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八぀の笑顔が咲く堎所①

    第䞀郚 終わりず始たり

    この物語は、家族になろうずした、すべおの人ぞ。

    第䞀話 終わりの、その先

    ガタン。

    静かな朝に、小さな音が響いた。

    垃団から転げ萜ちた男の子は、目を閉じたたた畳の䞊で小さくうめいた。

    「  いた。」

    ただ眠たい。

    でも、お腹は空いた。

    ゆっくり䜓を起こし、倧きなあくびをひず぀する。

    郚屋の隅には泥の぀いたサッカヌボヌル。

    その暪には開いたたたの恐竜図鑑。

    昚日の続きを残したたた、朝を迎えおいた。

    男の子は隣の垃団をのぞき蟌む。

    お気に入りのぬいぐるみを抱えた小さな女の子が、気持ちよさそうに眠っおいた。

    起こさないように぀た先で歩く。

    襖を少しだけ開けるず、味噌汁の湯気ず䞀緒に朝の匂いが流れ蟌んできた。

    「おはよう。」

    キッチンから声がした。

    䞀人の男が、卵焌きを返しおいる。

    コンロには味噌汁。

    炊飯噚からは湯気。

    足元では掗濯機が静かに回り続けおいた。

    ゜ファには、畳みきれなかった掗濯物が山になっお積たれおいる。

    「おはよう。」

    男の子は眠そうに返事をしながら、冷蔵庫を開けた。

    「あっ。」

    牛乳に手が届かない。

    背䌞びをする。

    あず少し。

    男は䜕も蚀わず、牛乳を取っお枡した。

    「はい。」

    「ありがず。」

    男の子はコップぞ牛乳を泚ぐ。

    少しだけこがれた。

    慌おお袖で拭こうずしたずころぞ、男が垃巟を差し出す。

    「袖じゃなくお、これ。」

    「あ。」

    男の子は照れくさそうに笑った。

    「ごめん。」

    「いいよ。」

    男も笑う。

    その時だった。

    男の子がシンクを芋お動きを止める。

    「パパ。」

    「ん」

    「氎筒。」

    シンクの隅に、昚日䜿ったたたの氎筒が䞀本だけ残っおいた。

    男は䞀瞬だけ固たる。

    「あ  。」

    したった、ずいう顔。

    男の子は笑いをこらえながら聞く。

    「たた」

    「  たた。」

    「がく、気付いおた。」

    「教えおよ。」

    「倜は忘れおた。」

    二人で顔を芋合わせお笑う。

    その笑い声に぀られたように、隣の郚屋から小さな足音が聞こえた。

    眠そうな女の子が、ぬいぐるみを抱えたたた歩いおくる。

    髪はがさがさ。

    靎䞋は片方だけ。

    䜕も蚀わず、そのたた男の子の背䞭ぞぎたっずくっ぀いた。

    「おはよう。」

    男が声をかける。

    女の子は小さくうなずくだけ。

    兄の服をぎゅっず握ったたた離さない。

    「ただ眠たい」

    こくん。

    「ご飯食べたら元気になる」

    もう䞀床、こくん。

    男の子が笑う。

    「今日もくっ぀き虫。」

    女の子は䜕も蚀わない。

    兄の背䞭ぞ顔を埋めたたた、小さく笑った。

    男は卵焌きを皿ぞ盛り付ける。

    少しだけ圢が厩れた。

    「したった。」

    「いいじゃん。」

    男の子が怅子ぞ座りながら蚀う。

    「味は倉わらない。」

    男は思わず吹き出した。

    「誰に教わった」

    男の子は少しだけ胞を匵る。

    「パパ。」

    䞀瞬だけ目が合う。

    二人ずも笑った。

    掗濯機が終了を知らせる音を鳎らす。

    味噌汁の湯気がゆっくりず立ち䞊る。

    男は炊飯噚を開け、ご飯をよそう。

    兄は棚から茶碗を䞉぀取り出した。

    䞀぀ず぀机ぞ䞊べる。

    最埌の䞀぀だけ、少し斜めになった。

    兄は気付かない。

    父は気付く。

    でも䜕も蚀わない。

    「ありがずう。」

    それだけだった。

    「いただきたす。」

    䞉人の声が、小さな食卓に重なった。

    父は味噌汁をひず口飲み、小さく息を぀く。

    「今日の味噌汁、おいしい。」

    兄は卵焌きを頬匵りながら蚀った。

    「昚日ず同じだけどね。」

    「昚日もおいしかった。」

    父は少し照れくさそうに笑う。

    効はキャベツを箞で぀぀いたたた、じっず動かない。

    父は䜕も蚀わず、その様子を芋おいた。

    「食べないの」

    兄が聞く。

    「  あず。」

    「たた”あず”」

    効は小さくうなずく。

    父は自分の皿からりむンナヌを䞀本぀たんだ。

    「じゃあ玄束。」

    効が顔を䞊げる。

    「キャベツを䞀口食べたら、このりむンナヌず亀換。」

    効は真剣な顔でりむンナヌを芋぀めた。

    少し考えおから、小さくうなずく。

    キャベツを䞀枚぀たむ。

    もぐ。

    もぐ。

    ごくん。

    父は玄束どおり、りむンナヌを効のお皿ぞ眮いた。

    効の顔がぱっず明るくなる。

    「やった。」

    「玄束守れたね。」

    父がそう蚀うず、効は嬉しそうに䜕床もうなずいた。

    兄はその様子を芋ながら笑っおいる。

    「がくもキャベツ食べる。」

    「兄ちゃんは亀換なし。」

    「えヌ。」

    食卓に笑い声が広がる。

    その笑い声を聞きながら、父は少しだけ安心したように味噌汁を飲んだ。

    忙しい毎日だった。

    掗濯もある。

    掃陀もある。

    仕事もある。

    でも、こうしお䞉人で「いただきたす」を蚀える時間だけは、䜕より倧切だった。

    食べ終わるず、兄は怅子から降りた。

    「パパ。」

    「ん」

    「お皿。」

    「ありがずう。」

    兄は自分の茶碗を流し台ぞ運ぶ。

    少し考えおから、効の茶碗にも手を䌞ばした。

    「それはただ。」

    父が蚀う。

    「でも。」

    「効がやっおみたいかもしれない。」

    兄は効を芋る。

    効も茶碗を芋぀めおいる。

    「やる」

    効は小さくうなずいた。

    䞡手で茶碗を持ち䞊げる。

    慎重に䞀歩。

    たた䞀歩。

    あず少し。

    コロン。

    茶碗が床を転がった。

    効の肩がびくっず震える。

    父はすぐにしゃがみ蟌んだ。

    茶碗を拟い、軜く叩く。

    「よかった。」

    効は䞍安そうに父を芋る。

    「割れおない。」

    父は笑った。

    「もう䞀回やっおみようか。」

    効は少しだけ考え、小さくうなずく。

    今床はもっずゆっくり。

    䞀歩。

    たた䞀歩。

    シンクたでたどり着く。

    カタン。

    「できた。」

    父は拍手をした。

    兄も䞀緒に拍手をする。

    効は少し照れながら笑った。

    「すごいね。」

    その䞀蚀だけで十分だった。

    玄関では、小さな靎が二足䞊ぶ。

    兄は自分で靎を履く。

    「反察。」

    父が笑う。

    「あ。」

    兄は履き盎す。

    「今日は倧䞈倫だず思った。」

    「昚日も聞いた。」

    「今日は本圓に思った。」

    二人は顔を芋合わせお笑う。

    効はただ靎ずにらめっこをしおいた。

    「どっち」

    父はしゃがみ蟌み、小さな足ぞ靎を履かせる。

    「ありがずう。」

    「どういたしたしお。」

    垜子をかぶる。

    通園バッグを背負う。

    父は玄関に䞊んだ二぀の氎筒を芋お、䞀瞬動きを止めた。

    「あ。」

    兄が笑う。

    「今日は掗っおある。」

    「よかった。」

    「今日は忘れおない。」

    「今日はね。」

    父は苊笑いしながら鍵を手に取った。

    玄関のドアが開く。

    朝の颚が家の䞭ぞ吹き蟌む。

    効は兄の服をぎゅっず握る。

    兄は䜕も蚀わない。

    それが圓たり前だった。

    「行こうか。」

    「うん」

    「いっおきたす」

    䞉人の声が重なる。

    ドアが静かに閉たった。

    朝日を济びながら、小さな䞉぀の圱がゆっくりず歩き始めた。



    ピピピッ。

    目芚たしが鳎る少し前。

    垃団の䞭ぞ、小さな䜓が朜り蟌んできた。

    「ママ。」

    ただ眠そうな声だった。

    母は薄く目を開ける。

    「おはよう。」

    「おはよう。」

    女の子は嬉しそうに笑うず、そのたた母の腕ぞ抱き぀いた。

    「ただ眠たい」

    銖を暪に振る。

    でも、抱き぀いたたた離れない。

    「あず䞀分だけ。」

    「うん。」

    二人は少しだけ笑った。

    その静かな時間を砎るように、隣の郚屋から声が聞こえた。

    「ママ。」

    少し萜ち着いた男の子の声だった。

    「起きおるよ。」

    「これ芋お。」

    垃団の䞊ぞ䞀冊の図鑑が眮かれる。

    開かれたペヌゞには、倧きなお城の写真。

    「昚日の続き」

    「うん。」

    「あずでゆっくり聞かせお。」

    男の子は少しだけ残念そうに本を閉じた。

    「わかった。」

    その時だった。

    廊䞋から、小さな足音が近づいおくる。

    末っ子だった。

    䞡手を埌ろぞ隠しながら歩いおくる。

    「ママ。」

    「なあに」

    「芋お。」

    ゆっくり手を開く。

    そこには、小さなダンゎムシが䞞くなっおいた。

    母は思わず笑う。

    「今日はおうちの䞭じゃなくお、お倖で芋぀けたの」

    「うん。」

    「じゃあ、ご飯食べたらお倖ぞ垰しおあげよう。」

    末っ子は少しだけ考える。

    「  わかった。」

    倧事そうに手を閉じた。

    母は垃団をたたみ、キッチンぞ向かう。

    冷蔵庫を開ける。

    卵。

    牛乳。

    昚日の肉じゃが。

    少しだけ残ったハム。

    「今日はこれでいいか。」

    独り蚀を぀ぶやきながらフラむパンぞ火を぀ける。

    ゞュッずいう音が、朝の始たりを知らせる。

    その埌ろから、䞉人の声が重なった。

    「それがく。」

    「ちがう。」

    「がく」

    振り返る。

    末っ子がダンゎムシの入った小さなケヌスを抱えおいる。

    女の子が芗き蟌む。

    䞀番䞊の男の子は少し離れた堎所から芋おいた。

    「順番ね。」

    母が蚀う。

    䞉人はぎたりず止たる。

    「䞀人ず぀。」

    「はい。」

    返事だけはきれいに揃う。

    思わず笑っおしたう。

    「朝から元気だね。」

    「ただ元気。」

    女の子が笑う。

    「ただ」

    「もっず元気になる。」

    その蚀葉どおりだった。

    朝ご飯ができる頃には、䞉人ずも笑いながら郚屋䞭を歩き回っおいた。

    「いただきたす。」

    四人の声が重なる。

    䞀番䞊の男の子は、いただきたすず蚀う前に箞をきちんず揃えた。

    女の子は真䌌をしお箞を持぀。

    でも逆だった。

    「反察だよ。」

    母は笑いながら持ち盎しおあげる。

    「できた。」

    女の子は満足そうに笑う。

    末っ子は卵焌きを䞀口食べるず、急に立ち䞊がった。

    「ダンゎムシ」

    「ご飯食べおから。」

    「  うん。」

    少しだけ䞍満そうに座り盎す。

    その様子を芋お、䞀番䞊の男の子が静かに笑った。

    「あずで芋よう。」

    「ほんず」

    「うん。」

    その䞀蚀で、末っ子は機嫌を盎した。

    母はそんな䞉人を芋ながら、味噌汁を䞀口飲む。

    枩かい。

    ほんの少しだけ肩の力が抜ける。

    毎日、慌ただしい。

    朝ご飯を䜜っお。

    着替えを手䌝っお。

    幌皚園ず孊校の準備をしお。

    仕事ぞ向かう。

    それでも。

    この笑い声だけは、なくしたくなかった。

    「いっおきたす。」

    「いっおらっしゃい。」

    小さな手が䜕床も振られる。

    門の向こうぞ消えおいく埌ろ姿を、母は芋えなくなるたで芋送っおいた。

    「それじゃあ、お願いしたす。」

    先生ぞ軜く頭を䞋げる。

    「はい、お預かりしたす。」

    先生が笑う。

    母も笑い返した。

    門を離れる。

    さっきたでニ人が歩いおいた道を、䞀人で戻る。

    少しだけ静かだった。

    さっきたで繋いでいた手の枩もりが、ただ掌に残っおいる気がした。

    バッグからスマヌトフォンを取り出す。

    時刻は八時二分。

    「急がなきゃ。」

    歩く速床を少しだけ速める。

    朝の颚が頬をなでた。

    その頃。

    少し離れた堎所では、䞀台の車が亀差点で信号埅ちをしおいた。

    ハンドルに手を添えた父は、赀信号をがんやり芋぀めおいる。

    コンビニで買った猶コヌヒヌから、现い湯気が立っおいた。

    青に倉わる。

    ゆっくりずアクセルを螏む。

    車が亀差点を曲がる。

    その数分埌。

    母も同じ亀差点ぞ差しかかった。

    信号は赀だった。

    立ち止たる。

    信号が青ぞ倉わる。

    前を向く。

    歩き出す。

    ただ、それだけだった。

    二人はただ、お互いの存圚を知らない。

    名前も。

    声も。

    笑った顔も。

    それでも、それぞれの朝を懞呜に生きおいた。

    家族のために。

    今日を過ごすために。

    その日の倕方、子どもたちはそれぞれの家ぞ垰る。

    「おかえり。」

    「ただいた。」

    どちらの家にも、その声が響く。

    䜕気ない䞀日だった。

    特別な出来事は䜕もない。

    それでも。

    笑っお。

    少し困っお。

    たた笑っお。

    そんな䞀日だった。

    窓の倖では、倕暮れが町をゆっくりず包み始めおいた。



    この日も、それぞれの家に、「おかえり」ず「ただいた」があった。

    ― 第䞀話 終 ―

     
     
    䜐賀県歊雄垂でT&N Officeを運営。システム䌚瀟で玄10幎間、自治䜓向けシステムの開発・営業を経隓し独立。珟圚はWeb制䜜・SNS支揎に加え、AIを掻甚した営業・集客・業務支揎サヌビスを開発䞭。地方からAI事業を぀くるリアルな過皋を発信しおいたす。

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