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田んぼに立った、小さな案内板【総校②#13】/校長の挑戦―総合の力を信じて 第2章

    前回、5年生は田んぼアートの物語づくりに取り組み、6年生は地域の恐竜について学びを深めていました。
    夏休みが終わり、2学期が始まります。

    コロナ禍で学校運営にも様々な工夫が求められる中、子どもたちの学びもまた、新しい一歩を踏み出そうとしていました。


    1.運動会を、どう届けるか

    夏休みが終わり、2学期が始まりました。
    新型コロナウイルスの感染状況は相変わらずで、厳しい暑さも続いていました。そのため、始業式は体育館ではなくZoomで実施することにしました。

    2学期が始まると、すぐに運動会について考えなければなりませんでした。
    前年に続き、開催は午前中のみとすることにしました。
    しかし、一番頭を悩ませたのは参観方法でした。

    東京オリンピックは無観客で開催されました。
    学校も同じように無観客にするという考え方もありましたが、小学校の運動会では現実的ではありません。
    一般の方には参観を控えていただくとしても、保護者まで入れないというわけにはいきませんでした。

    そこで苦肉の策として考えたのが、各家庭から1人だけ「競技役員」として参加していただく方法でした。
    競技役員として運動会の運営を手伝っていただき、その合間にお子さんの競技や演技を見ていただくという形です。

    とはいえ、それだけでは十分とは思えませんでした。
    そこで事務長さんに相談しました。

    「YouTubeで限定ライブ配信をしてみませんか。」

    ICTの活用を得意とする事務長さんは、
    「やってみましょう。」
    と、すぐに前向きな返事をしてくださいました。

    それからは予行演習や練習のたびにテスト配信を繰り返し、本番ではYouTubeによる限定ライブ配信を実施しました。
    さらに、ライブ配信だけで終わらせるのではなく、約1週間の限定見逃し配信も行いました。

    保護者だけでなく、町外や県外で暮らす祖父母の方々にも好評だったようです。

    そして、この見逃し配信には、もう一つ良かったことがありました。
    運動会当日、子どもたちは自分が競技をしている姿を見ることはできません。
    しかし、後日、家庭で保護者と一緒に映像を見返しながら、

    「ここ頑張ってたね。」
    「こんな表情で走っていたんだ。」

    と、親子で運動会を振り返ることができたと聞きました。

    コロナ禍という制約の中で始めた取組でしたが、学校の行事を家庭と一緒に楽しむ、新しい形が生まれたようにも感じました。

    2.恐竜の足跡に、看板を立てる

    そんな頃、5年生の田んぼアートは、ちょうど見頃を迎えていました。
    黒い古代米の穂が色付き始め、田んぼには恐竜の足跡がくっきりと浮かび上がってきたのです。

    5年担任と相談しました。
    運動会前で忙しい時期でしたが、このタイミングを逃せば、子どもたちが考えていた「観光スポット」として多くの人に見てもらう機会を逃してしまいます。

    「やっぱり、説明がいるよね。」

    そうして作ることになったのが看板でした。
    もちろん、ただ説明文を書くだけではありません。
    子どもたちが考えた「あの恐竜の足跡ができた物語」を、4コマ漫画で紹介しようということになったのです。

    幸い5年生には絵を描くことが得意な子がいて、漫画は思っていたより早く完成しました。
    私は近くのホームセンターへ行き、看板用の板と杭を買ってきました。

    完成した4コマ漫画を模造紙にまとめ、それを板へ取り付けます。
    そして子どもたちと一緒に田んぼへ運び、看板を設置しました。

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    さらに、小さなノートと鉛筆も取り付けました。

    「見に来た人に感想を書いてもらおう。」

    子どもたちのそんなアイデアでした。
    ただ見るだけではなく、人とつながる田んぼアートにしたかったのです。

    3.子どもたちの思いが、町へ届く

    看板を設置して間もなく、ケーブルテレビの取材が入りました。
    テレビカメラを前にして、5年生は自分たちの田んぼアートについて誇らしそうに説明していました。

    さらに、事務長さんが「100年先を創る起業家育成事業」の予算を活用し、町内への案内用の幟も制作してくださいました。
    子どもたちは、その幟を持って地域へPRに出かけました。

    テレビ放送や子どもたち自身の広報活動もあって、田んぼには町内外から多くの方が足を運んでくださったようでした。

    看板に取り付けたノートには、

    「よく考えましたね。」
    「また来たいです。」

    そんな温かい言葉が少しずつ増えていきました。
    子どもたちは、その一つ一つを何度も読み返していました。

    自分たちが考えた物語が、人に伝わる。
    自分たちが作った田んぼアートを、誰かが見に来てくれる。

    総合的な学習の時間は、教室の中だけで終わるものではありません。

    地域へ出て、人とつながり、言葉を返してもらう。
    その喜びを、5年生は初めて実感していたのだと思います。


    ここまで読んでいただきありがとうございました。
    次回へ続く・・・👇

    前回の話👇

    ◆本シリーズについて(初めて読まれる方へ)👇👇

    2020年度、私は中山間地にある小学校へ校長として赴任しました。
    その直後から、コロナ禍という正解の見えない状況の中で学校運営が始まりました。

    行事は止まり、人との距離が求められる中で、何を優先し、何をあきらめ、何を工夫すればよいのか。
    日々、判断を迫られる学校経営が続きました。
    ▶第1章は、こちら👇
    「マガジン 校長の挑戦—総合の力を信じて 第1章」**

    本シリーズは、そうした試行錯誤の中で、子どもたちの自己肯定感を育てることを軸に、総合的な学習の時間を学校経営の中心に据えて進めてきた、小学校校長としての実践記録です。

    シリーズ第2章(校長2年目)では、いよいよ全校で総合的な学習の時間への取組が始まります。

    ※本文中の一部地名や商品名等は、必要に応じて仮名またはイニシャルを用いています。

    これまでの経過は「校長の挑戦 総合の力を信じて 第2章 マガジン」で👇👇


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    小学校教員としての実践経験を起点に、離島での暮らしや仕事の中で生まれた学び、総合的な学習の時間の記録を書いています。 ホッとする話も、挑戦の熱が伝わる話も、出来事の流れを追いながら、物語的に綴っています。 総合的な学習/探究学習/学びの記録/教育体験記/ICT

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