街でバッタリ
昨日の仕事帰りの夕方、家まであと10メートルというところで、
「おーい!●●!!」
と、信号待ちの軽バンから僕の苗字を呼ぶ声が聞こえた。
運転席に顔を向けてみると、知らない太ったおじさん。
僕のことを苗字で呼び捨てるのは学生時代の友人だけだがまったく見覚えがなく、
「誰!?!?:(;゙゚'ω゚'):」
と叫んでしまった。
「オレだよオレ、Aだよw」
と言われ、まじまじ眺めてみると、ひどく太っているが確かに高校時代の友人Aだった。
会うのは、8年ぶり。
「久しぶr…!」と言いかけた僕に向かって、Aは続けてこう言った。
「何やってたんだよー、
連絡取れないから心配してたんだぞ」
あ……、やべ……。
会えたのが嬉しくて忘れてた……。
僕はAと音信不通になっていたんだ。
「ちょっと車停めるから待って」と、Aが車を僕の家の敷地に入れるのを眺めながら、「因果応報」という言葉を思い出していた。
―あぁ、あのときバックれなかったらこんなに気まずい思いをすることもなかったのに。
高校時代から友人Aともう1人の友人B、それと僕の3人でよく遊んでいた。
ハタチを過ぎて、お酒を飲むのがいちばん楽しかった時代は浴びるようにお酒を飲み、タバコを吸い、カラオケに行き、ダーツをして、楽しい時間をたくさんたくさん過ごした。
8年前、僕はカメラマンの仕事を連絡せずに辞めた。
現場の途中で飛んだわけではないが、「来期の契約はどうする?」という連絡が来たときに返信できなかった。
健康のことや家庭のこと、色々と事情が重なって心がパンクしそうになり、情けないことにバックれた。
その現場に映画業界で働く友人Bと僕との共通の知り合いがいて、友人Bに連絡がいき、
「どうしたー?現場の人たちみんな連絡待ってるぞー」と僕に連絡が来た。
いま思えば素直に「しんどくて……」と理由を話せば良かったと思う。
自分の弱さへの失望、知人経由でBにその話がバレてしまった申し訳なさ、恥ずかしさが重なり、何日経っても返信することができなかった。
それからしばらくは、AとBから「元気かー?」などのLINEが届いたが、今さら合わせる顔がなく無視して8年が経った。
2月に高校の友人の結婚式に参加したときも、
「AとBがいたらどうしよう」とずっと緊張していた。2人がいないと知って、ホッとした自分も悲しかった。
以前、音信不通の友人に会いに行った話を書いたが、なんてことはない。僕も音信不通をやらかしている。
そんな気まずさを抱える僕の目の前で、友人Aは
「元気だったかー、よかったよーー」と、少し涙目になりながら喜んでいた。
"バックれた理由なんかどうだっていいから、元気に生きていてよかった”と思ってるんだろうなーと思った。
僕もバックれた友人を前にしたとき、同じ気持ちだったからわかる。
ただ、今回は立場が逆転している。
僕はバックれた側の人間だ。
これほど気まずいことはそうそうない。
ただ、僕を見かけて咄嗟に話しかけてくれたAに、とても感謝している。
2人のことが嫌いになったわけではないので、たまにLINEのプロフィール画像を眺めながら「もう結婚とかしてるのかなー」なんて考えたりしていた。
つい最近も「2人とも何してるんだろうなー」と思っていたタイミングだったので、人生って不思議だ。
こんな心臓に悪い再開になるとは思っていなかったけど、段取りをキチンとして会おうとなったら気まずすぎて会えなかったかもしれない。
街でバッタリ会うなんて、今が再開するべきタイミングだったのかなと思う。
さっそく来週か、再来週に3人で飲みに行くことになった。
Bからは「今さら会いたくねぇよ」と言われるかと思ったけど「飲みたい!」と言ってくれて、心がカーッと熱くなった。
Aが「ここ行こう!」と挙げてくれたのは、3人でよく飲んでたジンギスカンのお店だった。
ありがとう。
当日はまず、誠心誠意、謝ることから始めようと思う。
