「29位:サン=サーンス第1番」を、私はあえて推したい
ーーFire TVの特等席で観る、ピアノとヴァイオリンが火花を散らす超高速の緊迫感
ぶっちゃけの話をしますね。
サン=サーンス(1835年〜1921年)のヴァイオリン協奏曲といえば、世間の誰もが「第3番」ばかりを名曲だと騒ぎます。でもね、私はどっちかと言うと、この「第1番」を熱烈にオススメしたいんですよ。
ここに、クラシック愛好家をニヤリとさせる面白い歴史の妙があります。サン=サーンスが残した番号付きの協奏曲は全部で3曲あるのですが、実は作曲された順番と番号があべこべなんです。
最初に作られたのは、1858年(彼が23歳の時)の『第2番』でした。ところがこれの出版が大幅に遅れてしまう。その間に、1859年(彼が24歳の時)に作られた『第1番』が先に世に出てしまった。だから番号が入れ替わってしまったんですね。ちなみに、世間が大好きなあの『第3番』が生まれたのは、それから20年ほど経った1880年(彼が45歳の時)のことです。
歴史の波に埋もれた1858年作の『第2番』は、今ではほとんど演奏されない幻の曲となっていますが、実はFire TVを開いてYouTubeで検索すれば、その幻の2番だってちゃんと聴くことができます。これも凄い時代ですよね。
外されない定番の3番は40代の成熟した名曲ですが、私が心から魂を震わせたのは、弱冠24歳のサン=サーンスが若きエネルギーを爆発させて書いた、1859年作の『第1番』なんです。
ここで、一つ面白いツッコミを入れたくなるんですよ。
彼は45歳で第3番を書いた後、86歳で亡くなるまで40年以上の時間があったわけです。その間、ピアノ協奏曲第5番『エジプト風』やチェロ協奏曲第2番といった歴史的な名作協奏曲は意欲的に書いているのに、なぜヴァイオリン協奏曲だけはもう一本も書こうと思わなかったのか。もうあの3番で、ヴァイオリンという楽器の可能性をすべてやり尽くしたと、天才みずからが悟ったのでしょうか。そう考えると、クラシックの歴史がぐっと立体的に見えてきませんか?
でもね、その完成された3番のずっと手前、24歳の彼が名手サラサーテのために意気揚々と書き下ろしたこの『第1番』は、演奏時間がわずか12分足らずの、まさに難曲中の難曲、超高速の嵐のような曲です。大オーケストラをバックにドカンと鳴らすのもいいですが、私はどっちかと言うと、オーケストラの伴奏をピアノ1台に置き換えた、あの2人だけの演奏が素晴らしいと思うのです。
テレビの画面でFire TVを開いて検索してみてください。小さなサロンのような場所で、ピアニストとヴァイオリニストが1対1で向かい合い、この超高速の難曲をやり切っているライブ映像がいくつも見つかります。
大オーケストラがいない分、お互いの息遣いや、一瞬のテンポの奪い合い、指先の恐ろしいまでのテクニックが、画面を通じて剥き出しのまま迫ってくる。クラシックを「観る」醍醐味が、このピアノ伴奏版の第1番にはギュッと凝縮されているんです。演奏が終わって2人がやり切った表情で握手を交わす姿を特等席で目撃したとき、私はもう、朝からエネルギーが120%全開になってしまいました。
実は私、16,000字に及ぶ『ヴァイオリン協奏曲ベスト30』という大作エッセイを書き上げているんですけれど、今回のサン=サーンス第1番は、まさにその29番目に選んだ一曲なんです。
私のnoteの目次からポンとタップして解説を読み、手元のリモコンでFire TVの音声入力を呼び出す。ただそれだけで、自宅のリビングが世界最高峰の緊迫した演奏会場に早変わりします。
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定番の3番ばかりを聴いて満足しているなんてもったいない。
これからの季節、ドクダミや枇杷の野草茶をすするお茶の間で、この12分間の濃密な火花を、ご一緒に目撃してみませんか?
