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歌になる前の物語【総校②#15】/校長の挑戦―総合の力を信じて 第2章

    2021年。
    ここからは、道の駅での販売活動という共通のゴールに向けて、それぞれの学年がどのような学びを積み重ねていったのかを紹介していきます。
    最初は、3年生のみかん学習です。


    1.歌を作る前に、大切にしたかったこと

    3年担任は、その年の秋に行われる県統一研究大会で理科の実践発表を担当することになっていました。
    1学期は研究授業や発表準備が続き、総合的な学習の時間に本格的に取り組むところまでは、なかなか手が回りませんでした。

    それでも私は、あまり心配はしていませんでした。
    理科の授業で子どもたちが身に付けた探究する姿勢は、きっと総合的な学習の時間にも生きてくる。

    そう考えていたからです。

    少し遅れて、いよいよ3年生のみかん学習が動き始めました。
    1学期には町探険として学校の東西南北を歩き、それぞれの地域の特徴を見てきています。

    その道沿いには、みかん畑もありました。
    白い花が咲く様子や、小さく膨らみ始めた実も子どもたちは目にしていました。

    だからこそ、2学期は、その景色の向こう側にある人の思いへ近付いてほしいと考えていました。

    私は担任の先生と改めて話をしました。

    「地域のみかんを紹介するCDを作ることが目的にならないようにしたいですね。」

    CDづくりはゴールではありません。

    子どもたちが地域を知り、人と出会い、その思いに触れる。
    その積み重ねがあってこそ、自分たちの言葉で歌えるようになるはずです。

    私は、そんな話をしました。

    もちろん、考え方だけを伝えたわけではありません。

    例えば、生産者だけではなく、実際にみかんを買いに来る人にも話を聞いてみてはどうだろう。
    産直市でインタビューをするのも面白いかもしれません。

    そんなアイデアも、一つの例として伝えました。

    「こうしなさい」というつもりはありません。

    担任の先生が自分らしい単元を組み立てるための、たたき台になれば十分でした。

    2.みかん畑で知った、本当の仕事

    最初に訪れたのは、いつもお世話になっているみかん農家さんでした。
    秋の日差しを浴びて、みかん畑には黄色く色付いた実がたくさん並んでいました。

    子どもたちは、一つ一つ枝ばさみでみかんを切り取り、その場で味わわせてもらいました。

    「おいしい!」

    思わずこぼれた声と一緒に、甘酸っぱい香りが畑いっぱいに広がります。

    その後、農家さんが仕事について話をしてくださいました。
    子どもたちからも、次々と質問が飛びます。

    「一番うれしいときは、どんなときですか。」

    「大変なことは何ですか。」

    農家さんは、一つ一つ丁寧に答えてくださいました。
    収穫の喜びだけではありません。

    「摘果といって、大きな実を育てるためには、小さいうちに実を減らさないといけないんだよ。」

    「みかんは害虫に弱いから、暑い夏には何度も消毒をするんだ。その薬をタンクに入れて山まで運ぶのは、本当に大変なんだよ。」

    子どもたちは、一生懸命メモを取っていました。
    おいしいみかんの向こうには、毎日の積み重ねがある。

    そのことを、少しずつ感じ始めていたようでした。

    3.買う人の気持ちを知る

    別の日には、産直市へ出かけました。
    店内には、ちょうど旬を迎えたみかんが所狭しと並んでいました。

    今回は、お客さんへのインタビューです。
    子どもたちは班ごとに分かれ、思い切って声を掛けていきます。

    ところが、最初の一歩がなかなか踏み出せません。
    お客さんの前まで行っては戻り、また相談する。

    その様子を見ながら、

    「頑張れ・・・。」

    私は心の中でそっと応援していました。

    やがて勇気を出して話し掛けると、お客さんは皆さん、とても丁寧に答えてくださいました。

    「どこから来られましたか。」

    「この町のみかんは、どうですか。」

    子どもたちはメモを取りながら、一生懸命話を聞いていました。

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    県内の少し離れた町から来たという方。
    県外から毎年楽しみに買いに来ているという方。

    「ここのみかんは本当においしいから、毎年来るんですよ。」

    そんな言葉を聞くたびに、子どもたちの表情が少しずつ変わっていくのが分かりました。
    自分たちにとって当たり前だった地域のみかんを、こんなにも楽しみに待っている人がいる。

    その事実が、子どもたちの心に静かに残っていったようでした。

    4.思いを歌にするために

    農家さんの思いを聞きました。
    みかんを買いに来る人の思いにも触れました。

    子どもたちは、少しずつ地域のみかんを「自分たちの特産品」として見つめ始めていました。
    帰り道、担任の先生と私は、そんな子どもたちの様子を話しながら学校へ戻りました。

    この一つ一つの出会いが、やがて子どもたち自身の言葉になり、歌詞になっていく。

    そんな予感を抱きながら、産直市を後にしたのでした。


    ここまで読んでいただきありがとうございました。
    次回へ続く・・・👇

    前回の話👇

    ◆本シリーズについて(初めて読まれる方へ)👇👇

    2020年度、私は中山間地にある小学校へ校長として赴任しました。
    その直後から、コロナ禍という正解の見えない状況の中で学校運営が始まりました。

    行事は止まり、人との距離が求められる中で、何を優先し、何をあきらめ、何を工夫すればよいのか。
    日々、判断を迫られる学校経営が続きました。
    ▶第1章は、こちら👇
    「マガジン 校長の挑戦—総合の力を信じて 第1章」**

    本シリーズは、そうした試行錯誤の中で、子どもたちの自己肯定感を育てることを軸に、総合的な学習の時間を学校経営の中心に据えて進めてきた、小学校校長としての実践記録です。

    シリーズ第2章(校長2年目)では、全校での総合的な学習の時間への取組を綴っています。

    ※本文中の一部地名や商品名等は、必要に応じて仮名またはイニシャルを用いています。

    これまでの経過は「校長の挑戦 総合の力を信じて 第2章 マガジン」で👇👇


     
     
    小学校教員としての実践経験を起点に、離島での暮らしや仕事の中で生まれた学び、総合的な学習の時間の記録を書いています。 ホッとする話も、挑戦の熱が伝わる話も、出来事の流れを追いながら、物語的に綴っています。 総合的な学習/探究学習/学びの記録/教育体験記/ICT

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