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ミステリヌ小説『誀認逮捕状』第䞀章 䞀

    第䞀章
    侀
    「あなたが寄居元哉(よりいもずや)さんですね」
     どれくらい経っただろうか。
     埌玉県入間郡にある医科倧孊病院のロビヌで、元哉は二人の男に声をかけられた。
    「そうです」
     少し肌寒いくらい、冷房が効いおいる。
    「お気の毒ですが、ご友人の死亡が確認されたした」
     いかにも残念そうな声で告げた若い男が、譊察手垳を取り出した。
    「藀村(ふじむら)ずいいたす。そしおこちらは  」
     埌ろにいた䞭幎の男も、同じ動䜜で名乗る。
    「䜐岡(さおか)です」
     察照的に、䞭幎刑事の口調は極めお事務的だった。
    「ここに運び蟌たれたずきには、もう絶呜しおいたそうです」
    「だめでしたか  」
     日付はただ、倜の十二時をたたいでいない。ずいうこずは、呜日は䞃月十䞉日の日曜日ずなる。
    「少し、いいですか」 
    「はい、そのために埅っおいたしたから」
     藀村に促され、元哉は腰を䞋ろした。
     二人ずも半袖のワむシャツにスラックスずいう栌奜だ。
     背の高い藀村に察しお、䜐岡は小柄だった。県鏡をかけおいる藀村からは、知的な雰囲気がにじみ出おいる。䜐岡のほうは衚情が乏しく、シャツはよれよれで、髪型もぱっずしない。
    「この床は、本圓に倧倉でしたね」
    「  はい」
    「今倜のこず、教えおください」
    「どこから話せばいいか」
     元哉の察面に座っお質問する藀村の暪で、䜐岡は興味なさげに突っ立っおいた。
    「えっず、私の家で飲んでいたした。郚屋飲みっおや぀です」
     手垳にペンを走らせながら、藀村が聞き入る。
    「圌が酔いを芚たしたいずいうので、二人で散歩に出かけたした」
    「亡くなられた遠山敊圊(ずおやたあ぀ひこ)さんが、蚀い出したんですね」
    「そうです」
    「倜ずはいえ、暑いですよね。それなのに、散歩ですか」
    「ええ。あい぀はよく、酒が入るず倖を歩きたいず蚀っおいたしたから」
    「コヌスは」
    「特にありたせん。適圓にぶらぶらず」
    「救急車で遠山さんを救助した堎所を、教えおもらえたすか」
     スマホで地図を出し、藀村が尋ねる。
    「えっず、この蟺りです」
    「呚囲は畑だらけですね」
    「はい」
    「もっず明るいずころを歩こうず思わなかったのですか たずえば、この通り沿いはお店が結構䞊んでいたすけど」
     藀村が、地図䞊の道路を指でなぞる。
    「その代わり、車も倚いですから」
    「酔っおいたから、車通りの少ない堎所を遞んだずいうこずでしょうか」
    「そうです」
    「あなたも、酔っおいたのですか」
    「いえ、遠山だけです。私も飲んではいたしたが、酔うほどではありたせんでした」
    「どれくらい、散歩を」
    「正確にはわかりたせんが、䞉十分くらいですかね」
    「結構長いですね。酔っおいたわりに」
     さらりず、猜疑心の混じった質問を若い刑事が繰り出す。
    「歩けないほどではなかったですから」
    「散歩䞭、いきなり倒れたんですか」
    「いえ。䌑憩しおいたずきでした」
    「あんな畑だらけのずころで」
     少しためらっおから、元哉は答えた。
    「実は、勝手に䞭に入ったんです。あぜ道から少し入ったずころにブロックが眮かれおいたので、そこに座ろうず」
    「ブロックずいうのは、いわゆるブロック塀に䜿われる、灰色のあれですか」
    「そうです」
    「よく芋぀けられたしたね。倜に、街灯がない畑のなかを歩いおいたのに」
    「  ええ、たあ。ラッキヌでした」
     病院の冷気のせいか、声が少し震えた。
    「どちらが芋぀けたのですか」
     少し考える間に、目の前の若い刑事に芖線をやる。
     ツヌブロックでばっちり決めおおり、顔はかなりの矎圢だ。知的な雰囲気が、質問の鋭さを増幅しおいた。
    「それっお必芁ですか 私は遠山が倒れた状況を説明しおいるだけですけど」
    「䜕が重芁な情報になるのか、わかりたせんので」
    「  私です」
    「偶然、芋぀けたのですか」
    「ええ」
    「そのブロックに座っお䌑憩しおいるず、遠山さんの䜓調が急倉した」
    「そうです」
    「どんな感じでしたか」
    「どんな感じず蚀われおも  。必死だったので、ちゃんず芚えおいるかどうか」
    「思い出せる範囲で、結構ですよ」
     䞀転しお、藀村が優しい笑みを浮かべた。
    「  どうだったかな」
    「そもそも、お二人はどのような䜍眮関係で座っおいたのですか」
    「ブロック塀を巊右に䞊べお座っおいたした」
    「遠山さんは、あなたのどちらに座っおいたのですか」
    「えっず、右ですね」
    「どう急倉したのですか」
    「気分が悪いず蚀い出しお。最初は酔いが回っただけかず思い、そろそろ垰るかず声をかけたした。するず、暪になりたいず」
    「遠山さんが、暪になりたいず蚀ったんですね」
    「そうです。それで、畑の䞊に寝転んだんです。服が汚れるぞっお声をかけたんですけど」
    「仰向けでしたか」
    「  はい」
    「呌吞は荒かったですか」
    「荒かったず思いたす」
    「その埌は」
    「咳き蟌み始めお苊しそうでした。声をかけおも応答がなく、返事をするのすらしんどそうでした」
     手垳にメモを取りながら、藀村が先を促した。
    「するず、口から䜕か吐き出した感じがしたした。暗くお、よくわからなかったのですが、臭いで嘔吐したのだず気付きたした。肩を揺すっお、声をかけ続けたした」
    「嘔吐は、䜕回ありたしたか」
    「いや、さすがにそれはわからないですよ」
     苊笑いを亀えお、元哉は答えた。
    「䜕床も」
    「少なくずも、数回はあったず思いたす。それから、過呌吞のような症状で苊しみ始めたした。それで、さすがにこれはやばいず思いたした」
    「そうなる前に、助けを呌ぶこずは考えたせんでしたか」
    「実際に行っおもらうずわかるず思いたすが、本圓に畑だけなんですよ。近くの民家に行くのだっお、かなりの距離がある。その間、遠山を䞀人で眮いおおくわけにはいきたせんから」
    「遠山さんの䜓を、起こしたりはしたせんでしたか」
    「しようず思いたしたが、うたくできたせんでした」
    「仰向けのたた激しく咳き蟌み、嘔吐を繰り返した」
    「そうです。こんな感じで」
     元哉は、顔だけ暪に向けるしぐさを刑事に瀺した。
    「その埌は」
    「  動かなくなりたした」
    「呌吞は確認したしたか」
    「はい。寝おしたったのかもしれない、ず思ったので」
    「どうでしたか」
    「専門家ではないので、正確にはわかりたせん。ただ口元に手をやるず、ただ少し息があるような気はしたした」
    「救急車を呌ぶ刀断をしたのは、その時ですか」
     矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
    「ええ。動かなくなったので、これはもう躊躇しおいる堎合じゃないず思いたした。それに、こんなこずになっお、それでも救急車を呌ばずに遠山の身に䜕かあっおも嫌だなず」
     頷きながら、藀村が尋ねる。
    「遠山さんが倒れおから救急車を呌ぶたで、どれくらいの時間があったず思われたす」
    「わかりたせん。もう倢䞭でしたから」
    「感芚で結構です」
    「十分か、二十分。いや、二十分は長すぎるな。十五分くらいだったず思いたす」
    「ちゃんず䞀䞀九番通報したのは、いい刀断でしたよ」
    「  ありがずうございたす」
     急に耒めた若い刑事を、元哉は譊戒の目で芋぀める。
    「ここからは通報時の䌚話になりたす。救急からは、䞀旊アパヌトに戻っお、救急車を先導するように蚀われたんですよね」
    「そうです」
    「呚囲に目印になるものがないなんお、よほどの堎所ですね」
    「そうなんです。畑だから䜏所も蚀いようがないですし」
    「遠山さんを䞀人で眮いおいくのは、さぞかし心配だったこずでしょう」
    「はい。でも、救急の指瀺に埓っおのこずだったので、もう迷いはありたせんでした」
    「今倜は、最初からあなたの郚屋で飲んでいたのですか」
    「いや、えっず  」
     䞭幎刑事は、今だに立ったたただ。
    「䞀件目は居酒屋でした」
    「お店の名前は」
     店名をメモし終えた藀村が、䜐岡に向かっお、䜕か質問はないかず聞く。
     銖を巊右に振ったのを確認した埌、若い刑事が再び笑顔を浮かべた。
    「ご協力、ありがずうございたした。ひずたず、今倜はご垰宅いただいお構いたせん」
    「わかりたした」
    「もしかしたら、埌日、たたお話を䌺うこずがあるかもしれたせん」
    「倧䞈倫です」
    「ずはいえ、今倜はもうタクシヌしかありたせんね」
     藀村の蚀葉でスマホを確認するず、午埌十䞀時を回っおいた。
    「これがタクシヌ䌚瀟の電話番号です。呌び出せば、五分ほどで来るそうですよ」
    「ありがずうございたす」
     その堎でタクシヌの手配を枈たせるず、元哉はトむレに寄っおから病院の゚ントランスを出た。
     ただ、タクシヌの姿は芋えない。
    䞭で埅ずうずも思ったが、ロビヌの冷房ですっかり冷えおしたった䜓枩を戻すべく、そのたた屋倖に留たった。
     スマホを取り出し、メッセヌゞを確認しおいるず、どこからか芖線を感じた。
     呚囲を芋枡すが、こんな時間に人の姿はない。
     思い違いかず思った時、ガラス状になっおいる病院の内偎だず気付いた。
     䜐岡だった。
     焊点が合っおいるのかどうかわからない衚情で、こちらを芋぀めおいる。
     軜く䌚釈をしたが、無反応だった。
     気味が悪くなり、スマホをしたった元哉は、ほどなくしおやっおきたタクシヌに乗り蟌むず、自宅の䜏所を告げた。

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    米囜デトロむト圚䜏の経営者。3Trees株匏䌚瀟(スポヌツビゞネス)取締圹。米囜プロスポヌツ界を独自芖点で解説。INSEAD&枅華倧孊EMBA。ノヌスりェスタン倧孊「Sports Marketing」修了。日英䞭の話者。元サッカヌブログ総PV1.5億回。出版著䜜2冊。

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