
手乗り文鳥ポワロの事件簿②『ポワロとキャラクター祭』【第一章 あとの祭】
キャラクター祭の華やかなオープニングは虚しく終わった。
会場には規制線が張られ、先ほどまで歓声に包まれていたメインステージには重苦しい空気が漂っている。
祭の取材に訪れていた報道陣も予定を変更し、事件の速報へと切り替えていた。
全国から集まったキャラクターたちも全員待機となり、控え室やテントの中では西川の死を悼む声が漏れている。
記念すべき第十回日子根地元キャラクター祭は中止となった。
「西川真一って、どんな人だったんだ?」
香川は会場スタッフへの聞き込みを始めた。
「恩人です」
若いスタッフが即答する。
「この祭を全国区にした人です」
「西川さんじゃなきゃ、ここまで大きくならなかったよ」
スポンサー企業の担当者もそう語った。
誰に聞いても、西川を悪く言う者はいない。
だが、一人だけ違う顔をした男がいた。
三十代半ばの、“日子根キャラクター協会”と刺繍された作業用ジャンパーを着た男だった。
「……最近は、少し違ってましたけどね」
「どう違うんだ?」
「きんとらくんは市のキャラクターですよ。でも西川さんは、まるで自分のもののように……」
男は声を落とした。
「きんとらくんを全国に連れ回して、祭そのものが誰のものか分からなくなっていた」
男は続けた。
「……あの人、最近はきんとらくんを商売の道具みたいに扱っていたんです」
「商売の道具?」
「県外イベントの話ばかりでしたから」
「地元の商店街やボランティアより、外へ外へと目が向いていた」
「祭の理念が、変わってしまった気がしていました」
「あなたは?」
「稲本といいます。立ち上げの頃からのスタッフです」
男はそれだけ言うと、口を閉じた。
「よし。楢崎の自宅に行ってみるか」
「はい、先輩」
楢崎のアパートは市街地から少し離れた場所にあった。
呼び鈴を押しても反応はない。
「先輩。ドアも窓も施錠されています」
長谷部が確認する。
「電話も繋がらないな」
香川は通話を切った。
「家族は?」
「独身です」
部屋の中に人の気配はなさそうだ。
「先輩!」
長谷部が声を上げた。
「車です」
「楢崎のか?」
「間違いありません」
駐車場には、楢崎の車だけが取り残されていた。
ポワロは車の周囲を見回した後、ゆっくりと首を傾げた。