓はチャブヌず話すの気たずいんだよね。お互い䞭孊校時代、斜蚭クレッシェンドの家の甲乙矎女二人組だった新庄貎子にワシはフラれ、氞井知子にチャブヌはフラれた者同士。あの腹を空かせお圷埚う負け犬のような思いは、チャブヌしか知らないのだ。ゎリのせいで心の叀傷が痛むわい。

 たああずはうどんパヌティヌで、ゎリの頌んだ倩ぷらの半分をさらに奪っおやろうではないか。

 䞊機嫌で出おくるゎリ。お膳立おをあれほどしおあげたのだから圓然だ。

「暪川さ、明埌日䌚っおくれるっお」

「ほうほう、やったじゃないの」

「それでさ、明埌日バンむッちゃんも付き合っおくれよな。暪川が初めだし、友達も連れおくるっお蚀うんだよ。俺は䞀察䞀でもいいんだけどさ。あい぀、照れやがっお」

「  」

 おたえのその匷気は、䞀䜓どこから湧き出おいるのだ 高原の岩枅氎アンドゎリめ。

「じゃあ坂東も疲れおいるんだろ お圹埡免だ。垰っおゆっくりやすみなよ」

「おう、本圓疲れ ん おい うどんパヌティヌは」

「あ、わりヌわりヌ。忘れおたよ。じゃあ川越垂駅の近くの立ち食いそばたで行くか。たあうどんでもそばでも、奜きなもん食えよ」

「うどんかそばしかねえだろが」

 たったく油断も隙もぞったくれもない奎である。

 立ち食いそばの方向に向かい、自動食刞機の前に立぀。ゎリがポケットの䞭をたさぐっおいる。

「いけね 、絊料日前だから俺、金、無かったんだ」

「はあ いくらもっおんだよ」

「うヌん 。四癟六十円しかねヌや。でも䜕も入っおいないすうどんなら奢っおやるよ。それでいいだろ」

「  」

 本圓にふざけた野郎だ。どこがうどんパヌティヌなのだ あたりのアホさ加枛にさっきの怒りもどこかぞいっおしたった。こんなくだらないこずに付き合わされ、奢るずそそのかされ、こっちが金を出すのも癪だった。ずりあえずゎリに、䜕も入っおない玠うどんを奢らせる事に決める。

「あヌあ 、これで二十円しかねヌや」

「そんなの知らねえよ。自分が蚈算しお䜿わないからそういう目に遭うんだ」

「なあ」

「䜕だよ」

「あの倩ぷらを乗っけお食いたいず思わないか」

「だっおおたえ、あず二十円しかないっお蚀ったじゃねヌかよ。倩ぷら䞀぀癟円だぞ」

「だからさヌ、坂東が出しおくれよ」

 もうこい぀にはため息しか出おこない。確かにワシもネギしか入っおいないうどんを食べるのも寂しかった。仕方なく自腹を切り、倩ぷらを二぀泚文する。

「あずさヌ」

「今床は䜕だよ」

「あの梅のおにぎりも食べたくねヌか」

「おたえが食いたいだけだろ」

「゚ヘヘ  」

 結局ワシは、ゎリずほが同じぐらいの金額を出すハメになっおしたった。

 いや、ちょっず埅お。ワシはゎリに電話代で二癟円も出しおいる。぀たりここで倩ぷらずおにぎり代で、こっちのほうが倚く金をだしおいるではないか。劙に玍埗がいかなかった。

 汚い音を立おおそばを啜るゎリを睚む。口元に倩ぷらのカスが぀いおいたので眺めおいるず、ゎリは満足そうにニダリず笑う。

 静かな怒りの炎が、メラメラずワシの心の片隅で燃え䞊がっおいた。

「暪川は枡さないけど、明埌日の連れおきた友達は、坂東の奜きにしろよ」

「䜕様の぀もりだ だいたいな、俺が口を利かなきゃ、ゎリは䜕もできなかったじゃねえかよ」

「いや、クヌルに培しおいただけだっお。ナむトっおいうのはそういうもんだろ。クヌルナむトっお感じだな」

「おたえ、自信満々なのはいいけど元々口䞋手なんだから、調子に乗っお明日ずか電話すんなよ」

「䜕でだよ」

「ほら 元々ゎリは自分から達者に話せるタむプじゃねえだろ。䌚う玄束は取れおいるんだから、焊るな。これは老婆心からの忠告だ」

「俺は老婆じゃねえよ」

「あヌ、もう こっちが良かれず思っおアドバむスしおやっおんのに」

「うん臭いな」

「そんな蚀葉ねえよ それを蚀うなら胡散臭いだ、銬鹿」

 残金二十円のゎリずいおも仕方ないので、ワシはずっずず家に垰るこずにした。


 今日もパンの袋詰め䜜業を無事終える。ひたすらベルトコンベアで流れおくるパンを手で぀かみ移すこず八時間。十代の最埌にこんなこずをするなんお、昔は想像も぀かなかった。

 でも明日は暪川文江フェア。あや぀がどのレベルの女を連れおくるのかは分からない。だが今回匕き立お圹のゎリ氏がいるのだ。あの新庄貎子みたいな感じの子だったら最高だね、むシシ。

 これはもはや臥薪嘗胆ずも呌ぶべき事䟋。埩讐を成功させるために苊難に耐えるずか銬鹿なこずを蚀う奎がいるが、それは違う。匷い意志で目暙に向かい、努力し続ける姿勢を指すのである。神様に祈ろうではないか。貎子䌌のパむオツブルルンちゃんカモヌン。おっずこれは恒䟋のティッシュタむム突入か いやいや、焊ったらあかん。無駄な攟出はハド゜ンの高橋名人に怒られおしたうから。十六連射できおも、ファミコンは䞀日䞀時間。

 ドアを叩く音がした。

「はいよヌ」

「なあ、兄貎。岩厎君から䜕回も電話あったよ。倧事な甚件でもあったんじゃないの 兄貎が垰っおきたら、連絡くれるように䌝えお䞋さいっお蚀っおたよ」

 急激になぜかすごく嫌な予感がした。

 もしかしおあい぀、あれほど蚀ったのに暪川文江ぞ電話しちゃったんじゃないのだろうか  。

 その時、家の電話が鳎り出した。虫の知らせずいうや぀だろうか。ワシはそれ電話がゎリからだろうず盎感的に感じる。

「もしもし 、ああゎリか。どうかしたか」

「坂東、わりヌ  」

 そのひず蚀で、先ほど感じたものがワシの䞭で確信に倉わった。

「䜕も蚀わなくおいいよ。どうなったか圓おおやろうか」

「ん 、ああ  」

「ズバリ暪川文江に電話しおしたい、明日の食事行く玄束を断られたんだろ」

「おたえぱスパヌか 䜕で分かったんだよ それずも暪川から電話でもあったのか」

「いっぺんに質問するなよ。たあいいや。䞀぀䞀぀答えおやるよ。たず俺ぱスパヌじゃない。暪川から電話はあれから䞀床もない。でも浮かれおるはずのおたえが、䜕床も家に連絡をしおくる。以䞊をたずめるず、それしか考えられなかっただけだ」

「鋭いな  」

「鋭いなじゃねヌよ、銬鹿 人のお膳立おをすべお台無しにしやがっお  」

「ああ、わりヌ」

「 で、䞀䜓䜕をやらかしたんだよ」

「いやヌ、昚日すげヌ嬉しくおさ、おたえもそれは分かるだろ」

「ああ、気持ちは分かるよ。それで」

「坂東に念を抌されおたけど、぀い今さっき、暪川文江に電話しちゃったんだよね」

確かに生たれおから十九幎間、いや、ゎリの堎合は誕生日が皮肉にもバレンタむンデヌなだけに、なおさら、女関係で䞀切報われおこなかった。デヌトすらした経隓もないのだから、同情する䜙地はあった。

 そんなゎリに察し、ワシたで責めおしたったら可哀盞過ぎる。

「それでどうしたの」

「電話したはいいけど、䜕を話しおいいか分からなくなっちゃっおさヌ、䞉十分電話しおお、その内の二十五分は、お互い無蚀になっちゃったんだよね」

「駄目じゃん。それっおほずんど電話しおる意味がないじゃん。䜕ですぐに切らなかったの」

「いやヌ圌女のほうから、甚事あるからっお、俺の電話を切ろうずするから、ちょっず埅っおよっお粘っおみたんだよ」

 本圓にこい぀は倧銬鹿だった。昭和の生んだ倧銬鹿だ。

「もし、そこで電話切られたら、明日の食事、すっぜかされちゃうような気がしちゃっおね。でも、今になっお冷静に考えるず、ちょっずマズかったかなっお思っおるよ」

「ちょっずじゃねヌだろ。ちょっずじゃ  」

「でも最埌に『本圓は奜きな人がいるから、明日はやっぱ䌚えたせん』っお蚀われちゃっおさヌ。そんなんだったら始めからするなよっお感じだよ。あの女、あんなに性栌悪かったんだ」

 ゎリは自分自身に原因がある事を䜕䞀぀理解しおいない。適切なアドバむスをしお、もう少し女の子の気持ちっおものを教えおあげたいが、今の件を分からせるだけでも䞀幎以䞊の時間を必芁ずするだろう。いや、それだけ掛けおも分からないかもしれない。

「さっきから䜕、黙っおんだよ。俺がフラれたのが、そんなに面癜れヌか」

 䞀䜓ワシがゎリに察し、責められるような䜕をしたずいうのだろう 考えれば考えるほどむラむラしおきた。

「坂東は、俺に慰めの蚀葉の䞀぀も掛けられねヌのかよ」

 こっちは貎子䌌の子ず知り合う予定だったのが、この銬鹿の暎走で朚っ端埮塵。心の底に沈殿しおいた黒い䜕かが、䞊昇しおくるのが分かった。

「ザマヌミロ  」

 心の䞭で呟いたはずが、぀い口に出おしたう呪詛。

「あ、䜕だっお」

「ザマヌミロ、ザマヌミロッ」

「䜕だっおんだ、チキショり」

「あたりにもおたえが銬鹿過ぎるからだよ」

「暪川がなっおないじゃねヌか」

「俺から送る蚀葉は䞀぀だけだ」

「䜕だよ」

「ザマヌミロ」

 こうしお䞭孊校時代の同玚生『暪川文江事件』は、静かに終わりを告げた。

 むラむラしながら廊䞋を歩くず、匟が声を掛けおくる。

「兄貎、岩厎君どうしたの」

「オメヌはゎチャゎチャうっせえんだよ いいか 絶察に郚屋に来るなよな」

 出来の悪い匟ぞ教育的指導をしお、郚屋ぞ戻る。

 高橋名人 ふん、過去の人じゃねえか。ワシはティッシュを取り出すず、ズボンを脱ぎだした。


いいなず思ったら応揎しよう