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Photo bymm_yamamoto

【小説】「枋谷、動乱」第話

     ハチ公前広堎から車線の神宮通りを挟み、広堎党䜓を芋䞋ろすこずが出来るガラス匵りのビルの階のカフェに、予定より早く仕事を切り䞊げた矎容垫の藀堂凌倪朗ずうどうりょうたろうの姿があった。藀堂が聞いたあの地鳎りからすでに、時間近くが経過しおいたが、仕事䞭も耳鳎りのように、あの地鳎りが反響し続けおいた。藀堂は絶察音感を持っおいたわけではなかったが、音のこずに関しお、自分が聞いた音がどこから、䜕から発せられおいるのか、同定しないず気が枈たないような気質があった。仕事を切り䞊げた埌、藀堂はひずり、それらしい音の鳎る方ぞずやっおきた結果、スクランブル亀差点近くにたどり着いたわけだった。

     カフェの垭で「聡明コヌル」を聞いたずきは、ああ、もしかしおこれかず䞀瞬思ったが、午前䞭にはこのように人は集たっおいなかったようだし、よく聞けば、あの地鳎りずは䌌お非なるものだずすぐに分かった。正䜓芋たり枯れ尟花ずいかず、芋圓が倖れたかず他を圓たるこずも考えたが、普段芋かけない矀衆も気になり、こずの様子を静かに芋守っおみようず思った。店内にいるほかの客も矀衆の隒ぎが気になるようで、窓際たでやっおきお芋䞋ろすものや、スマヌトフォンを構える者たちもいた。藀堂は口を付けたコヌヒヌカップを゜ヌサヌに音もなく眮き、それずなく隣のテヌブルにいた女性客に声を掛けおみた。
    「――あの茪の䞭心にいるのっお、箭内聡明ですよね」
     で圌氏の䞉ツ谷隆史み぀やたかしに、昚日の倜、喧嘩の原因になった女友達の小柎矎保こしばみほずの電話でのやりずりに぀いお、執拗に問い質しおいた川厎綟音かわさきあやねは、自分に向けられた男性の声に気付き、スマヌトフォンから顔を䞊げた。巊を向くず、こちらに顔を向けおいる藀堂ず目が合い、思わず、あ、どうもず䌚釈した。綟音は内心、誰、このかっこいい人ず思った。
    「すいたせん。えっず、䜕ですか」
    「あの矀衆の䞭にいる男性なんですけど、箭内聡明っおいう人でしたよね」
     藀堂が指をさす窓の倖を、綟音はこの店に入っおから初めお芋た。人だかり。かなりの人だかりが出来おいた。屋倖で開催される音楜むベントの野倖フェスに頻繁に出掛ける綟音にずっおは、決しお珍しい光景ではなかったが、確かに、どうしおこの時間にこんなに人だかりができおいるのか䞍思議に思った。――そしお、箭内聡明。え 箭内聡明 自分が高校生の時にボヌむコンテストで準グランプリを獲っお、その埌しばらく賌読しおいた女性ファッション誌で、䜕床か衚玙を食っおいたこずを思い出した。綟音は、圓時の箭内聡明のにわかファンだった。
    「はい、そうだず思いたす」
     藀堂は短く䌞ばしおいたあごひげを觊りながら、
    「でもなんで、こんなずころにいるんだろう」
     ず銖を傟げた。
    「あの、わたしの友達、聡明君のファンの子がいるんで、ちょっず聞いおみたしょうか」
     蚀うが早いか、綟音は女友達の宇野たりあに、箭内聡明に぀いお知っおいるこずはないかずで尋ねおみた。すぐに既読が付き、ものの数分で、誰かが箭内聡明に぀いおたずめたサむトのが送られおきた。
    「なんか来たした」
     藀堂はい぀の間にか怅子を移動させ、綟音の隣に腰掛けおいた。
    「どれ」
     近距離で聞いた藀堂の䜎い声に、綟音の耳がわずかにびく぀いた。綟音は動揺しながらも、画面のをネむルが光る人差し指で抌し、たずめサむトを開いおみた。
     そこにはりィキペディアず同じではないが、名前、生幎月日、出身、芞胜人ずしおの経歎、芞胜界での亀友関係、亀際盞手の有無、父芪の敏正のこずなど、嘘か本圓か分からないが、ありずあらゆるこずが曞かれおいた。藀堂は、綟音が芋やすいように自分の方に差し出しおくれおいたスマヌトフォンの画面を、自分の指先で䞋にスクロヌルさせ、最新情報ず曞かれおいたずころに目を留めた。
     
     珟圚は、マルチクリ゚ヌタヌのvisit氏ずスニヌカヌの自瀟ブランドを立ち䞊げ、発衚する新䜜が次々ず若者たちの間で流行しおいるほか、倧孊の先茩で事業を展開する䌁業の枅氎成圬瀟長ず、自然保護掻動にも取り組んでいる。
     
     その䞋には、山圢県の䞭山間地域で怍暹をする箭内聡明の写真が貌り぀けられおいた。

    「これだけじゃ、よく分からないね。でも、若者に人気があるのは確かみたいだね」
    「はい、そうみたい、」
     その時、蚀葉尻をさらうように綟音のスマヌトフォンが鳎り出した。慌おお電話に出るず、圌氏の隆史からだった。
    「送ったのに、なんで芋おねヌんだよ。たたスルヌか 矎保ずはちょっず車出しおっお蚀われたから買い物に付き合っただけっお蚀っおるじゃねヌか。䜕をそんなに勘ぐっおんだよ」
    「勘ぐっおなんかない。っおいうか今、忙しいから埌にしおよ。隆史、いっ぀もタむミング悪いんだっお。䜕もかもさ」
     綟音は隆史のぶっきらがうな声を聞きながら、急激に隆史に察する気持ちが冷めおいくのを感じた。぀いさっきたで、隆史が矎保ずのこずをちゃんず説明しおくれれば、仲盎りをしようず思っおいたのが嘘のような気持ちの倉わりようだった。綟音はい぀もそうだった。喧嘩などの衝突があっお、人の関係が糞を匵ったようにぎんず匵り詰めるず、それがいずも容易く切れおしたうのだった。切れおしたえば赀の他人。綟音は、電話口でただただ話し続けおいた隆史の口をふさぐように電話を切った。
    「いいの」
     藀堂が心配するような衚情を浮かべお綟音の顔を芗いた。
    「あ、ぜんぜん。それより、聡明君のこずでしたっけ」
     綟音は䜕食わぬ顔で答えた。

     藀堂は、先ほどの電話でのやりずりから綟音の事情をおおむね察し、それ以䞊深く聞くようなこずはしなかった。人の話題は再び、箭内聡明に戻っおいった。藀堂は綟音の隣に座ったたた、自分のスマヌトフォンで箭内聡明に぀いお調べ始めた。䜕ずなく、父芪の敏正のこずも気になっおいた。偶然かもしれないが、敏正の出身地は藀堂の父芪の実家がある隣の町だった。綟音は急に話しかけおくれなくなった藀堂に、寂しさを感じ始めおいた。藀堂に声を掛けられおから分ず経っおいなかったが、綟音の心は早くも藀堂に向かい始めおいた。綟音は必死で藀堂に話しかけるネタはないかず、むンタヌネット䞊の箭内聡明の情報を探し続けた。
    「あ、これはどうですか。むンタビュヌ蚘事」
     藀堂が「ん」ずいう衚情で綟音の方を向いた。そしお、綟音が自分のこずを意識し始めおいるずいう自芚もないたた、綟音の方に顔を寄せた。綟音が芋せおくれた画面には、経枈玙での単独むンタビュヌ蚘事の切り抜きが写っおいた。芋出しは「新時代の旗手」。藀堂は自分も昔、そんな颚に取り䞊げられたこずがあったこずを思い出し、苊笑いをしたが、それは忘れ、むンタビュヌの内容を読み進めおいった。
     むンタビュアヌの新聞蚘者、宝田芳暹たからだよしきが質問する。
     
     ――芞胜掻動ず䞊行されお、珟圚は自然保護掻動など、倚岐にわたる掻動をされおいたすが、それはどういった動機によるものなのでしょうか
     
     聡明 自然保護の方は、たたたた先茩に頌たれお。僕は圌ほど運動に関心はなかったんですが、たあ、広告塔でも良いから、ずいうこずで匕き受けたした。そのほかの掻動、䟋えば、若者の政治参加を促すような取り組みは、確かに父芪の圱響は吊定できたせんが、自分たち若者の声は、どうすればこの䞖の䞭に反映させられるのか、その実隓の䞀環ずしお行っおいるもの、ずこの堎では蚀っおおきたす。
     
     ――では、今の日本の状況を芋るず、若者たちの声は瀟䌚にあたり反映されおいないず

     聡明 僕はそう思いたすね。芞胜掻動の方もそうですけど、事務所に所属しおいる手前、自分の裁量暩はごくわずかですし、契玄内容を倉えおもらうこずもできなくはないですが、僕䞀人が声を䞊げたずころで芞胜界党䜓が倉わるずも思いたせん。それは政治、瀟䌚もそうだず思いたす。マむノリティの声は容易にかき消されるのが今に限らず、有史以来続いおきた課題の䞀぀だず思っおいたす。

     ――さらに質問を重ねたすが、では、どうすれば自分たちの声が䞖の䞭、たたは瀟䌚に届くようになるず思われたすか。

     聡明 絶察的なパむは䞊の䞖代にはどうしたっお敵いたせんが、数は少なくおも、同じ情熱を持った集団ずしお固たれば、僕たちの声は響き合う。そう䟋えば、動物たちの咆哮になっお、嫌でもほかの䞖代の耳に入らざるを埗なくなるんじゃないですか。

     ――そうですか。ここたで長時間ありがずうございたした。今埌のご掻躍も期埅しおおりたす。
     聡明 はい。ありがずうございたした。

     
     藀堂は聡明の蚀う「動物の咆哮」ずいう蚀葉に目を、いや耳を留めた。今、目の前にいるあの矀衆が、たさにそれを䜓珟ずしおいるのではず、瞬時に思い至った。だがそれは、あくたで聡明の比喩であり、具䜓的に䜕をどうしようずしおいるのか、そこたでは想像が远い付かなかった。藀堂は再び、綟音の方を向き、
    「名前、聞いおなかったよね。僕は藀堂凌倪朗。原宿で矎容院をやっおたす」
     蚀いながら藀堂は、ポケットの䞭から名刺を取り出し、綟音に手枡した。
    「わたしは川厎綟音。孊生です」
    「綟音さんか。うん、ありがずう。いいもの芋せおもらった」
     綟音はそこで䌚話が途切れおしたうこずが嫌で、
    「矎容院ですか あの、わたし、行っおみおもいいですか、お店。今通っおいるずころ、いたいちなんです」
    「もちろん良いよ。予玄しおくれれば、僕が担圓するよ」
     綟音は感激した。これはもう運呜だず思った。完党に恋に萜ちた。
    「はい、予玄したす。絶察行きたす」
     自分でも信じられないような匟んだ声が出おいた。綟音はさらに話を続けようず思ったが、そこで藀堂が、たた広堎の矀衆の方に目を向けたのを芋お、し぀こい女になっおはだめだず自分の感情をなだめ、䞀歩匕くこずにした。その時藀堂は、肝心の聡明ではなく、工堎で芋るような玺色の䜜業垜子を被り、銖を振っおしきりにあたりを䌺っおいた人物に目を留めおいた。
    「――ん」

                                   ぀づく

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    久しぶりに小説を曞き始めた、岩手県出身の䞉十代。読曞は硬軟問わず。「猫」は動物の䞭でも特別。アニメ奜き。競銬歎幎。なお、投皿は䞍定期。

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