
展望台のお昼時
職場のビルの最上階。
展望台として一般開放されていて、誰でも使えるオープンスペース。
でも使うのは、職員のお昼休みくらい。
友達同士や、仕事で全体の昼休みからズレる人が使っているだけ。ポツポツと。
彼はお昼によくそこにいる。
背はとても高い。
185センチよりあるような気がするけど、僕の身長ではもう比べてもわからない。
短髪で体格も良い。
太いではなく、がっしりしてる。
そして、気を使ったようにとても優しく笑う。
そんなに大きな身体なのに、威圧感が全然ない。
よほど、気を使っているか、大人しいのだろう。
内面と外見を足して、それでも大人しいのだから、内面はどれほどか。
もちろん彼の所属する部署でも見る。
「彼が担当だから、彼に聞いて。」
「その時いたの彼だから。」
「これ、どうなってるの。」
私がたまに立ち寄る短い間に、
違和感を立て続けに感じる。
答えを知っているのに聞く質問、
怒りではなくもどかしさ、
無自覚な無責任と手助けの疲弊。
その空気はみんなの間をどんどん埋め尽くし、会話が減っていく。電話でも鳴らないと次の言葉が生まれない。
僕はどちらが悪いとも、
彼を守りたいとも思わない。
けれど、彼の話は聞いてみたいと思った。
彼は話すことが上手そうにはとても見えないから。
展望台の彼の席の近くにある自動販売機。
そこにはこのビル唯一の僕の好きなコーヒーが売っている。
実は僕もよくそこに行く。
買う前に目が合う。
「30分お昼ズレてるの?なんか飲む?」
「あ、いや、結構です。お気遣いいただきありがとうございます。」
はっきりとしっかり断る。
予想通り。
なんとなくだけど、
彼はコーヒーを勧められることに慣れていない。
僕も、僕の倍もあるような後輩の気を引くことに慣れていない。
そして会話も続かない。
次もう一度、聞いてみようかな。
コーヒー飲むかな、あいつ。