
手乗り文鳥ポワロの事件簿④『ポワロとゲーム機展』【プロローグ 金虎地蔵盗難事件】
「怪盗キャッツ、また現る!」
テレビからアナウンサーの興奮した声が響いた。
画面には金色に輝く虎の地蔵が映し出されている。
金虎地蔵。
日子根市の象徴のひとつで観光名所であり、時価総額二十億円とも言われる金の地蔵だった。
その金虎地蔵が盗まれた。
しかも現場には一枚のカードが残されていた。
怪盗キャッツ参上
次は君のハートを奪うかも
全国のワイドショーが連日この話題で持ち切りだった。
金虎地蔵が盗まれて一週間。
現場には予告状まで残されていたにもかかわらず、犯行を防げなかった。
日子根警察署の面目は丸潰れだった。
「怪盗キャッツ、予告状通り犯行」
「金虎地蔵消失 警察また後手」
「怪盗キャッツに完敗」
「予告状を出して犯行成功」
「警察の警備体制に疑問」
新聞各社は連日のように書き立てた。
日子根警察署には抗議電話までかかってきていた。
刑事課の香川誠司は新聞を机に叩きつけた。
「好き放題書きやがって……」
「でも盗まれたのは事実ですよね」
「うるさい!」
テレビのワイドショーも同様だった。
「何がハートだ」
「盗難も許せないが、現場に残されたあのメッセージカードがイケすかない」
香川はテレビを消した。
「ただの窃盗犯じゃないか」
しかし、そう思っているのは香川だけだった。
「キャッツ様なら奪われたいです!」
隣では新米刑事の長谷部美咲が目を輝かせている。
「もう半分くらい奪われてるだろ」
「しっかりしろ!」
長谷部は首を傾げる。
「半分?」
「いや、八割くらいかもしれん」
香川の方の上に留まる相棒の文鳥・ポワロが鳴く。
「ピヨッ」
「お前まで賛成するな!」
*
そんな騒動の最中、日子根市では別の話題が盛り上がっていた。
世界携帯ゲーム機コレクション展。
日子根銀座商店街の空き店舗を活用して、世界屈指の携帯ゲーム機コレクター・松井照彦が長年収集してきた貴重な携帯ゲーム機を展示するイベントが開催されていた。
その展示会に、まさか怪盗キャッツから新たな予告状が届くとは――。
この時の香川たちは、まだ知る由もなかった。