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せっかちな私への鉄槌①

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

    63歳女子、今でもせっかちだ。自他ともに認めるせっかちだ。
    横断歩道が青になると、後方からでもごぼう抜きで先頭に立つ。
    そして誰よりも早く渡り切る。
    心の中は意味不明のガッツポーズ「よっし!」

    そんな私が捻挫をした。
    左足首をひねり、歩くたびに痛みが走る。一歩踏み出すにも慎重に。
    かかとからそっと着地、ゆっくり体重を移動させる。
    『おい!スローモーションかい!』と、
    自分にツッコミを入れながら歩く。

    マンションの階段は手すりを持ち、そろりそろり。
    その横を80代くらいのおじいさんが追い抜いていく。
    「ちょっと待て!くそっ」
    負けじと追いかけて抜いてやろうと闘志を燃やす。
    だが足首が「ピキッ」と痛みを訴える。あえなく断念。

    何度も言うが私はせっかちだ。かなりせっかちだ。自分にもだが、
    タチの悪いことに他人に対してもだ。

    例えばバスの乗降口、お金を投入する寸前で財布を探す人には
    「なんで準備しとけへんねん!」と叫ぶ。もちろん心の中で、だが・・
    狭い道をゆっくり歩く人には
    「後詰まってる、はよ歩かんかい!亀!」と。
    もちろん口には出さない。心の中でだ。

    そう、毎回結構な勢いで罵っている。
    心の中の言葉なので、もちろん口には出してない。
    多分態度にも出ていない。
    …と思う。

    そんな私が今、その亀だ。
    通院のため、亀よりゆっくり歩いた今日。
    不安定な足の状態で駅前の人多さに圧倒される。
    速足で歩いてくる人におびえる。
    人っていつもこんなたくさん歩いていたっけ。
    ああ、こういうことか、
    私はこちら側にいたんだ。

    でも、静かな公園を歩くと
    不思議に世の中全体が急に穏やかになった気がするのだ。
    まぁ、私の歩く速度が落ちた分だけ、景色もゆっくり通り過ぎていくようになっただけなのだろうが。
    こんなに緑は濃かっただろうか。
    地面のタイル、こんな柄だったんだ。

    ああ、見えていなかったんだ。
    私は常にいつも目的地しか見ていなかったのかもしれない。
    見ようとはしていなかったしね。必要とは思わなかったし。

    足が治ったら、きっと私は、またスピード全開で
    早歩き日本代表を目指すのだろう。いや、たぶん間違いなく目指す。

    でも今だけは…

    そうだ、
    せっかく捻挫したんだし…な。

    次回の その3週間後の話はこちらです。
    「せっかちな私に降りた鉄槌②」


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