見出し画像

Fire TVの大画面で味わい尽くす、ヴァイオリン協奏曲ベスト30

――リビングを最高峰のコンサートホールに変える、名曲と名演の完全保存版



Ⅰ. はじめに

こんにちは、二刀流壁打ちテニスのエッセイストhideです。

テニスの壁打ちというのは、打てば打つほど正確な球が返ってくる、自分との真剣勝負の世界です。実は音楽も同じで、こちらが本気で耳を澄ませば澄ますほど、作曲家や演奏家たちが込めた凄まじいエネルギーが、ダイレクトに心へ跳ね返ってきます。

そんな私のクラシック熱に、先日、強烈なストレートが打ち込まれました。

9月23日のこと。私はミューザ川崎シンフォニーホールにいました。お目当ては、入場無料ながらいつも極上の響きを届けてくれる「なごみ管弦楽団」の第20回定期演奏会。そこで演奏されたサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番を聴いて、私は文字通り心を撃ち抜かれてしまったのです。

手元のプログラムを読み返してみると、そこにはハに点々の「バイオリン」ではなく、ウに点々で「ヴァイオリン協奏曲」と誇らしげに印刷されていました。

実はこの表記、日本の新聞やテレビといった場所では、誰にでも親しみやすい「バ」を使うのがルールになっています。しかし、音楽の専門誌やプロの楽譜といった本格的な世界では、原音の「V」の響きを重んじて「ヴァ」と書くのがお約束。

面白いことに、それがたとえ街の無料コンサートであっても、彼らのプログラムには決まって「ヴァイオリン」の文字が並びます。そこには、「無料だからと妥協はしない。私たちは真剣に音楽と向き合っているんだ」という演奏家たちの静かなプライドが透けて見えるようで、言葉を扱う者としてなんだか嬉しくなってしまいます。

そんなこだわりのステージで、ソリストの瀬﨑明日香さんの弓が紡ぎ出したフランス音楽ならではの洗練されたエレガンス。普段はそこまで熱心に聴き込んでいなかったはずのこの曲が、生のオーケストラの中でこれほど輝く宝石だったとは。「これはうかうかしていられないぞ」と、胸の奥で眠っていたクラシックファンの血が激しく呼び覚まされました。

家に帰っても興奮が収まらない私は、リビングのテレビに向かい、最近の秘密兵器である「Fire TV」のスイッチを入れました。YouTubeの大画面とリビングのスピーカーを使って、自宅を最高峰のコンサートホールに変えるためです。

そこで真っ先に検索したのは、かつて私を狂わせた、あの伝説的な映像。五嶋みどりさんと、巨匠クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルによる1995年のチャイコフスキーです。

大画面に映し出される、当時23歳頃のみどりさん。その小柄な体からは想像もつかない圧倒的な集中力で楽器を鳴らしきり、火花を散らすような超絶技巧を繰り出します。時を超えた名演の凄まじい熱量がリビングに満ちていくのを感じながら、私は思いました。

「よし、この際、ヴァイオリン協奏曲のベスト30を頭から体験し直してみよう」

音楽評論家の難しい引用ではなく、ひとりのクラシックファンとして、私のツッコミを交えながら少し細かく分解してみたいと思います。文末には、Fire TVのYouTubeですぐに私と同じ極上の体験ができる「とっておきの検索キーワード」も※印で優しく添えておきます。

さあ、リビングのテレビの準備はいいでしょうか。いよいよ堂々のカウントダウン、まずはすべての旅の始まりとなる、あの王道の超名曲から見ていきましょう。

Ⅱ. 珠玉のヴァイオリン協奏曲ベスト30

【1位:メンデルスゾーン――ドイツ・ハンブルク生まれ(1809年〜1847年)の完璧主義イケメンが6年熟成させた哀愁】

クラシックを普段聴かない人でも、冒頭のあの「美しくも切ない、流れるようなメロディ」が耳に飛び込んできた瞬間、「あ、これ知ってる!」と一瞬で心を掴まれる永遠の超名曲です。文句なしの、全ヴァイオリン協奏曲の王座に君臨する作品。

さて、ここで基本中の基本。彼はドイツのハンブルクという港町で生まれた生粋のドイツ人です。
ただ、普通の作曲家のような「貧乏で苦労して……」という影は一切ありません。裕福な銀行家の家に生まれ、容姿端麗、頭脳明晰、絵画もプロ級という、天が何物もアドバンテージを与えすぎた超エリート。そんな彼が、当時の名ヴァイオリニストだった親友のためにこの曲を書き始めたのですが、納得がいかずに手直しを繰り返し、完成までにかけた歳月はなんと「6年」。完璧な一打が出るまで、6年間ひたすら壁に向かってストイックに打ち込み続けたような執念です。

だからこそ、独奏ヴァイオリンの華やかさと、オーケストラのサポートがこれ以上ないほど見事に計算し尽くされています。特に第1楽章の途中で、オーケストラがピタッと止まり、ヴァイオリンがたった一人で超絶技巧を披露する「カデンツァ」という見せ場があるのですが、そこからオーケストラが再び静かに、しかし最高にドラマチックに合流する瞬間のゾクゾクするような美しさは、何度聴いても鳥肌が立ちます。6年熟成のコクは伊達じゃありません。
※ Fire TVでの検索キーワード:ヒラリー・ハーン メンデルスゾーン

【2位:ベートーヴェン――ドイツ・ボン生まれ(1770年〜1827年)の頑固親父が叩き出す、不屈の王道】

モーツァルトが天上の才能なら、彼は人間が血の滲むような努力で築き上げた「構築美」の塊。ここでまた基本データですが、彼はドイツのボンという街で生まれた、こちらも大御所ドイツ人です。のちに音楽の都ウィーンへ渡って大活躍するわけですが、彼の人生はとにかく「逆境」との戦いでした。

そんな不屈の頑固親父が遺した唯一のヴァイオリン協奏曲が、このニ長調の作品。これ、冒頭がとにかくユニークなんです。曲が始まると同時に、ティンパニが「ポコ、ポコ、ポコ、ポコ」と4回、静かにリズムを叩き出します。まるで部屋のドアをノックされるようなこの素朴な音が、これから始まる壮大な音楽のすべての土台になっているという、神がかった設計図。耳が聞こえなくなるという絶望の淵に立ちながら、これほどまでに気高く、美しく、堂々とした王者の音楽を作り上げた執念には、ただただ脱帽するしかありません。※ Fire TVでの検索キーワード:イツァーク・パールマン ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲

【3位:ブラームス――ドイツ・ハンブルク出身(1833年〜1897年)の照れ屋な熊親父が紡ぐ、渋すぎる情熱】

1位のメンデルスゾーンと同じくドイツのハンブルクで生まれた生粋のドイツ人ですが、中身は真逆。あちらがスマートなエリートなら、こちらは頑固でシャイ、いつもモコモコの髭を蓄えていた、まるで熊のようなおじさんです。

そんなブラームスが遺した唯一のヴァイオリン協奏曲は、一言で言うなら「とにかく重厚で男らしい」。普通の協奏曲って、主役のヴァイオリンを目立たせるためにオーケストラは一歩引くものですが、この偏屈おじさんは違います。「俺のオーケストラに負けないくらい、お前もドッシリ弾け!」と言わんばかりに、交響曲並みの分厚い音の壁をぶつけてくるのです。当時の演奏家から「ヴァイオリン『に対する』協奏曲だ(難しすぎる!)」と文句を言われたというツッコミどころ満載のエピソードも納得の弾き応え。しかし、ラストの第3楽章で、ハンガリーの民族舞踊のような熱いリズムが爆発する瞬間のカッコよさは、一度聴いたら病みつきになります。
※ Fire TVでの検索キーワード:イツァーク・パールマン ブラームス ヴァイオリン協奏曲

【4位:チャイコフスキー――ロシア・ヴォトキンスク出身(1840年〜1893年)のガラスのハートが爆発させた、あまりにも熱いパッション】


前書きでも触れた、私がリビングのFire TVの前で言葉を失った、あの伝説の名曲です。全ヴァイオリン協奏曲の中で、最も華やかで、最もエモーショナルな超人気作。

ここで基本データ。彼はロシアのヴォトキンスクという自然豊かな街で生まれたロシア人です。彼の音楽といえば、誰もが一発で涙するような美しいメロディのオンパレードですが、本人(メンタル)はというと、実は超がつくほどの「ガラスのハート(繊細さん)」。この曲を書き上げた時も、当時の大御所ヴァイオリニストから「こんな曲、難しすぎて演奏不可能だ!」と全否定され、大ショックを受けてしばらく落ち込んでしまったというツッコミどころがあります。

しかし、いざ初演されると世界中で大爆破。ロシア的な深い哀愁を帯びたメロディから、フィナーレに向けて狂気のごとくテンションが上がっていくその展開は、聴き手の血を湧き肉躍らせます。演奏不可能と言ったおじさん、大反省ですね。
※ Fire TVでの検索キーワード:五嶋みどり アバド チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

【5位:シベリウス――フィンランド・ハメーンリンナ出身(1865年〜1957年)の凍てつく氷の下で燃え盛る、狂おしいほどの情熱】


現代のクラシック界、特にアマチュアオーケストラの演奏会でも、チャイコフスキーやメンデルスゾーンに並ぶ圧倒的な人気を誇るのがこの曲です。

彼は北欧フィンランドのハメーンリンナという街に生まれた、フィンランドの国民的英雄。実はシベリウス、若い頃は本気で「プロのヴァイオリニスト」を目指していたのですが、あがり症だったためにその夢を断念したという、ちょっと切ない過去があります。だからこそ、この唯一の協奏曲には「ヴァイオリンという楽器への愛と未練」がこれでもかと凝縮されているのです。

曲が始まった瞬間、北欧の凍てつく霧のようなオーケストラの響きの中から、ヴァイオリンがツララのように鋭く、美しく語りかけてきます。終始、北欧の冷たい空気感が漂っているのですが、その奥底でマグマのような情熱がメラメラと燃えたぎっている。弾き手には超絶技巧を要求する曲ですが、その圧倒的な格好良さに、聴き手は一瞬でノックアウトされます。
※ Fire TVでの検索キーワード:ヒラリー・ハーン シベリウス ヴァイオリン協奏曲

【6位:ブルッフ――ドイツ・ケルン出身(1838年〜1920年)の、甘美なメロディを紡ぎ続けた職人による究極のメロウ】


1位のメンデルスゾーンに負けず劣らず、世界中の演奏会で愛され続けているロマン派の大傑作です。

ここで基本データ。彼はドイツのケルンに生まれたドイツ人です。ブルッフの人生を一言でいうなら「一発屋の悲哀」。彼は生涯でたくさんの素晴らしい曲を書いたのですが、世間はこの「ヴァイオリン協奏曲第1番」があまりにも好きすぎて、何を作っても「やっぱり第1番がいいね」と言われてしまうという、なんとも切ないツッコミどころを持っています(本人も後半生はかなり愚痴をこぼしていました)。しかし、それも納得。第1楽章のどこか不穏でドラマチックな導入から、第2楽章の「これでもか!」というほど甘く切ない、胸を締め付けられるようなメロディの波。そして第3楽章の、弾けるようなフィナーレ。どこを切り取っても耳が幸せになる、贅沢極まりない名曲です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ジャニーヌ・ヤンセン ブルッフ ヴァイオリン協奏曲

【7位:サン=サーンス――フランス・パリ出身(1835年〜1921年)の、多才すぎる天才が魅せるフランスのエレガンス】


さあ、満を持して登場です!9月23日、私がミューザ川崎で「なごみ管弦楽団」と瀬﨑明日香さんの手によって、この壮大な旅へと引きずり込まれる原因となった運命の曲。

彼はフランスのパリで生まれた、フランス音楽界の巨頭。
このサン=サーンスという男、実は音楽だけでなく、数学、天文学、考古学、果ては哲学の論文まで書いてしまうという、ちょっと意味が分からないレベルのマルチ天才です。そんな彼が、当時のスペイン出身の天才ヴァイオリニスト・サラサーテのために書いたのがこの第3番。
第1楽章の冒頭、オーケストラの不穏な刻みの中から、ヴァイオリンが低音でガツンと情熱的なテーマを弾き出す瞬間のカッコよさは異常です。そして第2楽章の、まるで地中海の舟歌のような優美さと、フルートとヴァイオリンの透き通った音が重なる瞬間の美しさ。知的で洗練されていながら、どこか引き締まったドラマがある、ベスト30の中でもとりわけ気品に満ちた宝石のような作品です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ギル・シャハム サンサーンス ヴァイオリン協奏曲第3番

【8位:モーツァルト――オーストリア・ザルツブルク出身(1756年〜1791年)の、19歳の天才が放つみずみずしい光と遊び心】


「世界で最も愛されている作曲家」のトップに君臨する音楽の神様。彼が10代の終わりに書いた、きらめく名作です。

彼はオーストリアのザルツブルク生まれ。
モーツァルトは生涯に5つのヴァイオリン協奏曲を書きましたが、なんと第3番から第5番までの傑作を、19歳のときのわずか数ヶ月の間で一気に書き上げたという、相変わらず凡人の脳みそでは理解できないツッコミどころを持っています。
特にこの第5番は「トルコ風」というニックネームがついており、第3楽章の途中で、当時はやっていた異国情緒あふれるトルコ軍楽風のリズムが突如乱入してきます。チェロとコントラバスが、弓の毛ではなく「木の部分」で弦をパチパチと叩く特殊な奏法が登場するなど、大画面で観ていると思わず「おっ!」と声が出るような遊び心が満載の、最高に楽しい名曲です。
※ Fire TVでの検索キーワード:アンネ=ゾフィー・ムター モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番

【9位:パガニーニ――イタリア・ジェノヴァ出身(1782年〜1840年)の、悪魔に魂を売った男の超絶技巧オンパレード】


「ヴァイオリンのテクニックを一人で100年進めた」と言われる、伝説の怪物の名曲です。

彼はイタリアのジェノヴァ出身。パガニーニのツッコミどころは、その常軌を逸した超絶技巧のせいで、当時は本気で「あいつは悪魔に魂を売って指を動かしているんだ」と噂され、裁判まで起こされそうになったという映画のようなエピソード。この第1番は、そんな彼の「俺の超絶技巧を見ろ!」というドヤ顔が目に浮かぶような仕掛けが満載です。超高速のアルペジオや、左手の指で弦を弾くピチカートなど、ヴァイオリンという楽器ができる限界の技がこれでもかと詰め込まれています。それでいて、イタリア人らしい、オペラのアリアのようにつややかで美しいメロディが流れるのが心憎いところ。聴いているだけでスカッとするエンターテインメント作品です。
※ Fire TVでの検索キーワード:アレクサンダー・マルコフ パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番

【10位:ショスタコーヴィチ――ロシア・サンクトペテルブルク出身(1906年〜1975年)の、国家の重圧と戦う狂気と圧倒的なエネルギー】


20世紀の旧ソ連という、一歩間違えればシベリア送りにされる暗黒の時代を生き抜いた天才の、息の詰まるような大傑作です。

彼は旧ソ連(現ロシア)のサンクトペテルブルク生まれ。
この第1番が書かれた当時、ショスタコーヴィチは国家から「お前の音楽は退廃的だ!」と激しく批判されており、せっかくこの命がけの傑作を書き上げたのに、スターリンが亡くなるまで何年もタンスの奥に隠し持っていたという、歴史の重みを感じる悲劇があります。
曲は終始、張り詰めた緊張感に満ちています。特に、ヴァイオリンがたった一人で延々と狂気的なソロを弾き続ける第3楽章後半のカデンツァから、そのままノンストップで爆発的なフィナーレ(第4楽章)へなだれ込む展開は、圧巻の一言。お気楽に聴くことは絶対に許されない、魂を鷲掴みにされるエネルギーの塊です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ヒラリー・ハーン ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番

【11位:ラロ――フランス・リール出身(1823年〜1892年)の、フランス人が描いた、情熱満載のスペイン大活劇】


タイトルは「スペイン交響曲」となっていますが、中身は完全に「5楽章のヴァイオリン協奏曲」という、これまたタイトルからツッコミ待ちのような名曲です。

彼はフランスのリール生まれ。
生粋のフランス人なのですが、当時は異国情緒あふれるスペイン風の音楽が大流行しており、彼もその波に乗ってこの曲を書きました。これが大ヒット。
全編にわたって、スペインの踊りのリズムや、ギターをかき鳴らすような情熱的な響きがこれでもかと登場します。洗練されたフランスの作曲家が、ちょっと背伸びをして「アミーゴ!」と情熱的に迫ってくるような、キャッチーでとにかく楽しい名曲。アマオケでも、演奏すると絶対に盛り上がる人気レパートリーです。
※ Fire TVでの検索キーワード:ヴィルデ・フラング ラロ スペイン交響曲

【12位:ドヴォルザーク――チェコ・ネラホゼヴェス出身(1841年〜1904年)の、素朴な田舎親父が紡ぐ、ボヘミアの哀愁とステップ】


交響曲「新世界より」であまりにも有名なドヴォルザークが遺した、隠れた熱い名曲です。

彼はチェコ(当時はオーストリア帝国)のボヘミア地方生まれ。
ドヴォルザークのツッコミどころは、あれだけの世界的大作曲家になっても、中身は生涯「素朴な田舎の鉄道マニアの親父」のままだったこと。機関車の車体番号を覚えるのが趣味という彼が書いたこの協奏曲は、チェコの民族舞踊のステップや、どこか懐かしい郷愁を誘うメロディが満載です。
ブラームスに激賞されて世に出た彼らしく、ブラームス風のドッシリとした重厚感がありながら、フタを開けるとチェコの豊かな自然や風が吹き抜けていくような、なんとも心地よい名作です。
※ Fire TVでの検索キーワード:アンネ=ゾフィー・ムター ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲

【13位:プロコフィエフ――ウクライナ・ソンツォフカ出身(1891年〜1953年)の、おとぎ話の裏に潜む、鋭い毒気と幻想美】


20世紀ロシア(ウクライナ)の天才児が、弱冠26歳で書き上げた、あまりにも美しい第1番です。

彼は現在のウクライナ(当時はロシア帝国)のソンツォフカ生まれ。
プロコフィエフといえば、皮肉屋で、あえて尖った不協和音をガツガツ打ち鳴らす「音楽の過激派」として有名だったのですが、この第1番の冒頭はツッコミたくなるほど意外。まるで夢の中、あるいは静かなおとぎ話の森に迷い込んだかのような、ヴァイオリンの幻想的で透き通るような美しいメロディで始まります。
もちろん、途中で彼らしい「毒気」や「お化けが飛び出してくるようなコミカルなリズム」もちゃんと暴れるのですが、最後はまた静かに夢の世界へと戻っていく。20世紀の音楽って難しそう……と思っている人にこそ、Fire TVの大画面と良い音で体感してほしい、超スタイリッシュな傑作です。
※ Fire TVでの検索キーワード:レオニダス・カヴァコス プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番

【14位:コルンゴルト――チェコ・ブルノ出身(1897年〜1957年)の、ハリウッドの帝王が映画の街から逆輸入した、豪華絢爛ロマンチシズム】


クラシックファンならずとも、映画好きな人なら一発でノックアウトされる、とびきりロマンチックでゴージャスな20世紀の隠れた超名曲です。

彼は現在のチェコ(当時はオーストリア=ハンガリー帝国)のブルノ生まれ。神童としてウィーンで大活躍した後、ナチスの迫害を逃れてアメリカへ渡り、ハリウッドの映画音楽の礎を築いたという映画のような人生を送った人です。彼のツッコミどころは、アカデミー賞を何度も獲るほど映画音楽で大成功したのに、戦後「やっぱり純粋なクラシックの協奏曲を書きたい!」と、自分が手がけた映画音楽の極上メロディを惜しげもなく使い回してこの曲を作ったこと。
おかげで、全編これでもかとドラマチック。まるで映画のスクリーンから飛び出してきたかのような、きらびやかで甘美な世界がリビングいっぱいに広がります。
※ Fire TVでの検索キーワード:レイ・チェン コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲

【15位:ヴィヴァルディ――イタリア・ヴェネツィア出身(1678年〜1741年)の、全人類が知っているバロック協奏曲の絶対王者】


もはや説明不要。クラシック音楽の歴史において、「協奏曲」というジャンルを決定づけた、バロック期の金字塔『四季』です。

彼は水の都イタリア・ヴェネツィア生まれ。赤毛の神父さんでありながら、女子孤児院の音楽の先生として、彼女たちのために凄まじい数の協奏曲を量産したというバイタリティの塊です。この『四季』は、「春・夏・秋・冬」の4つのヴァイオリン協奏曲のセット。
「春」の小鳥のさえずりや、「冬」の寒さに身震いする足踏みの音など、大画面のYouTubeでバロックアンサンブルの生き生きとしたアイコンタクトを観ながら聴くと、300年以上前の音楽とは思えないほどのポップさと疾走感に、改めて新鮮な衝撃を受けます。
※ Fire TVでの検索キーワード:ビオンディ 四季 ヴィヴァルディ

【16位:グラズノフ――ロシア・サンクトペテルブルク出身(1865年〜1936年)の、ロシア・ロマン派最後の輝き、途切れないメロディの迷宮】


アマオケのチラシで見かけると、通が「おっ、今回は渋い名曲を選んできたな」と嬉しくなる、ロシア・ロマン派の隠れた大傑作です。

彼はロシアのサンクトペテルブルク生まれ。
グラズノフのツッコミどころは、若い頃は神童として騒がれ、後に音楽院の院長としてショスタコーヴィチらの才能を見出した偉い人なのですが、大の「お酒好き」で、授業中も机の引き出しに隠したウォッカをストローで飲んでいたという、かなりお茶目なエピソード。
そんな彼が書いたこの曲は、全3楽章が途切れなく一気に演奏されます。ロシア特有の地平線を眺めるような甘美で雄大なメロディが、ヴァイオリンによって延々と紡がれ、最後はロシアの華やかなお祭りのような大盛り上がりで幕を閉じます。聴きやすさはベスト30の中でもトップクラスです。
※ Fire TVでの検索キーワード:庄司紗矢香 グラズノフ ヴァイオリン協奏曲

【17位:ハチャトゥリアン――グルジア・トビリシ出身(1903年〜1978年)の、原色系の民族リズムが爆発する、アマオケ最高のご馳走】


「剣の舞」であまりにも有名なハチャトゥリアンが、自身の故郷の血をたぎらせて書いた、爆発的なエネルギーの協奏曲です。

彼は現在のジョージア(旧グルジア)のトビリシに生まれたアルメニア人。
彼の音楽の特色は、なんといっても「コーカサス地方の強烈な民族リズムとメロディ」。この曲も、始まった瞬間から、まるで乾いた大地を馬で疾走するようなエキゾチックなリズムが炸裂します。
独奏ヴァイオリンは休む暇もなく超絶技巧を叩きつけ、オーケストラは原色系の派手な色彩で大暴れする。アマオケで演奏すると、楽団員も聴衆もアドレナリンが止まらなくなるという、ライブ感満点のスリリングな傑作です。
※ Fire TVでの検索キーワード:エマニュエル・チェクナヴォリアン ハチャトゥリアン

【18位:ヴィエニャフスキ――ポーランド・ルブリン出身(1835年〜1880年)の、天才ヴァイオリニストが遺した、泣きのメロディとスラヴの哀愁】


自身もパガニーニの再来と恐れられた19世紀の天才スターが書いた、ロマン派ヴァイオリン音楽の最高峰の一つです。

彼はポーランドのルブリン生まれ。ヴィエニャフスキのツッコミどころは、あまりにもヴァイオリンが上手すぎて世界中を演奏旅行で飛び回り、最後はステージ上で心臓発作を起こして倒れるまで弾き続けたという、壮絶すぎる音楽一筋のエピソード。
そんな彼が遺したこの第2番は、ポーランド(スラヴ)ならではの、胸が締め付けられるような「泣きのメロディ」がこれでもかと登場します。特に第2楽章の甘美なロマンスから、第3楽章のジプシー風の情熱的なダンスへとなだれ込む展開は、ロマン派の良さがすべて詰まっています。
※ Fire TVでの検索キーワード:バルトロミ・ニジョウ ヴィエニャフスキ ヴァイオリン協奏曲第2番

【19位:エルガー――イギリス・ブロードヒース出身(1857年〜1934年)の、英国の気品と、夕暮れのような物悲しさが漂う50分の大作】


「威風堂々」や「愛の挨拶」で有名なエルガーが、晩年にその持てる全ての情感を注ぎ込んだ、破格のスケールを持つ大作です。
、
彼はイギリスのブロードヒース生まれ。
エルガーのツッコミどころは、若い頃は全く売れず、奥さんの支えがあって40歳を過ぎてからようやく大ヒットを連発したという、超遅咲きの苦労人であること。英国紳士らしいカチッとしたスーツを着こなす彼が書いたこの曲は、なんと演奏時間が「約50分」という、ヴァイオリン協奏曲としては異例の長さを誇ります。
しかし、長いからといって退屈さは一切ありません。イギリスの美しい田園風景や、沈みゆく夕暮れを眺めるような、どこか物悲しくも高貴なメロディが、これでもかと丁寧に紡がれていきます。じっくりとお茶でも飲みながら、夜にFire TVの大画面で浸るには最高の大人向け名曲です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ニコラ・ベネデッティ エルガー ヴァイオリン協奏曲

【20位:バルトーク――ハンガリー・ナジセントミクローシュ出身(1881年〜1945年)の、20世紀の原始的なリズムとモダンが融合した、最高峰の構築美】


20世紀ハンガリーが生んだ孤高の天才による、全ヴァイオリン協奏曲の歴史の中でも「最高完成度」の一つと称えられる大傑作の第2番です。

彼は現在のルーマニア(当時はハンガリー王国)のナジセントミクローシュ生まれ。
バルトークの面白いところは、蓄音機を担いで辺境の農村をまわり、おじいさんやおばあさんが歌う民謡を録音して研究した「民族音楽オタク」だったこと。
だから彼の音楽は、クラシックでありながら、どこか原始的な野生のリズムが息づいています。この第2番も、一見すると20世紀のモダンでトゲトゲした響きに聴こえますが、じっくり聴くと、ハンガリーの土の匂いや、夜の自然のざわめきがこれ以上ないほど緻密な計算の元に組み立てられていることに気づきます。耳が肥えてくると、この曲の格好良さが骨の髄まで分かるようになる、通のための名曲です。
※ Fire TVでの検索キーワード:クリスティアン・テツラフ バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番

【21位:J.S.バッハ――ドイツ・アイゼナハ出身(1685年〜1750年)の、すべての音楽の父が遺した、2本のヴァイオリンが織りなす究極の対話】


ここからは、ヴァイオリンという楽器の歴史の「ルーツ(原点)」へと旅を進めましょう。音楽の父バッハが遺した、バロック協奏曲の最高峰です。

彼はドイツのアイゼナハに生まれた、生粋のドイツ頑固親父。
バッハといえば、生涯に20人もの子供を育てながら、教会の真面目な音楽を毎週のように量産した職人ですが、宮廷に仕えていた若い頃は、こうした世俗的で最高に楽しい器楽の協奏曲も書いていました。この曲は、主役のヴァイオリンが「2本」登場します。
2本のヴァイオリンが、オーケストラの支えの上で、まるでお互いに対等に会話をし、追いかけっこをし、美しくハグをするかのように絡み合う。第2楽章の天国的な美しさは、日頃のストレスや歯医者さんの緊張感すら完全に消し去ってくれる、至高の癒やしです。
※ Fire TVでの検索キーワード:オイストラフ バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲

【22位:J.S.バッハ――ドイツ・アイゼナハ出身(1685年〜1750年)の、背筋が伸びるような気品と、生きる喜びに満ちた原点のホ長調】


21位の「2つのヴァイオリン〜」と並び、バッハが遺したソロのヴァイオリン協奏曲の中で最も有名な、これまたすべての基礎となる名作の第2番です。

同じくドイツのアイゼナハ出身。このホ長調(E-dur)という調性は、ヴァイオリンという楽器が最も明るく、開放的に響くように設計されています。曲が始まった瞬間、一点の曇りもない、背筋がピンと伸びるような端正な美しさと、ステップを踏みたくなるような生きる喜びがリビングに満ちていきます。
バロック音楽の良さは、大画面で演奏家たちの手元や表情を見ていると、「あ、今このメロディがチェロに引き継がれた!」「今度はヴァイオリンがそれに応えた!」という、音楽のキャッチボール(まるで壁打ちテニスのラリー!)が視覚的にも完璧に分かるところです。
※ Fire TVでの検索キーワード:ギドン・クレーメル バッハ ヴァイオリン協奏曲第2番

【23位:ストラヴィンスキー――ロシア・オラニエンバウム出身(1882年〜1971年)の、20世紀のカメレオンが仕掛けた、シャープでリズミカルな新古典主義】

「春の祭典」で世界中にスキャンダルを巻き起こした20世紀の大異端児が、ガラリとスタイルを変えて書いた、最高にクールな協奏曲です。

彼はロシアのオラニエンバウム生まれ。
ストラヴィンスキーのツッコミどころは、時代ごとにコロコロと作風を変える「音楽界のカメレオン」だったこと。原始的な大爆発音楽に飽きた彼が、18世紀のバッハのような古い形式を現代風のシャープなリズムでパロディ化したのが、この「新古典主義」時代の協奏曲です。
曲はとにかくリズミカルで、ジャズのような軽快さもあります。ヴァイオリンが美しくロマンチックに歌うのを披露するのではなく、オーケストラと一緒に歯車のようにカチカチと噛み合って疾走していく格好良さ。Fire TVのスピーカーで聴くと、その乾いた、小気味よいリズムの虜になります。
※ Fire TVでの検索キーワード:パトリシア・コパチンスカヤ ストラヴィンスキー ヴァイオリン協奏曲

【24位:ベルグ――オーストリア・ウィーン出身(1885年〜1935年)の、現代の手法を使いながら、涙が出るほど美しい終曲を持つ「天使」へのレクイエム】


クラシックの歴史の中で「最も泣ける、最も美しい現代音楽」と称される、20世紀の奇跡のような名作です。

彼は音楽の都オーストリア・ウィーン生まれ。
ベルグの凄さは、メロディを完全に否定するような「十二音技法」というガチガチに難解な現代の数理的テクニックを使いながら、フタを開けると誰よりもロマンチックで切ない音楽を書いてしまうところ。
この曲には「ある天使の思い出に」というサブタイトルがついています。親しかった18歳の若き少女が病で亡くなったことに大ショックを受けたベルグが、彼女のレクイエム(哀悼の曲)として一気に書き上げました。曲の最後、バッハの古い賛美歌のメロディが、現代の濁った響きの中から奇跡のように美しく、光が差し込むように浮かび上がってくる瞬間は、大画面の前で思わず涙がこぼれるほどの感動を呼びます。
※ Fire TVにでの検索キーワード:イザベル・ファウスト ベルグ ヴァイオリン協奏曲

【25位:プロコフィエフ――ウクライナ・ソンツォフカ出身(1891年〜1953年)の、大人の渋みと、スペインのカスタネットが鳴り響く劇的第2番】


13位の幻想的な第1番から一転、彼が世界中を放浪した末に、大人のドラマを詰め込んで書いた第2番です。

同じく現在のウクライナ・ソンツォフカ出身。
この曲の面白い由来は、プロコフィエフがソ連へ帰国する直前、パリやウィーン、モロッコなど、世界中の演奏旅行の滞在先で「少しずつパーツを書き足していった」という、旅のスタンプラリーのようなエピソード。
そのため、初演されたスペインの薫りが色濃く残っています。特に第3楽章のフィナーレでは、ヴァイオリンが激しいロシア風のリズムを刻む後ろで、オーケストラのカスタネットがカチャカチャと鳴り響くという、なんとも劇的でエキゾチックな展開を見せます。第1番の「優美な夢」とはまた違う、ドッシリとした大人の格好良さが光る名作です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ヤンセン プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第2番

【26位:ヴュータン――ベルギー・ヴェルヴィエ出身(1820年〜1881年)の、19世紀のスターが凝縮した、オペラのような劇的超絶技巧】


アマオケの演奏会でこれが選ばれると、ヴァイオリン弾きたちが「おおっ!ついにこれをやるか!」と色めき立つ、隠れた劇的超名曲の第5番です。

彼はベルギーのヴェルヴィエ生まれ。
ヴュータンのツッコミどころは、彼自身が天才スターすぎて、あまりにも難しい超絶技巧の協奏曲を量産したため、後世のヴァイオリニストたちがみんな指を痛めそうになって苦労しているという点。
しかし、この第5番は、演奏時間が約20分と短い中に、まるでイタリア・オペラの一大悲劇をギュッと凝縮したかのような劇的なドラマが詰まっています。切ないオーケストラの導入から、ヴァイオリンが嵐のように激しく登場し、最後は息をもつかせぬ超高速のテクニックで駆け抜ける。短時間でガツンとクラシックの快感に浸りたいとき、Fire TVで再生するにはもってこいの爽快な名曲です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ヒラリー・ハーン ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第5番

【27位:シューマン――ドイツ・ツヴィッカウ出身(1810年〜1856年)の、晩年の天才が遺した、幻想と狂気の狭間に揺れる美しさ】


長年、クラシック界で「呪われた幻の協奏曲」と恐れられ、20世紀になってからようやく世に出たという、歴史のミステリーを持つ曲です。

彼はドイツのツヴィッカウ生まれのロマン派。
シューマンの悲劇は、この曲を書いた直後、精神の病が悪化してライン川に身を投げてしまい、そのまま精神病院で亡くなってしまったこと。そのため、彼の親友だったブラームスやヨアヒムが「この曲はシューマンの病気の影があるから、世に出してはいけない!」と、なんと100年近く楽譜を封印してしまったのです。
しかし、20世紀に封印が解かれて聴いてみると、これが実に独特で美しい。カチッとした構築美ではなく、まるで霧の中を彷徨うような、幻想的で、どこか危ういロマンチシズムが全編を覆っています。他のどの曲にもない、シューマンだけの濃密な心のひだに触れるような名作です。
※ Fire TVでの検索キーワード:ファウスト シューマン ヴァイオリン協奏曲

【28位:シマノフスキ――ウクライナ・ティモシュフカ出身(1882年〜1937年)の、まるで夢の麻薬、20世紀初頭の官能的で神秘的な響き】


「耳が完全に肥えた」その先にある、究極の音響体験。まるで夜の熱帯植物園に迷い込んだかのような、妖しくも美しい第1番です。

彼は現在のウクライナ(当時はロシア帝国)のティモシュフカに生まれたポーランド人。
シマノフスキの特色は、フランスの印象派(ドビュッシーなど)の色彩感と、後期ロマン派のドロドロとした情熱を混ぜ合わせ、そこに東洋的な神秘主義をプラスしたという、独自の「官能的な音響」。
この曲には明確なメロディの区切りがなく、ヴァイオリンがまるで夜空にきらめく星の粉のように、オーケストラの極彩色の響きの中でチカチカと、妖しく、美しく浮遊し続けます。Fire TVの大画面と、リビングを少し暗くした空間で聴くと、完全に日常を忘れさせてくれる、音の麻薬のような傑作です。
※ Fire TVでの検索キーワード:バルトロミ・ニジョウ シマノフスキ ヴァイオリン協奏曲第1番

【29位:サン=サーンス――フランス・パリ出身(1835年〜1921年)の、第3番のルーツ!若き天才が数日で書き上げた、幻の劇的第1番】


7位の第3番であれほどの衝撃をくれたサン=サーンスが、実はその20年前に、サラサーテとの「最初の出会い」のために書いた、演奏時間わずか12分の隠れた名作の第1番です。

同じくフランスのパリ出身。
この曲の面白い由来は、当時まだ無名だった15歳の天才少年サラサーテが、サン=サーンスの自宅を突然訪ねてきて「僕のために協奏曲を書いてください!」とおねだりしたこと。サン=サーンスはその才能に惚れ込み、なんとわずか数日でこの第1番を書き上げました。
全1楽章、約12分という短さの中に、フランスらしい爽快なメロディと、サラサーテの超絶技巧を見せつけるための仕掛けがギュッと詰まっています。7位の第3番へと繋がる「すべての物語の始まり」として聴くと、感動もひとしおです。
※ Fire TVでの検索キーワード:プロコフィエフ サンサーンス ヴァイオリン協奏曲第1番

【30位:ジョン・アダムズ――アメリカ・マサチューセッツ出身(1947年〜現在)の、21世紀へ繋ぐ、リビングを疾走するミニマル・マシーン】


さあ、ベスト30を締めくくる最後の1曲は、現代アメリカを代表する巨匠が1993年に書いた、グラミー賞受賞の21世紀の新古典です!

彼はアメリカのマサチューセッツ州生まれ。
アダムズの音楽の特色は、同じ短いメロディやリズムを、まるで工場のマシーンのように延々と、少しずつ形を変えながら繰り返していく「ミニマル・ミュージック」。
このヴァイオリン協奏曲は、曲が始まった瞬間から、オーケストラが心地よいパルスのようなリズムをずーーっと刻み続けます。その精密に動くマシーンの上を、独奏ヴァイオリンがまるで無限の即興演奏をするかのように、どこまでも自由に、疾走感いっぱいに駆け抜けていく。昔のお堅いクラシックのイメージを完全にぶち壊す、現代のハイレゾ音響とFire TVの大画面に最もふさわしい、最高にエキサイティングなフィナーレです。
※ Fire TVでの検索キーワード:レイラ・ジョセフォヴィッツ ジョン・アダムズ ヴァイオリン協奏曲

Ⅳ. おわりに(結び) 〜30曲の宇宙を巡り終えて、Fire TVを消す夜に〜

手元の時計を見ると、夜もずいぶんと更けていたんです。

ここで、私がこの壮大な30曲の宇宙を、自宅のリビングでどうやって「観察」していたのか、その愉快な舞台裏を少し明かしておきたいなと思います。

私は決して、ソファにだらしなく寝転んで優雅に大画面を眺めていたわけではないんですよ。ただのべんたらりとした格好で座っていちゃいけないな、といつも思っているんです。

だから、ソファに座ってFire TVを見るときは、ちょっとしたエクササイズをやっているんです。
右足と左足を交差させて、あぐらをかくような感じにするんです。私の場合は右の股関節がすごく硬いので、まず左足を横に引き寄せて、その上から右足をまた手前に引き寄せてくるんです。この右足を上にするときが、右の股関節を緩める絶好の形になるんです。これでお尻の後ろを非常に気持ちよくストレッチできるんですよね。
反対に、左足を上にすれば、今度は左の股関節を緩める形になります。こうやって、かかとをかなり胸のほうにグッと引っ張るような感じで、大画面を見ながら「ながら運動」をしているんですよ。

さらに、ソファから立ち上がったときは、床のマットの上にゴロリと転がしてある、長さ60センチメートルほどの丸ごと太い「青竹」の出番なんです。この上を裸足で乗っかって、ゆっくりと足踏みをするんですよね。普段、壁打ち運動場で2時間ぶっ続けでテニスをやっているせいか、私の足の裏はすっかり慣れたものなんです。だから痛いというよりは、足裏をちょこっと優しく刺激してくれるのが、なんとも言えず心地いいんです。この2つのエクササイズを組み合わせながら、テニス仕込みの腹筋、背筋、そして呼吸筋をしっかりと意識して、中身はまるで子供に戻ったかのようにニコニコと大画面の極上の演奏を楽しく観察しているんです。両手にテニスラケットを掴んで体を固定したり、ソファの上で股関節をじっくり伸ばしたり、足元では丸ごと青竹を踏み鳴らしたり。この世の誰も真似しないであろう、最高に愉快な特等席なんです。

ヴァイオリンの超絶技巧のラリーと、私の体のご機嫌を伺うリズムが、リビングの中で不思議にシンクロしていくんです。
このエネルギーがあれば、私は120歳になっても現役で、こうして楽しくエッセイを書き続けていけるんじゃないか――そんな自信すら湧いてくるから不思議なものですよね。
(おわり)

※noteの規約に基づき、Amazonアソシエイト・プログラムのリンクを使用しています。



いいなと思ったら応援しよう!