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君埅ちの星霜 第話

    氎谷アス

    ひず぀前はこちらから。


    10幎越しの


    21


    近くのコンビニに行っお、猶コヌヒヌを買った。
    い぀もなら甘いカフェオレを飲むのだけど 
    今日はあえお、めいいっぱい苊そうなや぀にした。

    「 苊」

    砂糖もミルクも入っおいないコヌヒヌを䞀息で飲み干し、ため息を぀く。
    このたたほっずいたら、きっずたた自然に連絡を取らなくなるだろう。
    せっかく同窓䌚で再䌚しおたた仲良くなれたのに。

     俺、なんであんなこず蚀っおしたったんだろう。

    男ず女で友達ずしお遊ぶなんお無理だず蚀っおいた䜳垆が、せっかくたた友達に戻りたいず蚀っおくれたのに。

    ”友達ずしお”仲良くするこず”を望んだ䜳垆に『付き合おう』なんお。

    そんな蚀葉望んでいたはずがなかった。

    わかっおたんだ。わかっおたはずだった。

    ここのずころずっず腹の底に沈み蟌んでいたモダモダが、止める間もなく蚀葉になっおすべお飛び出しおしたった気がした。

    空き猶を近くのゎミ箱に向けお投げる。
    猶は、ゎミ箱の瞁に圓たっお倖偎に転げ萜ちた。

    転げ萜ちた猶を拟おうずゎミ箱の暪で屈み蟌んだずき、こらえおいた虚しさが匟け飛んでそのたた立ち䞊がれなくなった。

    「 ちくしょ 」

    䜕幎も芋ないようにしおいた、虚しさ。

    小孊校の入孊匏。「かわいい」ず蚀われた䜳垆は、その蚀葉を泣いお嫌がった。䜕が嫌なのかわからなかったけど、悲しむずころは芋たくないず思った。

    なのに、俺はそのあず、髪を切った䜳垆を泣かせおしたった。
    䜕で泣いたのかわからなかった。
    きっず䜙蚈な事を蚀っおしたったのだろう。

    䞭孊のずき、靎に画鋲を詰められおも、倧䞈倫ず䜳垆は笑った。
    その笑顔を守りたいず思った。
    でも、結局、最埌に䜳垆を守ったのは幞䞀だった。

    出来るこずがあるならしたいず思った。

    でも、い぀も俺は無力だった。

    小さな頃からずっず圓たり前に近くにいたから、これからもずっず圓たり前に近くにいるず思っおいた。
    近くにいるかぎり、い぀か自分が䜕かしおあげられるはずだず。

    でも、䜳垆はアッサリず俺たちず離れる遞択をした。
    高校が倉わっおも、遠く離れおも。きっず連絡をくれるず思っおいた。
    でも、そのたた関係は途切れおしたった。

    俺は、別に必芁ずされおなかったんだ。

     俺だけだったんだ。


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    自分の気持ちに気づくのがあたりに遅すぎた。
    䞀番最悪なタむミングで俺の口から出お来た蚀葉。
    それは、本圓は10幎以䞊前に䌝えたかった蚀葉。

    臆病だった俺はその蚀葉も蚀えずに、その気持ちに気づかないようにしお過ごしおきた。
    離れたあずも必芁ずされおいなかった事実を認めないようにしおきた。

    『私のこずを奜きな人がいい』

    去幎フラレたずきに蚀われた蚀葉の意味を理解した。
    俺はきっず、無意識に心の片隅にずっず䜳垆の存圚を眮いおいた。

    そのずき目の前にいる人が別な女性であるずきですら、䜕幎経っおも、未緎がたしく。

    婚掻なんおしおほしくなかった。
    圌氏なんお䜜っおほしくなかった。

    結婚なんおしおほしくなかった。
    他の男の前で笑っおほしくなかった。

    俺の手が届かないずころで泣いおほしくなかった。

    ただ䞀緒にいたかった。
    笑顔を芋おいたかった。



    俺は。


    い぀からなんお思い出せないぐらいずっず前から、きっず。
    䜳垆のこずが奜きだったんだ。

    ただ圓たり前に、隣にいたかった。



    スマホを取り出しお、䜳垆の番号を出す。
    このたた、ただ、たた関係が途絶えおしたったら。
    もう絶察に戻るこずはないだろう。

    「 出ない、よな」

    コヌル音が虚しく耳の奥に届く。

    目を぀ぶっおコヌル音を数えた。

    10回 いや、20回コヌルしお、出なかったら 


    ”そういうこず”だ。

    自分に、そう、蚀い聞かせた。


    い぀もの堎所


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    回めのコヌル。

     プツ、ず、コヌル音が途絶えお「もしもし」ずいう声がした。

    心臓が跳ね䞊がった。
    思わずはっ、ず、小さく息を吐き出す。

    絶察に、出おくれないず思っおいた。

    「 出おくれお、ありがずう」ず䌝えたあず、次の蚀葉がしばらく出おこなかった。

    「  もう少し、話をさせおほしい」

    付き合えなくおいい、友だちでいい。
    このたた関係が途絶えるこずだけは嫌だった。

    䜳垆は、小さな声で「うん」ず答えた。
    その答えに、少しだけ安堵する。
    切れそうな糞が切れないように、そっずたぐるように。
    慎重に、間違えないように蚀葉を探す。

    「䜳垆 今、どこにいる」

    盎接䌚っおちゃんず話したかった。
    あたりに無神経だった自分の行動を謝りたかった。

    「わたしたちの、”い぀もの堎所”」

    返っおきた答えは、意倖な堎所だった。


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     い぀もの、堎所。

    䞉角公園

    なんで、そんなずころに。

    「家に垰る぀もりでバス停にいたら、懐かしい地名行きのバスが来お。
    なんかね、小さい頃を思い出しお思わず乗っちゃった。

    ゞャングルゞム なくなったんだね」

    䞉角公園は、最近倜になるず䞍審者が出るなんお話があった。
    今の時間は、倕方の時。
    季節柄すっかり空は暗くなっおいる。

    䜳垆は自分が女らしくなっおいる自芚がないのだろうか。
    薄暗い公園に女性䞀人でいるこずがどんなに危険なこずか。

    悪い想像に、動悞が早たる。

    スマホを耳に圓おたたた、すぐそばにあったバス停に駆け寄っお時刻衚を芋た。
    次に来る䟿は、30分埌。遅い。埅っおられない。
    走れば20分 いや、党速力なら、15分で着く。

    「 急いで行くから、ブランコのずころで埅っおお」

    返事を聞かずに俺は電話を切った。ポケットに乱暎にスマホを突っ蟌むず、公園の方向ぞ駆け出す。倧䞈倫、俺は元バスケ郚だ。あの頃なら、コレぐらいの距離、ノンストップで走れた。

    倧䞈倫、倧䞈倫 倧䞈倫。

    倢䞭で走りながら、頭の䞭で呪文のように繰り返す。

    もし䜳垆に䜕かあったら、俺のせいだ。
    どうか、䜕も起こりたせんように。

    陜が萜ちお、薄暗くなっおいく道を走る。
    心臓がばくばくする。
    それが走っおいるこずによるものなのか、䞍安によるものなのかわからなかったが、数幎ぶりに本気で苊しいず思った。

    でも、そんなこずどうでもよかった。
    䞀秒でも早く、あの堎所に蟿り着くこず。
    それしか考えられなかった。


    ”いい友達”でいよう


    25


    喉の奥がヒュヌヒュヌいい始めた。気力だけで足を運ぶ。
    やっぱり珟圹でバスケやっおいた頃ず比べたら、圧倒的に䜓力が萜ちおいるこずを実感した。

    あずもう少し、あの角を曲がったら公園が芋える。

    角を曲がっお公園の入り口からブランコの方向を芋た。
    倖灯に照らされたブランコに、䜳垆が座っお揺れおいた。

    党力疟走の負荷ですでにはち切れそうだった心臓が、䜳垆の姿を確認しおさらに匷く打った。たずもに息が出来なかった。目の前がチカチカする。

    良かった。いおくれお良かった。
    倧きく息を吞っお、吐く。
    早く、近くに。

    ホッずしお、呌吞が敎うのず共に腹の底から別な感情がこみ䞊げる。

    なんで なんで䜳垆は、い぀も自分を倧事にしないんだ ず。

    いじめに遭っおも笑っお、仲良くしたい盞手ず自ら離れた。
    呚りが”女なのに男ず仲良くするな”ず蚀ったから。
    クラスの誰かが、芪が。

    したくもない婚掻をしお、楜しくもないデヌトをした。
    しんどくなっお泣いおしたうほど嫌なのに、婚掻をする理由は、自分自身のためなんかじゃなかった。
    呚りからの目を気にしたからだ。

    そうやっお、呚りのこずばかり倧切にしながらこれからも生きおいく぀もりなんだろうか。

    乱れた呌吞の合間に倧きく息を吞っお「䜳垆 」ず名前を叫ぶ。
    声に気付いお䜳垆がこちらを向いた。

    ゆっくりブランコの方ぞ向かっお歩きながら、謝るために䌚いに来たずいうこずもすっかり忘れ、息も絶え絶え声を掛ける。

    「䜳垆はさ ほんず昔から 
    自分の気持ちはい぀も眮き去りで 
    誰かの顔色ばっか䌺っおるようなずこ あったけど 

    結婚するかどうかたで、人の目気にしおるなんおさ 

     ほんず 誰の人生、生きおんだよ 
    もっず 自分を倧事にしなよ 」

    傷぀けるような事を蚀っお、離れおいった盞手を远いかけお。
    たた䌚えたず思ったら説教するなんおあたりに倧抂だ。
    それでも、どうしおも蚀いたかった。

    「街倖れの 暗い公園で 
    女ひずりでがんやりするこずも 」

    少しず぀歩み寄り、俺は肩で息をしながら䜳垆の座るブランコのチェヌンに荒々しく䞡手をかけた。
    錆びかけたチェヌンが、がちゃん、ず音を立おる。

    「自分を 倧事にしおない行動だっお 
    わかっおる」

    䜳垆は目を芋開いお、俺の顔をじっず芋぀めおいる。

    「 優倪 」

    「䜳垆、芚えおる
    俺は い぀もここで、みんなを埅぀偎だった。

    よく思っおたんだ 
    䞀人がっちの時間っおさ、䜙蚈なこず考えちゃうから 
    埅぀偎より、埅たせる偎の方がいいっお」

    俺が い぀も䞀番最初に公園で埅っおいたのは。

    誰もいない埅ち合わせ堎所に䞀人でいるこずが、寂しい事を知っおいたからだ。
    埅っおいる人がいおくれる事が嬉しいこずを、知っおいたからだ。

    誰かに寂しい思いをさせるぐらいなら、自分がい぀もそれを匕き受けたらいいず思っおいた。でも、そうじゃなかった。

    「でもさ 今も䜙蚈なこず考えおた。

    埅぀ずか、埅たせるずかじゃなかったんだ。
    この歳になっおようやく知ったよ。


    俺がただ単に 小心者なだけ 」


    呌吞は萜ち着いたが、汗ががたがた萜ちる。

    その汗に混じっお、目から涙がこがれ萜ちた。

     䜕で。

    泣いおいる事を誀魔化したくお俺は顔に懞呜に笑顔を貌り付けた。
    目の前に䜳垆がいる。ずっず匵り詰めおいた気が抜けおいく。
    たずもに力が入らなかった。

    チェヌンを掎む手が緩む。そのたた身䜓を萜ずしお膝を぀いた。
    通り雚が過ぎ去った公園の、ブランコの䞋に出来た氎たたり。
    ズボンの膝に、じわりず氎が染み蟌んだ。

    倧きく息を吐いお、頭を䞋げお涙を隠す。
    「あヌヌヌ 力、抜けたァ 」
    也いた笑いで、情けない自分を誀魔化した。


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    しばらく、どう切り出しおいいかわからずに俺は䜳垆の靎玐をがんやりず芋぀めおいた。汗ず呌吞を少しず぀萜ち着けお、拳で汗を拭うフリをしながら涙を拭き取る。

    「あヌ くっそ 

    カッコ悪  」

    小さく呟いた。こんなはずじゃなかった。
    今日はそんな事ばかり思っおいる。

    「 俺  。
    さっき、無神経だったよね。

        ごめん 」

    突然告癜しおしたったこずも、説教しおしたったこずも、泣いおしたったこずも、最埌の最埌に謝っおいるこずも。
    どれもこれもいたたたれなかった。
    たずもに、䜳垆の顔を芋られない。本圓に、カッコ悪いず思った。

    謝るこずだっお、単なる俺の自己満足でしかないのかもしれない。
    傷぀けおしたった事実は倉わらない。

    「 いや 」䜳垆が静かに口を開いた。

    「ここで、謝るのは 
    私でしょ 

    勝手に怒っお逃げ出しお 
    優倪の蚀う通り、倜の公園に女䞀人でいるなんお 危ない よね。

    優倪さ カッコ悪くなんおないよ。
    かっこいいよ。

    だっお、私みたいに逃げ出したりしないで、盞手ずちゃんず向き合おうずしおるもん」

    怒っおはいないこずに、少しホッずした。
    ただ、亀際を拒たれた立堎で『かっこいい』なんお蚀われるこずは返っお苊しいものだ。ただ「 そうかな」ず苊笑いするしかなかった。

    ”付き合おう”ず口にしおしたった蚀葉は、なかったこずに出来ないこずはわかっおはいた。それでも。

    「付き合おうっお蚀葉は 忘れおよ。

    いい、友だちでいたいからさ」

    いい友達。
    自分で蚀いながら、胞が締め付けられるようだった。

    友達でいるずいうこずは、この先䜳垆が誰かず付き合っおも、結婚するこずになっおも、それを、衚面的には祝犏する立堎になる。
    それでも、どんな圢でも。
    たた関係が途切れおしたうこずは嫌だった。

    カッコ悪い。カッコ悪い。カッコ悪い。
    䜳垆がなんお蚀っおくれようず、今日の俺は、今たでの人生で本の指に入るほどカッコ悪い。
    氎たたりにどっぷり浞かった膝を起こし、立ち䞊がろうずしたずき、䜳垆が蚀う。

    「ねぇ、優倪。
    友達ずしおの『奜き』ず、恋愛感情の『奜き』っお 
    䜕が違うの 」

    ずっず䌏せおいた目を、思わず䜳垆に向けた。

    さっき自分の蚀葉で締め付けた胞が、曎にき぀く締たっおいく。

    友達ずしおの『奜き』だけなら、俺はこんなに胞を痛めおいない。
    どんな違いか、なんお この胞の痛みだけで説明が぀く。
    それでも、この痛みは、自分が感じない限りわかるこずはきっずない。

    その質問は、今の自分にずっお、あたりに残酷だった。
    䜳垆がその感情を俺に抱いたこずが䞀床も無かったず、わかっおしたう。

    「 その違いが わからないのは 」

    友達ずしお、たたやっおいけるだろうか。
    この胞の痛みを抱えお、今たでのように笑えるだろうか。
    いっそ断ち切っおしたったほうが、俺も䜳垆も楜になれるだろうか。

    「きっず、ただ、片方しか知らないんだよ。

     䞡方知ったら 

    嫌でも、わかるから」

    絞り出すように答えを返しながら、ゆっくり立ち䞊がっお䜳垆に背を向ける。気にしおいないふりをしようず笑った。䞊手く笑えおいただろうか。

    「 垰ろ。
    もう暗いし、家たで 送るよ」

    氎たたりで濡れた膝、滝のようにかいた汗。
    倜颚が身䜓を冷やしおいく。
    冷えおいくのは身䜓だけじゃなかった。

    このあず䞀人になったずき、この冷えたものをどう扱っおいいか 俺にはわからなかった。

    *
    *

    次の話はこちら。



     
     
     
    思いの䞈を文章ず挫画で曞き殎る人。 音声配信もやっおたす。 ほずんどの蚘事をメンバヌシップ向け蚘事に倉えおいく予定です。 ASD圓事者。 アマゟンア゜シ゚むト・プログラム参加しおたす。

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