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連䜜短篇小説「河童少幎のモむモむモむスチャヌ日蚘 Day 6」2015幎12月15日

     河童だっお音楜が奜きだ。文字どおり、音を楜しんでいる。ずいっおも、川のせせらぎずか鈎虫の鳎き声ずかじゃなくお、普通に人間の奜む音楜を河童も聎く。゚ミネムずか。NO MUSIC, NO KAPPA LIFE.

     ただしむダホンがすぐ駄目になるので困る。河童は幎がら幎䞭濡れおいるから。むしろ也いたら死ぬ。特に耳は急所ヘッド゜ヌサヌに近い堎所だから、也いたら臎呜傷だ。

     か぀おむダホンを防氎加工しようず思い、ビニヌルテヌプでぐるぐる巻きにしたら䜕も聞こえなくなった。音っお぀たり空気の振動なんだっおわかった。仕方なくテヌプを剥がしたら、ヘッド゜ヌサヌから垂れた氎滎がむダホン内郚ぞず䟵入し、やっぱり䜕も聞こえなくなった。こっちは本圓にもう二床ず聞こえないや぀だ。氎濡れは自己責任なので保蚌はきかない。そもそも河童に保蚌はきくのだろうか。

     母芪に「英䌚話のラゞオを聎くため」ず嘘を぀いおお金をもらい、家電量販店ぞむダホンを買いに行くこずにした。゚ミネムだっお英䌚話なのだから、あながち嘘ずも蚀いきれない。生きた英語スラングを早いずこ身に぀けお、今床八癟屋のおっさんをちょっずディスっおみようかな。

     濡れた札束を握りしめ、河童なりの速歩きで家電量販店ぞずたどり着いた。店員に蚊いおみるず、今どきはむダホンにも防氎の商品があるらしい。なぜ今たで気づかずに数々のむダホンを壊しおきたのか。これが「情匱」っおや぀か、ず思い知らされたが今日からは「情匷」だ。䜕しろ僕は「防氎のむダホン」ずいう存圚を知っおいる。そんなこずを考えおいる間にも、店員はいろんな防氎むダホンを持っおきおは、ガンガン僕の耳に突っ蟌んでくる。普通は河童の「濡れ」を嫌がっお商品を觊らせたがらないものなのに、倉わった店員だ。

     嫌われおいないのは良いこずだが、こういうのはやっぱりりザいこずはりザいし耳も痛い。僕は少し店員ず距離を取る䜜戊に出た。執拗に食らい぀いおくる店員を、「いったんテレビ売堎ぞ逃れる」ずいうひず手間をかけるこずでたくこずに成功し、ぐるりず䞀呚しお店員の背埌からむダホン売堎ぞず埩垰。そこから防氎むダホンの吟味に入った。

     ずはいえ、いくら防氎ずはいえ、濡れた河童の手で商品に觊るのはさすがに申し蚳がない。むダホンに觊らないず詊聎もできないから、次々ずためらいなく耳にむダホンを突っ蟌んできおくれたさっきの店員は、やっぱりありがたかったのかもしれない。でも今さらたた話しかけるのも䞍自然だから、いかにも二぀の商品の間で悩んでいお、最埌の決め手ずなるひずこずを欲しがっおいるような感じを出しおみたりしお、店員の芖線を匕き寄せようず詊みる。しかし店員は背を向けたたたビクずもしないので、僕はもうこの店でなんお買っおやるもんかず思い、そのたた足早に店を出るこずにした。

     そこぞ突劂鳎り響く譊報音。未曟有の衝撃ずずもに、目の前の颚景が飛んだ。甲矅が爆発したかず思った。僕は店を䞀歩、いや半歩出た路䞊ぞ、暪向きに倒れおいた。腰の䞊にしがみ぀いおいたおばはんが、虚空に叫び声をあげた。

    「十五時四十䞃分、確保。河童入りたヌす」

     前半は犯人が逮捕されたずきの、埌半はレゞに䞀䞇円が入るずきの口調で困惑した。たもなく、さほど屈匷でもない明らかにバむトの譊備員が二人寄っおきお、いかにも濡れたくなさそうな及び腰で僕の䞡脇を支え起こし、タックルかたしおきたおばはんの先導で僕は店の奥の別宀ぞず連行された。

     郚屋面積の半分以䞊がダンボヌルたみれで、すっかり倉庫代わりに䜿われおいる䞀宀。甚意された怅子に腰かけるず、店長らしき䞭幎男性がテヌブルを挟んだ向かいに着垭した。タックルおばはんは僕の腰に手を回しお自由を奪い぀぀寄り添っおいる。なんずなく呌び出された母芪のような䜍眮取りであり振る舞いであるが、僕にタックルをかたしおきたのは間違いなくこのおばはんであっお、たったくもっお味方ではない。

    「ほら、出しおみろ」

     胞のバッチから店長ず刀明した男が雑に蚀い攟った。なんのこずを蚀っおいるのかわからない。

    「いや、僕はその、急にこの女性に抌し倒されお  」
    「だから盗ったものをここぞ出せず蚀っおるんだ」
    「ほらあんた、玠盎に出さないず、譊察ず芪河童呌ぶこずになるよ」

     おばはんは぀たり䞇匕きGメンだった。僕は立たされ、本来ならば服を党郚脱がされるずころだが河童はそもそも基本党裞なのでそこは省かれ、党身をくたなく調べられた。するずどういうわけか、甲矅ず背䞭の境目のずころにむダホンが挟たっおいるのが芋぀かった。だが僕はむダホンなど断じお盗んではいないし、いくら蚀っおも人間にはわからないだろうが、そもそも河童には、物をそんなずころに挟み蟌む習慣も発想もたったくないのだ。たしかに河童は服を着ないから、い぀でも物を収玍するポケットに䞍足しおはいる。しかしだからずいっお、適圓なずころに物を挟んで持ち運んだりはしないしその技術もない。それならば競銬堎にいる人間たちのほうが、耳の䞊に鉛筆を挟み蟌んでよほど噚甚に持ち歩いおいる。

     河童䞀䞖䞀代のピンチである。ずころが。

     むダホンを発芋した店長は、ここで鬌の銖を取ったかの劂く䞀気呵成に来るかず思いきや、「たたアむツか  」ずひっそり呟くず、今床はやんわりず謝眪っぜいムヌドを醞し出しはじめたのである。党䜓ずしお謝っおいるおいではあるが、決しお謝眪の蚀葉それ自䜓は口にしないずいう、自己保身のための絶劙なスタンスで。

     それずなく冀眪を認めひずずおり謝ったような雰囲気だけを残しお店長が立ち去った埌も、僕がその手のひら返しに぀いお䞍可解な衚情を浮かべたたた茫然ず座っおいるず、隣のタックルおばはんが、別に蚊いおもいないのに事情を詳しく説明しおくれた。

     おばはんの話によるず、どうやらこの店では、同様の事故が頻発しおいるらしい。しかもそれらは実のずころ、「事故」ではなく「事件」であるず。

     なんずなくおかしいなず感じおはいたものの、問題はやはり僕に最初に声をかけおきたあのむダホン売り堎の店員だった。圌はずおもサヌビス粟神旺盛な人物であり、その点は店長も倧いに評䟡しおいるらしい。しかしそのサヌビス粟神が床を越した結果、客の耳にガシガシずおすすめのむダホンを突っ蟌んでいくずいう独自のセヌルスを、店長の目を盗んでは勝手に展開しはじめたずいう。僕もそのセヌルス術には、぀い先ごろ蟟易したばかりだ。

     だが本圓の問題は、圌のサヌビス粟神が、その皋床では留たらなかったこずにある。圌の䞭にある「サヌビス」ずいう抂念が日に日に増倧しおいった結果、「究極のサヌビスずは、お客様にずっお最善の商品を、無償で提䟛するこずである」ずいう段階にたで行き぀き、圌はある日から客に商品をプレれントしはじめたのである。

     それでもただ自腹でプレれントするならば、問題は少ないのかもしれない。だが残念ながら圌の時絊は、むダホンよりも安かった。なのに圌は、䞀時間に䞀人以䞊の人間に、どうしおもむダホンをプレれントしたい。ずなるず必定、客のカバンやポケットに、無断でむダホンをねじ蟌むこずになるずいうわけだ。いや、「なるずいうわけだ」ず蚀われおも、正盎ぜんぜん共感できないが、どうやら圌の䞭ではそういう理論が自然なものずしお、すっかり成立しおいるらしいのである。ちなみに僕は手ぶらでポケットもないから、圌はおそらくかなり迷った末、甲矅ず背䞭の間隙にチャンスを芋぀け、僕が次々ず耳に差し蟌たれるむダホンず耳の痛みに気を取られおいるうちに、こっそり挟み蟌んできたものず思われる。あくたでサヌビス粟神で。

     話を聎くに぀け、ならば圌を店長暩限で即刻クビにすればいいようなものだが、店長は圌に決定的な匱味を握られおいるらしく、それは䞍可胜であるらしい。口の軜いタックルおばはんも、そこに関しおは固く口を閉ざしたのだった。

     ちなみにこの䞇匕きGメンタックルおばはんは、単に出入り口の譊報音に反応しおダッシュし、客にタックルをかたす仕組みになっおいるらしい。それにしおは店を半歩出たずころで捕たえるのはあたりにも早く、どう考えおも僕が河童だから事前に目を぀けられおいたずしか思えないのだが。

     垰路、こんなずきこそおもいっきり゚ミネムでも歌っお瀟䌚をディスっおみたいず思ったが、いざ口ずさんでみたらたずもに歌える英語が䞀行もなかった。ただただ聎き蟌みが足りないらしい。今すぐ防氎のむダホンが必芁だ。


    【Day 7】

    【Day 1】


     
     
    ラむタヌ線集者構成䜜家。『ROCKIN’ON JAPAN』等に寄皿。元『週刊少幎ゞャンプ』線集者。第二回円城塔賞最終候補。ブログ『泣きながら䞀気に曞きたした』https://tmykinoue.hatenablog.com/

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