
無口な時には、無口に
異動の直後の進まない仕事。
口頭での専門用語も、
見慣れない様式の引き継ぎ書も、
全てが仕事の流れを止めてくる。
僕が順序を間違えて逆流させているのか。
血は血管を逆流しないらしい。
あらゆるところで静脈弁が機能し流れをとめる。
情報はつながらず、
巡るのは僕の疑問だけ。
うつむきながら自販機にコーヒーを買いに行く。
誰とも目を合わせず、
一人で歩くことに慣れてきている。
コーヒーを持って席に戻る。
席にコーヒーが置いてある。
日曜日の午前中のこのフロア。
僕の他には同級生がもう一人しかいない。
彼を覗くと、椅子を低くして顎を上げ、メガネにモニターの全面を映しながら、じっと見上げている。そんなに見ても、あまり変わらないのに。
仲は良いけど、なんて言っていいか分からない。
「あの…お疲れ」
彼は右手にいる僕に顔だけ向けて斜めに会釈。
手のひらを軽く上下にひらひらと、
どうぞどうぞの仕草。
一言も話さないまま、
僕のデスクの空気をもとに戻してくれた。
僕は平日に彼の好きな甘いものを買って届けた。
とても大きい袋のチョコレート菓子。
もらった彼は、その大きさに困っていた。
でも、人に勧めて一緒に食べていた。